金融/不動産知恵袋

競売を回避する「任意売却」とは?――担保不動産売却までの流れと心得(3)

ローンの返済を滞納し、担保としている不動産を手放すことになったとしても、それでローンが完済されるわけではありません。競売での売却価格がローンの残額を下回った場合、不足する金額を支払わなければならないからです。今回は、競売後の流れと、ローンの債務を清算するための競売以外の選択肢である「任意売却」について、お話しします。

競売でローンが完済できるわけではない

金融機関はローンの返済をしてもらうために、担保としている不動産を競売によって売却するわけですが、不動産の売却代金がローンの残高に不足していることがあります。この残っている債務(「残債」といいます)を返済するのは、ローンを借入れた債務者に変わりはありません。つまり、ローンを滞納して返済が不能となった場合、担保不動産を競売にかければ解決する、ということではないのです。

競売で返済ができなかった残債については、引き続き、債権者に返済をすることになります。このときの債権者は、ローンを融資した金融機関や途中で「代位弁済」をした保証会社となりますが、債権管理回収を専門に行う「サービサー」という業者になることもあります。サービサーは、競売後、それまでの債権者から債権を譲渡され、債務者からの債権回収を行ないます。

このように、債権者は変わる可能性はありますが、債務者の残債に対する返済義務はそのままです。実際の返済方法については、債権者との交渉になりますが、分割払いとなるケースが多いようです。

競売価格は市場価格の約7~8割に設定される

では、なぜ競売で売却した不動産の代金が、ローンの残債に不足するのでしょうか。その原因は、競売価格(正式には「売却基準価額」)にあるとされています。(2)でも説明していますが、競売にかけられた物件については、不動産の状態をチェックする現況調査などを経て、不動産鑑定士によって競売価格が決められます。一般的に、この競売価格は、市場価格の7~8割程度に設定されます。

市場価格より2~3割ほど割安に価格が設定される理由は、競売物件には買主にとってさまざまなリスクが存在するからです。例えば、落札後、建物の構造に欠陥が見つかった場合、修繕費などは買主が負担します。また、前の所有者がスムーズに退去をしてくれなかった場合は、買主が必要な交渉や手続きをしなければなりません。こうしたリスクを考慮して、競売価格は市場価格よりも低く設定されるのです。

さらに、競売には、「買受可能価額」という最低落札価格が設定されています。この買受可能価額は競売価格よりもさらに2割割安に設定されています。そのため、仮に競売価格が市場価格の7割の水準に設定されており、買受可能価額で落札されてしまった場合は、市場価格の56%の価格で売却されてしまうことになります。

また、これは見過ごされやすい費用ですが、ローンの延滞が始まってから競売で売却されるまでの間、延滞分の遅延損害金や罰則金が発生します。金融機関にもよりますが、遅延損害金は年率20%近くに設定しているところも多く、延滞から競売による売却までおよそ1年半かかるとすると、毎月の支払額によってはかなりの金額に上ります。こうした費用が重なるため、売却代金が残債に不足するケースが多くなります。

「任意売却」でも一括返済は難しい

競売によって不動産が市場価格よりも安く売却されてしまうことを防ぐ手段が、「任意売却」です。不動産が競売にかけられる前に、債務者が自分の意志で不動産を売却することから任意売却と呼ばれています。

任意売却の最大のメリットは、基本的には通常の不動産取引と同じような売買が可能なので、市場価格に近い価格で売却できる可能性があることです。また、裁判所による担保不動産への「差押え」が行われる前に売却できれば、不動産の登記簿に「差押え」が記載されることもありません。

但し、任意売却をするには、債権者である金融機関の同意が前提となります。そのため、任意売却を行なう専門の業者に金融機関との交渉を依頼することになります。そこで合意が得られれば、任意売却の手続きに入ることができます。

任意売却は、競売の入札が始まっている状態でも可能です。しかし、そもそも不動産の売却には時間がかかるため、任意売却を選択するのであれば、早い段階から専門の業者に依頼することがポイントになるでしょう。

また、任意売却は、あくまでも「市場価格に近い価格で売却できる可能性がある」というに過ぎません。任意売却が行われても、ローンの残債が残ることはよくあります。残債の返済は、債務者が分割払いなどで行います。その点は、競売による売却と変わりません。

 

▼シリーズ「担保不動産売却までの流れと心得」の記事一覧

・第1回:「金銭消費貸借契約証書」の重要性
・第2回:法的手続き開始から所有権の移転まで
・第3回:競売を回避する「任意売却」とは?
・第4回:「競売」の実態と今後の動向

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