2019.06.25

規制緩和で戸建て住宅の評価額が上昇!?改正建築基準法のポイント

公開日:2019.06.25

 2019年6月25日に建築基準法が改正されました。この改正建築基準法の内容は、すでに国土交通省から2018年6月に公布され、一部の規定については同年9月から施行されていました。そして、2019年6月から新たに施行される法律には、戸建て住宅に関する重要な改正が含まれています。

戸建て住宅の転用について大幅な規制緩和

そもそも建築基準法とは、国民が安全かつ快適に生活を送ることができることを目的として定められた、建物や土地に関わる規定です。建物を設計し、建築したりする際には、都市計画法や消防法といった多くの法律が関わってきますが、建築基準法の対象となるのは、建築物や建築物の敷地、設備、構造、用途など。土地に対して、どんな用途や規模の建物が建てられるのか、建物の床面積や建築面積の上限は何平米かといった、さまざまな規定を定めています。建物を着工する前に行われる建築確認や、着工後の中間検査、着工が終了したことを確認する完了検査といった検査についても、建築基準法が規定しています。

建築基準法はこれまでに何度も改正をされています。今回の改正について、その背景を国土交通省は次のように述べています。「最近の大規模火災を踏まえ、老朽化した木造建築物の建替え等による市街地の安全性の向上や、建築物の適切な維持管理による建築物の安全性の確保を円滑に進めることなどが課題となっています。また、空き家が増加傾向にある中で、住宅をそれ以外の用途に変更して活用することが求められており、建築行政においても、安全性の確保と既存建築ストックの有効活用を両立しつつ、建築規制を合理化していく必要があります。」(以下、略)

今回の戸建て住宅に関する重要な改正は、後半部分の「既存建築ストックの有効活用」という部分です。こうした現状認識の下で、具体的に次のような改正が行われました。
(1)戸建住宅等(延べ面積200㎡未満かつ3階建て以下)を他の用途とする場合に、在館者が迅速に避難できる措置を講じることを前提に、耐火建築物等とすることを不要とする(2)用途変更に伴って建築確認が必要となる規模の見直し 
次に、この改正によって、具体的に何がどう変更になったのかについて、わかりやすく説明していきましょう。

戸建て住宅の転用で耐火構造への改修が不要に

従来、建物の種類が「居宅」になっている戸建て住宅を他の用途へ転用する場合、転用後の延床面積が100㎡以下であれば、建築確認手続きは不要でした。それが、今回の改正で、建築確認手続きが不要となる延床面積が200㎡以下にまで拡大されることになりました。さらに、3階建て以下で延床面積200㎡未満の戸建て住宅などを他の用途の建築物に転用する際、柱や梁といった主要や構造部を耐火構造にする改修を不要とする特例が設けられたのです。

こうした改正によって、一般の戸建住宅を、簡易宿泊施設や老人福祉施設などに転用しやすくなると考えられています。例えば、改正前の建築基準法では、木造の戸建て住宅を簡易宿泊施設に転用する場合には、宿泊室が3階にある建物は耐火建築物でなくてはいけないという規定があったため、該当しない建物の3階は宿泊施設としては使えませんでした。それが、今回の改正によって、延床面積が200㎡未満の3階建てであれば、耐火建築物にしなくてもよいことになりました。

また、建物の用途変更を伴う建築確認手続きにはさまざまな書類が必要で、それを用意するためには費用と手間がかかります。改正によって、3階建てで延床面積200㎡未満の戸建て住宅であれば、そうした建築確認手続きは不要となります。

空き家対策の切り札となるか

国内でも、2018年6月に「住宅宿泊事業法」いわゆる「民泊新法」が施行されて以降、各地に法律に則った民泊施設が数多く登場しています。但し、これまで、都心部に多い3階建ての戸建住宅は民泊施設には不向きとされていました。その理由は、耐火建築物への改修や建築確認手続きが高いハードルとなっていたからです。しかし、今回の建築基準法の改正によって、小規模の3階建ての戸建住宅が民泊施設として活用されるケースが増加すると予想されています。それに伴って、戸建て住宅の不動産としての評価にも、変化が生じると考えられます。

国土交通省が、このような規制緩和を進めるのは、建築基準法改正の背景でも述べたように、「既存建築ストックの有効活用」特に〝空き家〟問題の対策としての側面が強いと言えます。総務省の「住宅・土地統計調査」(2013年実施)によると、全国の空き家(総数819万5600戸)の内、賃貸や売却用、別荘を除いた約4割が「その他の住宅」であり、その大部分を戸建住宅が占めているそうです。さらに2033年には、全国の空き家の数は約2150万戸になるという推計もされています。将来にわたって急増する空き家を、簡易宿泊施設や老人福祉施設にスムーズに転用させることを狙っているわけです。

短期的には、2020年に迫った東京オリンピック・パラリンピックに向けての、宿泊施設の確保も視野にあるでしょう。いずれにしても、今回の建築基準法の改正は、戸建て住宅の利用価値を見直し大きなきっかけになると考えられます。


執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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