フラット35の審査基準を徹底解説!

更新日: / 公開日:2023.12.29

フラット35は、住宅金融支援機構が提供する全期間固定金利の住宅ローンです。借入時に返済終了までの金利が確定するため、返済計画を立てやすく、金利変動リスクへの備えとなります。ただし、フラット35の審査基準は民間の住宅ローンとは異なります。

この記事では、フラット35の審査基準を、申込人に関する基準と住宅に関する基準に分けて解説します。

【フラット35】の審査基準:申込人に関する基準

フラット35の審査では、申込人の年齢や国籍、収入状況、信用情報などが確認されます。

年齢

フラット35は、申し込み時の年齢が満70歳未満の人が対象です。ただし、親子リレー返済を利用する場合は、満70歳以上でも申し込みできます。

親子リレー返済とは?

親子リレー返済とは、申込者本人とその後継者が2世代で住宅ローンを返済していく制度です。以下3つの要件をすべて満たす人を後継者とすれば、申込者本人の年齢が70歳以上でも申し込みできます。親子リレー返済の後継者の要件は以下のとおりです。

  1. 申込者本人の子・孫など(申込者本人の直系卑属)またはその配偶者で定期的収入のある人
  2. 申込時の年齢が満70歳未満の人
  3. 連帯債務者になる人

国籍

フラット35は、日本国籍であることも申込要件です。外国籍の場合、永住許可を受けている人か特別永住者の人であれば申し込みできます。

収入状況

収入状況については、年収に応じて総返済負担率(年収に占める年間合計返済額の割合)の基準が定められています。

  • 年収400万円未満の場合:総返済負担率30%以下
  • 年収400万円以上の場合:総返済負担率35%以下

年収は、原則として申込年度の前年の収入で確認されます。会社員は給与収入金額、自営業者などは所得金額(事業所得、不動産所得などの合計額)をもとに判断します。一定の要件を満たす場合は、申込者本人の親や子、配偶者との収入合算も可能です。

総返済負担率は、フラット35以外の住宅ローンや自動車ローン、カードローンなどの返済額も含めて計算します。

太陽光発電の売電収入を年収に合算できる

融資対象住宅に太陽光発電設備を設置する場合、一定の要件を満たすと、その設備から得られる売電収入を年収に加算できます。新築住宅の建設や購入、中古住宅の購入に併せてリフォーム工事を行う場合の融資が対象です。

年収に加算できる金額は、発電出力(kw数)に応じて上限額が設けられています。

信用情報

フラット35では、申込者の返済能力を判断するために信用情報が確認されます。具体的には、税金や他のローンの滞納などがないかを見られます。ローンの滞納歴などが信用情報に記録されていると、審査に通過しにくくなる恐れがあります。

資金使途

フラット35の資金使途は、申込者本人またはその親族が居住する新築住宅の建設や購入、中古住宅の購入に限定されます。第三者に賃貸するなど、投資用物件の取得資金には利用できません。

【フラット35】の審査基準:住宅に関する基準

フラット35は、住宅金融支援機構が定めた技術基準に適合する住宅が対象です。基準を満たしていることを証明するため、物件検査をして適合証明書を取得しなくてはなりません。取得する住宅が新築か中古かで技術基準は変わります。

新築の場合

新築住宅の主な基準項目は以下のとおりです。

戸建てマンション
接道原則として一般の道に2m以上接すること
住宅の規模70㎡以上30㎡以上
住宅の企画原則として2以上の居住室、炊事室、便所および浴室の設置
併用住宅の床面積併用住宅の住宅部分の床面積は全体の2分の1以上
戸建型式など木造の住宅は戸建てまたは連続建てのみ
住宅の構造耐火構造、準耐火構造または耐久性基準に適合すること

その他に、断熱構造や配管設備などの基準もあります。マンションについては、管理規約や長期修繕計画も基準項目です。新築住宅の物件検査は、以下の流れで行われます。

  1. 設計検査(工事前に設計図などを確認)
  2. 中間現場検査(工事途中に目視で確認)
  3. 竣工現場検査(工事完了後に検査済証が交付されていることを確認)
  4. 合格後、適合証明書の交付

中古の場合

中古住宅の基準項目は、上記の新築住宅と大きな差はありません。ただし、住宅の耐震性や劣化状況などが確認されます。例えば、住宅の耐震性は建築確認日が昭和56年6月1日以後であることが要件です。建築確認日が昭和56年5月31日以前の場合は、耐震評価基準に適合している必要があります。

中古住宅の物件検査では、書類審査と現地調査が行われ、合格すると適合証明書が交付されます。新築時に適合証明書を取得していても、原則として中古住宅の適合証明書の取得が必要です。

フラット35の審査が緩いと言われる理由

フラット35は「審査が緩い」と言われることがあります。その理由は、フラット35の審査では、民間の住宅ローンとは異なる審査基準が用いられるためです。主に以下3つの理由が考えられます。

審査金利が適用金利と同じ

民間の住宅ローンの審査でも、フラット35の審査でも、返済負担率が重視されます。返済負担率の計算に用いる金利は審査金利と呼ばれますが、民間の住宅ローン(変動金利型)の場合、融資後の金利上昇を考慮して、3%以上の金利が用いられます。

一方で、フラット35の場合は返済負担率の計算にも、適用金利と同じ金利が用いられます。2024年4月時点のフラット35金利は、低いところで2%前後であるため、民間の住宅ローンより返済負担率が低く計算されます。

職種を重視されない

民間の住宅ローンでは、申込者の職種は重要視されます。住宅金融支援機構によると、住宅ローンを提供する金融機関の46.8%が「職種、勤務先、雇用形態は、審査項目として重要度が増している」と回答しています。

一方で、フラット35が公表している審査基準には、職種についての記載はありません。他の基準を満たせば、原則どんな職種でも審査に影響しないでしょう。

出典)住宅金融支援機構「2023年度 住宅ローン貸出動向調査」

団体信用生命保険の加入が任意

民間の住宅ローンの多くは、団体信用生命保険(団信)の加入が申込要件となっています。仮に収入等の条件を満たしていたとしても、健康状態が原因で団信に加入できず、審査に落ちてしまう恐れもあります。

一方で、フラット35は団信加入が任意であり、団信に加入できないことで審査に落ちる心配がありません。ただし、団信に加入しないのであれば、もしものときにローン返済をどうするかを検討しておく必要があります。

まとめ

フラット35の審査基準は、主に「申込人」と「住宅」の2つに分けられます。「審査が緩い」と言われることもありますが、基準を満たさないと融資を受けられません。審査基準はフラット35のホームページで公表されているので、事前に確認しておきましょう。


執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。