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「お金」の記事一覧

  • フラット35への借り換えにメリットはある?目的別に判断基準を紹介

    全期間固定金利型住宅ローンのフラット35は新規借り入れだけでなく、借り換えとしても利用することができます。フラット35への借り換えを検討する場合は、目的を明確にしたうえでメリットがあるかを見極めることが大切です。 この記事では、フラット35への借り換えの効果や判断基準を目的別に紹介します。 住宅ローンを借り換える目的 まず、住宅ローンを借り換える目的を整理すると、以下3つの目的が考えられます。 総返済額を軽減する 月々の返済額を軽減する 金利上昇リスクを回避する 総返済額や月々の返済額を減らすためには、現在借りている住宅ローンよりも低金利の商品に借り換えたり、返済期間を変更したりする方法があります。また、金利上昇リスクを避けるためには、固定金利に変更することが有効です。 それぞれの方法と特徴について見ていきましょう。 ①総返済額を減らしたい場合 総返済額を減らすために、住宅ローンの借り換えを検討する人は多いでしょう。ここでは、現在借りている住宅ローンの金利タイプ別に、フラット35へ借り換えたときに想定される事例を紹介します。 変動金利型からフラット35への借り換え 昨今の変動金利型住宅ローンは金利が低い傾向にあるため、借入期間の短い人がフラット35へ借り換えると、基本的に金利は上がります。銀行の変動金利型は1%を下回る商品もありますが、2024年6月現在のフラット35の最低金利は1.850%です。 そのため、金利が下がるような事例は借入が20年以上前の人など、一部の人に限られるかもしれません。 出典) ・【フラット35】金利情報 ・【フラット35】借入金利の推移 また、借り換えをするとき、借入先の金融機関によって、繰上げ返済手数料が求められます。さらに、借り換え後の適用金利が上がるとなれば、総返済額を減らす目的で、フラット35へ借り換えるメリットはないでしょう。 全期間固定金利型からフラット35への借り換え 全期間固定金利型からフラット35への借り換えは、金利タイプが同じであるため、金利を比較しやすいのが特徴です。借り換えによって金利が下がれば、基本的に総返済額を減らすことができます。 ただし、金利が低いローンへ借り換えればよいとは限りません。借り換えには繰上げ返済手数料などがかかります。借り換えによる総返済額の減少額が手数料より大きくならないと、経済的なメリットはありません。 手数料を加味したうえで総返済額が減るかシミュレーションを行い、借り換えの判断を行いましょう。 当初固定金利型からフラット35への借り換え 当初固定金利型では、固定金利期間が終了した後も固定金利期間を継続できる商品もあるため、「変動型に切り替える」「固定金利を継続する」「他の金融機関に借り換える」という3つの選択肢が生まれます。 また、固定金利期間が終わった後の優遇金利が小さくなる商品もあるため、このタイミングでフラット35へ借り換えると総返済額を減らせるかもしれません。 ②毎月の返済額を減らしたい フラット35への借り換えは、毎月の返済額を減らしたい場合にも有効です。金利は下がらなくても、借り換えによって現在より返済期間を長くすれば、毎月の返済額を減らすことができます。 手数料や返済期間の延長によって総返済額が増えることを理解したうえで、それでも毎月の返済額を減らしたいのであれば選択肢となるでしょう。 ただし、フラット35への借り換えが最適とは限りません。他の商品とも比較検討したうえで、借り換え先を判断する必要があります。フラット35へ借り換える場合、年齢や現在の住宅ローンの残返済期間によっては、返済期間を長くして毎月の返済額を減らすことができない場合もあるので注意が必要です。 参考)住宅金融支援機構「借換融資のご利用条件(借入期間)」 ③金利を固定化したい 金利上昇リスクへの対策として、金利を固定化するためにフラット35への借り換えを検討する人もいるでしょう。当てはまるのは、次の2つのケースです。 現在の住宅ローンが変動金利型の場合 当初固定金利型で、固定金利期間終了後は変動金利型に切り替わる場合 借り換え時の条件によって総返済額が増えたとしても、変動金利型を続けることに不安があるなら選択肢となります。住宅ローンの残返済期間が長ければ、将来の不確実性が高くなり、金利を固定化する効果は高くなるという見方ができます。 フラット35への借り換えパターン フラット35へ借り換える場合、一般的なフラット35(買取型)を利用する以外にも以下のような選択肢があります。 ①フラット20 フラット20とは、フラット35のうち借入期間が15年以上20年以下のものです。フラット35に比べて適用金利が低いのがメリットです。2024年6月現在のフラット35の最低金利は1.850%ですが、フラット20は1.460%となっています。 ある程度返済が進んでおり、残返済期間が短い人はフラット20への借り換えが向いているでしょう。 出典)フラット35「金利情報」 ②フラット35保証型 フラット35は、買取型と保証型の2種類があります。 保証型への借り換えを使えば、買取型よりも適用金利を下げることができるかもしれません。例えば、買取型と保証型を両方取り扱っている金融機関(SBIアルヒなど)であれば、保証型を利用するほうが金利面で有利といえます。 2024年6月実行金利 商品名 借入期間 金利 保証型 ARUHI スーパーフラット(団信加入) 15年~35年 年1.840% 買取型 ARUHI フラット35(団信加入) 21年~35年 年1.850% 出典)ARUHI「住宅ローン金利一覧」 ただし、最も良い条件での比較であれば大幅に有利にはならないかもしれません。借り換えの融資条件については、保証型の取扱金融機関に確認しましょう。 関連記事はこちらフラット35の買取型・保証型の違いを徹底比較!どっちがいい? その他の選択肢 リ・バース60への借り換えという選択肢 借り換え時の年齢や目的によっては、リ・バース60も選択肢になるかもしれません。リ・バース60とは、満60歳以上の人向けの住宅ローンです。 一般的な住宅ローンとは異なり、毎月の支払いが利息のみで、元金は債務者が亡くなったときに一括返済する仕組みです。 毎月の返済額が小さくなるうえに、借入時や完済時の年齢を心配しなくていいのがメリットです。自宅の売却によって借入金を完済する場合、相続で残すことはできませんが、ノンリコース型を選択すれば担保不動産の売却だけで元金を一括返済できなかったとしても、債務が残らないため安心です。 60歳以上の人が住宅ローンの借り換えを検討するなら、リ・バース60も選択肢となるでしょう。 関連記事はこちらリ・バース60とは?メリット・デメリットを解説 繰上げ返済するかどうかも併せて検討する 総返済額を減らすことが目的であれば、繰上げ返済も有効な手段です。手元資金に余裕があるなら、手数料を支払って借り換えるより、繰上げ返済をした方が経済的なメリットを得られる可能性があります。借り換えと併せて検討するといいでしょう。 手元に余裕資金がない場合は、繰上げ返済の選択肢はなくなります。フラット35への借り換えでは、かかる手数料も元金に含めて借り換えが可能です。手元資金がなくても借り換えができるため、手数料分だけ元金が増えることを加味しても総返済額が減るなら検討の余地があるでしょう。 出典)フラット35「借換えの場合、融資手数料などの諸費用を借入額に含めることができますか。」 まとめ フラット35への借り換えが有効かどうかは、現在の住宅ローンの返済状況や借り換えの目的によって異なります。まずは、現在の住宅ローンの金利や借入残高、残りの返済期間などを整理し、目的を明確にしましょう。 不利な条件で借り換えを行わないように事前にシミュレーションを行い、フラット35へ借り換えるメリットがあるかどうかを判断しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 住宅ローンの借り換えはなぜ行った?実態調査から見えたこと 住宅ローンの返済を続けていると、毎月の返済を軽減できないかを考えることもあるでしょう。住宅ローンの借り換えを行うことで返済負担を減らせる可能性もありますが、タイミングを見誤ると、思ったより効...記事を読む

  • 代位弁済とは?仕組みや流れ、考えられるリスクについて解説

    ローンの返済が返済期日に間に合わず滞納した場合、金融機関などから代位弁済の通知が届く場合があります。代位弁済という言葉を聞いたことはあっても、その意味を正しく理解している人は少ないのではないでしょうか。 この記事では、代位弁済の仕組みや流れ、リスクについて詳しく解説します。 代位弁済とは まずは、代位弁済の仕組みと種類について確認していきましょう。 代位弁済の仕組み ※筆者作成 代位弁済とは、保証会社などの第三者がローンを滞納している債務者に代わって、金融機関に一括返済することです。代位弁済が行われた後は、債権者は金融機関から保証会社に代わります。 代位弁済によって、ローン残債(借金)がなくなるわけではなく、代位弁済を行った保証会社には求償権が生じます。求償権とは、代位弁済を行った場合に、債務者に対してその弁済額の返還を求める権利です。 つまり、代位弁済が行われると債務者は、ローンの返済を保証会社に行う必要があります。代位弁済は、債務者の返済を先延ばしにするものではなく、金融機関等の債権者の貸し倒れリスクを下げ、お金を貸しやすくするための仕組みといえるでしょう。 債権法の改正について 明治29年(1896年)に民法が制定された後、債権関係の内容については約120年間ほとんど改正がされていなかったことから、社会・経済の変化への対応と実務で通用している基本的なルールを適切に明文化するため、2020年4月1日に債権法が改正されました。 代位弁済に関わる旧法での問題点は以下の2点です。 利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済することができない 債権者は利害関係を有しない第三者からの弁済を拒むことができない これらの問題点に対し、改正後の民法では、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったとしても、債権者が受けた弁済は有効となりました。また、見知らぬ第三者からの弁済を行いたい旨の申し出を債権者は拒絶できるようになりました。 なお、旧法での「利害関係を有しない第三者」の表現は「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者」に変更されました。 出典) ・民法第474条(第三者弁済) ・法務省「弁済に関する見直し(第三者弁済)」 代位弁済が行われるときの流れ 代位弁済が行われる場合は、一般的には以下のような流れで手続きが進められます。 貸主から借主への督促 ローンを滞納すると、まずは貸主である金融機関から借主に対して督促が行われます。電話や督促状の送付などの方法が一般的です。督促状が届くまでの期間は金融機関によって異なり、ホームページの「よくある質問等」に記載されている場合もあるので、確認してみるといいでしょう。 この段階で適切に対応し、滞納しているローンを返済すれば代位弁済を回避できるでしょう。 保証会社が貸主に代位弁済 貸主から借主へ督促を行っても返済がなされない場合、貸主が保証会社に対して借金残高の返済を求める代位弁済が行われます。なお、このタイミングで「期限の利益喪失」の予告通知も届きます。 関連記事はこちら期限の利益とは?意味や喪失事由、注意点について解説 保証会社が借主へ返済の請求 代位弁済が行われると、債務者は金融機関から保証会社に代わります。保証会社から「代位弁済通知」が届き、借主に対して返済の請求が行われます。 代位弁済された時の時効はいつ? 代位弁済の消滅時効期間は、原則、権利を行使することができることを知った時から5年、権利を行使することができる時から10年です。2020年3月以前は、職業別や商事などで起算点が異なっていましたが、2020年4月の民法改正により、シンプルに統一化されました。 民法上は以下のように定めています。 民法第166条(債権等の消滅時効) 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。 一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。 二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。 2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しないときは、時効によって消滅する。 出典)民法第166条「債権等の消滅時効」 権利を行使することができることを知った時と、権利を行使することができる時とが基本的に同一時点である場合の消滅時効期間は下記の図のとおりです。 【例】売買代金債権、飲食料債権、宿泊料債権など契約上の債権 ※筆者作成 出典)法務省「消滅時効に関する見直し」 代位弁済で生じるリスク 代位弁済が行われると、債務者には次のようなリスクが生じます。 一括返済の請求 代位弁済が行われ、債権者が保証会社に代わると残債の一括返済を求められます。数百万円~数千万円のローンが残っている場合、一括で返済するのは難しいでしょう。 遅延損害金の発生 遅延損害金とは、ローンを期日までに返済できなかったときに発生する賠償金です。代位弁済が行われるということは、滞納期間が長期化し、遅延損害金の額も高額になっている恐れが高いでしょう。 滞納している元本と利息だけでなく、遅延損害金も含めて返済する必要があります。 保証人への督促 ローンを組む際に保証人を設定している場合、代位弁済を行った保証会社は債務者本人だけでなく、保証人にも督促を行います。債務者が返済できない場合、保証人が一括返済を求められる恐れもあります。 代位弁済が行われたら、保証人と今後の返済について相談する必要があるでしょう。 信用情報の登録 代位弁済が行われると、信用情報機関に事故情報が登録されてしまいます。具体的には、「クレジットカードの新規発行ができない」「新たなローンを借りられない」などの影響が出ます。 なお、指定信用情報機関は以下の3つです。 株式会社日本信用情報機構(JICC) 株式会社シー・アイ・シー(CIC) 全国銀行個人信用情報センター 財産の差し押さえ 保証会社からの請求に対応せず放置していると、最終的には強制執行により財産の差し押さえが行われます。給与や預貯金、生命保険、不動産、自動車など、幅広い財産が差し押さえの対象となります。 まとめ ローンを滞納して代位弁済の通知を受けた場合は、弁護士に相談するといいでしょう。また、不動産担保ローンを提供している金融機関や任意売却を扱う不動産会社に相談することで、ローン返済の資金を調達できる可能性もあります。 ローンを組む際は現在の収入や支出を正確に把握し、無理のない返済計画を立てることが大切です。万が一、返済が困難になった場合は放置せず、早めに専門家に相談しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 債権回収会社(サービサー)とは?仕組みや債権回収方法について解説 債権回収会社(サービサー)とは、金融機関等に代わって債権の管理や回収を行う民間業者のことです。ローンの返済が困難になると、サービサーとのやり取りが発生する場合があります。 この記事では、サー...記事を読む

  • 親が住むための住宅ローンの種類と特徴、注意点を解説

    高齢になると、一般的に収入や年齢の関係で住宅ローンを組むのが難しくなります。しかし、老後は持ち家の老朽化やライフスタイルの変化などで、建て替えや住み替えのニーズが高まる時期でもあります。そのような時に、親に代わって子どもが住宅ローンを組める可能性があります。 この記事では、親が住むために組める住宅ローンの種類と特徴、注意点について解説します。 親が住むための住宅ローンの種類 親が住む家を購入する際に、子どもが組める住宅ローンとして、次の2つのローンが考えられます。 親族居住用住宅ローン セカンドハウスローン 親族居住用住宅ローンは、申込者の両親や子、孫などの親族が住むための住宅を建築・購入する際に利用できるローンです。申込者本人が居住する必要はありません。 セカンドハウスローンは、現在の自宅の他に、自分で利用するための住宅を取得する際に利用できるローンです。転勤時の仮住まい、週末に過ごすための別荘・別宅などの購入に利用できます。 どちらも住宅金融支援機構の提供するフラット35で取り扱っており、提携金融機関を通じて申込みができます。次の見出し以降では、フラット35における親族居住用住宅ローンとセカンドハウスローンのそれぞれの特徴と注意点を説明していきます。 親族居住用住宅ローンの特徴 まずは、親族居住用住宅ローンの特徴を確認していきましょう。 住宅ローンの借り入れがあっても利用可能 一般的な住宅ローンは、申込者本人が住む家の購入資金が融資対象です。すでに住宅ローンの借り入れがある場合、原則として2軒目の家の購入について住宅ローンを組むことはできません。しかし、親族居住用住宅ローンなら、住宅ローンの返済中でも親が住む家の購入が目的であれば利用できます。 出典)フラット35「Q 申込人が居住するための住宅と親族が居住するための住宅の両方について、同時に借入れの対象になりますか?」 同居・別居は不問 親族居住用住宅ローンを利用する場合、親との同居・別居は問われません。親と同居することも、別々に住むことも可能です。 収入合算が可能 親族居住用住宅ローンは、申込者の収入と、購入する家に入居する親の収入を合算して審査を受けられます。収入合算を行うことで、申込者単独で契約するよりも借入額を増やすことができます。 フラット35の場合、次のすべての要件にあてはまる人(1名)との収入合算が可能です。 申込時の年齢が70歳未満の人 連帯債務者となることができる人 申込者と同居する人(申込者の親、子、配偶者など)、または融資対象住宅に入居する人 収入合算は、申込者単独では借入希望額に満たない場合に有効といえるでしょう。 住宅ローン控除は受けられない sup { font-size: 0.65em; vertical-align: super; } 住宅ローンを組んで住宅を建築・購入する場合、通常は住宅ローン控除が適用されます。※1しかし、親族居住用住宅ローンでは、原則として住宅ローン控除を受けられません。 住宅ローン控除は、住宅取得者の金利負担の軽減を図ることが目的のため、申込者が住まない住宅は控除の対象外となります。 ただし、融資対象住宅に居住する人が連帯債務者になる場合、その連帯債務者は住宅ローン控除を受けられます。例えば、子どもが親のために融資を受けて家を購入した際、親が連帯債務者になっている場合は、親が組んだ住宅ローンは住宅ローン控除の対象となります。 ※1 2024年、2025年に新築住宅に入居する場合、2024年1月以降に建築確認を受けた新築住宅で、住宅ローン減税を受けるには省エネ基準に適合する必要があります。 出典) ・国土交通省「住宅ローン減税」 ・フラット35「親族居住用住宅のお申込みについて」 セカンドハウスローンの特徴 次に、セカンドハウスローンの特徴を説明します。 すでに自宅を所有している人が利用可能 セカンドハウスローンは、すでに自宅を所有している人が利用できる住宅ローンです。別荘など2軒目の住宅取得を目的としているため、自宅を所有していない人が、親が住む家を購入するためにセカンドハウスローンを利用することはできません。 返済比率などの条件からハードルが高い セカンドハウスローンは、通常の住宅ローンに比べると審査が厳しい傾向にあります。すでに自宅を所有しており、住宅ローンの返済中に申し込むケースが多いため、返済比率などの条件から審査基準が高くなりやすいからだと考えられます。 フラット35の場合、すべての借り入れについて総返済負担率(年収に占める年間合計返済額の割合)について次の基準を満たす必要があります。          年収400万円未満 年収400万円以上 総返済負担率の基準30%以下35%以下 出典)住宅金融支援機構「【フラット35】ご利用条件」 仮に融資を受けられたとしても、住宅ローンにセカンドハウスローンの支払いが上乗せされるため、返済負担が大きくなりすぎないように注意しましょう。 金利は一般的な住宅ローンよりも高い セカンドハウスローンの金利は、一般的な住宅ローンより高めに設定されています。住宅ローンの借り入れがある状態で利用すると、さらに返済額が増えるため貸し倒れリスクが高まることも影響していると考えられます。 住宅ローン控除は受けられない 親族居住用住宅ローンと同様に、セカンドハウスローンも住宅ローン控除の適用対象外です。比較的金利が高いことに加えて、住宅ローン控除を受けられないため、想定以上に返済負担が大きくなる恐れがあります。 住宅ローンを返済中にセカンドハウスローンを組む場合は、住宅ローン控除を受けられないことを前提に返済計画を立てることが大切です。 出典)フラット35「セカンドハウスのお申込みについて」 まとめ 親が住む家の住宅ローンを組む場合は、「親族居住用住宅ローン」と「セカンドハウスローン」の2つが選択肢となります。 どちらも住宅ローンの返済中でも利用が可能です。ただし、返済負担が大きくなることに加えて住宅ローン控除を受けられないため、無理のない返済計画を立てることが大切です。利用を検討する場合は、両者の違いを理解したうえで取扱金融機関に相談してみましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 親子リレーローンとは?メリット・デメリットと注意点を解説 親子リレーローンは、親子二世代にわたって返済する仕組みの住宅ローン商品です。親子リレーローンを利用することで、単独でローンを組むより借入金額を増やせる可能性があります。一方で、親子リレーロー...記事を読む

  • 債権回収会社(サービサー)とは?仕組みや債権回収方法について解説

    債権回収会社(サービサー)とは、金融機関等に代わって債権の管理や回収を行う民間業者のことです。ローンの返済が困難になると、サービサーとのやり取りが発生する場合があります。 この記事では、サービサーの概要や仕組み、債権回収の方法などについて解説します。 債権回収会社(サービサー)とは サービサーとは、金融機関等から委託を受け、または譲り受けて、特定金銭債権の管理回収を行う法務大臣の許可を得た民間の債権管理回収専門業者です。(特定金銭債権の詳細は後述します。) 例えば、フラット35の融資を受けている債務者が全額繰上償還請求を行ったときの回収業務は、住宅金融支援機構が行うのではなく、以下のサービサーが行うものとされています。 エム・ユー・フロンティア債権回収株式会社 オリックス債権回収株式会社 株式会社住宅債権管理回収機構 三菱HCキャピタル債権回収株式会社 出典)住宅金融支援機構「委託先債権回収会社について(機構が行う個人向け融資)」 債権回収業務は、従来は弁護士法の規定により、弁護士または弁護士法人以外の者が債権管理回収業務を行うことはできませんでした。しかし、1991年のバブル崩壊により発生した不良債権の処理等を促進するため、1999年に弁護士法の特例として「債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)」が施行され、債権管理回収業が民間業者に解禁されました。 出典)法務省「債権回収会社(サービサー)制度 -債権管理回収業に関する特別措置法-」 債権者である金融機関等にとっては、サービサーを利用することで回収交渉などの業務負担の軽減、債権譲渡による不良債権の解消などが期待できます。 特定金銭債権とは 特定金銭債権とは、サービサーが取り扱うことができる以下のような金銭債権です。 <主な特定金銭債権> 金融機関等が有する、または有していた貸付債権 リース契約・クレジット契約に基づく金銭債権 資産の流動化に関する金銭債権 ファクタリング業者が有する金銭債権 法的倒産手続中の者が有する、または有していた金銭債権 求償権その他の債権 出典)法務省「債権管理回収業に関する特別措置法の概要」 特定金銭債権の範囲は、サービサー法によって規定されています。不良債権の処理等を促進する観点から、サービサーが取り扱える金銭債権の範囲を限定しています。 債権回収会社(サービサー)の種類 法務省の資料によれば、2023年12月31日時点で、営業を行っているサービサー73社に調査した結果、出資母体等別の内訳は以下のとおりとなっています。 金融機関系(20社) 信販・貸金・リース系(16社) 外資系(4社) 不動産・独立系・その他(33社) 出典)法務省「債権回収会社(サービサー)の業務状況について(概要)」 債権管理回収業の営業許可を受けている業者は、法務省のホームページで確認でき、2024年4月1日時点では、72社となっています。 出典)法務省「債権管理回収業の営業を許可した株式会社一覧」 債権回収会社(サービサー)の仕組み サービサーはどのように運営され、どのような方法で債務者から債権を回収しているのでしょうか。ここでは、サービサーの仕組みと債権回収の方法について紹介します。 サービサーの仕組み ※筆者作成 出典)法務省「債権管理回収業に関する特別措置法の仕組み」 サービサーとして債権管理回収業を行うには、法務大臣の許可が必要です。許可を受けるには、以下の3つの要件を満たさなくてはなりません。 資本金が5億円以上あること 常務に従事する取締役の1名以上に弁護士が含まれていること 暴力団員等反社会的勢力の関与がないこと 法務大臣が日本弁護士連合会に意見を聴取し、弁護士会が取締役となる弁護士を推薦することで、サービサーの業務全般を適正に監督しています。 暴力団員等の排除については、法務大臣が警察庁長官に意見聴取、警察庁長官がサービサーに立入検査や援助等を行う仕組みになっています。 債権回収会社(サービサー)の業務 サービサーは金融機関等からの委託、債権譲渡を受けて次のような業務を行います。 債権管理 債務者への督促 法的手段の検討 債権回収後の処理 債権者である金融機関等に代わって、担当窓口として債務者への債権額の確認、返済交渉などを行います。債権を譲り受けた場合は債権者として自ら回収を行い、状況によっては法的手段も検討することになります。 サービサーとファクタリングの違い サービサーは前述のとおり、銀行や貸金業者などの金融会社が特定金銭債権の回収業務を委託され、後から債権を回収するものです。これに対し、ファクタリングは、企業がファクタリング会社に売掛債権(売掛金など)を買い取ってもらうことで、本来の回収より前に資金調達を行えるという違いがあります。 詳しくは関連記事をご確認ください。 関連記事はこちらファクタリングとは?仕組みや種類、注意点を紹介 サービサーと債務者の関係 サービサーと債務者の関係は、債権者から債権回収を委託されるか、債権を譲渡される(買い取る)かによって異なります。 金融機関等がサービサーに債権回収を委託する場合、サービサーが窓口として債務者と返済に関する交渉を行います。債権者は金融機関のまま変わりません。 金融機関等がサービサーに債権回収を委託する場合 ※筆者作成 一方、金融機関等がサービサーに債権を譲渡する場合、サービサーは債権者として債務者と回収交渉を行います。債権譲渡後、債務者は金融機関に対する返済義務はなくなりますが、サービサーへの返済義務が生じます。 金融機関等がサービサーに債権を譲渡する場合 ※筆者作成 債権回収会社(サービサー)の債権回収方法 サービサーは、次のような方法で債権回収を行います。 電話や面会での交渉 支払督促 内容証明郵便での督促 民事調停手続き 通常訴訟・少額訴訟 強制執行 まずは電話や書面などで通知が来るのが一般的です。その段階で対応しなければ、民事調停や訴訟などの法的手続きに移り、最終的には財産を差し押さえられるなどの強制執行が行われます。 ローン返済が滞った場合など、サービサーから通知が来たら、法務大臣の許可を受けている業者かどうかを確認しましょう。サービサーの名前をかたった業者による債権の架空請求などが発生しているため、心当たりのない請求には応じないことが大切です。 実際に返済が遅れているなど、サービサーからの通知に心当たりがある場合は、必要に応じて弁護士などの専門家に相談しながら返済について交渉するといいでしょう。 まとめ ローンの返済が困難となった場合、返済交渉の窓口が借入先である金融機関等から民間業者のサービサーに移る場合があります。 サービサーは債権回収の専門知識を有しており、通知を無視していると最終的には財産を差し押さえられる恐れがあります。サービサーから連絡がきたら、まずは法務大臣の許可を受けた登録業者であることを確認することが大切です。 そのうえで、自身だけで返済交渉をするのが難しい場合は、弁護士などの専門家に相談しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

  • 財産分与とは?対象となる財産や算定方法、注意点を解説

    もし離婚をすることになった場合、財産分与をすることになるでしょう。円満に離婚を進めるためにも、財産分与の制度内容を知っておくことが大切です。 この記事では、財産分与の概要や対象となる財産、注意点などについて解説します。 財産分与とは 財産分与とは、夫婦が婚姻中に築いた財産を離婚する際、または離婚後に分けることです。財産分与は、離婚をした夫婦の一方が他方に対して財産を分与するように請求でき、次の3つの目的・性質があります。 夫婦が共同で築いた財産の公平な分配 離婚後の生活保障 離婚原因を作ったことへの損害賠償 「財産の公平な分配」が財産分与の基本的な考え方で、実際には「離婚後の生活保障」や「損害賠償」の要素も考慮しながら、財産の分け方を決めることになります。 財産分与は、離婚から2年の期間制限があります。例外はありますが、原則離婚から2年を経過した後は、相手の意思にかかわらず権利が消滅してしまうため、注意しましょう。 出典)法務省 財産分与 財産分与の対象となる財産 財産分与を円滑に進めるには、対象となる財産を把握しておく必要があります。財産分与の対象となるのは、婚姻中に夫婦の協力によって築いた「共有財産」です。具体的には、以下のような財産が該当します。 預貯金 不動産 有価証券 保険 自動車 家具、家電 貴金属 退職金 年金 夫婦のいずれか一方の名義になっている場合でも、実際は夫婦で形成したものであれば財産分与の対象です。たとえば、婚姻中に購入した不動産が単独名義の場合でも、家事などを分担していれば、実質的には夫婦の共有財産といえるでしょう。 状況によっては、退職金や年金も財産分与の対象となる可能性があります。 年金について 年金分割とは、離婚した場合に婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金を分割して、それぞれ自分の年金とすることができる制度です。年金分割の方法は2種類あります。 合意分割制度 3号分割制度 合意分割制度とは、夫婦の一方または双方からの請求によって年金を分割する方法です。分割の割合は双方の合意、または裁判手続きによって決まります。 3号分割制度とは、国民年金第3号被保険者からの請求により、年金を分割する方法です。国民年金第3号被保険者とは、会社員や公務員などに扶養されている配偶者の方です。分割の割合は2分の1ずつとなります。 どちらの制度も原則として、離婚をした日の翌日から2年を経過すると請求できなくなるので注意が必要です。詳しくは、管轄する年金事務所に問い合わせましょう。 出典) ・法務省 年金分割 ・日本年金機構 離婚時の年金分割 不動産について 離婚をしたときに現在住んでいる自宅をどうするか、という点は重要です。しかし、夫婦の一方が自宅に住み続けたい場合には、高額な財産である不動産は「公平に分配する」という点で難しいかもしれません。 また、住宅ローンが残っている場合には、今の自宅に住み続けたい人とローンを借り入れている人が同じとも限らないので、その点でも財産分与は難しいかもしれません。 そのような時にリースバックが解決策になるかもしれません。リースバックとは、リースバック運営会社と、不動産の売買契約および賃貸借契約を締結することで、売却後も同じ家に住み続けることができるサービスです。 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みやメリット・デメリットを解説 財産分与の対象とならない財産 次の財産は、夫婦で協力して築いた財産とはいえないため、財産分与の対象となりません。 結婚前から所有している財産:特有財産 夫婦の一方が結婚前から所有している「特有財産」は、財産分与の対象外で、民法上以下のように定義されています。 民法第762条(夫婦間における財産の帰属)   夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。 2 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。 出典)民法第762条(夫婦間における財産の帰属) たとえば、独身のときに購入した株式や自動車、貯めたお金などが該当します。結婚後に親族からの贈与・相続で取得した預貯金や不動産なども、特有財産として財産分与の対象外となります。 しかし、例外として特有財産のうち、結婚後に夫婦の協力で価値が維持・増加したと考えられるものは、その貢献度に応じて財産分与の対象に含まれる可能性があります。特有財産の財産分与について、話し合いで解決しない場合には、弁護士などの専門家に相談しましょう。 出典)民法第768条第3項(財産分与) 財産分与の額の算定方法 財産分与の額は、「夫婦間で協議」するか「家庭裁判所の調停」で決定します。 夫婦間で協議 まずは夫婦で協議し、分配割合や受け取る財産の種類などを決めます。分配割合は原則として2分の1ずつと考えられますが、夫婦で合意できるなら割合は問いません。 離婚後の生活保障、財産形成への寄与分(貢献度)を考慮して分配割合を決めるのも1つの方法です。また、夫婦の一方が主に離婚原因を作った場合は、解決金や損害賠償の要素を加味することも可能です。 いずれにせよ、夫婦でしっかりと話し合い、お互いに納得できる割合で合意できるのが理想といえます。 家庭裁判所の調停 夫婦で協議をしても合意に至らない場合、話し合いができない場合は、家庭裁判所に調停の申立てを行います(財産分与請求調停)。 調停手続きでは、共有財産の額や内容、財産形成に対する貢献度などの事情を夫婦双方から聴取し、必要資料等を確認したうえで解決案や助言などが提示されます。それでも合意できずに調停が成立しない場合は、裁判官の審判によって結論が示されます。 財産分与の注意点 離婚が決まって財産分与を行う場合は、次の点に注意しましょう。 話し合いは早めに始める 制度上は、離婚後に財産分与を請求することも可能です。しかし、離婚が成立すると話し合いの機会を作ることが難しくなり、共有財産を把握できなくなるリスクが高まります。また、離婚は、財産分与以外にも勤務先への報告や子どもの親権をどちらが持つかなど、やるべきことがたくさんあります。 財産分与をスムーズに進めるためにも、離婚が決まったら早めに話し合いを始めましょう。 証拠資料を準備する 財産分与では、証拠資料を準備することも重要です。資料があれば、どのような財産があるかを客観的に把握できます。万が一裁判になった場合は、必要に応じて資料を提出することが可能です。 預貯金なら通帳や取引履歴、不動産なら登記事項証明書など、財産の内容や価値を証明できる資料を準備しておきましょう。 専門家に相談する 離婚による財産分与は、どの財産が対象になるのか、価値はどのように考えればいいのかなどの専門知識が必要です。離婚準備を進める際に何から着手すべきか、わからない人もいるでしょう。 財産分与でトラブルを避けるには、弁護士などの専門家に相談する方法もあります。財産分与だけでなく、離婚協議書の作成などトータルでサポートを受けられます。 基本的に、財産分与で贈与税がかかることはありません。ただし、状況によっては「分与された財産の額が多すぎる」とみなされ、課税されることもあるため、税務についても相談しておくと安心です。 出典)国税庁 No.4414 離婚して財産をもらったとき まとめ 離婚による財産分与では、共有財産を2分の1ずつ分け合うのが原則ですが、夫婦で話し合って分配割合を決めることも可能です。話し合いで合意できない場合は、裁判所の手続きを通して決めることになります。 夫婦だけで財産分与を進めるのが難しい場合は、弁護士などの専門家に相談しましょう。 ペアローンは離婚したらどうなる?よくある問題と対処法を紹介 住宅を購入する際にペアローンを組むことで、夫婦のどちらか一方が単独で住宅ローンを組むより借入額を増やせるなどのメリットがあります。しかし、ペアローンを組んだ夫婦が離婚する場合、自宅の扱いや住...記事を読む 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

  • 税金を滞納するとどうなる?払えないときの解決方法や対策を紹介

    税金を納期限までに支払うことができず、滞納してしまったらどうなるのでしょうか。特に個人事業主や副業をしている会社員は、自分で確定申告をする必要があるため、税金の滞納には十分に注意する必要があります。 この記事では、税金を滞納するとどうなるのか、払えないときの解決方法や対策を紹介します。 税金滞納の概要 まずは税金滞納の意味や現状について確認していきましょう。 税金滞納とは 税金滞納とは、税金を納期限までに支払わないことをいいます。納期限とは、税金を納付する期間の最終期日のことです。税金はまちづくりや教育、福祉といった各種公共サービスの財源となり、日本国憲法では「納税」は国民の義務であると定められています。 税負担の公平性を確保する必要があるため、税金を納期限までに払わない場合は財産の差押えなどの滞納処分が科される恐れがあります。 出典) ・埼玉県庁 「税金を納めないとどうなるの」 ・国税庁 「納税の義務」 税金滞納の現状 国税庁の資料によると、令和4年度における新規発生滞納額は7,196億円です。平成4年度のピーク時の約4割となっており、前年の令和3年度比では、331億円減少(▲4.4%)しています。 また、令和4年度における滞納発生割合は1.0%です。滞納発生割合とは、徴収決定済額(申告などによる課税額)に占める新規発生滞納額の割合をいいます。 出典)国税庁「令和4年度租税滞納状況の概要」 税金を滞納するとどうなる? 税金を納期限までに納めずに放置していると、滞納処分を受けることがあります。ここでは、税金を滞納した場合の処分や罰則について説明します。 延滞税や延滞金、加算金がかかる 国税を滞納すると延滞税がかかります。延滞税は、税金を納期限までに払えなかったときに、原則として法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、自動的に課されます。延滞税の割合は以下のとおりです。 納期限から2ヵ月を経過する日まで:原則年7.3% 納期限から2ヵ月を経過した日以後:原則年14.6% 国税における延滞税に対して、地方税を滞納すると延滞金や加算金がかかります。延滞金は、納期限までに県税を納めないときに徴収されるもので、納期限の翌日から納付の日までの期間に応じて次の割合により計算されます。 納期限から1ヵ月を経過する日まで:原則年7.3% 納期限から1ヵ月を経過した日以後:原則年14.6% ただし、地方税には特例措置が設けられており、令和3年1月1日以降の延滞金は以下のとおりです。 納期限の翌日~1か月を経過する日(A) 納期限から1か月を経過した日~納税の(B) 法人の県民税及び事業税について納期限の延長があった場合の本来の納期限の翌日~延長された納期限 令和4年1月1日から令和6年12月31日 2.4%(延滞金特例基準割合+1%) 8.7%(延滞金特例基準割合+7.3%) 0.9%(平均貸付割合+0.5%) 令和3年1月1日から令和3年12月31日 2.5%(延滞金特例基準割合+1%) 8.8%(延滞金特例基準割合+7.3%) 1.0%(平均貸付割合+0.5%) 出典)静岡県庁 「延滞金・加算金」 また、期限を過ぎてから申告をした場合などは「申告義務が適正に履行されていない」とみなされ、本来の税額とは別に加算税がかかる恐れがあるので注意が必要です。 具体的には、事実より少なく申告をしたり(過少申告加算金)、申告をしなかったり(不申告加算金)、税を免れようとした(重加算金)場合に徴収されます。それぞれの割合は以下のとおりです。 内容 割合(増差税額に対する) 不適用・割合の軽減 過少申告加算金 期限内申告について、修正申告・更正があった場合 10%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分)15% ・正当な理由がある場合 ⇒不適用 ・更正を予知しない修正申告の場合 ⇒不適用 不申告加算金 ①期限後申告・決定があった場合 ②期限後申告・決定について、修正申告・更生があった場合 15%(注2)(50万円超300万円以下の部分)20%(注2)(300万円超の部分)30%(注2) ・正当な理由がある場合 ⇒不適用 ・期限後1ヶ月以内にされた一定の期限後申告の場合⇒不適用 ・更正・決定を予知しない修正申告・期限後申告の場合⇒5% 重加算金 仮装・隠蔽があった場合(注1) (期限内に申告をしている場合)35%(注2)(申告しなかった場合又は期限後に申告した場合)40%(注2) (注1) 令和7年1月1日以後においては、仮装・隠蔽したところに基づく「更正請求書」を提出した場合も含む。【令和6年度改正】 (注2)過去5年内に、不申告加算金(更正・決定予知によるものに限る。)又は重加算金を課されたことがあるときは、10%加算【平成28年度改正】 上記の場合に加え、前年度及び前々年度分の当該地方税について、以下の場合についても10%加算【令和5年度改正】  ・不申告加算金(更正・決定予知によるものに限る。)又は重加算金(不申告加算金に代えて徴収されるものに限る。)を課されたことがあるとき  ・不申告加算金(更正・決定予知によるものに限る。)又は重加算金(不申告加算金に代えて徴収されるものに限る。)の賦課決定をすべきと認めるとき 出典) ・国税庁「延滞税について」 ・総務省「加算金、延滞金、還付加算金」 督促状が送付される 税金を納期限までに支払わない場合、督促状が送付されます。国税は納期限から50日以内、地方税は20日以内に督促状が発布されるのが原則です。督促状が届いても納付しない場合は電話や訪問、文書により催告が行われます。 出典) ・国税庁「第1編 第2章 第2節 督促」 ・羽村市「税金を滞納するとどうなるの?」 財産の差押えが行われる 督促状が届いた後も税金を納付しないと滞納処分が執行され、財産の差押えが行われます。法律の規定に基づき、本人の了解を得ることなく金融機関や勤務先、生命保険会社などに財産調査が可能です。調査の結果、預貯金や生命保険、自動車、不動産、給与などの財産が差し押さえられます。 差し押さえた財産は、預貯金や生命保険、給与などは取立て、自動車や不動産は公売により換価(換金)され、滞納した税金に充当されます。 ローン審査に影響が出る 税金を滞納したからといって、個人信用情報に載ることはありません。しかし、住宅ローンをはじめとするローン審査では、納税証明書の提出を求められることがあります。滞納があると証明書に記載されるため、ローン審査に影響が出る恐れがあります。 税金滞納した場合の解決方法 ここでは、税金を滞納した場合の解決方法を2つ紹介します。 納税相談や納税計画の作成 納期限までに税金を支払えない場合は、国や地方自治体に相談することが大切です。国税は所轄の税務署、地方税は県税事務所や市区町村の窓口で納税相談を受け付けています。事情によっては、納税計画の作成などのサポートを受けられる可能性があります。 分割納付や延滞税の減免申請 税金は納期限までに一括で納めるのが原則ですが、支払いが困難と認められる事情がある場合は分割納付に応じてもらえるかもしれません。 一定の要件を満たす場合は、財産の差押えや換価の猶予、猶予期間中の延滞税の全部または一部免除が認められることもあります。税務署や市区町村などと相談のうえ、可能であれば猶予・減免申請を行いましょう。 出典)国税庁「延滞税の免除」 税金滞納の対策 税金滞納を防ぐには、次のことを心掛けるといいでしょう。 日頃から納税の準備・管理を行う あらかじめ納期限を把握したうえで、納税資金を準備しておくことが重要です。納期限については、国税庁や地方自治体のホームページで確認できます。納税通知書が届いてから慌てることがないように、積み立てなどを利用して日頃から少しずつ納税資金を準備しておきましょう。 納税の仕組みや義務を理解する 納税の仕組みや義務を理解することも、税金の滞納を防止するための効果的な手段の一つといえます。税金はさまざまな種類があり、税目によって税金の計算方法や納付方法などが異なります。 たとえば、年末調整を受けられる給与所得者を除き、所得税は1年分の税額を計算し、翌年2月16日~3月15日に確定申告・納付をすることになっています。インターネットでの検索や書籍などを活用し、税目ごとに納税義務者や納税方法などを調べてみましょう。 申告や納付の手続きを早めに済ませる 納期限の直前に税金の申告・納付手続きを行うと、想定より時間がかかり、期限までに納税できなくなる恐れがあります。滞納を防ぐためにも、税金の申告・納付の手続きは早めに済ませましょう。 最近では、地方自治体によってクレジットカード納付やQRコードを用いた決済を推奨しており、支払予約なども可能な場合もあります。 出典)さいたま市「市税等をスマートフォン決済で納付できます」 疑問があれば税務署に相談する 税金の申告・納付に関する疑問を放置していると、納期限までに支払えない可能性が高まります。税金について疑問がある場合は、早めに税務署に相談して解決することが大切です。 まとめ 税金を滞納すると、本来の税額とは別に延滞税や加算金がかかったり、預貯金や不動産などの財産が差し押さえられたりする可能性があります。滞納処分を避けるためにも日頃から納税資金を準備するとともに、税金の種類と支払う時期を予め確認し、早めに申告・納税手続きを済ませましょう。 納税証明書とは?種類ごとの記載事項や取得方法などを解説 融資や自治体のサービス、車検などを申し込むとき、納税証明書を求められることがあります。そもそも、納税証明書とはどのような書類なのでしょうか。日常生活で納税証明書が必要になる場面は多くないので...記事を読む 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

  • ファクタリングとは?仕組みや種類、注意点を紹介

    ファクタリングとは、事業者の資金調達方法の1つです。保有している売掛債権を早期に資金化できるため、うまく活用すれば資金繰りの改善が期待できます。一方で、ファクタリングを巡って悪質なトラブルも発生しているため、十分に注意して利用することが大切です。 この記事では、ファクタリングの仕組みや種類、注意点について詳しく紹介します。 ファクタリングとは ファクタリングとは、企業が保有している売掛債権(売掛金など)をファクタリング会社が一定の手数料を差し引いて買い取るサービスです。売掛債権の支払期日が到来する前に資金化できるため、事業者の資金調達方法として活用されることがあります。 ファクタリングの法的な位置づけは、「債券譲渡契約(売買契約)」です。金融機関からの融資とは異なり、貸借対照表上の借入金(負債)が増えません。 融資のように、毎月利子という形で負担は発生しませんが、ファクタリングを利用する際に手数料が発生するので、頻繁に利用すると業績や財務の悪化につながる恐れがあります。 ファクタリングの仕組み 基本的なファクタリングは「買取ファクタリング」と呼ばれており、これを応用した仕組みとして「保証ファクタリング」や「一括ファクタリング」があります。ここでは、3種類のファクタリングの概要と仕組みを紹介します。 買取ファクタリング 買取ファクタリングとは、ファクタリング会社がサービスを利用する企業から売掛債権を買い取り、企業に対して資金を提供する仕組みです。ファクタリング会社は、売掛債権から手数料を差し引いた金額をサービス利用企業に支払います。 保有している売掛債権を譲渡するため、売掛債権の回収リスクはファクタリング会社に移転します。売掛債権の管理や回収に関する業務を効率化できるのも特徴です。 ファクタリングで調達した資金で借入金などの有利子負債を返済すれば、オフバランス化によって、貸借対照表に影響を与えずに済むこともできるでしょう。 保証ファクタリング 保証ファクタリングとは、ファクタリング会社と保証契約を結ぶことで、売掛債権の回収について保証を受ける仕組みです。万が一売掛先が倒産した場合は、企業はその売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、決められた保証の範囲内で保証金額を受け取ります。 一般的な買取ファクタリングは、資金調達と売掛債権のリスク移転を同時に達成できるのに対し、保証ファクタリングは売掛債権のリスク移転のみとなります。 保証ファクタリングのスキームは次の2つです。 個別保証方式個々の売掛債権について保証額を決定し、回収の保証を行う 根保証方式個々の売掛先について保証極度額を決定し、その極度額の範囲内で回収の保証を行う(債権を特定しない) どちらの方式も、売掛債権の金額や極度額に応じて保証料が発生します。 一括ファクタリング 一括ファクタリングとは、企業は売掛債権の回収側ではなく、代金を支払うことで保証を受ける仕組みです。企業、仕入先(買掛先)、ファクタリング会社の3社が合意のうえ、仕入先が企業に対して保有している売掛債権をファクタリング会社に一括譲渡します。 企業は、売掛債権に関する代金をファクタリング会社に一括で支払います。仕入先ごとに支払っていた代金を、ファクタリング会社に一括で支払いが済むため、多数の仕入先を抱えている場合は支払業務の効率化につながるでしょう。 仕入先にとっては、売掛債権回収に関する事務の効率化、決済期日前の割引による迅速な資金調達が可能になります。 出典)経済産業省 国立国会図書館デジタルコレクション「地域金融人材育成システム開発事業 : 創業・起業促進型人材育成システム開発等事業」P.27~P.30 ファクタリングの注意点 事業者にとって、ファクタリングは資金調達や事務作業の効率化などが期待できる一方で、次のような注意点もあります。また、ファクタリングを悪用し、個人に対して貸付けを行う事例も発生しています。 偽装ファクタリング 偽装ファクタリングとは、貸金業登録のない業者がファクタリングを装って行う違法な貸付けです。次のようなケースに当てはまる場合は、偽装ファクタリングの恐れがあります。 売掛債権の買取代金が債権額に比べて著しく低額で、高額な手数料が差し引かれる 契約書に「債権譲渡契約(売買契約)」であることが明記されていない 売掛先の倒産などで債権を回収できない場合、売主に債権の買戻しを行わせる 出典) ・日本貸金業協会【注意喚起】悪質な金融業者にご注意! ・金融庁 ファクタリングの利用に関する注意喚起 これらはファクタリングに見えても、実態は貸付けです。貸金業登録がされていない無登録業者のヤミ金融であり、悪質な取り立てにあうリスクもあるため注意が必要です。 給与ファクタリング 給与ファクタリングとは、「給与(個人の賃金債権)の買取」を称して個人に行われる違法な貸付けです。「債権の買い取りなので金銭の貸付けではない」と説明していても、実態は貸付けであり、次のようなトラブルが発生しています。 年率換算で数百%にもなる高額な手数料の請求 本人や家族、勤務先への悪質な取り立て 高額な遅延損害金の請求 出典)独立行政法人国民生活センター 給与のファクタリング取引と称するヤミ金に注意!-高額な手数料や強引な取り立ての相談が寄せられています- 貸金業登録を行わずに給与の買い取りを行う業者は、違法なヤミ金融業者であるため、絶対に利用しないことが大切です。 ファクタリングの相談窓口 万が一ファクタリングを巡るトラブルに巻き込まれた場合は、一人で抱え込まず、以下の相談窓口に連絡しましょう。 相談窓口 電話番号 金融庁 金融サービス利用者相談室 0570-016811(IP電話からは03-5251-6811) 多重債務相談窓口連絡先 左記のリンク先を参照 日本貸金業協会貸金業相談・紛争解決センター 0570-051-051(IP電話からは03-5739-3861) 警察署 #9110(各都道府県警察相談ダイヤル) 消費者ホットライン 188 まとめ 本記事で紹介したように、ファクタリング自体は違法なものではなく、うまく活用すれば事業の資金繰りの改善が期待できます。一方で、ファクタリングを装った違法な貸付けを行うヤミ金融業者の存在が確認されており、金融庁や消費者庁などが注意喚起を行っています。 ファクタリングを利用する際は、少しでも不安がある場合は弁護士や専門家に相談し、業者が貸金業登録をしているか確認するなど、違法な取引に巻き込まれないよう十分に注意しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 事業資金の種類とそれぞれの特徴を紹介 事業資金は商売をする上で必要になる資金ですが、何に使うかによって呼び方が異なります。融資を受ける際には基本的に「どんなことに、いくら資金が必要なのか」を明確にさせなければ融資を受けられません...記事を読む

  • 相続税の基礎控除額や税負担を減らす方法を紹介

    両親や配偶者などの親族が亡くなり、相続人が財産を引き継ぐ場合、その財産は相続税の課税対象となります。相続財産の評価額が基礎控除額を超えるときは、その超える部分について相続税を納めなくてはなりません。相続税対策として、どのような準備をすればよいのでしょうか。 この記事では、相続税の基礎控除額や税負担を減らす方法について詳しく紹介します。 相続税の基礎控除額とは 相続税の基礎控除額とは、相続税がかからない非課税枠のことです。基礎控除があることで、相続財産の評価額が一定の範囲に収まっていれば、相続税はかかりません。 相続税が発生するかどうかは、相続財産から負債や葬儀費用などを差し引いた残額が、基礎控除額を上回るかどうかで判断ができます。 相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人 例えば、相続人が被相続人(亡くなった人)の配偶者と子2人の場合、法定相続人は3人です。この時、相続税の基礎控除額は4,800万円(3,000万円+600万円×3人)となり、相続財産の合計額が4,800万円以下であれば課税されません。 出典)財務省「親が亡くなりました。遺産を相続する場合にどのような税金がかかるのですか?」 相続税対策の具体例 相続財産の評価額が基礎控除額を超えると想定される場合、税負担を軽減するために、対策ができないか検討するかもしれません。相続税の軽減策として以下のような対策ができます。 相続財産自体を減らす 相続財産の評価額を減らす その他の対策 それぞれを詳しく見ていきましょう。 相続税対策①:相続財産自体を減らす 生前贈与によって、相続財産の総額を減らしていく方法です。被相続人が健在なうちに、少しずつ財産を推定相続人に渡していけば、相続税の負担軽減が期待できます。生前贈与としては、次の2つの方法が考えられます。 暦年贈与を利用する 暦年贈与とは、1年単位(1月1日~12月31日)で贈与を行う方法です。贈与税(暦年課税)には年110万円の基礎控除額があるため、年110万円の範囲内で贈与を行えば、贈与税が非課税のまま財産を受け取ることができます。 ただし、「毎年100万円ずつ10年間」のように毎年同額の贈与を行うと、定期金給付契約に基づく権利の贈与を受けたとみなされ、贈与税がかかる恐れがあります。毎年贈与契約を結び、その契約に基づいて贈与を行うことが大切です。 また、相続開始前7年以内に被相続人から取得した贈与財産は、一定額を除いて相続税の課税対象となります。相続税対策として暦年贈与を行うなら、なるべく早く始めたほうがいいでしょう。 出典) ・国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」 ・国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」 ・国税庁「令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」 贈与税の特例を利用する 子どもや孫などに住宅取得資金や教育資金、結婚や子育て資金の贈与を行う場合は、一定の要件を満たすと、一定額まで贈与税が非課税になる次の特例を利用できます。 住宅取得等資金の非課税 教育資金の一括贈与の非課税 結婚や子育て資金の一括贈与の非課税 いずれも贈与税の申告書の提出、金融機関での専用口座の開設などの手続きが必要です。利用できるか判断できない場合は、税理士や金融機関などの専門家に相談してみましょう。 出典) ・国土交通省「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」 ・国税庁「父母などから結婚・子育て資金の一括贈与を 受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし」 相続税対策②:相続財産の評価額を減らす 相続税は、相続財産の評価額に税率を掛けて税額を計算します。そのため、評価額を減らすことができれば、結果として相続税の負担軽減につながります。ここでは、相続財産の評価額を減らす方法を3つ紹介します。 生命保険の非課税枠を利用する 被相続人の死亡により受け取る生命保険金も相続税の課税対象ですが、次のように非課税限度額が設けられています。 生命保険金の非課税限度額=500万円×法定相続人の数 仮に法定相続人が配偶者と子2人(計3人)であれば、1,500万円(500万円×3人)までは相続税がかかりません。生命保険をうまく活用することで、より多くの財産を残すことが可能です。 出典)国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」 小規模宅地等の特例を利用する 小規模宅地等の特例とは、一定の要件を満たすと宅地の相続税評価額が減額される特例です。被相続人が居住用として使用していた宅地(特定居住用宅地)について、330㎡を限度に80%の減額を受けられます。 出典)国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」 マンションやアパートを経営する マンションやアパート経営も、相続財産の評価額を減らす効果が期待できます。賃貸用のマンションやアパートは借地権割合や借家権割合、賃貸割合を考慮して評価されるため、一般的な住宅よりもさらに評価額を下げることが可能です。 ただし、マンションやアパート経営などの不動産投資にはさまざまなリスクがあり、入居者がいなければ家賃が入ってきません。相続税の負担軽減だけでなく、安定した賃貸収入が見込めるかも考慮して判断する必要があるでしょう。 相続税対策③:その他の対策 相続税対策として、次のような制度を利用する方法もあります。 相続時精算課税制度を利用する 相続時精算課税制度とは、原則として60歳以上の両親や祖父母から、18歳以上の子または孫に財産を贈与したときに選択できる制度です。2,500万円までは贈与税が課税されず、限度額を超えた部分については一律20%の贈与税率が適用されます。 相続時には、本制度の贈与財産と他の相続財産を合計して相続税を計算する仕組みです。相続時精算課税制度は、令和5年度税制改正によって年110万円の基礎控除が創設されました。 暦年課税制度では相続開始前7年以内の贈与が相続税の課税価格の対象となる一方で、相続時精算課税制度では期間に関係なく、課税価格に加算されないというメリットがあります。しかし、相続時精算課税制度を一度選択すると、暦年課税に戻すことはできないので注意が必要です。 詳しくは、以下の関連記事をご確認ください。 関連記事はこちら相続時精算課税制度とは?メリット・デメリットを紹介 養子縁組で控除額を増やす 養子縁組を行い、相続税の控除額を増やす方法です。基礎控除額や生命保険金の非課税限度額は法定相続人の数で決まるため、養子縁組で子どもの数が増えれば控除額も増えます。 注意点は、法定相続人に含まれる養子の数に制限があることです。被相続人に実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までとなっています。また、代襲相続人になっていない孫などが養子になる場合、相続税額が2割加算される点にも注意が必要です。 まとめ 相続が発生しても、相続財産の評価額が「3,000万円+600万円×法定相続人」の基礎控除額の範囲内であれば相続税はかかりません。しかし、基礎控除額を超える場合は、何か対策ができないか検討してもいいかもしれません。 一方で、税金対策として活用できるかどうか、本当に対策ができるかどうかを素人が判断するのは難しいでしょう。実際に対策や制度を利用する際には、あらかじめ税理士などの専門家に相談すると安心でしょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 不動産相続について徹底解説!知っておきたい手続きや費用 不動産を相続することになった場合、さまざまな手続きが必要になります。不動産相続では、相続税や遺産分割で、トラブルが発生することもあります。不動産相続をスムーズに進めるには、手続きの流れを理解...記事を読む

  • 退職金制度とは?種類や特徴について解説

    会社を退職した時に、退職金額はいくらなのか、どのようにもらえるのかご存じでしょうか。退職金制度の種類は複数あるため、自身が勤める会社がどんな制度を採用しているかを把握しておくことが重要です。 この記事では、退職金制度の種類とそれぞれの特徴について詳しく解説します。 退職金制度とは 退職金制度とは、企業に一定期間働いた場合、勤続年数や役職、在職期間中の業績などに応じてお金が支給される制度のことです。しかし、退職金制度は労働基準法での取り決めがないため、必ずしも企業に制度導入の義務はありません。 退職金制度がある場合は、会社の就業規則や退職金に関する規程に明記されているため、確認しておきましょう。 退職金の相場 厚生労働省の調査によると、定年退職者の勤続年数別の平均退職給付額は以下のとおりです。 勤続年数 退職一時金 企業年金現価額 退職給付額 20年 394.9万円 222.9万円 617.8万円 30年 634.8万円 815.7万円 1,450.5万円 40年 1,269.2万円 888.1万円 2,157.4万円 出典)厚生労働省「令和3年民間企業の勤務条件制度等調査(民間企業退職給付調査)」 勤続年数が長くなるにつれて、退職給付額(退職一時金と企業年金の合計)も増加していることがわかります。勤続年数が長ければ長いほど、受け取れる退職金も多くなるのが一般的といえるでしょう。 退職金の使い道 退職金は老後の生活設計に大きく関わります。安心して老後生活を送るには、あらかじめ退職金の使い道を検討し、計画的に使うことが重要です。ここでは、退職金の使い道として代表的なものを4つ紹介します。 住宅ローンの返済 住宅ローンがまだ残っている場合、退職金を使って一括返済するか、引き続き毎月返済していくかを検討するかもしれません。 住宅ローンを一括返済した場合、月々の返済負担はなくなりますが、残債によっては退職金がほとんど手元に残らない場合もあるでしょう。残債や残返済期間、退職後の勤労収入の有無などを考慮して、一括返済するべきか判断することが大切です。 関連記事はこちら老後資金を確保するための住宅ローン返済術(60歳以上編) 住み替え・リフォームの資金 退職金を受け取る年齢になると、ライフスタイルの変化により住み替えやリフォームを検討するかもしれません。「子どもが独立したので自宅をダウンサイジングしたい」、「自宅が古くなったので住み替えたい」などの希望に沿って、退職金を住み替えやリフォーム資金に充てられます。 リフォームでは補助金が出る場合もあるほか、60歳以上の住宅ローンであるリ・バース60などを活用すれば手元資金を残すこともできます。いずれにしてもまとまったお金が必要になるので、計画的に行いましょう。 関連記事はこちらリ・バース60とは?メリット・デメリットを解説 老後の生活資金 退職金は、老後の生活費として残しておくと安心です。特に公的年金だけで生活するのが難しい場合、退職金は重要な老後の生活資金になります。 老後は娯楽費などを含めた日々の生活費に加えて、事故や病気、介護などでまとまった資金が必要になることもあるため、ゆとりをもって資金を確保することが大切です。 関連記事はこちら夫婦の老後資金はいくら必要?足りない時の対処法も紹介 関連記事はこちら老後の一人暮らしに生活費はいくら必要? 資産運用 退職金のうち、すぐに使う予定のない余剰資金は資産運用に回すのも選択肢です。株式や投資信託等の金融商品として保有することで、預貯金よりも資産が長持ちする効果が期待できます。 たとえば、65歳から2,000万円を毎月10万円(年120万円)取り崩す場合、81歳で資産は底をつきますが、利回り3%で運用しながら取り崩せば88歳まで資産は長持ちします。 資産運用は株式、投資信託、不動産投資など複数の方法があります。うまく運用できれば利益が出る一方で、損をすることもあるため、リスクのとりすぎに注意しましょう。金融機関や専門家などに相談する場合も、相談先は慎重に選ぶことが重要です。 退職金制度の種類とそれぞれの特徴 退職金制度は、主に次の4種類に分類されます。 退職一時金制度 退職金共済制度 確定給付企業年金制度(DB) 企業型確定拠出年金制度(DC) それぞれ制度内容や特徴について見ていきましょう。 退職一時金制度 退職一時金制度とは、会社を辞める際に一度にまとめて退職金が支給される制度です。支給額は勤務先の退職金規程に基づいて計算されます。退職一時金制度は自由度が高く、企業ごとに退職金の計算方法が異なるのが特徴です。 企業によって制度内容が異なるため、勤務先の退職金規程の内容を理解しておくことが重要です。わからないことがあれば、あらかじめ社内の担当者に確認しておきましょう。 退職金共済制度 退職金共済制度とは、主に中小企業を対象とした国の制度です。代表的なものに「中小企業退職金共済(中退共)」、「特定退職金共済」があります。 企業が外部機関に毎月掛金を支払い、退職金の積み立てを行います。そして従業員の退職時に、積み立てた掛金をもとに外部機関から退職金が直接従業員に支払われる仕組みです。退職金を受け取る際は、従業員本人が退職金請求の手続きを行う必要がある点に注意しましょう。 出典)独立行政法人勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部 確定給付企業年金制度(DB) 確定給付企業年金制度(DB)とは、会社を辞めるときに一時金または年金が給付される制度です。退職時に全額を一時金で受け取るか、一定期間にわたって年金で受け取るかを選択できます。 企業は契約に基づいて金融機関などに掛金を拠出し、年金資産の管理・運用を依頼します。将来の給付額があらかじめ決まっているため、従業員にとっては将来の見通しを立てやすいでしょう。 企業型確定拠出年金制度(DC) 企業型確定拠出年金制度(DC)とは、企業が掛金を拠出し、その掛金を従業員本人が管理・運用する制度です。従業員は投資信託などから運用商品を自ら選択し、その運用成果に応じて給付額が決まる仕組みになっています。 企業型確定拠出年金(DC)では、拠出限度額である月額55,000円の範囲で、会社が拠出する掛金に加えて、従業員本人が掛金を上乗せして拠出することができます。これをマッチング拠出制度といいます。 従業員掛金は会社の拠出金を超えることはできませんが、全額所得控除の対象となるため税制面でも優遇されます。 しかし、運用がうまくいけば給付額を増やすことができる一方で、選択した商品によっては元本割れの恐れがあるので注意が必要です。積立金は、原則として60歳以降に一時金または年金として受け取ることができます。企業によっては、一時金と年金を併用することも可能です。 退職金の税金・所得控除の計算方法 退職金は、「退職所得」として所得税や住民税の課税対象となります。ただし、退職所得控除が適用されるため、退職金額が退職所得控除額の範囲内に収まっていれば課税されません。 <退職所得金額の計算方法> 退職所得金額=(退職金額(源泉徴収される前の金額)-退職所得控除額)×1/2 <退職所得控除額の計算方法> 勤続年数20年以下 40万円×勤続年数※80万円未満の場合は80万円 勤続年数20年超 800万円+70万円×(勤続年数-20年) たとえば、30年勤務していた会社を退職する場合、退職所得控除額は1,500万円(800万円+70万円×10年)です。仮に退職金が2,000万円であれば、退職所得金額250万円(2,000万円-1,500万円)×1/2)に対して税金がかかります。 退職金の税金は、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出すれば退職金支給時に源泉徴収されるため、原則として確定申告は不要です。詳しくは、勤務先の担当部署に確認しましょう。 なお、退職金を年金で受け取る場合、国民年金や厚生年金などの公的年金と含めて「公的年金等控除」が適用されます。控除額を超える部分は、雑所得として所得税や住民税がかかります。 まとめ 退職金制度には複数の種類があり、どの制度を採用しているかは企業によって異なります。退職金を無計画に使ってしまうと、老後の生活費が不足するリスクがあります。退職金の見込額が把握できたら、住宅ローンの返済や住み替えなど、あらかじめ使い道を決めておきましょう。 また、退職金制度がない場合や老後資金に不安がある場合は、個人型確定拠出年金(iDeCo)を利用するなど、計画的に資産を増やすことも大切です。退職後により豊かな生活を送るためにも、まずは自社の退職金制度を理解し将来の資金計画を早めに立てることが大切です。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 iDeCo(イデコ)の仕組みとは?メリット・デメリットを解説 iDeCo(イデコ)は、公的年金だけでは不足する老後資金を準備するための制度です。iDeCoについて聞いたことはあっても、その特徴はよくわからない方もいるのではないでしょうか。iDeCoは2...記事を読む

  • 住宅ローンの5年ルールと125%ルールとは?メリット・デメリットを解説

    住宅ローンを変動金利型で組んだ場合、金利が上昇し、返済額が増えるのではないか、と不安に感じるかもしれません。 しかし、多くの金融機関では、金利が上昇しても急に返済額が変わらない「5年ルール」や「125%ルール」が採用されています。住宅ローンを変動金利型で組む場合は、これらのルールや仕組みを理解しておくことが重要です。 この記事では、住宅ローンの5年ルール、125%ルールの概要やメリットとデメリットについて詳しく解説します。 5年ルールとは? 5年ルールとは、金利が上昇しても5年間は住宅ローンの返済額が変わらない措置です。住宅ローンの変動金利型は、通常半年ごとに適用金利が見直されるので、5年ルールがなければ、金利が変動するたびに半年単位で毎月の返済額が変わります。しかし、5年ルールによって、返済額が変更されるのは借り入れから6年目、11年目、16年目、のように5年ごととなります。 仮に変動金利の上昇が起こったとしても、返済額が急に増えないことが5年ルールのメリットといえるでしょう。5年間は毎月の返済額が一定のため、急に返済額が増えて家計が苦しくなることを避けられます。 一方で、5年ルールは、返済額が変わらなくても毎月の返済額に占める元金と利息の内訳が見直されています。つまり、金利が上昇すると返済額に占める利息の割合が増え、元金が減るペースが遅くなってしまうのがデメリットです。 加えて、金利が大幅に上昇すると、利息が毎月の返済額を上回って「未払利息」が発生する恐れもあります。もし未払利息が発生した場合、通常の返済とは別に支払いをしない限り、最終返済日まで繰り越しとなります。気づかないうちに未払利息が増加し、元金の返済が全く進まなくなるので注意が必要です。 出典)一般社団法人全国銀行協会「未払い利息が発生する仕組み」 未払い利息の計算方法は、金融機関によって異なるので、自身が組んでいる住宅ローンでは、どのように計算されるのか確認しておきましょう。 125%ルールとは? 125%ルールとは、金利が上昇しても返済額が125%を超えて増加しないようにする措置です。5年ルールによって5年ごとに返済額が増えるときは、それまでの返済額の1.25倍が上限となります。なお、金利が下がったときは、下限なく返済額は減ります。 125%のルールのメリットは、5年ルールでは防げない返済額の大幅な負担増を回避できることです。ただし、返済額が1.25倍に増えるのは金利が大きく上昇した場合に限られます。たとえば、借入額5,000万円、金利0.5%、借入期間35年で元利均等返済の条件で毎月の返済額が1.25倍に増える事例を考えてみましょう。 上述の条件で毎月の返済額をシミュレーションすると、毎月の返済額は129,792円となります。この返済額に125%ルールが適用されるとき、毎月の返済額は162,240円です。実際に金利が変動する場合を考えると、計算が複雑であるため、返済開始時の金利が何%のときに、この返済額になるかを考えてみましょう。 借入額5,000万円、借入期間35年、毎月の返済額は162,240円でシミュレーションすると、適用金利は1.867%となります。この結果からわかるように、125%ルールは金利が大幅に増加しないと適用されず、昨今の市中金利からは考えにくいほど大きな変動がないと、125%には当たらないことがわかります。 5年ルールや125%ルールの注意点 5年ルールと125%ルールは金利変動リスク対策ではない 5年ルールと125%ルールがあれば、金利が上昇しても返済額が急に増えることはありません。しかし、実際は利息の支払いが免除されるわけではなく、支払いが先送りされているだけです。 もし「5年ルールや125%ルールがあるから金利が上昇しても大丈夫」と考えているのであれば、それは誤りです。住宅ローンの金利変動リスクを完全に排除したい場合は、固定金利型で借り入れたほうが良いでしょう。 なお、住宅ローンの固定期間選択型は、固定期間が終了して変動金利へ切り替わっても、一般的には5年ルールや125%ルールは適用されないので注意が必要です。加えて、固定期間終了時点の金利で返済額が再計算されるため、金利が上昇すると返済額が大幅に増える恐れがあります。 5年ルールや125%ルールを採用していない金融機関もある 金融機関によっては5年ルールや125%ルールを採用していない場合もあります。その場合、通常は半年ごとに金利が見直され、その都度返済額が変わります。この場合は金利が大幅に上昇しても利息を先送りせずに支払うため、返済期間の終盤で未払利息の負担が生じることはありません。 5年ルールと125%ルールは一時的な家計の負担軽減にはつながりますが、利払いの支払いを先送りにしているだけに過ぎないということを念頭に置いておく必要があります。 まとめ 住宅ローンの変動金利型は、多くの金融機関で5年ルールと125%ルールが採用されているため、金利が大幅に上昇しても急に返済額が増えることはありません。 ただし、あくまでも利息の支払いが先送りされるだけで、返済総額が減るわけではないので注意が必要です。むしろ未払利息が発生し、返済期間の終盤で大きな負担が生じる恐れがあります。 住宅ローンを変動金利型で組む場合は、予め金利が上昇した場合の返済額を試算し、家計への負担を考慮しながら、その他の条件についても比較検討することが大切です。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 住宅ローンを比較する5つのポイント マイホームは、住宅ローンを利用して購入するのが一般的です。さまざまな金融機関が住宅ローンを扱っているので、どのように選べばよいかわからないのではないでしょうか。 自分に合った住宅ローンを選ぶ...記事を読む

  • ローンの元金据置とは?メリット・デメリット、利用事例を解説

    ローンの元金据置は、一般的な住宅ローンなどでは用いられない返済方式の一つです。毎月の返済額の軽減が期待できる一方で、総返済額が増えるリスクもあるため、仕組みを理解したうえで利用することが大切です。 この記事では、元金据置の仕組みやメリットとデメリット、利用事例について詳しく解説します。 ローンの元金据置とは ローンの元金据置とは、一定期間元金を据え置き、その間利息のみを支払う返済方法です。元利均等返済などの返済方法に特約という形で使われることもあります。 代表的な返済方法である「元利均等返済」や「元金均等返済」は毎月元金を支払うのに対し、「元金据置返済」は、所定の期間、元金を据え置いたまま利息のみを支払う返済方法です。元金据置期間には上限が定められており、据置期間経過後は元利返済が始まります。 例えば、「返済期間10年のうち、元金据置期間4年」の条件でローンを組む場合、借入当初4年間は利息のみを返済し、5年目以降は元金と利息を返済することになります。 元金据置のメリット ローンの元金据置をすると、毎月の返済負担が一定期間軽減されるのがメリットです。元金据置期間は元金の支払いが不要のため、毎月の返済負担を軽減することができます。 【借入金額500万円、返済期間10年、固定金利2.0%、元利均等返済の場合】 返済方法 毎月の返済額 元金据置期間なし46,007円 元金据置期間4年4年目まで:8,333円5年目以降:73,752円 出典)日本政策金融公庫「事業資金用 返済シミュレーション」で試算 子供の教育費など、まとまった資金が必要となることが明確な期間を元金据置期間とすることで、無理なくローンを利用できます。 元金据置のデメリット ローンの元金据置は、総返済額が増えてしまうのがデメリットです。元金据置期間は元金が償還されないため、利息総額が増加し、結果として総返済額も増加します。また、元金据置期間がない場合と比べて、据置期間経過後は毎月の返済額が増える点にも注意が必要です。 【借入金額500万円、返済期間10年、固定金利2.0%、元利均等返済の場合】 返済方法 利息総額 返済総額 元金据置期間なし520,805円 5,520,805円 元金据置期間4年710,145円 5,710,145円 出典)日本政策金融公庫「事業資金用 返済シミュレーション」で試算 上記シミュレーションの場合、4年間の元金据置によって返済総額が189,340円増えています。このように、返済期間全体で見たときにはかえって返済負担が重くなる点に注意しましょう。 元金据置の利用事例 元金据置の活用事例をローンの種別ごとに3つ紹介します。 住宅ローン 住宅ローンにおいても、元金据置返済が有効と考えられる場面があります。たとえば、一時的に収入が減少してしまった場合や、注文住宅で建物が完成するまでの土地先行決済での活用が考えられます。 一時的に収入が減少してしまった際の住宅ローン返済 突発的な災害や病気によって、一時的に収入が減少してしまったとき、住宅ローンの返済が難しくなることもあるでしょう。そのような時、住宅ローンを元金据置にできれば、生活を立て直すまでの当面の支払いを抑えられます。 一方で、住宅ローンで元金据置期間を設定するためには、金融機関の承諾が必要です。住宅ローン返済が難しくなった原因や返済が正常化する合理的な理由があれば、金融機関が応じてくれるかもしれませんが、必ず利用できるわけではないので、詳細は住宅ローンを組んでいる金融機関に相談しましょう。 注文住宅で建物が完成するまでの住宅ローン返済 注文住宅などで土地を購入してから、建物を建築する場合、現居の費用と新居のための土地の返済で支払いが二重になってしまいます。そのような時に、新居のための土地の返済を元金措置とすることで、毎月の返済負担を抑えられます。 ただし、土地に対する融資が元金措置にできるかどうかは、新居の住宅ローンを提供する金融機関の商品によって異なります。詳しくは、住宅ローンを組む際に、金融機関に相談してみましょう。 教育ローン 大学や専門学校の入学金、授業料などの支払いに教育ローンを利用する際にも、元金措置が活用できます。在学中は授業料だけでなく、一人暮らしの際の住居費や、生活費などの出費がかさむため、元金据置を利用して毎月の返済額を抑えることで、ゆとりをもって返済を進めることができます。 不動産投資ローン 不動産投資ローンでは、短期的な売却を想定して元金据置返済を利用する方法があります。収益用不動産を保有期間5年以内に売却すると「短期譲渡所得」に該当し、「長期譲渡所得(保有期間5年超)」に比べて高い税率が適用されます。 5年以上保有した後の売却を想定し、保有期間は元金据置にして返済負担を抑えることで、キャッシュフローの向上が可能です。そして、保有期間が5年を超えた後に売却すれば、不動産売却時の税金対策としても活用できます。 関連記事はこちら不動産の購入・売却にかかる税金をそれぞれ解説 まとめ ローンの元金据置は所定の期間、利息のみを支払うため毎月の返済負担の軽減が期待できます。教育ローンは子どもの在学中、住宅ローンは住み替えが決まるまで元金据置にすれば、ゆとりをもって返済を進められるでしょう。 ただし、元金を据え置くと総返済額は増えてしまうため、仕組みを理解したうえで利用することが大切です。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 住宅ローンが払えないときはどうすればいい?FPが解説 コロナ禍による収入減で、住宅ローンの返済に苦しむ人も増えているようです。住宅ローンの返済が厳しくなったときにできることは何があるでしょう? また、2020年12月から「自然災害債務整理ガイド...記事を読む

    2024.04.10ローン返済
  • 不動産売買の税金

    不動産の購入・売却にかかる税金をそれぞれ解説

    不動産売買の際には、購入する側と売却する側のそれぞれに税金がかかります。不動産売買の予定がある場合は、あらかじめどのような税金が発生するのか知っておくことが重要です。 この記事では、不動産の購入と売却のそれぞれにかかる税金について解説します。 不動産の「購入」にかかる税金 まずは、不動産の購入にかかる税金の種類と計算方法を紹介します。不動産の購入にかかる税金は、「不動産取得税」「登録免許税」「印紙税」の3種類です。順に解説します。 不動産取得税 不動産取得税とは、土地や家屋などの不動産を取得した際に課される税金です。都道府県から送付される納税通知書を使用して、取得日から半年から1年後に納付します。税額は以下の算式で計算されます。 課税標準額(固定資産税評価額)×税率(本則4%) ただし、令和6年(2024年)3月31日までは、居住用の住宅を購入した場合に限り、以下2つの軽減措置があります。 土地部分のの課税評価額が2分の1に減額 土地部分も3%の軽減税率が適用 出典) ・総務省「不動産取得税」 ・東京都主税局「不動産取得税」 登録免許税 登録免許税とは、所有権の保存登記(新築住宅)や移転登記(中古住宅)、住宅ローンの抵当権設定登記などを行う際に納める税金です。法務局で登記手続きを行う際に納めるので、納税も含めて司法書士に依頼するのが一般的です。税額は以下の算式で計算されます。 課税標準額×税率 課税標準額と税率は登記の内容によって異なり、住宅については軽減税率が適用されます。 登記の内容 課税標準額 本則税率 軽減税率 建物の所有権保存登記 登記官が認定した価額 0.4% 0.15%※1 土地の所有権移転登記 固定資産税評価額 2% 1.5%※2 建物の所有権移転登記 固定資産税評価額 2% 0.3%※1 抵当権設定登記 借入金額 0.4% 0.1%※1 ※1 令和6年(2024年)3月31日まで ※2 令和8年(2026年)3月31日まで 印紙税 印紙税とは、契約書や領収書などに課される税金です。不動産の購入では、売買契約書や住宅ローンの金銭消費貸借契約書などに税額分の収入印紙を貼付します。印紙税額は以下のとおりです。 契約金額 不動産売買契約書()は軽減税率※ 工事請負契約書 金銭消費貸借契約書 100万円超500万円以下 2,000円(1,000円) 400円~2,000円 2,000円 500万円超1,000万円以下 1万円(5,000円) 1万円 1万円 1,000万円超5,000万円以下 2万円(1万円) 2万円 2万円 5,000万円超1億円以下 6万円(3万円) 6万円 6万円 1億円超5億円以下 10万円(6万円) 10万円 10万円 5億円超10億円以下 20万円(16万円) 20万円 20万円 ※ 令和6年(2024年)3月31日まで 出典) ・国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」 ・国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」 不動産購入時の税金対策 ここでは、不動産購入時に利用できる税金対策を2つ紹介します。 住宅ローン控除 住宅ローンを利用して住宅の新築、取得または増改築等をした場合に利用できる制度です。一定の要件を満たすと、最大13年間、年末ローン残高の0.7%が所得税(一部、翌年の住民税)から控除されます。初年度は確定申告が必要ですが、2年目以降は年末調整で控除を受けられます。 住宅ローン控除については、以下の記事で詳しく説明しています。 関連記事はこちら【令和5年版】住宅ローン控除とは?取得した住宅の状況に分けて解説 認定住宅新築等特別税額控除 個人が認定長期優良住宅や認定低炭素住宅など(以下認定住宅)を新築及び取得した場合に、一定額をその年の所得税額から控除できる制度です。控除額の計算方法は以下のとおりです。 標準的なかかり増し費用(限度額650万円)×10% 標準的なかかり増し費用とは、認定住宅の基準適合に必要な費用のことです。認定住宅の床面積に応じて計算します。ただし、住宅ローン控除とは併用できないので注意が必要です。 出典)国税庁「No.1221 認定住宅等の新築等をした場合(認定住宅等新築等特別税額控除)」 不動産の「売却」にかかる税金 次に、不動産の売却にかかる税金の種類と計算方法を紹介します。不動産の売却にかかる税金は、「譲渡所得税」「登録免許税」「印紙税」の3種類です。不動産購入と異なる譲渡所得税を中心に解説します。 譲渡所得税 不動産を売却して利益(譲渡所得)が生じる場合は、他の所得(給与所得、事業所得など)と区分して譲渡所得税がかかります。発生した譲渡所得税は確定申告をして納税を行います。税額算出に用いられる譲渡所得金額は以下の算式で計算されます。 譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額 取得費:売却する不動産の購入代金(建物は減価償却費相当額を控除)、仲介手数料など 譲渡費用:仲介手数料、不動産を売却するための測量費、建物の取壊し費用など ※特別控除額の詳細は後述 このように算出した譲渡所得金額に税率を掛けて計算します。税率は、「長期譲渡所得」と「短期譲渡所得」で以下のように異なります。 区分 税率 長期譲渡所得(所有期間5年超) 20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%) 短期譲渡所得(所有期間5年以下) 39.63%(所得税30%、復興特別所得税0.63%、住民税9%) 出典)国税庁「土地や建物を売ったとき」 登録免許税 売却時は、抵当権抹消登記の際に登録免許税がかかります。登録免許税額は、不動産1個につき1,000円です。住宅の場合、土地1個と建物1個で合計2,000円となります。 所有権移転登記も必要ですが、登録免許税額は買主負担が一般的です。 出典)法務局「抵当権の抹消登記に必要な書類と登録免許税」 印紙税 売却時は、不動産売買契約書に貼付する収入印紙が必要です。通常は売主と買主が1通ずつ契約書を保管するため、売却時にも印紙税が生じます。印紙税額は購入時と同様です。 不動産売却時の税金対策 不動産売却時の税金対策として利用できる制度を3つ紹介します。 3,000万円の特別控除 マイホームを売却したときに、所有期間に関係なく、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例です。課税所得を大きく減らせるため、譲渡所得税の負担が軽減されます。 以前住んでいた住宅を売却する場合は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があります。ただし、親子や夫婦などの近しい親族へ売却する場合は控除を受けられません。 出典)国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」 マイホーム売却時の軽減税率の特例 所有期間10年超のマイホームを売却する場合、一定の要件を満たすと、長期譲渡所得にかかる税率(通常は20.315%)が以下のように軽減されます。 長期譲渡所得金額 税額 6,000万円以下の部分 14.21%(所得税10%、復興特別所得税0.21%、住民税4%) 6,000万円超の部分 20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%) この特例は、上述した3,000万円の特別控除と併用可能です。 出典)国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」 損益通算・繰越控除 令和5年(2023年)12月31日までに所有期間5年超のマイホームを売却して譲渡損失が生じた場合、一定の要件を満たすと、その損失を他の所得(給与所得、事業所得など)から控除できる損益通算が可能です。 また、損益通算をしても控除しきれなかった譲渡損失は、翌年以後3年以内に繰り越して控除できる、繰越控除が可能です。 出典) ・国税庁「No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」 ・国税庁「No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」 まとめ マイホームの売買は軽減税率や特別控除などの特例が充実しているため、うまく活用すれば税負担の軽減につながります。不動産売買の予定がある場合は、物件の売買価格や諸費用だけでなく、どんな税金がいくらかかるのかも把握しておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 住み替えの流れや費用、利用できる税制上の特例を解説 ライフスタイルの変化などから、「住み替え」を検討することがあるかもしれません。しかし、住み替えたいと思っても、どのように住み替えを進めていいか、わからないことが多いかもしれません。また、住み...記事を読む

  • 請求書の書き方

    請求書の書き方、作り方を徹底解説!

    請求書の書き方に法的な決まりはありません。しかし、商品やサービスの代金を期日までに払ってもらうには、必要な情報を漏れなく記載した請求書を、取引先に送付する必要があります。 この記事では、請求書の書き方や記載すべき情報、注意点を解説します。 請求書とは? 請求書とは、取引先に納品した商品やサービスの対価を請求する際に発行する書類です。取引先は、実際の取引内容と請求書の記載内容に誤りがないかを確認したうえで、期日までに支払いを行います。 請求書に法的な決まりはなく、必要な情報を満たしていれば形式は問われません。ただし、取引先と請求日や請求書の送付方法などについて話し合い、ルールを決めておく必要があります。 記載情報 国税庁の資料によると、請求書に記載しておくべき情報として以下の5つが挙げられています。 請求書の発行事業者の氏名・名称 取引先(請求書を受け取る事業者)の氏名・名称 取引年月日 取引内容(軽減税率の対象品目であるか) 取引金額(税率ごとに区分した合計額) また、2023年10月に開始した「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」に対応するには、さらに以下の3つも記載が必要です。 登録番号 適用税率 税率ごとに区分した消費税額等 出典)国税庁「適格請求書等保存方式の概要」 ただし、請求先に確実に支払ってもらうためにも、さらに以下の情報も記載するのが望ましいでしょう。 請求日(発行日) 請求書番号 支払期日 振込先(口座情報、振込手数料の取り扱い) 請求書番号とは、請求書を管理するための任意の番号です。請求書番号を記載すると、取引先とやり取りする際に請求書を特定しやすくなり、見積書や納品書とスムーズに照合できます。 また、支払期日や振込先情報を記載しておかないと、取引先の経理処理に影響し、支払いが遅れる恐れがあります。 請求書の書き方 ここでは、請求書の書き方のポイントを紹介します。 ①請求先 請求先の住所や名称を記載します。担当部署や担当者名まで記載しておくと、請求先の経理担当者が社内で請求内容について確認したいときに対応しやすくなるでしょう。 ②請求書番号 請求書番号があると、請求書を管理しやすくなります。記載する場合は、番号の作成ルールを決めておきましょう。 ③請求日(発行日) 請求日や発行日は、あらかじめ取引先とルールを決めておき、そのルールに則って記載します。 ④請求者(請求書の発行者) 請求者の住所や名称、連絡先(電話番号、メールアドレスなど)を記載します。連絡先を記載すれば、取引先が請求内容について確認したいときにスムーズにやり取りできます。 ⑤押印 押印しなくても請求書は有効であるため、必ず必要なものではありません。ただし、請求者の社印を押印することによって、その会社が発行した請求書であることを証明する手段となり得ます。 ⑥取引内容 商品名や数量、単価、金額などの取引内容を記載します。 ⑦取引金額 小計(税抜の合計額)、消費税額、税込の合計額を記載します。 ⑧請求金額 消費税額を含めた請求金額の総額を記載します。請求金額を記載することにより、請求先は実際の支払額を把握できます。 ⑨支払期日 取引先と事前に取り決めを行ったうえで、支払期日を記載します。必要に応じて、振込手数料をどちらが負担するか明記しておくといいでしょう。振込手数料は、支払側が負担するのが一般的です。 ⑩振込先情報 振込先の銀行名、支店名、口座番号、口座名義を記載します。もし追加で何か伝えたいことや特記事項がある場合は備考欄に記載しましょう。 請求書の作り方 ここでは、一般的な請求書の作り方を3つ紹介します。請求書は自分で作成する場合もあれば、取引先からフォーマットを指定されることもあります。法的に形式は定められていないので、状況に合わせて作成方法を選択しましょう。 手書きで作成する ネットショップや文具店などで市販の請求書用紙を購入し、手書きで作成する方法です。パソコンやプリンターがなくても、手書きで簡単に作成できます。ただし、修正に時間や手間がかかり、計算ミスなどが発生する恐れがあります。 取引先から同意を得る必要はありますが、売上規模が小さいうちは、手書きで請求書を作成するのも選択肢です。 エクセルやワードで作成する インターネット上には、無料で利用できるエクセルやワードの請求書フォーマットがたくさんあります。そのフォーマットをダウンロードすれば、時間や手間をかけずに請求書を作成できます。 一方で、発行枚数が多い場合は、データの管理が難しくなる恐れがあります。誤ってファイルを削除してしまうリスクがある点にも注意が必要です。エクセルやワードで作成する方法は、請求書の発行枚数が少ない場合におすすめです。 請求書作成サービスを利用する 市販のソフトウエアやクラウドサービスを利用して請求書を作成する方法です。請求書作成に特化しており、「毎月同じ請求書が自動的に発行される」「制度改正に自動で対応してくれる」といった便利な機能が備わっています。 デメリットは、インターネット環境が必要で、サービスを導入するための費用がかかることです。請求書作成サービスは、請求書の発行枚数が多く、作成業務にかかる時間や手間を省きたい場合におすすめです。 請求書の注意点 請求書を作成する際は、記載内容に誤りがないかを確認することが重要です。誤りがあると、期日までに支払われなかったり、再請求や返金が生じたりする恐れがあります。取引先に送付する前に、請求書の内容に誤りがないかをもう一度確認しましょう。 また、受領した請求書を紛失しないようにすることも大切です。法人は、確定申告の提出期限の翌日から7年間保存しなくてはなりません。 個人事業主は、5年間保存する義務があります。 なお、2023年10月にスタートしたインボイス制度では、発行者はインボイスの控えを7年間保存しなくてはなりません。また、受領者が消費税の仕入税額控除を受ける場合は、法人・個人を問わず、インボイスを7年間保存する必要があります。 まとめ 請求書に法的な形式はありませんが、必要な情報をもれなく記載しないと期日までに代金が支払われない恐れがあります。取引先とスムーズにやり取りできるように、請求書の書き方、作り方を理解しておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 支払督促とは?かかる費用と手続きの流れをわかりやすく解説 支払督促は、お金の未払いに関するトラブルを解決できる法的手続きのひとつです。お金を返してもらえなくて困っている場合、支払督促を利用すれば、裁判をしなくても迅速に問題を解決できる可能性がありま...記事を読む

    2024.01.31お金の悩み
  • 支払督促とは

    支払督促とは?かかる費用と手続きの流れをわかりやすく解説

    支払督促は、お金の未払いに関するトラブルを解決できる法的手続きのひとつです。お金を返してもらえなくて困っている場合、支払督促を利用すれば、裁判をしなくても迅速に問題を解決できる可能性があります。 この記事では、支払督促の概要や費用、手続きの流れをわかりやすく解説します。 支払督促とは 支払督促とは、債権者からの申立てに基づいて、簡易裁判所の書記官が債務者に金銭の支払いを命じる制度です。書類審査のみで手続きが行われるため、以下の金銭に関する未払い、未返還などのトラブルを、迅速に解決できる可能性があります。 <支払督促の対象となるもの> 貸金、立替金 売買代金 給料、報酬 請負代金、修理代金 家賃、地代 敷金、保証金 債務者からの異議申立てがなければ、確定判決と同様の効力が生じます。 出典)政府広報オンライン「「お金を払ってもらえない」とお困りの方へ 簡易裁判所の「支払督促」手続をご存じですか?」 支払督促の特徴 支払督促には以下のような特徴があります。 書類審査のみで手続きが行われる 債権者の申立てのみに基づき、簡易裁判所の書記官が金銭の支払いを命じる 支払督促をしても相手方が金銭を支払わない場合、強制執行の申立てが可能 裁判所に納める手数料は通常の訴訟の半額 通常の訴訟とは異なり、債権者(申立人)が裁判所に出向いたり、証拠を提出したりする必要はありません。簡易裁判所の書記官が債務者(相手方)の言い分を聞くことなく、申立内容のみに基づいて支払督促を発付します。 支払督促が発付されても相手方が金銭を支払わず、異議申立てもしない場合は、裁判所に「仮執行宣言の申立て」を行うことで、強制執行の申立てが可能です。強制執行とは、債務者の財産を差し押さえるなどして、裁判所が強制的に申立人の債権を回収する手続きです。 出典)政府広報オンライン「「お金を払ってもらえない」とお困りの方へ 簡易裁判所の「支払督促」手続をご存じですか?」 支払督促ができない場合 以下の場合は、支払督促ができないので注意が必要です。 金銭の支払いを目的としない(建物の明渡しなど) 債務者の住所がわからない 債務者が日本以外に居住している 書類を郵送して手続きを行うため、相手方の住所が判明している必要があります。 出典)裁判所「支払督促の申立について」 支払督促手続きの流れ 支払督促の申立ては、以下の流れで進めます。 支払督促申立書の提出 裁判所の審査 支払督促の発付 各手続きの内容を確認していきましょう。 1.支払督促申立書の提出 申立書に必要事項を記入して、債務者の住所を管轄する簡易裁判所に提出します。提出時には、手数料と相手方に書類を送付するための郵便切手などが必要です。申立書は裁判所のホームページからダウンロードできます。手数料については、後ほど詳しく説明します。 2.簡易裁判所の審査 簡易裁判所の書記官が、申立書の内容に不備や法律違反などがないかを確認します。債務者側の意見は聞かず、申立ての内容だけで判断されるのが特徴です。問題があれば補正を求められたり、却下されたりすることもあります。 3.支払督促の発付 審査に通過すると、裁判所の書記官は支払督促を発付し、申立者には発付通知が届きます。債務者は、納得できなければ支払督促を受け取ってから2週間以内に異議申立てが可能です。異議のあるなしで、その後の流れは変わります。 債務者から異議申立てがあった場合 債務者からの異議申立てを裁判所が受理すると、支払督促は効力を失い、通常の訴訟手続きに移行します。債権者の主張は、訴訟において審理が続けられます。 債務者から異議申立てがなかった場合 債務者から異議申立てがない場合は、仮執行宣言の申立てが可能です。なお、仮執行宣言の申立てを相手方が支払督促を受領して2週間を経過した日から30日以内に行わない場合、支払督促が失効します。 申立ての内容に問題がなければ、裁判所の書記官は「仮執行宣言付支払督促」を相手方に送達します。仮執行宣言付支払督促を送達後、相手方が異議申立てをしたときは訴訟手続きに移行し、相手方からの支払いがない場合は強制執行となります。 出典) ・政府広報オンライン「「お金を払ってもらえない」とお困りの方へ 簡易裁判所の「支払督促」手続をご存じですか?」 ・法務省「督促手続について」 支払督促にかかる費用 支払督促には、以下のような費用がかかります。 申立手数料:収入印紙代(下記参照) 支払督促正本送達費用(郵便切手代):債務者の数×1,204円分*1 申立書作成及び提出費用:800円*2 支払督促発付通知費用(郵便切手代):84円 資格証明書手数料(法人の場合):600円 送達結果通知費用(官製はがき代):債務者の数×63円 ※1 申立書が7枚以下なら1,204円、申立書が8枚以上なら1,250円、16枚以上ならさらに切手代が増えることがあります。 ※2 この800円は、債権者が裁判所に支払うものではなく、支払督促を申立てる人(債権者)が債務者に請求できる法令で定められた費用です。 出典)裁判所「支払督促の申立てについて」 申立手数料は、請求金額に応じて以下のように定められています。 請求金額 申立手数料 100万円以下 10万円ごとに500円 100万円超 500万円以下 20万円ごとに500円 500万円超 1,000万円以下 50万円ごとに1,000円 1,000万円超 10億円以下 100万円ごとに1,500円 10億円超 50億円以下 500万円ごとに5,000円 50億円超 1,000万円ごとに5,000円 <例:請求金額が300万円の場合> ①100万円以下の部分:500円×(100万円÷10万円)=5,000円 ②100万円超500万円以下の部分:500円×(200万円÷20万円)=5,000円 ⇒申立手数料:1万円(①+②) 申立ての際は、相手方への送達や申立人への通知のため、郵便切手や郵便はがきも必要です。当事者の一方または双方が法人の場合は、代表者の資格を証明する書類として、各法人につき登記簿謄本を1通提出します。 出典)裁判所「手数料(別表)」 支払督促を受けた場合は? 万が一、支払督促を受けた場合は、内容を確認のうえ速やかに対応しましょう。異議がある場合は、同封の用紙を使用して、受領から2週間以内に異議申立てを行います。最近では、支払督促を悪用した架空請求の事例も報告されているため注意が必要です。 異議がない場合は、強制執行になる前に支払いを完了させましょう。なお、自分で対応することが難しいと判断した場合、弁護士に相談するといいでしょう。 まとめ 支払督促を利用すれば、簡易的な手続きでお金の未払いに関するトラブルを解決できるかもしれません。ただし、相手方が異議申立てを行うと訴訟に移行することになります。お金を払ってもらえなくて困っている場合は、支払督促の申立てを検討してみましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 債務整理とは?メリット・デメリットを解説 債務整理は、借金の悩みを解決する方法のひとつです。住宅ローンやキャッシング等の返済が難しい場合は、債務整理を行うことによって生活を立て直せる可能性があります。この記事では、債務整理の概要や4...記事を読む

  • 「ねんきんネット」はこんなに便利!使い方や年金見込額の確認方法を紹介

    「ねんきんネット」はこんなに便利!使い方を詳しくご紹介

    ねんきんネットは、自身の年金情報をインターネットで簡単に確認できるサービスです。将来の年金見込額もわかるので、老後の資金計画を立てるのに役立ちます。うまく使いこなせば、将来のお金に対する不安を解消できるでしょう。 この記事では、ねんきんネットでできることや年金見込額を調べる手順、注意点を紹介します。 ねんきんネットとは ねんきんネットとは、インターネットを通じて自身の年金情報を手軽に確認できるサービスです。日本年金機構が運営しており、パソコンやスマートフォンから年金に関するさまざまな情報を閲覧できます。 日本年金機構のホームぺ―ジまたはマイナポータルから登録すれば、すぐに利用可能です。 ねんきんネットの利用対象者は、基礎年金番号を持っている人です。ただし、1986年(昭和61年)4月以前に年金受給権が発生した老齢年金受給者は利用できません。 ねんきんネットでできること ねんきんネットでは、将来の年金見込額や年金記録をはじめ、年金に関するさまざまな手続きができます。具体的には以下のとおりです。 将来の年金見込額の確認 ねんきんネットには、将来の年金額を試算する機能が2つあります。 かんたん試算:現在の加入条件が60歳まで継続すると仮定して見込額を自動的に試算 詳細な条件で試算:職業、収入および期間、受給開始年齢などの条件を入力して試算 試算結果では、年齢ごとの年金見込額や金額の内訳を表やグラフで確認できます。まずは「かんたん試算」で大まかに試算したうえで、必要に応じて「詳細な条件で試算」も利用してみましょう。 出典)日本年金機構「「ねんきんネット」による年金見込額試算」 年金記録の確認 「年金記録の確認」機能では、「国民年金や厚生年金の加入履歴」「国民年金保険料の納付状況」などの最新の記録が確認できます。 加入していた年金制度の種類や納付状態が月別に記録されており、確認が必要と思われる月はアイコンなどでわかりやすく表示されます。 出典)日本年金機構「「ねんきんネット」によるご自身の年金記録の確認」 「ねんきん定期便」「通知書」の内容確認 ねんきん定期便とは、毎年誕生月に保険料納付の実績や将来の年金給付に関する情報をハガキや封書で通知するものです。 ねんきんネットを使うと、電子版「ねんきん定期便」をダウンロードできます。パソコンやスマートフォンから内容を確認できるので、紛失の心配がありません。 出典)日本年金機構「「ねんきんネット」による電子版「ねんきん定期便」」 また、以下の通知書もねんきんネット内で確認できます。 年金振込通知書 年金支払通知書 年金額改定通知書 年金決定通知書、支給額変更通知書 公的年金等の源泉徴収票 出典)日本年金機構「「ねんきんネット」による年金支払いに関する通知書の確認」 通知書の再交付申請 ねんきんネットでは、以下の通知書の再交付申請が可能です(本人分のみ)。 年金振込通知書 公的年金等の源泉徴収票 支給額変更通知書 年金額改定通知書 社会保険料(国民年金保険料)控除証明書 年金事務所などに訪問する必要がないため便利です。 出典)日本年金機構「「ねんきんネット」による通知書再交付申請」 届書の作成 ねんきんネットを使って、年金の手続きで必要となる各種届書を作成できます。作成したい届書を選択し、必要な情報を入力して自宅のプリンターで印刷する仕組みです。基礎年金番号などの情報が自動で反映されるため、作成の手間を省くことが可能です。ただし、電子申請ではないため、印刷して作成した届書は最寄りの年金事務所へ提出する必要があります。 具体的には、以下の届出書を作成することができます。 国民年金保険料に関する届書 年金を請求している方、受給している方向けの届書 年金を受給している方が亡くなったときの届書 出典)日本年金機構「「ねんきんネット」による届書作成」 持ち主不明記録検索 持ち主不明記録検索とは、国が保存している年金記録のうち、現在持ち主がわからなくなっているものを検索できる機能です。例えば、年金加入状況に記録漏れがあった場合に、持ち主不明記録検索で自身のものと思われる記録がないかを確認する、といった活用法が考えられます。検索条件と一致する年金記録があった場合は、最寄りの年金事務所などが調査を行い、探している年金記録と本当に合致しているかを判断します。 出典)日本年金機構「「ねんきんネット」による持ち主不明記録検索」 通知書のペーパーレス化 マイナポータルからねんきんネットを利用すると、日本年金機構から送付される以下の通知書のペーパーレス化が可能です。 社会保険料(国民年金保険料)控除証明書 公的年金等の源泉徴収票 ねんきんネットにログインし、トップページの「通知書のペーパーレス化(入力)」で設定を行うと、マイナポータルの「お知らせ」で電子データを受け取れます。 出典)日本年金機構「通知書の電子データをマイナポータルで受け取る設定」 ねんきんネットで年金見込額を調べる手順(画像付き) ここでは、ねんきんネットで将来の年金見込額を調べる手順を画像付きで説明します。なお、手順の説明に用いる画像はすべて日本年金機構のホームページからの引用です。 ▼まずはねんきんネットにログインし、トップページにある「将来の年金額を試算する」を押しましょう。 ▼次に「かんたん試算」を選びます。「詳細な条件で試算」を選び、職業などの条件を入力して試算することも可能です。 ▼試算条件を確認し、問題がなければ「試算する」ボタンを押します。 ▼年金見込額が表示されました。「金額の内訳」ボタンを押すと、年金見込額(月額)の詳細内容を確認できます。 出典)日本年金機構「「ねんきんネット」による年金見込額試算」 ねんきんネットの2つの利用登録方法 ねんきんネットは、以下2つの利用登録方法があります。 マイナポータルと連携する ユーザIDを取得する マイナンバーカードがある場合は、マイナポータルにログインするとねんきんネットにアクセスできます。マイナポータルにログインし、トップページにある「年金記録・見込額を見る(ねんきんネット)」を押して利用規約等に同意すると連携されます。 マイナンバーカードがない場合は、基礎年金番号とメールアドレスを用意し、ねんきんネットにアクセスしてユーザIDを取得しましょう。「ねんきん定期便」などに記載されている「アクセスキー」があると、ユーザIDの即時発行が可能です。 ねんきんネットを利用する際の注意点 ねんきんネットを利用する際の注意点は以下の2つです。 第三者との共有PCを使わない 利用端末のセキュリティ対策を行う ねんきんネットでは、年金記録という重要な情報を扱うため、第三者による不正利用を防ぐ必要があります。 入力・閲覧した情報が残ってしまうことがあるので、第三者との共有PCを使わないことが大切です。また、利用端末から情報が流出しないようにセキュリティ対策を行いましょう。 まとめ ねんきんネットを利用すれば、年金記録や年金見込額を簡単に確認できます。また、電子版「ねんきん定期便」の確認、届書の作成、通知書のペーパーレス化なども可能です。 公的年金は老後の重要な収入源となるので、今のうちにねんきんネットの使い方を押さえておきましょう。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 公的年金の仕組みとは?国民年金・厚生年金の基礎知識を解説 公的年金は、国民が安心して日常生活を送るために不可欠な制度です。老後だけでなく、病気・ケガで障害が残ったときや加入者が死亡したときも給付を受けられます。老後生活に備えて公的年金の仕組みについ...記事を読む

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