更新日: / 公開日:2023.05.24
住宅ローン控除(住宅ローン減税ともいいます)とは、住宅ローンを利用して住宅の新築、取得又は増改築等をした場合に利用できる、所得税額等を控除する制度です。住宅ローン控除を利用する場合、条件や控除額の違いを理解しておくことが重要です。この記事では住宅ローン控除の仕組みと住宅の種類別の控除内容や、最新の令和7年度税制改正の変更点について、わかりやすく解説します。

住宅ローン控除とは、無理のない負担で居住ニーズに応じた住宅を確保することを促進するため、住宅ローンを借り入れて住宅の新築、取得又は増改築等をした場合、年末のローン残高の0.7%を所得税等から最大13年間控除する制度です。
その年の所得税で控除しきれない場合は、翌年の住民税から最大97,500円まで控除されます。また、控除額の計算に使う年末のローン残高には上限があり、住宅の種類や省エネ性能によって異なります。こうした上限や条件の違いなどについては、後ほど詳しく解説します。
住宅ローン控除は、取得する住宅の区分によって細かい条件が異なる一方で、区分にかかわらず共通の条件もあります。まずは共通の条件について順に解説します。
住宅ローン控除を利用するには、住宅を取得してから6か月以内に入居している必要があります。加えて、控除を受ける年の12月31日時点に、その住宅で居住している必要があります。住宅購入から引っ越しまでの期間が空いてしまう場合は、注意しましょう。
住宅ローン控除を利用するためには、住宅の床面積が50平方メートル以上であり、かつその半分以上が居住用であることが必要です。ただし、床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の場合でも、合計所得金額が1,000万円以下であれば控除を受けられる特例措置が、令和7年度も継続されます。
住宅ローン控除を利用したい場合は、新居を探す段階で確認しておく必要があります。床面積は登記簿に表示されている床面積により判断されるため、購入前にあらかじめ不動産業者に確認しておくとよいでしょう。
住宅ローン控除を利用するには、自身の合計所得金額が2,000万円以下でなければなりません。ただし、取得する住宅の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は、合計所得金額の条件が1,000万円未満となるので、注意が必要です。住宅の床面積を確認したうえで、直近の源泉徴収票などで合計所得金額を確認しておきましょう。
住宅ローン控除を利用するには、10年以上にわたり分割して返済する方法になっている、新築または取得のための一定の借入金または債務が必要です。ただし、勤務先からの無利子または0.2%(平成28年12月31日以前に取得した場合は1.0%)に満たない借入や、親族や知人からの借入は対象外です。
出典)国税庁「No.1225 住宅借入金等特別控除の対象となる住宅ローン等」
2つ以上の住宅を保有している場合、主に居住用として利用する住宅である必要があります。例えば別荘として住宅を購入した場合だと、住宅ローン控除を利用することはできません。
居住年および前2年以内に譲渡所得の課税の特例を受けていないことが条件です。また、居住年の後3年以内に、居住している住宅(住宅の敷地含む)以外の一定の資産を譲渡した場合も、譲渡所得の課税の特例を受けていないことが条件になります。
住宅の取得時および取得後も引き続き生計を一にする者からの住宅取得でないことも条件です。また、贈与による住宅取得も対象外となります。
令和7年度税制改正で、令和6年度に導入された以下の措置が令和7年度も継続されることになりました。
控除額計算に用いられる年末の住宅ローン残高の上限額について、新築住宅及び買取再販住宅を取得した場合に、以下のとおり上限額が上乗せされる措置が、令和7年度も継続されることが決定されました。
| 住宅の環境性能 | 通常の世帯 | 子育て世帯等 |
|---|---|---|
| 長期優良住宅・低炭素住宅 | 4,500万円 | 5,000万円 (+500万円) |
| ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円 | 4,500万円 (+1,000万円) |
| 省エネ基準適合住宅 | 3,000万円 | 4,000万円 (+1,000万円) |
※出典元を参考に著者作成
なお、子育て世帯等とは、入居した年の12月31日において、以下の2要件のいずれかを満たしている世帯をいいます。
住宅ローン控除は令和4年以降に居住の用に供した場合において、全部で11区分に分けられます。その中でも住宅の取得に関する以下の主要4区分について解説します。
区分ごとに控除額や利用条件が異なる部分もあるため、ご自身の状況に合った区分の住宅ローン控除について、適切に理解しておくことが大切です。
出典)国税庁「令和5年分確定申告特集 住宅ローン控除を受ける方へ」
まずは、令和4年以降に新築住宅を居住の用に供した場合について解説します。
令和4年以降に新築住宅を居住の用に供した場合、1年間の控除額は「年末の住宅ローン残高×0.7%」で算出されます。ただし、計算に用いる住宅ローン残高には上限が設けられており、取得した住宅の環境等によって以下のように異なります。
| 住宅の環境性能 | 入居した年 | |
|---|---|---|
| 令和4年・令和5年 | 令和6年・令和7年 | |
| 長期優良住宅・低炭素住宅※2 | 5,000万円 | 4,500万円 (5,000万円) |
| ZEH水準省エネ住宅※2 | 4,500万円 | 3,500万円 (4,500万円) |
| 省エネ基準適合住宅※2 | 4,000万円 | 3,000万円 (4,000万円) |
| その他の一般新築住宅 | 3,000万円 | 2,000万円※3 |
※1:出典元を参考に著者作成
※2:()内は子育て世帯等の場合
※3:新築等のその他の住宅のうち、令和5年12月31日までに建築確認を受けたものまたは令和6年6月30日までに建築されたものは、借入限度額を2,000万円として10年間の控除が受けられます。ただし、特例居住用家屋に該当する場合は、令和5年12月31日までに建築確認を受けたものが対象となります。
例えば令和7年に子育て世帯等の該当者が長期優良住宅を取得した場合だと、1年間の最大控除額は35万円となります。基本的に控除期間は13年間ですが、その他の一般新築住宅で入居した年が令和6年もしくは令和7年の場合のみ、10年間となる場合があります。
新築住宅を取得した場合の利用条件については、前述の共通する利用条件のとおりです。
出典)国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合」
次に、令和4年以降に買取再販住宅を居住の用に供した場合について解説します。
令和4年以降に買取再販住宅を居住の用に供した場合も、1年間の控除額は「年末の住宅ローン残高×0.7%」で算出されます。計算に用いる住宅ローン残高の上限や、控除期間についても、新築住宅を取得した場合と同様です。
利用条件については、前述の共通する利用条件に加えて、住宅が買取再販住宅に該当していることが必要となります。買取再販住宅とは、以下の条件を満たす住宅のことをいいます。
買取再販住宅と認定されるためには、宅地建物取引業者が定められた適切な特定増改築等を行っている必要があります。買取再販住宅に当てはまるかどうかを自分で判断するのは難しいので、事業者側に確認してもらうことが大切です。
出典)国税庁「No.1211-2 買取再販住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合」
続いて、令和4年以降に中古住宅を居住の用に供した場合について解説します。
令和4年以降に中古住宅を居住の用に供した場合も、1年間の控除額は「年末の住宅ローン残高×0.7%」で算出されます。ただし、計算に用いる住宅ローン残高には上限が設けられており、前述の新築住宅および買取再販住宅を取得した場合と上限金額が異なります。
| 住宅の環境性能 | 入居した年 | |
|---|---|---|
| 令和4年・令和5年 | 令和6年・令和7年 | |
| 長期優良住宅・低炭素住宅 | 3,000万円 | |
| ZEH水準省エネ住宅 | ||
| 省エネ基準適合住宅 | ||
| その他の一般新築住宅 | 2,000万円 | |
※出典元を参考に著者作成
例えば令和7年に認定住宅を取得した場合だと、1年間の最大控除額は21万円となります。中古住宅を取得した場合の控除期間は10年間です。新築住宅や買取再販住宅を取得した場合と比較して、上限金額も低く、控除期間も短くなります。
利用条件については、前述の共通する利用条件に加えて、住宅が中古住宅に該当していることが必要となります。中古住宅とは、新築住宅や買取再販住宅に該当しない住宅のうち、新耐震基準に適合している住宅をいいます。
出典)国税庁「No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合」
最後に、令和4年以降に要耐震改修住宅を居住の用に供した場合について解説します。
令和4年以降に要耐震改修住宅を居住の用に供した場合も、1年間の控除額は「年末の住宅ローン残高×0.7%」で算出されます。ただし、計算に用いる住宅ローン残高には、入居した年にかかわらず、一律で2,000万円の上限が設けられています。また、控除期間については中古住宅と同様に10年間です。
利用条件については、前述の共通する利用条件に加えて、住宅が要耐震改修住宅に該当していることが必要となります。ここでいう要耐震改修住宅とは、新築住宅や買取再販住宅、中古住宅のいずれにも該当しない住宅のうち、建築後に一度は使用されたことのある住宅をいいます。
なお、要耐震改修住宅の取得にあたり、取得日以降に新耐震基準に適合するための耐震改修を行うことを、取得日までに申請している必要があります。加えて、実際に入居する日までに耐震改修を行うことで新耐震基準に適合することとなったことが「耐震基準適合証明書」などによって証明されていることが必要となります。
耐震工事は取得日以降に行うことになるため、取得日から実際に耐震改修が終わって入居するまでにある程度の期間を要します。取得から入居までの期間が6か月を超えると住宅ローン控除が利用できなくなってしまうので、十分注意しましょう。
出典)国税庁「No.1211-5 要耐震改修住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合」
住宅ローン控除を受けるための手続きは、1年目と2年目以降で異なります。
初めて控除を受ける年に限り、確定申告が必要です。会社員であっても、勤務先の年末調整では手続きできません。税務署に申告するか、e-Taxを利用してオンラインで申告します。
【確定申告の際に必要な書類】
出典)国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合」
勤務先の年末調整で手続きできます。確定申告の必要はなく、必要書類を会社に提出するだけで控除が継続されます。
【年末調整の際に必要な書類】
出典)国税庁「年末調整で住宅借入金等特別控除の適用を受ける方へ」
取得する住宅の条件によって、住宅ローン控除の控除額が変わってきます。住宅ローン控除を利用する場合は、取得する住宅の条件を確認し、今回紹介した4つの区分のどれが適用されるのかを把握しておきましょう。
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