公開日:2025.06.04
固定資産税は、土地や建物などの固定資産にかかる税金です。納税通知書を見て、「固定資産税が思ったより高い」と疑問を感じる人もいるでしょう。この記事では、固定資産税の計算方法や、固定資産税が高すぎると感じるケースの具体例とその対処法を解説します。
固定資産税は、土地や建物を所有している人に課税される税金です。毎年1月1日時点の所有者が納税義務者となり、市区町村に納付します。一般的に、固定資産税は以下のような流れで計算します。
詳細については以下で解説します。
固定資産税の評価額は、総務大臣が定めた固定資産税評価基準に基づいて、市区町村が土地や建物の評価を行い決定します。固定資産税の評価額は、固定資産税の課税標準額の基礎となるものです。
例えば、土地は売買実例価額、建物は再建築価格などを参考に評価されます。そして、土地や建物の固定資産税の評価額は、原則として3年ごとに評価替えが行われます。
算出された建物の評価額をもとに、1月1日時点の資産価格を決定し、固定資産課税台帳に登録します。この価格が固定資産税の課税標準額です。一般的に、建物の固定資産税の課税標準額は、固定資産税の評価額と同じです。
ただし、土地の場合は、課税標準額が軽減される特例措置などがあり、固定資産税の標準額と固定資産税の課税標準額が異なる場合があります。例えば、200㎡以下の土地は、住宅用地の特例措置が適用されると、固定資産税の課税標準額が6分の1に軽減されます。
固定資産税額は「固定資産税の課税標準額×税率」で計算します。税率は原則1.4%ですが、自治体によって税率が異なる場合があります。また、新築建物のうち、一定の要件を満たす場合は、固定資産税額が軽減される制度もあります。詳細は、国土交通省「新築住宅に係る税額の減額措置」 をご確認ください。
固定資産税の納税通知書を受け取り、評価額や税額に疑問を感じたら、まずは自治体の税務担当窓口に相談しましょう。固定資産税の評価額の根拠や固定資産税額の計算方法について、説明を受けることができます。
それでも不服がある場合は、納税通知書の交付を受けた日の翌日から3ヵ月以内に、自治体に対して審査の申出ができます。なお、固定資産の価格について不服がある場合は、自治体に対してではなく、固定資産評価審査委員会に対する申出となります。
固定資産税の評価額や固定資産税額が高すぎると感じるケースには、いくつかのパターンがあります。ここでは、具体例を4つ紹介します。
一般的に、築年数が経過するにつれて建物の価値は下がる傾向にあります。ただし建物の固定資産税の評価額は、再建築価格をもとに計算します。建築費が上昇すると固定資産税の評価額が減少せず、かえって上昇することがあります。
前述のとおり、新築不動産には固定資産税額が2分の1に軽減される措置が適用されることがあります。例えば、令和8年3月31日までに新築された住宅について、床面積が120平方メートル以下の住宅であれば、新築後3年間(または5年間)、固定資産税が2分の1に軽減されます。新築から築年数が経過して軽減措置の適用期間が終了すると、本来の税額に戻るため、「固定資産税が急に高くなった」と感じることがあります。
住宅用地の特例措置が適用された建物が建つ土地は、課税標準額が下がり、固定資産税が軽減されます。この特例は、住宅が存在することを条件としており、適用期間中に建物を解体するか、住宅以外の用途に変更すると、翌年以降は特例措置の適用から外れるため税額が高くなります。
固定資産税は、地域や土地による税負担の格差を調整する負担調整措置があります。負担水準が高い土地は税負担の引き下げ・据え置きが行われる一方で、負担水準が低い土地は税負担を引き上げる仕組みです。
地価が下落する中で固定資産税の評価額が上がっている場合、この負担調整措置によって、固定資産税の課税標準額の是正が行われていると考えられます。
総務省の調査によると、調査対象期間(平成21年度~平成23年度)の間に税額修正した納税義務者数が1人以上あった市町村は、調査回答団体の97.0%にのぼります。納税義務者総数に占める税額修正のあった人数の割合は、調査対象期間の平均で土地・建物のどちらも0.2%でした。
年度 | 税額修正団体数 | 団体数割合 |
---|---|---|
平成21年度 | 1,483団体 | 93.2% |
平成22年度 | 1,485団体 | 93.2% |
平成23年度 | 1,484団体 | 93.2% |
累計 | 1,544団体 | 97.0% |
※団体数割合=各年度の税額修正団体数/調査回答団体数
出典)総務省「固定資産税及び都市計画税に係る税額修正の状況調査結果
固定資産税の税額修正の要因として、土地は評価額の修正(29.9%)、負担調整措置・特例措置の適用の修正(22.9%)の割合が高くなっています。建物は評価額の修正(29.7%)、建物滅失の未反映(23.6%)、新増築建物の未反映(20.6%)などがあります。
上記は平成24年度のデータで古いものですが、近年でも課税誤りは発生しています。例えば、自治体単位だと令和6年度においても、以下のような課税誤りが実際に発生し過大徴収の事実が判明しています。
出典)和歌山県広川町「固定資産税(一部の雑種地)課税誤りに関する報告とお詫び」
出典)福岡県遠賀町「固定資産税の課税誤りについて(お詫び)」
固定資産税の評価額や固定資産税額が高いと感じるのは、住宅用地の特例措置や固定資産税額の軽減措置が適用されなくなったことが原因かもしれません。ただし、自治体が誤って固定資産税を課税しているケースもあります。この記事の内容を踏まえても固定資産税が高いと感じる場合は、お住まいの自治体の税務担当窓口に相談してみるとよいでしょう。
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