住宅ローン借り換えシミュレーション | 金利上昇局面における「変動」と「固定」の比較

公開日:2026.05.27

「住宅ローンの金利が上がるかもしれない」というニュースを見て、借り換えのシミュレーションを試した方も多いのではないでしょうか。
住宅ローンの借り換えを検討する際、私たちはつい「月々の支払いや総返済額がいくら減るか」という”数字”に目を奪われがちです。しかし、借り換えには数字には表れないもう一つの重要な論点があります。
それは、将来の金利変動に怯えなくて済むという「安心感」です。

この記事では、金利上昇局面における借り換えを「経済合理性の追求(数字の損得)」と「安心感の確保(見えない不安の解消)」という2つの本質的な軸からシミュレーションし、後悔しないための判断基準を解説します。

借り換えにおける2つの戦略(経済合理性の追求と安心感の確保)

住宅ローン借り換えシミュレーション

変動金利からの住宅ローン借り換えには、以下2つの戦略が考えられます。

  • より低金利の変動金利へ借り換え(経済合理性の追求)
  • 固定金利へ借り換え(安心感の確保)
比較項目変動金利への借り換え
(経済合理性の追求)
固定金利への借り換え
(安心感の確保)
基本特性当面の金利水準を低く抑え、返済額を軽減する将来の金利上昇リスクの影響を受けなくなる
内在するリスク市場金利の上昇に伴い、将来的に返済額が増加するリスク変動金利より高めに設定されるため、総返済額が増加するリスク
適した人経済合理性を最優先し、金利上昇時は繰上げ返済などで対応可能な人支出を確定させ、金利変動による家計への影響をゼロにしたい人
金利上昇時の影響市場金利に連動して返済額が増加する完済まで影響なし

より低金利の変動金利へ借り換え(経済合理性の追求)

変動金利からより低い変動金利への借り換えは、当面の返済額が軽減される経済合理性のある戦略といえます。金利水準が維持される限り、返済額の軽減効果は継続します。

一方で、変動金利は市場金利の変動に連動するため、将来の金利上昇による返済額増加のリスクを伴います。

「5年ルール」や「125%ルール」を採用している金融機関であれば、金利が上昇しても5年間は毎月の返済額が変わりません。また、5年ごとに毎月の返済額が増えるときも、それまでの返済額の1.25倍が上限となります。

ただし、「5年ルール」や「125%ルール」は返済額の増加を繰り延べるものであり、利息そのものを免除するものではありません。急激な金利上昇時には、元金の返済が進みにくくなるだけでなく、本来支払うべき利息が毎月の返済額を上回り「未払利息」が発生する恐れがあります。

その後の金利動向や返済状況次第では、未払利息が解消されないまま繰り越されることもあります。繰上げ返済などで元金を償還しないと、最終返済日まで繰り越される恐れもあるため、毎月の支払いにおける元金と利息の支払内訳を把握しておくと安心です。

固定金利へ借り換え(安心感の確保)

変動金利から固定金利への借り換えは、将来の金利上昇による返済額増加を回避できる安心感を確保する戦略といえます。一般的に、固定金利は変動金利より高めになる傾向にあり、結果として総返済額が増えることもあります。この追加負担は、金利変動による返済額増加の不安を解消するためのコストと整理できます。

返済額が完済まで確定するため、金利上昇局面でも返済額は増加せず家計は安定し、元金が予定どおりに減少します。将来の支出を見据え、安心感の確保を重視する人に向いています。

諸費用を踏まえた借り換え「3つの判断基準」の目安

住宅ローンの借り換えは返済額だけでなく、借り換え時の諸費用も踏まえて検討する必要があります。3つの判断基準について確認しましょう。

無視できない「諸費用」の内訳と実質コスト

住宅ローンの借り換えでは、新たに借り入れるローンの保証料や事務手数料に加え、既存のローンの繰上げ返済手数料などの諸費用がかかります。借り換え効果を正しく判断するには、諸費用を含めてシミュレーションを行い、「実質的にどれだけ負担が減るのか」を確認することが重要です。

借り換え効果が期待できる3つの目安

一般的に、諸費用の負担を踏まえた住宅ローンの借り換え効果が期待できる目安は以下の3つです。以下の条件を満たしているか確認してみましょう。

  • 金利差1.0%以上
  • 住宅ローン残高1,000万円以上
  • 残存返済期間10年以上

※あくまで目安のため、実際には個別のシミュレーションをしたうえで判断することが重要です。

1.金利差:利息削減の直接要因

金利差が大きいほど、元本に対する利息が減少し、諸費用の回収が容易になります。ただし、固定金利へ借り換える場合は、金利差だけでなく、金利上昇リスク回避のコストとしての判断が必要です。

2.ローン残高:削減額の規模要因

同じ金利差でも、残高が大きいほど削減される利息総額は増加します。残高が小さい場合、利息削減額が諸費用を下回り、借り換え効果が限定される傾向があります。

3.残存返済期間:金利差による削減効果の蓄積要因

返済期間が長いほど、利息が発生する期間が長く、金利差による削減効果が累積します。
返済終盤では利息割合が低下するため、借り換えによる効果は小さくなります。

【実例比較】借入残高3,000万円・残り30年での借り換え効果をシミュレーション

ここでは、具体的な条件を設定し、金利変動や借り換えによって返済額がどう変化するのかをシミュレーションします。

<シミュレーションの前提条件>

  • 当初借入金額:3,000万円
  • 当初借入金利:変動1.2%
  • 返済期間:35年
  • 返済方法:元利均等返済・ボーナス払いなし
  • 借入後5年間は金利変動なし
  • 5年経過後(残り30年)に借り換えを実行
  • 借り換え時のローン残高は約2,645万円
  • 借り換えにかかる諸費用:70万円

段階的に1%金利上昇:総返済額約400万円増加

まずは借り換えせずに金利上昇した場合のシミュレーション結果です。

返済期間
(フェーズ)
借り換えなし
(金利1.2%固定の場合)
借り換えなし
(段階的金利上昇シナリオ)
上昇シナリオ
による差額
1〜5年目金利:1.2%
月額:87,510円
金利:1.2%
月額:87,510円
差異なし
6〜10年目金利:1.2%
月額:87,510円
金利:1.7%
月額:93,828円
+6,318円/月
11〜35年目金利:1.2%
月額:87,510円
金利:2.2%
月額:99,387円
+11,877円/月
35年間の
総返済額
約3,675万円約4,070万円+約394万円

出典)知るぽると「借入返済額シミュレーション」にて筆者試算

※本試算は、上記出典をもとに算出した参考値です。実際の金額は、金融機関の審査基準や個々の状況などによって異なります。

上記試算では、金利が上昇すると総返済額は約394万円増加します。金利上昇は利息負担を累積的に押し上げるため、影響は長期にわたり総返済額に反映されます。金利リスクは「月額増加」だけではなく「総返済額の増加」として評価が必要です。金利上昇した場合の総返済額を踏まえ借り換えを検討しましょう。

低金利の変動金利へ借り換えた場合の効果と留意点

次に、より金利の低い変動金利へ借り換えた場合のシミュレーション結果です。

返済期間
(フェーズ)
借り換えなし
(段階的金利上昇シナリオ)
借り換えあり
(より低い変動金利へ)
借り換え
による差額
1〜5年目金利:1.2%
月額:87,510円
金利:1.2%
月額:87,510円
差異なし
6〜10年目金利:1.7%
月額:93,828円
金利:1.0%
月額:85,059円
▲8,769円/月
11〜35年目金利:2.2%
月額:99,387円
金利:1.5%
月額:90,264円
▲9,123円/月
35年間の
総返済額
約4,070万円約3,743万円▲約326万円
借り換え
諸費用
70万円+70万円
実質的な
削減効果
実質負担▲約256万円
(総返済差額▲326万円
+諸費用70万円)

出典)知るぽると「借入返済額シミュレーション」にて筆者試算

※本試算は、上記出典をもとに算出した参考値です。実際の金額は、金融機関の審査基準や個々の状況などによって異なります。

上記の試算では、借り換えることで総返済額は約326万円減少し、借り換え諸費用70万円を含めても約256万円程度負担軽減する結果となります。また、毎月の返済額は約9,000円程度減少します。

ただし、変動金利への借り換えのため、シミュレーション以上の金利上昇により、返済額が増加する恐れもあります。さらに、5年ルール・125%ルールを採用している住宅ローンへ借り換える場合は、繰上げ返済の検討など未払利息のリスクへの備えも必要です。

固定金利(2.0%)へ借り換えた場合の効果と不確実性の回避

最後に固定金利へ借り換えた場合のシミュレーション結果です。

返済期間
(フェーズ)
借り換えなし
(段階的金利上昇シナリオ)
借り換えあり
(固定金利2.0%へ固定)
借り換え
による差額
1〜5年目金利:1.2%
月額:87,510円
金利:1.2%
月額:87,510円
差異なし
6〜10年目金利:1.7%
月額:93,828円
金利:2.0%
月額:97,748円
+3,920円/月
(一時的な負担増)
11〜35年目金利:2.2%
月額:99,387円
金利:2.0%(固定)
月額:97,748円
▲1,639円/月
(後半の負担軽減)
35年間の
総返済額
約4,070万円約4,044万円▲約26万円
借り換え
諸費用
70万円+70万円
実質的な
削減効果
実質負担+約44万円
(総返済差額▲26万円
+諸費用70万円)

出典)知るぽると「借入返済額シミュレーション」にて筆者試算

※本試算は、上記出典をもとに算出した参考値です。実際の金額は、金融機関の審査基準や個々の状況などによって異なります。

上記の試算結果では、借り換えなしの場合と比べて、固定金利へ借り換えることで総返済額は約26万円減少する一方で、借り換え諸費用を含めると約44万円の負担増加となります。ただし、想定以上に市場金利が上昇してもこれ以上返済額が増加しない安心感を確保できます。

シミュレーション通りにいかないケースと留意点

住宅ローンの借り換えを検討する際、いかなる前提に基づくシミュレーションであっても、将来の金利水準を正確に予測することは極めて困難であり、常に「金利予測の不確実性」という大前提のリスクを伴います。

金利は金融政策や物価動向、為替など複数の要因で変動するため、単一の試算結果のみで判断せず、複数のシナリオを想定しておく必要があります。

このマクロな金利変動リスクに加えて、実務上、個別の条件によって「事前のシミュレーション通りに事が進まないケース」として、主に以下の3つの具体的要因が挙げられます。

1.諸費用を含めた「実質コスト」の計算漏れ

事前に行ったシミュレーションほど実質的な負担額軽減効果が得られない場合、諸費用などの計算漏れが考えられます。自分で計算するのが難しい場合は、借り換え先の金融機関に相談しましょう。

2.健康状態変化による「団体信用生命保険(団信)」の再加入不可

借り換え時には、原則として団体信用生命保険(団信)の再加入が必要です。健康状態や既往歴によっては団信の再加入が認められず、借り換えができない恐れがあります。

3.収入状況や転職による「再審査」での条件悪化

借り換え時には、新たな借入先であらためて審査を受ける必要があります。年収や勤続年数、他の借入状況などが再確認されます。転職直後や収入が減少している場合、審査が厳しくなることもあるため注意が必要です。

まとめ

住宅ローンの借り換えには、「経済合理性の追求」だけでなく「安心感の確保」の視点も考える必要があります。どちらを重視するかを明確にし、諸費用を含めてシミュレーションを行うことが重要です。

また、返済額軽減効果だけでなく、再審査や団信加入の可否も含めて、借り換えを実行すべきか冷静に判断しましょう。ご自身の状況に合わせた最適なプランを立てるために、金融機関の担当者や不動産の専門家に一度相談してみることをおすすめします。

執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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