不動産担保ローンにおける銀行とノンバンクの違い

更新日: / 公開日:2020.06.30

不動産担保ローンで資金調達する場合、銀行とノンバンクのどちらを利用すべきか悩むかもしれません。ノンバンクとは、銀行のように預金業務を行わず、与信業務(融資)に特化した金融機関のことです。銀行は預金業務を行っていることもあり、「なんとなく銀行のほうが安心」と思う人も多いでしょう。しかし、銀行とノンバンクの不動産担保ローンはそれぞれ特徴に違いがあるため、自身の状況に合わせて最適な金融機関を選ぶことが大切です。

この記事では、不動産担保ローンにおける銀行とノンバンクの違いについて解説します。

銀行とノンバンクの違い

不動産担保ローンにおいて、銀行とノンバンクでは「総量規制(そうりょうきせい)」という法律の点で大きく異なります。総量規制とは、会社員等の個人における貸金業者からの借入残高が年収の3分の1を超える場合、新規の借入れをすることができなくなる規制のことです。返済能力を超えた債務で生活が破綻するのを防ぐために、個人向けの貸付には借入金額に上限が設けられています。

不動産を担保とする貸付は総量規制の適用除外となりますが、担保とする不動産が自宅の場合は総量規制の対象となります。一方で、銀行法が適用される銀行は総量規制の対象外であるため、会社員でも銀行を利用すれば、自宅を担保に年収の3分の1を超える範囲でも融資を受けられる可能性があります。

これらのことから、会社員で事業を行っていない個人は、ノンバンクで不動産担保ローンを借りようと思っても年収による制限が付くことがほとんどです。そのため、ノンバンクでは、個人向け不動産担保ローンと称しながらも、事業を営んでいることを前提としていることも珍しくありません。

融資条件で見るそれぞれの特徴

次に、不動産担保ローンの融資条件について、銀行とノンバンクそれぞれの特徴を確認していきましょう。

金利と手数料

銀行の不動産担保ローンは、ノンバンクに比べて比較的金利が低めに設定されていることが多いです。たとえば、資金使途が限定されていない不動産担保フリーローンの場合、ある銀行では最低金利が1.0%前後であるのに対し、あるノンバンクでは2.5%前後となっています。

金利以外にも不動産担保ローンは以下のような手数料がかかります。

  • 事務手数料
  • 繰上返済手数料(解約料)
  • 印紙代
  • 登記費用

手数料については、銀行とノンバンクの違いというよりは、金融機関によって異なります。銀行、ノンバンクにかかわらず、金利と手数料の両方を考慮して、支払う費用面で有利なローンを選ぶことが大切です。無事に返済を終えるには繰り上げ返済を活用することも重要なので、繰り上げ返済の条件や手数料も確認しておきましょう。

融資金額

不動産担保ローンの最低融資金額~融資限度額の幅も、銀行とノンバンクというよりは、金融機関によって異なります。また、希望する金額の融資を受けることが出来るかどうかは、あくまで担保不動産の評価や担保掛目、申込人の与信によって変わります。担保掛目とは、担保不動産の評価額に対して金融機関が設定する比率のことで、担保掛目が大きいほど借りられる金額は大きくなります。一般的に担保掛目は評価額の70%~80%程度に設定されていますが、一部のノンバンクでは80%を超えるところもあります。

金融機関選びは、自分が希望する金額が融資可能額の範囲内にあるかどうかを前提として、担保不動産の評価と掛け目がポイントになります。銀行、ノンバンクにかかわらず、希望する金額を借りられるかどうかを重視するといいでしょう。

融資までの日数

不動産担保ローンでは、銀行よりノンバンクのほうが、融資までの日数が早いことが多いです。あくまでも目安ですが、ノンバンクは最短数日から2週間程度で融資が実行されるのに対し、銀行は2週間から1か月程度かかります。銀行は担保不動産の評価はもちろん、与信も厳しく審査される上、保証会社の保証が入ることが多いため、ノンバンクに比べて日数がかかります。そのため、少しでも早く資金を調達したい場合は、銀行よりノンバンクを利用したほうがいいかもしれません。

そもそも不動産担保ローンは、担保不動産の調査が必要になるため、無担保ローンに比べると融資実行までに時間がかかります。多くの金融機関が「最短〇日」といった表記をしていますが、資金計画の際は保守的に「早くても1週間はかかる」と考えておくといいでしょう。

審査基準(与信と担保不動産)

不動産担保ローンの審査基準については、銀行よりノンバンクのほうが柔軟なことが多く、与信面では、過去に銀行で断られた場合や返済の延滞歴がある場合でも、ノンバンクに相談すれば融資してもらえる可能性があります。

また、担保不動産では「借地権がついている」「建ぺい率や容積率がオーバーしている」など、いわゆる「既存不適格」物件の場合、銀行では断られることがほとんどです。しかし、ノンバンクによっては「借地権者の承諾書を取得する」「担保掛目を下げる」といった対応で担保の適格性を確保することで、融資してもらえる可能性があります。

さらに、不動産担保ローンの資金使途は原則自由ですが、一部の銀行では開業資金や納税資金などが認められないケースもあります。一方、ノンバンクは基本的にこのような制限はなく、開業資金や納税資金にも利用できます。そのため、不動産担保ローンで調達する資金の用途によっては、銀行よりノンバンクのほうがいいかもしれません。

まとめ

ここまで説明してきたように、不動産担保ローンは、銀行とノンバンクでそれぞれ特徴に違いがあります。銀行は金利が比較的低く設定されていますが、融資基準が厳しい場合や、融資実行までに時間がかかることがあます。それに対して、ノンバンクは銀行より金利は高くなる傾向がありますが、融資基準が柔軟で、融資実行までの日数も短いのが特徴です。

これらのことから、なんとなく銀行の方が安心という理由のみで銀行に決めるのではなく、自身の担保不動産の状況や資金使途、金利や手数料などの融資条件を踏まえた上で、どこの金融機関が良いのかを総合的に判断する必要があります。まずは、銀行とノンバンクのどちらかに絞るのではなく、複数の金融機関に相談し、自分に合ったローンを利用することが大切です。


執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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