フラット35で住宅ローンを組んだ人の中には、返済中に手元資金が増えたことで、繰り上げ返済を検討する方もいるのではないでしょうか。手元資金に余裕ができたタイミングで繰り上げ返済を検討するのは自然な流れですが、実際には得するケースもあれば、損するケースもあるため、慎重な判断が求められます。 この記事では、フラット35の繰り上げ返済をする前に確認すべき重要なポイントをわかりやすく解説します。 そもそも住宅ローンの繰り上げ返済とは 住宅ローンの繰り上げ返済とは、毎月の返済とは別に借入額の一部を返済する方法です。繰り上げ返済は全て元金に充てられるため、減少した分の元金に対する支払利息がなくなり、結果として住宅ローンの総返済額を抑えられます。 繰り上げ返済の方法は以下2つです。 期間短縮型:返済期間を短縮する方法 返済額軽減型:毎月の返済額を軽減する方法 総返済額を抑える効果がより高いのは期間短縮型です。どちらの方法を選択しても、繰り上げ返済の金額が大きく、繰り上げ返済をした時期が早いほど得られる効果は高くなります。 住宅ローンの総返済額を少しでも減らしたい場合は期間短縮型、毎月の返済額を減らしたい場合は返済額軽減型を選ぶと良いでしょう。 繰り上げ返済のメリット 繰り上げ返済を行うことで、住宅ローンの総返済額を減らすことができます。特に、返済初期にまとまった金額を返済すると、より利息の軽減効果が大きくなり、場合によっては100万円以上の差が生じることもあります。また、返済期間を短縮することで、早期完済による安心感を得られる点もメリットのひとつです。 繰り上げ返済の効果は、金額が大きいほど、そして早い時期に行うほど高くなります。事前にシミュレーションツールを活用して、どれくらい得になるかを確認しておくと安心です。 繰り上げ返済のデメリット 一方で、繰り上げ返済には手元資金が減るというデメリットがあります。生活費や急な出費に備える余裕がなくなると、病気やケガ、退職など予期せぬ事態に対応できなくなる恐れがあります。 繰り上げ返済を検討する際は、無理のない範囲で行うことが大切です。生活資金や予備費を十分に確保したうえで判断するようにしましょう。 フラット35の繰り上げ返済の特徴 フラット35では、繰り上げ返済時の手数料が原則としてかかりません。これは、民間の住宅ローンと比べて大きなメリットのひとつです。ただし、フラット35を「保証型」で利用している場合は、金融機関によって手数料が発生することがあります。契約形態によって条件が異なるため、事前に確認しておくことが重要です。 関連記事はこちらフラット35の買取型・保証型の違いを徹底比較!どっちがいい? フラット35の繰り上げ返済の流れ 繰り上げ返済を希望する場合は、返済希望日の1か月前までに金融機関へ申し出る必要があります。その後、指定された期日までに必要書類を提出し、手続きが完了すると、予定日に繰り上げ返済が実行されます。 また、フラット35の「買取型」を利用している場合は、住宅金融支援機構が提供するWebサービス「住・MyNote」を使って、繰り上げ返済の手続きをオンラインで完結させることも可能です。事前登録が必要ですが、窓口に出向くことなく申し込みができるため、利便性の高い方法です。ただし、「保証型」で契約している場合は、「住・MyNote」は利用できません。 フラット35の繰り上げ返済をする前に確認したい3つの判断ポイント 繰り上げ返済をした方が良いかどうかは、個人の考え方や状況によって異なります。これまでに紹介したメリットとデメリットを踏まえたうえで、以下の3つのポイントを確認しながら、繰り上げ返済をするかどうかを判断していきましょう。 ポイント①:住宅ローン控除 住宅ローン控除とは、住宅ローンの年末残高の0.7%を所得税(一部は翌年の住民税)から最大13年間控除できる制度です。控除期間中に繰り上げ返済を行うと、年末残高が減るため、控除額が少なくなる恐れがあります。 では、控除期間が終了した13年目以降に繰り上げ返済をすれば良いのかというと、必ずしもそうとは限りません。以下では、4,000万円を35年固定金利で借り入れた場合に、「5年後に400万円を繰り上げ返済するケース」と「15年後に同額を繰り上げ返済するケース」を比較したシミュレーション結果を紹介します。 金利0.5%の住宅ローンに400万円分繰り上げ返済した場合※1 5年後 15年後 A.繰り上げ返済による利息軽減額 607,226円 384,534円 B.住宅ローン控除額※2 2,709,688円 2,966,799円 A+B 3,316,914円 3,351,333円 ※1 借り入れは1月、繰り上げ返済は12月に行うと仮定してシミュレーションしています。 ※2 各年12月時点の残高に0.7%を乗算した金額の総和を、住宅ローン控除額としています。 まず、金利が低い場合は、5年目(控除期間中)と15年後(控除期間終了後)にほとんど差がないことから、手元資金を残しておくという観点で、15年後に繰り上げ返済をした方が良いと言えるでしょう。 金利2.0%の住宅ローンに400万円分繰り上げ返済した場合※1 5年後 15年後 A.繰り上げ返済による利息軽減額 2,987,026円 1,766,093円 B.住宅ローン控除額※2 2,822,276円 3,095,609円 A+B 5,809,302円 4,861,702円 ※1 借り入れは1月、繰り上げ返済は12月に行うと仮定してシミュレーションしています。 ※2 各年12月時点の残高に0.7%を乗算した金額の総和を、住宅ローン控除額としています。 一方で、金利が高い場合は、15年後(控除期間終了後)よりも5年目(控除期間中)に繰り上げ返済をした方が有利なことが分かります。 このように、借入額が同じでも、住宅ローンの金利によっては、控除期間中に繰り上げ返済をした方が有利な場合と、控除期間終了後に行った方が有利な場合があります。 金銭的にどちらが効果的かを判断するには、住宅ローン控除の影響を含めたシミュレーションを行うことが重要です。加えて、繰り上げ返済手数料の有無や、所得税と住民税の合計額から控除を十分に活用できるかどうかも、併せて確認しておきましょう。 ポイント②:団体信用生命保険 団体信用生命保険(団信)は、住宅ローンの契約者が死亡または高度障害状態になった場合に、保険金によってローン残高が完済される仕組みです。 団信を生命保険の一種と捉えると、一般的な生命保険と比べて、かなり低い保険料で保障を受けられているとも言えます。繰り上げ返済をせずにローン残高を残しておけば、万が一の際には、ローンが完済されるだけでなく、手元資金を家族に残すことも可能です。 ただし、一般的な生命保険は、住宅ローンの返済以外にも、生活費や教育費など、幅広い目的で加入するものです。目的が異なるため、団信と一般の生命保険を単純に比較することは適切ではないとも考えられます。 団信と生命保険は、それぞれの役割を理解したうえで、併用も含めて検討することが重要です。実際に万が一のことが起きるかどうかは誰にも分かりませんが、繰り上げ返済によって保障の範囲が狭まる恐れがあることは、判断材料のひとつとして押さえておくべきでしょう。 関連記事はこちらフラット35の新機構団信と一般団信の違いとは?保障内容と3大疾病保障について解説 ポイント③:資産運用 手元資金を繰り上げ返済に充てるのではなく、資産運用に回すという選択肢もあります。資産運用によって、繰り上げ返済による利息軽減効果以上のリターンを得ることを目指す考え方です。2024年から新NISAがスタートし、積立投資を始めやすい環境が整っていることも追い風となっています。 ただし、投資には元本割れのリスクがあり、必ずしも利益が得られるとは限りません。住宅ローンの金利よりも高い利回りで安定的に運用できるのであれば、繰り上げ返済よりも資産運用の方が有利になる可能性があります。しかし、金利が高いほどそれを上回るリターンを得るのは難しくなり、リスクも大きくなる点には注意が必要です。 リスクを受け入れて資産運用によるリターンを追求するか、確実に利息を減らせる繰り上げ返済を選ぶかは、個人のリスク許容度や価値観によって異なります。どちらが正しいという答えはなく、自分に合った方法を選ぶことが重要です。 まとめ 繰り上げ返済をした方がいいかどうかは、金銭的な損得だけでなく、個人の価値観やライフスタイルによっても異なります。損得を重視する場合は、「住宅ローン控除」「団信(団体信用生命保険)」「資産運用」の3つのポイントを確認し、シミュレーションを行ったうえで判断することが重要です。 一方で、「借金が残っていると不安だから、早く返済して安心したい」といった気持ちを優先するなら、金銭的なメリットにこだわりすぎず、自分の意思を尊重して繰り上げ返済を選ぶのもひとつの判断です。 ただし、病気やケガ、退職などで急に資金が必要になる恐れもあるため、繰り上げ返済をする場合は無理のない範囲で行い、生活費や予備資金など、一定の手元資金を残しておくことが大切です。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 住宅ローンの借り換えはなぜ行った?実態調査から見えたこと 住宅ローンの返済を続けていると、毎月の返済を軽減できないかを考えることもあるでしょう。住宅ローンの借り換えを行うことで返済負担を減らせる可能性もありますが、タイミングを見誤ると、思ったより効...
住宅を購入する際にペアローンを組むことで、夫婦のどちらか一方が単独で住宅ローンを組むより借入額を増やせるなどのメリットがあります。しかし、ペアローンを組んだ夫婦が離婚する場合、自宅の扱いや住宅ローンの返済をどうするのかを決めなければなりません。 この記事では、ペアローンを組んだ夫婦が離婚する場合の問題点と対処法を詳しく解説します。 そもそもペアローンとは? ペアローンとは、一定の収入がある同居親族と一緒にそれぞれが主たる債務者として、同一物件の購入を目的に住宅ローンを組む方法です。夫婦の場合、夫と妻がそれぞれ住宅ローンを組み、それぞれが相手の連帯保証人となります。 2人の借入額を合わせることによって、夫婦のどちらか一方が単独で住宅ローンを組むより高額の住宅を購入できます。その他にも以下のようなメリットがあります。 夫婦の双方に住宅ローン控除が適用される 夫婦がそれぞれ異なる条件で住宅ローンを組める(固定金利と変動金利を分けるなど) 一方で、ペアローンには以下のようなデメリットもあります。 住宅ローンを2つ組むので諸費用も2倍になる 夫婦のどちらかの収入が減少すると返済が苦しくなる なお、ペアローンと似た方法として、夫婦の収入を合算した金額をもとに住宅ローンを借り入れる「収入合算」という方法があります。こちらは、夫婦のどちらか一方が連帯保証人となって1つの住宅ローンを組む点で異なります。 ペアローンを組んだのに離婚することになったら? ペアローンを組んだ夫婦が離婚する場合、何もしなければ、それぞれが今までどおり返済を続けることになります。しかし、今後の2人の生活を考えると、以下の2点について検討したほうがいいでしょう。 自宅をどうするか 債務をどうするか まずは、離婚後はどちらも自宅に住まないのか、あるいはどちらか一方が住み続けるのかを話し合って決めましょう。そのうえで、状況に応じて債務をどうするか考える必要があります。 自宅にどちらも住まない場合の対処法 離婚後、自宅にどちらも住まない場合は、「売却する」「賃貸に出す」の2つの選択肢が考えられます。どちらを選ぶ場合も、双方の合意が必要です。 自宅を売却する場合 自宅を売却する場合は、売却代金で2人の債務を返済することになります。売却価格が債務を上回る「アンダーローン」であれば、売却代金で2人の債務を完済できます。完済後に残った売却益については、話し合って適切に分ければきれいに精算できるでしょう。 しかし、売却価格が債務を下回る「オーバーローン」の場合、売却代金でローンを完済することができません。この場合だと、そもそも債権者である金融機関に自宅売却の承諾を得られない恐れがあります。また、もし自宅を売却できたとしても、引き続き返済を続けなければなりません。 自宅を賃貸に出す場合 離婚後に住宅を賃貸に出す場合は、賃料収入などで引き続きローンを返済していくことになります。 ただし、住宅ローンは資金使途が住宅購入や借り換えに限られるため、賃貸用不動産に対応している事業用ローンへの借り換えが必要です。一般的に事業用ローンは住宅ローンより金利が高く、住宅ローン控除の適用外となります。 離婚後も不動産を共有したまま賃貸に出す場合、退去時の入居者募集や住宅の修繕はどうするかなど、協力して賃貸経営をしなければなりません。良好な関係を維持できず、定期的にコミュニケーションがとれない場合は難しいでしょう。 賃貸に出す場合は、夫婦の一方が賃貸用不動産も借りられるローン(単独債務)に借り換えるのが現実的といえます。 自宅にどちらかが住み続ける場合の対処法 離婚後に夫婦のどちらかが自宅に住み続ける場合は、「引き続き双方で返済を続ける」「一方が債務を引き受ける」の2つの選択肢があります。 引き続き双方で返済を続ける場合は、一方が住まない家のためにローンを払い続けることになります。出ていく側が、子どもの養育費や慰謝料の代わりにローン返済を続ける場合もあるでしょう。 しかし、基本的には住み続ける側が出ていく側の債務を引き受け、返済を続けるのが自然な流れといえます。ただし、「一方が債務を引き受けても滞りなく返済が行われる」と判断されなければ、金融機関の承諾は得られません。状況によっては、金融機関から断られる恐れもあります。 まずは金融機関と相談する必要がありますが、必ず許可されるとは限らないことを理解しておきましょう。 リースバックという選択肢 ペアローンを組んだのに離婚する場合、夫婦の一方は「自宅に住み続けたい」、もう一方は「住んでいない家の住宅ローンをなくしたい」という要望もあるでしょう。住み続けたい側が出ていく側の債務を引き受けるのが難しいときは、リースバックで問題が解消できる可能性があります。 リースバックを利用すれば、自宅を売った売却代金でペアローンを完済しつつ、住み続けたい側がリースバック運営会社と賃貸借契約を結んでその家に住み続けることが可能です。 ただし、リースバックもアンダーローンにならないと、サービスを利用できません。売却価格はリースバック運営会社によって異なるので、利用を検討する場合は、仮査定を依頼するといいでしょう。 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みからメリット・デメリットまで徹底解説 まとめ ペアローンを組んだ夫婦が離婚する場合、何も対応しなければ、どちらもそのまま返済を続けなくてはなりません。まずはどちらも自宅に住まないのか、どちらか一方が住み続けるのかを決めたうえで、債務について検討することが大切です。 住み続けたい側が一方の債務を引き受けるのが難しい場合は、リースバックで問題を解消できないか検討してみましょう。 さっそく仮査定を申し込む SBIスマイルのリースバックをご紹介します。仮査定は無料で受け付けています。※SBIスマイルのHPに遷移します。 さっそく仮査定を申し込む SBIスマイルのリースバックをご紹介します。仮査定は無料で受け付けています。 ※SBIスマイルのHPに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 リースバックの契約までの流れと必要書類、注意点を解説 リースバックを検討するにあたり、どのように契約が進んでいくのか不安に思う人もいるのではないでしょうか。リースバックの契約が終わってから後悔することが無いように、契約がどのような流れで進み、何...
住宅ローンを変動金利型で組んだ場合、金利が上昇し、返済額が増えるのではないか、と不安に感じるかもしれません。 しかし、多くの金融機関では、金利が上昇しても急に返済額が変わらない「5年ルール」や「125%ルール」が採用されています。住宅ローンを変動金利型で組む場合は、これらのルールや仕組みを理解しておくことが重要です。 この記事では、住宅ローンの5年ルール、125%ルールの概要やメリットとデメリットについて詳しく解説します。 5年ルールとは? 5年ルールとは、金利が上昇しても5年間は住宅ローンの返済額が変わらない措置です。住宅ローンの変動金利型は、通常半年ごとに適用金利が見直されるので、5年ルールがなければ、金利が変動するたびに半年単位で毎月の返済額が変わります。しかし、5年ルールによって、返済額が変更されるのは借り入れから6年目、11年目、16年目、のように5年ごととなります。 仮に変動金利の上昇が起こったとしても、返済額が急に増えないことが5年ルールのメリットといえるでしょう。5年間は毎月の返済額が一定のため、急に返済額が増えて家計が苦しくなることを避けられます。 一方で、5年ルールは、返済額が変わらなくても毎月の返済額に占める元金と利息の内訳が見直されています。つまり、金利が上昇すると返済額に占める利息の割合が増え、元金が減るペースが遅くなってしまうのがデメリットです。 加えて、金利が大幅に上昇すると、利息が毎月の返済額を上回って「未払利息」が発生する恐れもあります。もし未払利息が発生した場合、通常の返済とは別に支払いをしない限り、最終返済日まで繰り越しとなります。気づかないうちに未払利息が増加し、元金の返済が全く進まなくなるので注意が必要です。 出典)一般社団法人全国銀行協会「未払い利息が発生する仕組み」 未払い利息の計算方法は、金融機関によって異なるので、自身が組んでいる住宅ローンでは、どのように計算されるのか確認しておきましょう。 125%ルールとは? 125%ルールとは、金利が上昇しても返済額が125%を超えて増加しないようにする措置です。5年ルールによって5年ごとに返済額が増えるときは、それまでの返済額の1.25倍が上限となります。なお、金利が下がったときは、下限なく返済額は減ります。 125%のルールのメリットは、5年ルールでは防げない返済額の大幅な負担増を回避できることです。ただし、返済額が1.25倍に増えるのは金利が大きく上昇した場合に限られます。たとえば、借入額5,000万円、金利0.5%、借入期間35年で元利均等返済の条件で毎月の返済額が1.25倍に増える事例を考えてみましょう。 上述の条件で毎月の返済額をシミュレーションすると、毎月の返済額は129,792円となります。この返済額に125%ルールが適用されるとき、毎月の返済額は162,240円です。実際に金利が変動する場合を考えると、計算が複雑であるため、返済開始時の金利が何%のときに、この返済額になるかを考えてみましょう。 借入額5,000万円、借入期間35年、毎月の返済額は162,240円でシミュレーションすると、適用金利は1.867%となります。この結果からわかるように、125%ルールは金利が大幅に増加しないと適用されず、昨今の市中金利からは考えにくいほど大きな変動がないと、125%には当たらないことがわかります。 5年ルールや125%ルールの注意点 5年ルールと125%ルールは金利変動リスク対策ではない 5年ルールと125%ルールがあれば、金利が上昇しても返済額が急に増えることはありません。しかし、実際は利息の支払いが免除されるわけではなく、支払いが先送りされているだけです。 もし「5年ルールや125%ルールがあるから金利が上昇しても大丈夫」と考えているのであれば、それは誤りです。住宅ローンの金利変動リスクを完全に排除したい場合は、固定金利型で借り入れたほうが良いでしょう。 なお、住宅ローンの固定期間選択型は、固定期間が終了して変動金利へ切り替わっても、一般的には5年ルールや125%ルールは適用されないので注意が必要です。加えて、固定期間終了時点の金利で返済額が再計算されるため、金利が上昇すると返済額が大幅に増える恐れがあります。 5年ルールや125%ルールを採用していない金融機関もある 金融機関によっては5年ルールや125%ルールを採用していない場合もあります。その場合、通常は半年ごとに金利が見直され、その都度返済額が変わります。この場合は金利が大幅に上昇しても利息を先送りせずに支払うため、返済期間の終盤で未払利息の負担が生じることはありません。 5年ルールと125%ルールは一時的な家計の負担軽減にはつながりますが、利払いの支払いを先送りにしているだけに過ぎないということを念頭に置いておく必要があります。 まとめ 住宅ローンの変動金利型は、多くの金融機関で5年ルールと125%ルールが採用されているため、金利が大幅に上昇しても急に返済額が増えることはありません。 ただし、あくまでも利息の支払いが先送りされるだけで、返済総額が減るわけではないので注意が必要です。むしろ未払利息が発生し、返済期間の終盤で大きな負担が生じる恐れがあります。 住宅ローンを変動金利型で組む場合は、予め金利が上昇した場合の返済額を試算し、家計への負担を考慮しながら、その他の条件についても比較検討することが大切です。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 住宅ローンを比較する5つのポイント マイホームは、住宅ローンを利用して購入するのが一般的です。さまざまな金融機関が住宅ローンを扱っているので、どのように選べばよいかわからないのではないでしょうか。 自分に合った住宅ローンを選ぶ...
債務超過になると、すぐに倒産することはなくても、さまざまなデメリットがあるため、早期に対策を講じる必要があります。債務超過に陥った場合、経営者はどのように対処すればよいのでしょうか。 この記事では、債務超過のデメリットや解消方法、中小企業が利用できる支援策について紹介します。 債務超過とは 債務超過とは、貸借対照表の負債が資産を上回り、純資産がマイナスの財政状態のことです。このような状態では、仮に会社を清算し保有資産を全て売却したとしても、借入金などが返済できず、負債が残ってしまいます。 出典)J-Net21「わが社の帳簿が債務超過の状態になってしまいました。解消するにはどうすればよいでしょうか?」 債務超過だからと言って、必ずしも倒産するわけではありませんが、さまざまなデメリットがあり、できるだけ早期に解消することが望ましいでしょう。 債務超過のデメリット 債務超過に陥ると、以下のようなデメリットがあります。 仕入先や販売先からの信用が低下する 銀行からの新規借り入れが難しくなる 銀行から既存借り入れの金利引き上げ、早期返済を要求される恐れがある 債務超過は企業の財政状態が悪化していることを意味するため、仕入先や販売先から取引を打ち切られる恐れがあります。 銀行からの信用度が低下するのも重要な問題です。返済能力が乏しいと判断されると、新規借り入れが困難になるうえに、借入金の早期返済を求められることもあります。 債務超過に陥っても、現金預金や売掛金などの流動資産に余裕があり、当面の支払いに対応できるならすぐに倒産することはないでしょう。しかし、上述のデメリットによって資金繰りがさらに苦しくなる恐れもあります。 債務超過を解消する方法 債務超過を解消するには、長期的な視点では経営体質を改善し、毎期利益が出るように体制を整えるしかありません。一方で、短期的な視点では以下のような解消方法があります。 増資を行う 代表者や役員からの借入金を資本金に振り替える 遊休資産を売却して借入金を返済する 増資とは、投資家から出資を受けて資本金を増加させることです。外部から出資を募る場合は経営権に影響し、手続き費用も発生する点に注意が必要です。 代表者や役員からの借入金を資本金に振り替える方法は、債務超過の解消に加えて、借入金の返済と利息の支払いが不要になるのがメリットです。一方で、役員からの借入金を資本金に振り替える場合、その役員の経営への影響力が強まる恐れもあります。 利益を生み出さない遊休資産を売却し、その売却代金で負債を返済すれば、債務超過の解消が期待できるでしょう。資産の圧縮によって総資本経常利益率などの指標が改善し、銀行からの信用度が上がる可能性もあります。 これらの方法は専門知識が求められるため、税理士などの専門家に相談したうえで実行するか判断しましょう。 債務超過でも活用できる中小企業支援策 債務超過が原因で銀行から融資を受けられず、資金繰りが苦しい中小企業向けに、次のような支援策が用意されています。 政府系金融機関の融資制度 セーフティネット貸付や事業再生支援資金など、事業再生支援を目的とした様々な融資制度が用意されています。債務超過であっても、一時的な運転資金や経営再建資金、災害復旧資金などに利用できる融資を受けられるかもしれません。 ただし、それぞれ利用できる融資制度や諸条件が異なるため、まずは各機関の窓口で相談してみましょう。 商工組合中央金庫の事業再生・経営改善制度 地域金融機関や中小企業活性化協議会等の事業再生支援機関、顧問税理士などの外部機関と連携し、過剰債務の対応や経営危機への改善支援があります。事業再生に向けた支援プログラムを作成することで、資金繰りのサポートが受けられる可能性があります。 出典)商工組合中央金庫「事業再生・経営改善」 地方自治体の融資制度 都道府県や市区町村が国の中小企業支援策と連動し、各自治体が独自に運用している融資制度です。地方自治体の制度融資では、債務超過であっても運転資金などの融資を受けられる可能性があります。まずは自治体の担当窓口に相談してみましょう。 中小企業等経営強化法の経営革新支援 中小企業等経営強化法に基づき、低利融資制度などの支援措置を利用できる可能性があります。支援措置を受けるには、具体的な数値目標を含んだ経営革新計画を作成し、都道府県(または国)の承認を得なくてはなりません。 ハードルは高いかもしれませんが、経営革新計画を立てることで課題が明確になり、経営体質の改善効果が期待できるでしょう。 出典)中小企業庁「経営サポート「経営革新支援」」 関連記事はこちら認定経営革新等支援機関とは?利用するメリット・デメリットを解説 都道府県の中小企業活性化協議会 中小企業活性化協議会とは、すべての都道府県に設置されている中小企業の支援機関です。商工会議所などが運営しており、収益力や財務の改善、保証債務の整理などについて相談できます。債務超過の解消を目的とした再生計画の作成支援を受けることも可能です。 出典)中小企業庁「中小企業活性化協議会連絡先一覧」 商工会議所の経営安定特別相談室 経営安定特別相談室とは、破産や倒産の不安を抱えている中小企業向けの相談窓口です。全国の主要商工会議所や都道府県の商工会連合会で設置されています。資金繰りが厳しいなどの経営難に直面している中小企業は、弁護士などの専門家に無料で相談できます。 出典)中小企業庁「経営安定特別相談事業」 まとめ 債務超過になったからといって、必ずしも倒産するとは限りません。しかし、取引先や銀行からの信用度が下がるため、売上や利益が減少したり、資金調達に支障が出たりする恐れがあります。 資金繰りの悪化による倒産を防ぐためにも、国や自治体の支援をうまく活用しながら、なるべく早く債務超過を解消するための対策を講じましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 赤字になったら確定申告は必要か? 個人事業主の中には、「事業が赤字で税金を払わなくてもいいから、確定申告は必要ないだろう」、「赤字申告だと融資を受けられなくなるから、確定申告をするのをやめよう」などと考えている方がいらっしゃ...
ローンの元金据置は、一般的な住宅ローンなどでは用いられない返済方式の一つです。毎月の返済額の軽減が期待できる一方で、総返済額が増えるリスクもあるため、仕組みを理解したうえで利用することが大切です。 この記事では、元金据置の仕組みやメリットとデメリット、利用事例について詳しく解説します。 ローンの元金据置とは ローンの元金据置とは、一定期間元金を据え置き、その間利息のみを支払う返済方法です。元利均等返済などの返済方法に特約という形で使われることもあります。 代表的な返済方法である「元利均等返済」や「元金均等返済」は毎月元金を支払うのに対し、「元金据置返済」は、所定の期間、元金を据え置いたまま利息のみを支払う返済方法です。元金据置期間には上限が定められており、据置期間経過後は元利返済が始まります。 例えば、「返済期間10年のうち、元金据置期間4年」の条件でローンを組む場合、借入当初4年間は利息のみを返済し、5年目以降は元金と利息を返済することになります。 元金据置のメリット ローンの元金据置をすると、毎月の返済負担が一定期間軽減されるのがメリットです。元金据置期間は元金の支払いが不要のため、毎月の返済負担を軽減することができます。 【借入金額500万円、返済期間10年、固定金利2.0%、元利均等返済の場合】 返済方法 毎月の返済額 元金据置期間なし46,007円 元金据置期間4年4年目まで:8,333円5年目以降:73,752円 出典)日本政策金融公庫「事業資金用 返済シミュレーション」で試算 子供の教育費など、まとまった資金が必要となることが明確な期間を元金据置期間とすることで、無理なくローンを利用できます。 元金据置のデメリット ローンの元金据置は、総返済額が増えてしまうのがデメリットです。元金据置期間は元金が償還されないため、利息総額が増加し、結果として総返済額も増加します。また、元金据置期間がない場合と比べて、据置期間経過後は毎月の返済額が増える点にも注意が必要です。 【借入金額500万円、返済期間10年、固定金利2.0%、元利均等返済の場合】 返済方法 利息総額 返済総額 元金据置期間なし520,805円 5,520,805円 元金据置期間4年710,145円 5,710,145円 出典)日本政策金融公庫「事業資金用 返済シミュレーション」で試算 上記シミュレーションの場合、4年間の元金据置によって返済総額が189,340円増えています。このように、返済期間全体で見たときにはかえって返済負担が重くなる点に注意しましょう。 元金据置の利用事例 元金据置の活用事例をローンの種別ごとに3つ紹介します。 住宅ローン 住宅ローンにおいても、元金据置返済が有効と考えられる場面があります。たとえば、一時的に収入が減少してしまった場合や、注文住宅で建物が完成するまでの土地先行決済での活用が考えられます。 一時的に収入が減少してしまった際の住宅ローン返済 突発的な災害や病気によって、一時的に収入が減少してしまったとき、住宅ローンの返済が難しくなることもあるでしょう。そのような時、住宅ローンを元金据置にできれば、生活を立て直すまでの当面の支払いを抑えられます。 一方で、住宅ローンで元金据置期間を設定するためには、金融機関の承諾が必要です。住宅ローン返済が難しくなった原因や返済が正常化する合理的な理由があれば、金融機関が応じてくれるかもしれませんが、必ず利用できるわけではないので、詳細は住宅ローンを組んでいる金融機関に相談しましょう。 注文住宅で建物が完成するまでの住宅ローン返済 注文住宅などで土地を購入してから、建物を建築する場合、現居の費用と新居のための土地の返済で支払いが二重になってしまいます。そのような時に、新居のための土地の返済を元金措置とすることで、毎月の返済負担を抑えられます。 ただし、土地に対する融資が元金措置にできるかどうかは、新居の住宅ローンを提供する金融機関の商品によって異なります。詳しくは、住宅ローンを組む際に、金融機関に相談してみましょう。 教育ローン 大学や専門学校の入学金、授業料などの支払いに教育ローンを利用する際にも、元金措置が活用できます。在学中は授業料だけでなく、一人暮らしの際の住居費や、生活費などの出費がかさむため、元金据置を利用して毎月の返済額を抑えることで、ゆとりをもって返済を進めることができます。 不動産投資ローン 不動産投資ローンでは、短期的な売却を想定して元金据置返済を利用する方法があります。収益用不動産を保有期間5年以内に売却すると「短期譲渡所得」に該当し、「長期譲渡所得(保有期間5年超)」に比べて高い税率が適用されます。 5年以上保有した後の売却を想定し、保有期間は元金据置にして返済負担を抑えることで、キャッシュフローの向上が可能です。そして、保有期間が5年を超えた後に売却すれば、不動産売却時の税金対策としても活用できます。 関連記事はこちら不動産の購入・売却にかかる税金をそれぞれ解説 まとめ ローンの元金据置は所定の期間、利息のみを支払うため毎月の返済負担の軽減が期待できます。教育ローンは子どもの在学中、住宅ローンは住み替えが決まるまで元金据置にすれば、ゆとりをもって返済を進められるでしょう。 ただし、元金を据え置くと総返済額は増えてしまうため、仕組みを理解したうえで利用することが大切です。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 コロナ禍が追加!自然災害債務整理ガイドラインとは? コロナ禍による収入減で、住宅ローンの返済に苦しむ人も増えているようです。住宅ローンの返済が厳しくなったときにできることは何があるでしょう? また、2020年12月から「自然災害債務整理ガイド...
土地や中古戸建ての物件情報を調べていると、「セットバック」という言葉を見かけるかもしれません。また、持ち家を建て替える際に、敷地と道路の状況によってはセットバックが必要になることもあります。 この記事では、セットバックの概要や2項道路と接道義務の意味、注意点などについて詳しく解説します。 セットバックとは セットバックとは、土地と前面道路の境界線を後退させることです。 住宅には、「建築基準法で定められている道路に敷地が2m以上接していなければならない」という接道義務があります。「要セットバック」の土地や中古住宅は、この接道義務に従って敷地と道路の境界線を後退させなくてはなりません。 建築基準法で定められている道路とは、幅が4m以上(特定行政庁の指定で6m以上となる場合あり)の道路を指します。防災対策として、緊急車両が通れるようにすることが目的です。 道路の幅が4m未満の場合、建築基準法の接道義務を満たしていないことになります。ただし、以下の道路については、幅が4m未満であっても建築基準法上の道路として認められます。 建築基準法の施行前に建築物があった道路 特定行政庁の指定を受けている道路 出典)e-Gov法令検索「建築基準法」第四十二条2項 このような道路は「2項道路」や「みなし道路」と呼ばれており、既に建っている住宅はそのままでも問題ありません。ただし、再建築や増築はできず、建て替えの際はセットバックをする必要があります。 セットバックのイメージ 以下の2つの場合でセットバックをしなければならない距離が異なります。 向かい側にも建物などがある場合 向かい側に川などがある場合 それぞれ詳しく見ていきましょう。 向かい側にも建物などがある場合 ※編集者作成 向かい側にも建物がある場合は、それぞれの土地で半分ずつセットバックします。例えば、前面道路の幅が3mの場合、それぞれ0.5mずつセットバックが必要です。これにより、4mの道路幅を確保できます。 向かい側に川などがある場合 ※編集者作成 向かい側に川などがある場合は、片側がセットバックして4m以上の道路幅を確保しなくてはなりません。前面道路の幅が3mなら、1mのセットバックが必要です。 つまり、向かい側が道路に対して後退できるかどうかによって、セットバックしなければならない距離が算出されます。 セットバックした部分の土地の扱い 要セットバックの土地は、セットバックする部分も含めて購入しなくてはなりません。塀や門などがある場合は撤去費用がかかる可能性もあるため、購入前に確認しておくことが大切です。 セットバックした部分には次のような選択肢があります。 自治体に寄付もしくは買い取ってもらう 所有権を維持したまま私道とする 自治体に寄付するのが一般的ですが、買い取ってもらえるケースもあるようです。また、買取ではなく奨励金や助成金が交付される自治体もあります。奨励金や助成金は申請が必要になるため、交付を受けられる場合は忘れずに手続きを行いましょう。 なお、所有権を維持したままであっても、セットバック部分を自由に使っていいわけではありません。基本的に土地所有者が維持管理を行うことになりますが、駐車場としたり、植木鉢などを置いたりすることはできないため注意が必要です。 固定資産税について セットバック部分の土地は、自治体に申告をすることによって固定資産税や都市計画税が非課税となります。自治体に非課税となることを申告しないと、セットバック部分にも固定資産税がかかってしまうので忘れずに手続きを行いましょう。 建蔽率・容積率の計算 セットバックした部分の土地は、容積率や建蔽率の計算に用いる敷地面積に含まれません。セットバック部分には建物はもちろん、塀や門も建てられず、駐車場として利用することもできなくなります。 セットバックが必要な土地を購入する場合、見た目が広くても、実際に使える敷地は狭くなってしまう恐れがあるので要注意です。 セットバック物件はやめたほうがいい? セットバックが必要となる物件は、前面道路が狭い状況にあります。現地確認をすると、防災面や車の出し入れなどに不安を感じるかもしれません。 さらに、セットバック部分の工事費用についても確認する必要があります。助成金などが交付されず、全額自己負担となれば思わぬ出費となるでしょう。購入前に不動産業者や自治体に確認することが大切です。 上述のようなデメリットがあるため、セットバック部分には価値がないと判断され、後で売却するときに価値が下がってしまう恐れがあります。 ただし、既に建物が建っており、建て替えの予定もないのであれば、セットバックせずに住み続けるのも選択肢です。また、そもそも土地が広ければ、セットバックしても十分な敷地を確保でき、問題なく建て替えできるでしょう。 また、セットバックが必要な分、他の同じような土地よりも少し安く取得できる可能性もあります。セットバック物件のメリットとデメリットを理解したうえで、自身の希望に合った選択をすることが大切です。 まとめ 道路の幅が4m未満の「2項道路」「みなし道路」に接地している土地や中古戸建ては、住宅の建築や建て替え時にセットバックが必要です。 セットバックを行う場合は、費用負担や奨励金と助成金の有無について事前に確認しておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 筆界特定制度とは?活用できる場面や申請の流れ、費用を解説 筆界特定制度は、法務省が管轄する制度の一つです。本制度が定められるまで、土地の境界に関する紛争が起きた際、従来は裁判で解決するしかありませんでした。しかし、「筆界特定制度」を利用することで、...
区分所有法は、マンションの所有者や管理組合にとって重要な法律です。マンション暮らしを検討している人や既に住んでいる人は、区分所有法を理解しておくことで、安心して生活できるでしょう。 この記事では、区分所有法の概要や対象となる建物、主な規定内容について解説します。 区分所有法とは 区分所有法とは、主に分譲マンションの権利関係や維持管理などについて定められた法律です。正式名称を「建物の区分所有等に関する法律」といいます。 マンションなどの区分所有建物は1つの建物が複数の部屋に区切られており、各部屋には「区分所有権」と呼ばれる所有権が設定されています。マンションの1室を購入すると、その部屋の区分所有権を有する「区分所有者」となります。 また、マンションはエントランスやエレベーターのように、区分所有者が共同で使用する「共用部分」があります。共用部分の修繕や建て替えなどは、区分所有者同士で話し合って実施方法などを決めなくてはなりません。 区分所有者や居住者の権利や財産を守り、マンションを円滑に運営、管理するために、区分所有法が定められています。 区分所有法の対象となる建物 区分所有法第一条では、適用対象となる建物を次のように定めています。 一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。 出典)e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律」 区分所有法の対象となる代表的な建物は分譲マンションです。各部屋が構造上区分されており、それぞれに区分所有権が設定されています。部屋が隣り合っていても室内から行き来することはできず、独立性を有していることから、上記の要件に当てはまるといえます。 一般的な分譲マンションであれば、区分所有法の対象になるため、マンションに住む人であれば、ほとんどの人が関係のある内容ということになります。 一戸建ても複数の部屋で構成されていますが、部屋と部屋の間は自由に行き来できるのが一般的です。また、通常は家族全員が1つの玄関を使って出入りし、共有スペースであるリビングなどを通らないと部屋に行けないこともあります。 物件ごとに判断する必要はありますが、基本的に一戸建ては区分所有法の適用対象外と考えられます。 区分所有法の主な規定内容 ここでは、区分所有法で定められている主な内容を解説します。 専有部分と共用部分 分譲マンションは、主に「専有部分」と「共用部分」の2つに区分できます。区分所有法第二条では、それぞれ次のように定義されています。 区分所有権の目的たる建物の部分 専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の付属設備及び管理規約により共用部分とされた附属の建物 出典)e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律」 専有部分は、区分所有者が単独で所有している各部屋の内部です。一方、エントランスや廊下、エレベーター、バルコニーなど、区分所有者全員で利用している設備は共用部分に該当します。 共用部分の持分は専有部分の床面積の割合に応じて決まりますが、専有部分と分離して処分することはできません。例えば、区分所有しているマンションの1室(専用部分)を売却する場合、共用部分の持分も一緒に手放すことになります。 管理組合について 管理組合とは、マンションの建物や敷地などを維持管理するための組織です。区分所有法では、区分所有者は全員で建物や敷地、附属設備の管理を行うための団体である管理組合を構成する義務が明記されています。管理組合は、マンション管理の基本ルールとして「管理規約」を制定し、執行機関として、区分所有法の「管理者」にあたる理事長や理事を選任します。 理事長は少なくとも毎年1回集会を招集すること、共用部分の管理や修繕などに関する事項を決定して議事録を作成すること、なども区分所有法に定められています。区分所有者は管理組合の一員になる必要があり、原則として脱退はできません。 建て替え決議について 区分所有法には、マンションの建て替え決議に関する定めもあります。老朽化によりマンションを建て替える場合、現在は区分所有者の5分の4以上の賛成が必要です。 しかし、今後は築40年以上の老朽マンションの増加が見込まれています。マンションが老朽化すると適切な維持や管理が難しくなり、外壁の剥落や鉄筋の露出など、居住者や近隣住民に悪影響を与える事案が発生する恐れがあります。 そのため、住民の円滑な合意形成を促すことを目的に、マンション建て替えに必要な賛成の割合を「4分の3以上」に緩和するといった議題が、法務省で議論されています。2024年3月時点では未定ですが、将来は区分所有法が改正される可能性もあるでしょう。 区分所有法とマンション標準管理規約との関係性は? マンション標準管理規約とは、区分所有法に基づいて国が定めたマンション管理規約の作成や変更に関する指針のことです。国の標準管理規約をもとに、管理組合が作成した管理規約がそのマンションのルールとなります。 新築分譲マンションの場合、一般的には売主である販売会社が標準管理規約に準じた管理規約を準備して提示してくれるため、購入前に確認しておくといいでしょう。 まとめ 区分所有法には、区分所有者の権利義務や共用部分の取り扱い、管理組合の役割などについて定められているため、マンションに住む人にとっては重要な法律といえます。マンションの購入を検討している人、すでにマンション暮らしをしている人は、区分所有法について理解を深めておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 マンションの資産価値の調べ方は?基準もあわせて紹介 マンションを購入する際には、将来的な資産価値の変化にも目を向けて判断することが大切です。この記事では、マンションの資産価値に影響を与える要因や、資産価値の調べ方について解説します。 マンショ...
家を売る方法は複数あり、どの方法を選ぶかによって売却価格や売りやすさ、費用などが異なります。家を売るうえで何を優先するかを明確にし、自分に合った方法を選択することが大切です。 この記事では、家を売る3つの方法とそれぞれのメリットとデメリットをわかりやすく解説します。 家を売る3つの方法 家の売却方法は主に以下の3つです。 不動産仲介 不動産仲介とは、不動産会社に買い手を見つけてもらう方法です。買い手を探してくれるうえに、買主との条件交渉や契約手続きなども任せられます。家を売るのが初めてでも、不動産仲介なら安心して売却活動を進められるでしょう。一方で、他の方法に比べて売却に時間がかかることがあり、仲介手数料も発生します(詳細は後述)。 不動産買取 不動産買取とは、不動産会社に直接買い取ってもらう方法です。不動産会社が買主となるため、仲介のように買い手を見つける必要がありません。提示された買取価格に納得できれば、速やかに家を売却できます。ただし、不動産買取は、基本的に他の方法よりも売却価格が低くなります(詳細は後述)。 個人間売買 個人間売買とは、不動産会社を介さず自分で買い手を見つける方法です。売却価格を自由に設定でき、仲介手数料も発生しません。友人や知人などに購入希望者がいるなら、個人間売買も選択肢となるでしょう。ただし、個人間売買は、契約手続きなどをすべて自分で行う必要があります。不動産や税金に関する専門知識が求められるため、初心者には難しいでしょう。現実的には個人間売買が行われるケースは少ないので、以後は不動産仲介と不動産買取に絞って解説していきます。 不動産仲介のメリット・デメリット ここでは、不動産買取と比較した場合の不動産仲介のメリットとデメリットを紹介します。 不動産仲介のメリット 不動産仲介は、家を市場価格で売却できるのがメリットです。 不動産買取は不動産会社が提示する価格で売却する必要がありますが、不動産仲介なら希望価格で購入してくれる買い手が見つかるまで売却活動を続けられます。購入希望者との交渉次第では、市場価格より高値で売却できるかもしれません。 家を少しでも高く売りたい場合は、不動産仲介が向いているでしょう。 不動産仲介のデメリット 一方で、不動産仲介には以下のようなデメリットもあります。 売却に時間がかかる 需要が少ない物件は売りにくい 仲介手数料がかかる 不動産仲介は買い手を見つける必要があるため、不動産会社が買主となる買取に比べると売却までに時間がかかります。「築年数が古い」「人口が少ない」など、住宅需要が少ない物件はなかなか買い手が見つからず、売りにくい傾向にあるので注意が必要です。 また、売買が成立した際は仲介手数料が発生します。契約金額(税別)が400万円超の場合、仲介手数料の上限額は「(契約金額×3%+6万円)+消費税10%」です。 【仲介手数料の計算例:家の売却価格が2,000万円の場合】 (2,000万円×3%+6万円)+(2,000万円×3%+6万円)×10%=72.6万円 手数料は不動産会社や条件などによって異なるため、事前に仲介手数料がいくらかかるかを確認しておくといいでしょう。 不動産買取のメリット・デメリット 続いて、不動産仲介と比較した場合の不動産買取のメリットとデメリットを紹介します。 不動産買取のメリット 不動産買取には以下のようなメリットがあります。 早期の売却が可能 決済時期をコントロールしやすい 需要が少ない物件でも売れる 仲介手数料がかからない 契約不適合責任が免責となる 不動産会社が買主となるので、仲介に比べると短期間での売却が可能です。多くの場合、決済時期にも柔軟に対応してくれるため、住み替えで新居への入居時期が確定している場合などに勝手がいい 方法です。 また、不動産買取は仲介手数料がかからず、一般的には買主に対して生じる契約不適合責任も免責となります。 不動産買取のデメリット 不動産買取で家を売るデメリットは、不動産仲介より売却価格が安くなることです。不動産会社は、付加価値を付けて再販することを前提に家を買い取ります。再販にかかる経費やリスクを加味して買取価格を算出するため、市場価格より安くなる傾向にあります。 ただし、買取は仲介手数料がかかりません。不動産買取と不動産仲介のどちらにするか迷ったら、売却価格だけで比較するのではなく、仲介手数料を考慮した手取り額で比較しましょう。 家を売るときのポイント 家を売るときは、信頼できる不動産会社に不動産仲介を依頼する必要があります。 不動産査定を受ける際は1社だけでなく、複数の不動産会社に依頼することが大切です。査定額は会社によって異なります。査定結果とその根拠を比較すれば、相場をより正確に把握でき、信頼できる不動産会社や担当者を見つけやすくなるでしょう。 不動産査定と家を高く売るポイントは、以下の記事で詳しく解説しています。 関連記事はこちら家を売る前に知っておきたい不動産査定のポイントと注意点を解説 まとめ 家を売る場合、通常は不動産仲介と不動産買取の2つが選択肢となります。不動産仲介は高値で売れる可能性がありますが、不動産買取よりも売却に時間がかかり、仲介手数料も発生します。不動産買取は比較的早く売却できますが、不動産仲介に比べて売却価格が安くなるのがデメリットです。 それぞれのメリットとデメリットを理解して、自分に合った方法で家の売却を進めましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 自宅売却の流れや損をしないためのポイントを解説 持ち家に住んでいても、住み替えなどを理由に自宅の売却を検討することがあるでしょう。不動産を売却したことがないと、どのように手続きを進めればよいかわからないかもしれません。また、どうせ自宅を売...
家を売るとき、いくらで売れるかの目安を把握するため、不動産査定を検討するでしょう。しかし、不動産査定を依頼する際は、どのようなことに注意すればいいかわからないかもしれません。 この記事では、家を売る前に知っておきたい不動産査定の基本やポイント、注意点を解説します。 不動産査定の基本 まずは、家を売るときの不動産査定の基本を確認しましょう。 不動産査定とは 不動産査定とは、家がいくらで売れそうかを調査し、推定売却価格を算出することです。一方で、査定結果はあくまでも「これぐらいで売れそう」という予測であり、正確な売却価格ではありません。そのため、不動産会社によって査定額は異なる場合があります。 不動産査定の方法 家を売るときの査定方法は以下の2つです。 机上査定(簡易査定) 机上査定(簡易査定)は、売主の基本情報(氏名、連絡先など)と物件情報(所在地、築年数、床面積など)を用いる査定方法です。不動産会社のホームページなどで必要事項を入力するだけで、手軽に査定結果が分かります。 訪問査定 訪問査定は、不動産会社が現地を直接訪問する査定方法です。周辺環境なども含めて詳細な現地調査が行われるため、より正確な査定額を得られます。 おおよその査定額を知りたい場合は机上査定、早期に家を売却したい場合は訪問査定を検討すると良いでしょう。 不動産査定の依頼方法 不動産査定の依頼方法は以下のとおりです。 AI査定等のサービス 不動産の一括査定サービス 不動産会社への直接相談 AI査定は、似た条件の不動産価格や相場をもとにAIが自動的に査定額を提示するサービスです。中には匿名で利用できるものもあります。 一括査定サービスは、複数の不動産会社に一括で査定依頼ができるサービスです。情報を1回入力するだけで、複数の不動産会社の査定結果を比較できます。 不動産会社に直接相談する方法もあります。不動産査定を依頼したい不動産会社が決まっている場合は、こちらの方法を選ぶといいでしょう。 不動産査定前の準備とポイント 家を少しでも高い価格で売却するには、査定依頼の前にやっておくべきことがあります。ここでは、査定前の準備とポイントを紹介します。 自分自身で売却相場を調べる 不動産査定を依頼する前に売却相場を把握しておけば、不動産会社の査定結果が妥当かを判断しやすくなります。インターネットや不動産会社のチラシなどで、条件の似た物件の成約価格を確認しておきましょう。 取引状況を調べるときは、「REINS Market Information」などの不動産取引情報提供サイトを利用すると便利です。 住宅ローンの有無と残債を把握する 査定前に、住宅ローンの状況を把握しておくことも重要です。家の売却価格によって、住宅ローンを完済できるかどうかが変わります。住宅ローンが残っている場合は、金融機関のアプリや残高通知ハガキを確認するほか、正確に調べる際は残高証明書の発行を依頼しておきましょう。 不動産査定や取引に必要な書類を準備する 査定前に家の売却に必要な書類を準備しておくと、査定結果の正確性が高まり、売却の取引もスムーズに進められます。主な必要書類は以下のとおりです。 登記事項証明書(登記済証) 建築確認済証 検査済証 地積測量図・境界確認書 間取りが確認できる資料(購入時のパンフレットなど) これらの書類がなくても、不動産査定を受けることは可能です。取引時の必要書類は、改めて不動産会社に確認しましょう。 売却の希望時期を決めておく 査定前に、家の売却希望時期を決めておきましょう。買い手を見つける必要があるため、すぐに売却できるとは限りません。一般的には、売却完了までに数ヵ月~半年程度かかります。売却活動に充てる期間は、ある程度の余裕をもって確保しておくと安心です。 不動産査定の注意点 不動産査定を依頼する際は以下の点に注意しましょう。 複数の不動産会社に依頼する 査定額はあくまでも予想売却価格であるため、1社だけに依頼すると、査定結果が妥当なものか判断するのが難しくなります。複数の不動産会社に依頼して、査定結果を比較検討することが大切です。 信頼できる不動産会社を選定する 複数の不動産会社に不動産査定を依頼したら、その中から信頼できる会社を選定しましょう。家の売却に強く、実績が豊富な不動産会社を選べば取引をスムーズに進められます。 売主と媒介契約を結ぶために、相場よりも高い査定額が提示される可能性もあるため、「査定額が高い」という理由だけで選ぶのは危険です。 「査定結果について明確な根拠を提示してくれる」「質問にわかりやすく回答してくれる」などに注目して、信頼できる不動産会社、担当者を選びましょう。 自分自身が相場観を持つ 不動産会社と相談はできますが、最終的な売り出し価格は売主が自分で決めなくてはなりません。自身の相場観を持っておけば、売り出し価格を判断しやすくなるでしょう。上述したように、査定前に自分自身で売却相場を調べておくのがおすすめです。 家の修繕歴や瑕疵などをできるだけ正確に伝える 瑕疵(かし)とは、「雨漏りする」「床が傾斜している」など、土地や建物に何らかの欠陥や不具合があることです。家に修繕歴や瑕疵があると、査定結果に影響を与えます。 売主には契約不適合責任があり、売却後に瑕疵が発覚すれば損害賠償などに発展する恐れがあります。売却する家に修繕歴や瑕疵などがある場合は、査定依頼の際にできるだけ正確に伝えましょう。 まとめ 家の売却をスムーズに進めるには、複数の不動産会社に査定依頼をして、信頼できる不動産会社を選ぶ必要があります。査定前に、住宅ローン残高の確認や売却相場の調査などの準備をしっかりと行うことが大切です。 家を売ることを検討していて、査定額を手軽に知りたい場合は、AI査定や一括査定を上手に活用しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 不動産の購入・売却にかかる税金をそれぞれ解説 不動産売買の際には、購入する側と売却する側のそれぞれに税金がかかります。不動産売買の予定がある場合は、あらかじめどのような税金が発生するのか知っておくことが重要です。 この記事では、不動産の...
フラット35子育てプラスとは、子育て世帯や若年夫婦世帯に向けた新たな金利引き下げ制度です。一定の要件を満たすと子供の人数などに応じて金利が引き下げられるため、住宅ローンの負担軽減が期待できます。 この記事では、フラット35子育てプラスの内容や金利引き下げの条件、注意点を解説します。 フラット35子育てプラスが導入された背景 フラット35子育てプラスは、子育て世帯が良質な住宅を取得できるように、金利負担を軽減することを目的とした住宅ローンの制度です。この制度は、少子化対策及び子育て支援の一環として2023年11月29日に成立した、令和5年度(2023年)補正予算において拡充されました。 なお本制度は、2024年2月13日以降の資金受取分から適用されています。 フラット35子育てプラスの概要 フラット35の子育てプラスの概要は以下のとおりです。 子どもの人数等に応じて金利を引き下げ 他の金利引き下げメニュー(フラット35S等)との併用が可能 他の金利引き下げメニューを含め、金利引き下げ幅の上限を年-1.0%に拡充(従来は年-0.5%が上限) 新設されたフラット35子育てプラスは、子育て世帯だけでなく若年夫婦世帯も支援対象に含まれます。本制度の子育て世帯とは、借入申込年度の4月1日において、子ども(胎児および孫を含む。孫の場合は同居が必要。)の年齢が18歳未満である世帯を指し、若年夫婦世帯とは、借入申込年度の4月1日において、夫婦(同性パートナーを含む)のいずれかが40歳未満である世帯を指します。 ただし、借入申込年度の4月1日で条件を満たしていない場合でも、資金実行時(金融機関が資金実行日、融資金利などを登録する手続日をいいます。)までに上記の要件を満たせば、本制度を利用することができます。詳細は申し込みをした金融機関に確認しましょう。 出典)フラット35「【フラット35】子育てプラスの利用要件」 フラット35子育てプラスの金利引き下げの条件 子育てプラスの金利引き下げメニューが加わった制度拡充では、新しいポイント制度も導入されています。 家族構成や住宅、エリアに応じてポイントが加算され、そのポイント合計数に応じて金利引き下げが適用される仕組みです。 図:金利引き下げの条件の考え方 出典)住宅金融支援機構「【フラット35】子育てプラスA3チラシ」 ここでは、上図を参考に、フラット35子育て支援の金利引き下げの条件について確認していきましょう。 ①家族構成を確認 まずは、家族構成に応じて加算されるポイント数をチェックしましょう。 家族構成 加算ポイント数 若年夫婦世帯1ポイント 子ども1人1ポイント 子ども2人2ポイント 子ども3人3ポイント 子どもN人Nポイント 子どもの人数が多いほど加算ポイントが増える仕組みです。子どもがいない若年夫婦世帯には1ポイントが加算されます。 ②住宅を確認 住宅は「性能」と「管理・修繕」の2つについて、それぞれポイントが加算されます。 【性能】 住宅の技術基準レベル 加算ポイント数 フラット35s(ZEH) 3ポイント フラット35s(金利Aプラン) 2ポイント フラット35s(金利Bプラン) 1ポイント フラット35リノベ(金利Aプラン) 4ポイント フラット35リノベ(金利Bプラン) 2ポイント 省エネルギー性や耐震性など、フラット35Sの技術基準をクリアしている住宅の場合は、レベルに応じてポイントが加算されます。中古住宅を取得してリノベーションを実施し、フラット35リノベが適用される場合も同様です。 関連記事はこちらフラット35Sとは?種類や金利、利用条件について解説 【管理・修繕(フラット35維持保全型)】 対象住宅 加算ポイント数 長期優良住宅 1ポイント 予備認定マンション ※1 1ポイント 管理計画認定マンション ※2 1ポイント 安心R住宅 ※2 1ポイント ホームインスペクション実施住宅 ※2 1ポイント 既存住宅売買瑕疵保険付保住宅 ※2 1ポイント ※1 新築マンションのみ ※2 中古住宅のみ 「新築戸建住宅」「新築マンション」「中古住宅」の取得について、フラット35維持保全型が適用される場合は、対象住宅の種類に応じてポイントが加算されます。 ③エリアを確認 住宅を取得するエリアが住宅金融支援機構と連携している場合は、フラット35地域連携型やフラット35地方移住支援型を利用できる場合があります。これらは、地方公共団体による補助金や移住支援金の交付とあわせて、フラット35の借入金利を一定期間引き下げる制度です。 エリア 加算ポイント数 フラット35地域連携型(子育て支援) 2ポイント フラット35地域連携型(空き家対策) 2ポイント フラット35地域連携型(地域活性化) 1ポイント フラット35地方移住支援型 2ポイント 地方公共団体の支援があるエリアであれば、その内容に応じてポイントが加算されます。なお、住宅金融支援機構と連携しているエリアかどうかは、フラット35のホームページで確認することができます。(詳細はこちら) ④引き下げ幅を確認 最後に、「家族構成」「住宅」「エリア」の各項目で加算されたポイント数を合計しましょう。以下のように、合計ポイントに応じて金利引き下げが適用されます。なお、合計ポイントが5~8ポイントの場合は6~10年目、9~12ポイントの場合は11~15年目も金利が引き下げられます。 出典)住宅金融支援機構「【フラット35】子育てプラスA3チラシ」 総返済額の引き下げ額は、1ポイントだと約-40万円、5ポイントだと約-195万円、9ポイントだと約-375万円にもなります。自分が受けられる金利引き下げを確認したい人は、フラット35のホームページで確認できます。(詳細はこちら) フラット35子育てプラスの注意点 子育てには子どもの学費など、まとまったお金が必要となるライフイベントが発生します。固定金利で住宅ローンを組めば、毎月の返済額が固定されるため、資金計画を立てやすくなります。 一方で、固定金利型の住宅ローンは、変動金利に比べて適用金利が高い傾向にあります。適用要件を満たして金利が低くなるのであれば、フラット35子育てプラスの利用を検討しても良いのではないでしょうか。 ただし、金利引き下げはずっと続くわけではなく、5~15年の期間限定です。変動金利型やフラット35以外の固定金利型の住宅ローンと比較したうえで、本当に自分に合うかを判断する必要があるでしょう。 フラット35子育てプラスは後から申請できる? 既にフラット35を借りている人の中には、「自分も要件に当てはまっているが利用できないのか」と思われる人もいるかもしれません。 しかし、本制度はあくまで新規で借り入れるタイミングを基準に対象者を判断しているため、後から申請し、フラット35子育てプラスを利用することはできません。既に子育てプラスを利用していて、後から子供が増えた場合も同様です。 加えて、新たにフラット35に借り換える場合も、フラット35子育てプラスを利用することができません。子育てプラスを利用するために借り換えることはできないので注意しましょう。 なお、フラット35子育てプラスは利用できなくても、フラット35への借り換えによって、総返済額や月返済額を軽減できる可能性があります。詳細は以下の記事で解説しています。 関連記事はこちらフラット35への借り換えにメリットはある?目的別に判断基準を紹介 まとめ フラット35子育てプラスを利用することで、子どもの人数等に応じて金利引き下げの適用を受けることができます。ZEHや長期優良住宅といった質の高い住宅を取得する場合は、さらに金利が優遇されるかもしれません。 住宅取得を計画している子育て世帯は、2024年2月13日にスタートした「フラット35子育てプラス」の利用を検討してみてはいかがでしょうか。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 専門スタッフに相談してみる SBIアルヒの店舗にて、フラット35の無料相談ができます。 ※SBIアルヒのWEBサイトに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 フラット35の買取型・保証型の違いを徹底比較!どっちがいい? フラット35は、民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供する全期間固定金利の住宅ローンです。フラット35には「買取型」と「保証型」の2種類がありますが、自宅購入でフラット35を利用する場...