2024.05.29

税金を滞納するとどうなる?払えないときの解決方法や対策を紹介

公開日:2024.05.29

税金を納期限までに支払うことができず、滞納してしまったらどうなるのでしょうか。特に個人事業主や副業をしている会社員は、自分で確定申告をする必要があるため、税金の滞納には十分に注意する必要があります。

この記事では、税金を滞納するとどうなるのか、払えないときの解決方法や対策を紹介します。

税金滞納の概要

まずは税金滞納の意味や現状について確認していきましょう。

税金滞納とは

税金滞納とは、税金を納期限までに支払わないことをいいます。納期限とは、税金を納付する期間の最終期日のことです。税金はまちづくりや教育、福祉といった各種公共サービスの財源となり、日本国憲法では「納税」は国民の義務であると定められています。

税負担の公平性を確保する必要があるため、税金を納期限までに払わない場合は財産の差押えなどの滞納処分が科される恐れがあります。

出典)
埼玉県庁 「税金を納めないとどうなるの」
国税庁 「納税の義務」

税金滞納の現状

国税庁の資料によると、令和4年度における新規発生滞納額は7,196億円です。平成4年度のピーク時の約4割となっており、前年の令和3年度比では、331億円減少(▲4.4%)しています。

また、令和4年度における滞納発生割合は1.0%です。滞納発生割合とは、徴収決定済額(申告などによる課税額)に占める新規発生滞納額の割合をいいます。

出典)国税庁「令和4年度租税滞納状況の概要」

税金を滞納するとどうなる?

税金を納期限までに納めずに放置していると、滞納処分を受けることがあります。ここでは、税金を滞納した場合の処分や罰則について説明します。

延滞税や延滞金、加算金がかかる

国税を滞納すると延滞税がかかります。延滞税は、税金を納期限までに払えなかったときに、原則として法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、自動的に課されます。延滞税の割合は以下のとおりです。

  • 納期限から2ヵ月を経過する日まで:原則年7.3%
  • 納期限から2ヵ月を経過した日以後:原則年14.6%

国税における延滞税に対して、地方税を滞納すると延滞金や加算金がかかります。延滞金は、納期限までに県税を納めないときに徴収されるもので、納期限の翌日から納付の日までの期間に応じて次の割合により計算されます。

  • 納期限から1ヵ月を経過する日まで:原則年7.3%
  • 納期限から1ヵ月を経過した日以後:原則年14.6%

ただし、地方税には特例措置が設けられており、令和3年1月1日以降の延滞金は以下のとおりです。

納期限の翌日~1か月を経過する日(A)納期限から1か月を経過した日~納税の(B)法人の県民税及び事業税について
納期限の延長があった場合の
本来の納期限の翌日~延長された納期限
令和4年1月1日から
令和6年12月31日
2.4%(延滞金特例基準割合+1%)8.7%(延滞金特例基準割合+7.3%)0.9%(平均貸付割合+0.5%)
令和3年1月1日から
令和3年12月31日
2.5%(延滞金特例基準割合+1%)8.8%(延滞金特例基準割合+7.3%)1.0%(平均貸付割合+0.5%)

出典)静岡県庁 「延滞金・加算金」

また、期限を過ぎてから申告をした場合などは「申告義務が適正に履行されていない」とみなされ、本来の税額とは別に加算税がかかる恐れがあるので注意が必要です。

具体的には、事実より少なく申告をしたり(過少申告加算金)、申告をしなかったり(不申告加算金)、税を免れようとした(重加算金)場合に徴収されます。それぞれの割合は以下のとおりです。

内容割合(増差税額に対する)不適用・割合の軽減
過少申告加算金期限内申告について、修正申告・更正があった場合10%
(期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分)15%
・正当な理由がある場合 ⇒不適用
・更正を予知しない修正申告の場合 ⇒不適用
不申告加算金①期限後申告・決定があった場合
②期限後申告・決定について、修正申告・更生があった場合
15%(注2)
(50万円超300万円以下の部分)20%(注2)
(300万円超の部分)30%(注2)
・正当な理由がある場合 ⇒不適用
・期限後1ヶ月以内にされた一定の期限後申告の場合⇒不適用
・更正・決定を予知しない修正申告・期限後申告の場合⇒5%
重加算金仮装・隠蔽があった場合(注1)(期限内に申告をしている場合)35%(注2)
(申告しなかった場合又は期限後に申告した場合)40%(注2)

(注1) 令和7年1月1日以後においては、仮装・隠蔽したところに基づく「更正請求書」を提出した場合も含む。【令和6年度改正】
(注2)過去5年内に、不申告加算金(更正・決定予知によるものに限る。)又は重加算金を課されたことがあるときは、10%加算【平成28年度改正】
上記の場合に加え、前年度及び前々年度分の当該地方税について、以下の場合についても10%加算【令和5年度改正】
 ・不申告加算金(更正・決定予知によるものに限る。)又は重加算金(不申告加算金に代えて徴収されるものに限る。)を課されたことがあるとき
 ・不申告加算金(更正・決定予知によるものに限る。)又は重加算金(不申告加算金に代えて徴収されるものに限る。)の賦課決定をすべきと認めるとき

出典)
国税庁「延滞税について」
総務省「加算金、延滞金、還付加算金」

督促状が送付される

税金を納期限までに支払わない場合、督促状が送付されます。国税は納期限から50日以内、地方税は20日以内に督促状が発布されるのが原則です。督促状が届いても納付しない場合は電話や訪問、文書により催告が行われます。

出典)
国税庁「第1編 第2章 第2節 督促」
羽村市「税金を滞納するとどうなるの?」

財産の差押えが行われる

督促状が届いた後も税金を納付しないと滞納処分が執行され、財産の差押えが行われます。法律の規定に基づき、本人の了解を得ることなく金融機関や勤務先、生命保険会社などに財産調査が可能です。調査の結果、預貯金や生命保険、自動車、不動産、給与などの財産が差し押さえられます。

差し押さえた財産は、預貯金や生命保険、給与などは取立て、自動車や不動産は公売により換価(換金)され、滞納した税金に充当されます。

ローン審査に影響が出る

税金を滞納したからといって、個人信用情報に載ることはありません。しかし、住宅ローンをはじめとするローン審査では、納税証明書の提出を求められることがあります。滞納があると証明書に記載されるため、ローン審査に影響が出る恐れがあります。

税金滞納した場合の解決方法

ここでは、税金を滞納した場合の解決方法を2つ紹介します。

納税相談や納税計画の作成

納期限までに税金を支払えない場合は、国や地方自治体に相談することが大切です。国税は所轄の税務署、地方税は県税事務所や市区町村の窓口で納税相談を受け付けています。事情によっては、納税計画の作成などのサポートを受けられる可能性があります。

分割納付や延滞税の減免申請

税金は納期限までに一括で納めるのが原則ですが、支払いが困難と認められる事情がある場合は分割納付に応じてもらえるかもしれません。

一定の要件を満たす場合は、財産の差押えや換価の猶予、猶予期間中の延滞税の全部または一部免除が認められることもあります。税務署や市区町村などと相談のうえ、可能であれば猶予・減免申請を行いましょう。

出典)国税庁「延滞税の免除」

税金滞納の対策

税金滞納を防ぐには、次のことを心掛けるといいでしょう。

日頃から納税の準備・管理を行う

あらかじめ納期限を把握したうえで、納税資金を準備しておくことが重要です。納期限については、国税庁や地方自治体のホームページで確認できます。納税通知書が届いてから慌てることがないように、積み立てなどを利用して日頃から少しずつ納税資金を準備しておきましょう。

納税の仕組みや義務を理解する

納税の仕組みや義務を理解することも、税金の滞納を防止するための効果的な手段の一つといえます。税金はさまざまな種類があり、税目によって税金の計算方法や納付方法などが異なります。

たとえば、年末調整を受けられる給与所得者を除き、所得税は1年分の税額を計算し、翌年2月16日~3月15日に確定申告・納付をすることになっています。インターネットでの検索や書籍などを活用し、税目ごとに納税義務者や納税方法などを調べてみましょう。

申告や納付の手続きを早めに済ませる

納期限の直前に税金の申告・納付手続きを行うと、想定より時間がかかり、期限までに納税できなくなる恐れがあります。滞納を防ぐためにも、税金の申告・納付の手続きは早めに済ませましょう。

最近では、地方自治体によってクレジットカード納付やQRコードを用いた決済を推奨しており、支払予約なども可能な場合もあります。

出典)さいたま市「市税等をスマートフォン決済で納付できます」

疑問があれば税務署に相談する

税金の申告・納付に関する疑問を放置していると、納期限までに支払えない可能性が高まります。税金について疑問がある場合は、早めに税務署に相談して解決することが大切です。

まとめ

税金を滞納すると、本来の税額とは別に延滞税や加算金がかかったり、預貯金や不動産などの財産が差し押さえられたりする可能性があります。滞納処分を避けるためにも日頃から納税資金を準備するとともに、税金の種類と支払う時期を予め確認し、早めに申告・納税手続きを済ませましょう。


執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

関連キーワード