新耐震基準とは?中古住宅購入時に確認すべき耐震性能のポイント

公開日:2025.10.17

日本は世界でも有数の地震の多い国であり、住宅の「耐震性」は、安心して暮らすために欠かせない重要な要素です。特に中古住宅を購入する際には、その建物がどの耐震基準に基づいて建てられているかを確認することが重要です。

1981年に導入された「新耐震基準」は、震度6強〜7程度の大地震でも建物が倒壊・崩壊しないことを目指した設計基準です。1981年6月以降に建てられた住宅にはこの基準が適用されており、現在でも住宅の安全性を判断するうえで欠かせない指標となっています。

この記事では、「新耐震基準とは何か?」という基本から、中古住宅購入時に確認すべき耐震性能のポイントまで、制度や補助金情報も交えてわかりやすく解説します。

耐震基準の変遷

新耐震基準とは?中古住宅購入時に確認すべき耐震性能のポイント

日本の耐震基準は、過去の地震災害を受けて段階的に強化されてきました。以下の表では、それぞれの耐震基準の違いをわかりやすく整理しています。

耐震基準適用期間設計目安主な特徴
旧耐震基準~1981年5月31日震度5程度で倒壊しない大地震への備えとして不十分
新耐震基準1981年6月1日~震度6強~7程度でも倒壊・崩壊しない地震力を分散する構造設計
2000年基準2000年6月1日~木造住宅の耐震性向上木造住宅が対象。地盤調査の原則義務化、接合部強化 など

※筆者作成

中古住宅を購入する際は、建築確認申請日や築年数だけでなく、どの耐震基準が適用されているかを確認することが、安心・安全な住まい選びの第一歩となります。

「2000年基準」とは

「2000年基準」とは、2000年(平成12年)6月1日の建築基準法改正により導入された、木造住宅の耐震性向上を目的とした設計基準の通称です。

公式な制度名として定義づけられているものではありませんが、住宅業界では広く使われています。地盤調査の原則義務化や接合部の強化など、実質的な耐震性能の向上が図られました。この基準は、1981年に導入された「新耐震基準」をさらに発展させたものであり、特に木造住宅において地震に対する安全性を高める重要な転換点となっています。

過去に起きた地震と耐震基準の関係

耐震基準の違いによって、地震時の被害状況には大きな差が見られます。以下は代表的な地震の事例です。

熊本地震(2016年)

建築年代木造建築物 倒壊率
1981年以前28.2%
1981~2000年8.7%
2000年~2.2%

出典)国土交通省「「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書のポイント

能登半島地震(2024年)

建築年代木造建築物 倒壊・崩壊率
1981年以前19.4%
1981~2000年5.4%
2000年~0.7%

出典)国土交通省「令和6年能登半島地震の建築物構造被害について

熊本地震や能登半島地震では、建物の建築年代によって木造建築物の倒壊率に大きな差が見られました。1981年以前に建てられた旧耐震基準の木造建築物の倒壊率が約20~30%、新耐震基準が適用された木造建築物では10%未満、2000年基準の木造建築物に至っては1%を切る水準でした。

これらの実例からも、耐震基準の違いが住宅の安全性に直結することがわかります。特に中古住宅を選ぶ際には、築年数だけでなく「どの耐震基準が適用されているか」を確認することが重要です。

中古住宅購入時に確認すべき耐震性能のポイント

中古住宅を購入する際は、以下の項目を確認することで、耐震性能を把握することができます。

  • 建築確認申請日(耐震基準の適用日)
  • 耐震診断・インスペクションの実施履歴
  • 耐震等級(長期優良住宅など)
  • 地盤調査の有無
  • 接合部や基礎の施工状況
  • 耐震補強工事の履歴

特にインスペクションは、住宅の劣化状況や構造の安全性を専門家が調査する制度であり、中古住宅購入時に実施することで、耐震性や修繕の必要性を把握することができます。

耐震診断・改修に利用できる補助制度

中古住宅の耐震性に不安がある場合、自治体の補助制度を活用することで、診断や改修にかかる費用を軽減することができます。ここでは一例として、東京都新宿区が実施している「木造住宅の耐震化に関する補助制度」の概要をご紹介します。

東京都新宿区の例(2025年9月現在)

項目上限額対象となる建築物
耐震診断+補強設計助成上限額30万円
※診断と設計がセットの場合
[1]旧耐震基準
昭和56年5月31日以前に着工された木造2階建て以下の住宅、店舗併用住宅
[2]新耐震基準(令和5年度から助成対象)
昭和56年6月1日から平成12年5月31日に着工された木造2階建て以下の在来軸組工法の住宅、店舗併用住宅
耐震改修工事(上部構造評点を1.0以上となるように耐震改修工事を行う場合)助成対象工事費の3/4(上限額300万円)
※障害者等が居住する戸建住宅の場合:助成対象工事費(上限額300万円)

新宿区では、予備耐震診断や詳細耐震診断のための技術者の派遣は無料となっており、その診断結果から該当する改修工事にも助成金があります。

なお、申請には事前の相談や手続きが必要です。気になる物件が制度の対象かどうかは、購入前に早めに確認しておくと安心です。また、補助内容や条件は自治体によって異なるため、購入予定の地域の公式サイトや不動産会社に最新情報を確認するようにしましょう。

出典)新宿区「木造住宅の耐震化

まとめ

中古住宅を選ぶ際は、建築年代と耐震基準の違いを確認することが重要です。1981年以降の新耐震基準、2000年基準以降の木造住宅は地震に強く、倒壊率も低い傾向があります。

耐震診断やインスペクションの履歴、地盤調査の有無、接合部の施工状況などを確認し、自治体の補助制度も活用しながら、安全で快適な住まい選びを進めましょう。

執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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