「強引に勧誘された」「高額の違約金を請求された」など、高齢者の自宅売却に関するトラブルが増加しています。 相手に言われるがまま売買契約をしてしまうと、高齢者の場合は「住む場所が見つからない」「違約金の支払いで老後資金が足りない」などの問題が生じる恐れがあります。老後も持ち家で安心して生活するには、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。 この記事では、高齢者の自宅売却のトラブル事例や回避するための対策を紹介します。 高齢者の自宅売却トラブルが増加している 国民生活センターの資料によると、契約当事者が60歳以上の自宅売却に関する相談件数は、以下のとおり推移しています。 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 571件 564件 657件 616件 610件 出典)国民生活センター「高齢者の自宅の売却トラブルに注意」 2018年以降は600件を超えているものの、全体的には横ばいで推移しています。 一方で、70歳以上の高齢者の自宅トラブルは増加傾向にあります。以下は、契約当事者の年代別相談割合です。 60歳未満 60~69歳 70~79歳 80歳以上 2016年 35.6% 28.2% 20.6% 15.6% 2017年 35.0% 25.5% 21.9% 17.6% 2018年 34.8% 19.9% 26.1% 19.3% 2019年 34.5% 19.6% 25.5% 20.4% 2020年 30.1% 17.6% 30.4% 21.9% 出典)国民生活センター「高齢者の自宅の売却トラブルに注意」 60歳未満および60歳代は年々減少していますが、70歳以上は増加が続いています。2020年は70歳以上の相談割合が52.3%で、全体の半分以上を占めている状況です。 自宅売却はクーリング・オフ制度を利用できない クーリング・オフとは、一度契約の申し込みや締結を行っても、一定期間内であれば無条件で申し込みの撤回や契約解除ができる制度です。しかし、自宅を不動産業者に売却する場合には、このクーリング・オフ制度を利用できません。 クーリング・オフはできないものの、契約破棄することも可能です。ただし、ほとんどの場合で契約解除には、売買金額の2割程度の違約金が発生するため、経済的に大きな負担となります。 高齢者の自宅売却に関するトラブル事例 高齢者の自宅売却について、具体的にどんなトラブルが発生しているのでしょうか。ここでは、国民生活センターに寄せられた相談事例を3つ紹介します。 長時間の居座り 長期間の勧誘を受け、強引に契約させられた80代女性の事例です。 1人暮らしの自宅に突然、不動産業者が2人で訪ねてきた。「住んでいるマンションを売らないか」と勧められ、連日朝10時から夜まで居座られた。弱気になり「売値を200~300万円上乗せしてくれるなら」と答えたら、2,300万円で売ることになってしまった。書面に署名押印したが、何の書類か覚えておらず、「やっぱり待ってほしい」と言っても取り合ってもらえなかった。 高額の解約料請求 強引に契約させられ、「解約には違約金がかかる」と言われた80代女性の事例です。 不動産業者から「自宅マンションを売ってほしい」と何度か電話があったが、断っていた。後日、外出先から戻るとエントランスで不動産業者が待っており、悪いと思って自宅に上げた。業者は「住み替えの物件を紹介する」と言って勝手に話を進め、内容を理解できないまま書面に署名押印し、その場で手付金約450万円を渡された。翌日不動産業者に契約をキャンセルすると電話すると、「解約料として約900万円支払ってほしい」と言われた。 契約に関する虚偽の説明 嘘の説明を信じて、自宅の売却と賃貸借の契約をしてしまった70代女性の知人の事例です。 知人宅に電話があり、その後不動産業者が訪ねてきた。知人はその日のうちに自宅マンションを約2,000万円で売却し、家賃18万円でそのまま住む契約をした。マンションの相場はもっと高額なはずだが、「このマンションは10年後には取り壊される」という虚偽の説明を信じて契約してしまった。知人は1週間後に不動産業者と会い、「キャンセルしたい」と伝えたが、できないと説得されて手付金を受け取ってしまった。 高齢者が自宅売却のトラブルを回避するには? 自宅売却に関するトラブルを避けるために、以下の3つを心掛けましょう。 わからない、納得できない場合は絶対に契約しない 不動産業者から話を聞いても、契約内容がわからない場合や納得できない場合は絶対に契約しないことが大切です。不動産売買はさまざまな手続きが必要で、仕組みも複雑です。自宅売却はクーリング・オフができないため、よくわからないまま契約してしまうと後悔するかもしれません。 1人で対応すると相手のペースで話を進められ、適切な判断ができない可能性があります。契約前に家族や友人などに相談し、不動産業者との面談ではできるだけ立ち会ってもらいましょう。相談できる身近な人がいない場合には、弁護士などの専門家に相談するのもひとつの手です。 迷惑な勧誘ははっきり断る 「夫(妻)と相談します」「考えてみます」のような断り方をすると、可能性があると判断され、今後も勧誘が続いてしまいます。不動産業者から電話や訪問で勧誘されても、自宅を売却するつもりがないなら「自宅は売りません」とはっきり断ることが大切です。 今後も勧誘してほしくない場合は、「もう勧誘はやめてください」と明確に意思を伝えましょう。消費者が断ったにも関わらず、不動産業者が勧誘を続けることは宅地建物取引業法で禁止されています。 不要な勧誘を避けるには、「知らない電話番号からの電話には出ない」「訪問されても玄関ドアを開けない(インターフォンで対応)」などの対策も有効です。 トラブルになりそうな場合は相談する 「不動産業者の説明がよくわからない」「よく考えずに契約してしまった(解約したい)」など、トラブルになりそうな場合は、なるべく早く消費者生活センターなどに相談しましょう。 連絡先:消費者ホットライン「188(いやや)」 消費者ホットライン「188」に電話し、アナウンスに従って自宅の郵便番号を入力すると、最寄りの消費者生活センターや市区町村の消費生活相談窓口につながります。また、長期間の居座りは不退去罪に当たる可能性があるため、状況によっては警察を呼ぶことも検討しましょう。 まとめ 高齢者が自宅売却のトラブルに巻き込まれると、住む場所が見つからなかったり、高額の違約金を請求されたりする恐れがあります。不動産業者から電話や訪問で勧誘されても、自宅を売るつもりがないなら「売りません」とはっきり断ることが大切です。 不安な場合やトラブルに巻き込まれそうなときは、消費者ホットライン「188」に電話して相談しましょう。 SBIシニアの住まいとお金に相談してみる お問い合わせは最短即日回答。ご相談は何度でも無料でご利用いただけます。 SBIシニアの住まいとお金に相談してみる お問い合わせは最短即日回答。ご相談は何度でも無料でご利用いただけます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 住まいの終活で考えておくべきポイントをFPが解説 「終活」という言葉が一般に広がるなか、近年、「住まいの終活」についても注目されるようになってきました。どのような内容なのか、どうしたらいいのかなどについて考えてみましょう。 「住まいの終活」...
長寿化に伴い、自身の老いや死に関するさまざまな事柄に備える「終活」が注目されるようになりました。終活の中でも「住まいをどうするか」は大きなテーマの一つではないでしょうか。住まいが持ち家の場合、家族に残すこともできますが、相続トラブルになることもあります。 この記事では、「住まいの終活」における3つの選択肢と準備しておくべきことを解説します。 住まいの終活とは 「住まいの終活」という言葉に定義はありません。そのため、この記事の中では「生前のうちに、亡くなった後の持ち家のことを考えること」とします。持ち家の場合、自身が亡くなった後に相続人がその家をどうするか、影響が大きいためです。 不動産は所有権を分割することはそれほど難しくはありません。一方で、所有権を分割したその家に、誰が居住するかという問題が起こります。そのため、相続人が複数いる場合は、平等に分けるのが難しく、相続でトラブルになることもあります。また、不動産を現金化しておくことで、より公平に分割できますが、生前に売却すると「住まいをどうするか」という問題が生じます。 関連記事はこちら終活とは?終活では何を準備すればいい? 住まいの終活における3つの選択肢 「住まいの終活」を始める場合、大きく以下3つの選択肢が考えられます。 生前に贈与する 1つ目は、持ち家を生前贈与する方法です。同居している親族に贈与すれば、贈与後も同じ家に住み続けられます。不動産を贈与すると、贈与された親族には贈与税がかかりますが、「相続時精算課税制度」を利用すれば、贈与税の負担を軽減できます。 相続時精算課税制度とは、原則として60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子または孫に財産を贈与した場合に選択できる贈与税の制度です。同一の贈与者からの非課税限度額は2,500万円で、限度額を超えた部分については一律20%の贈与税率が適用されます。 相続時には、相続時精算課税制度の贈与財産と他の相続財産を合計して相続税を計算します。税金が免除されるわけではなく、贈与財産は相続税の課税対象となる点に注意が必要です。 関連記事はこちら相続時精算課税制度とは?メリット・デメリットを紹介 生前に売却する 2つ目は、生前に持ち家を売却する方法です。あらかじめ持ち家を売却しておけば、現金化できます。子どもに持ち家を残したいなら、親から子に持ち家を売却する「親子間売買」が選択肢となるでしょう。 親族間売買をしたとき、税金の取り扱いは、基本的に通常の不動産売却と同様です。ただし、実勢価格より著しく安い価格で売却すると贈与とみなされ、贈与税が課税される場合があるので、検討の際には専門家などに相談した方が良いでしょう。 関連記事はこちら不動産の親子間売買は難しい?デメリットと手続きについて解説 親族に持ち家を残さない場合は、通常の不動産売却やリースバックが選択肢となります。通常の不動産売却は、実勢価格で売却できる反面、新しい住まいを探さなければなりません。一方で、リースバックを利用すれば、実勢価格よりも低い価格での売却になるものの、今までの家に住み続けられます。 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みやメリット・デメリットを解説 相続させる(何もしない) 3つ目は、何もせずに持ち家を相続させる方法です。生前贈与や売却をせずに、何もしないのも選択肢の一つとなります。何もしないことで相続トラブルの懸念がありますが、あらかじめ親族間で話し合えば回避もできるでしょう。折り合いがつかない場合には、専門家に相談するなどの対策も取れます。また、「遺言書を書く」「公正証書を作成する」といった準備をしておくと安心です。 関連記事はこちら住まいの終活で考えておくべきポイントをFPが解説 住まいの終活の注意点 住宅ローンが残っているかどうかは重要 住まいの終活のうえで、持ち家を担保としたローンが残っているかどうかは重要です。住宅ローンの残債がなければ、終活を行う際の選択肢が広がります。たとえば、贈与や相続では、債権がないことで資産価値だけを鑑みて評価することができます。また、不動産売却では、売却代金でのローン完済が不要です。 相続人がいない場合はどうする 独身で両親も兄弟もいないなど、持ち家でも相続人がいない場合は、何も対策を行わないと管理者不在の空き家となります。相続人がいない場合、第三者に財産分与を行うこともできるため、持ち家を相続させたい人がいる場合は、専門家に相談して遺言書を作成するといいでしょう。 まとめ 「住まいの終活」では自身の老後の生活はもちろん、相続人となる家族にも大きな影響を与えます。持ち家に関するトラブルを防ぐには、亡くなるまでのプランを立て、早めに準備にとりかかることが大切です。老後の生活を豊かなものにするためにも、住まいの終活を始めてみてはいかがでしょうか。 SBIシニアの住まいとお金に相談してみる お問い合わせは最短即日回答。ご相談は何度でも無料でご利用いただけます。 SBIシニアの住まいとお金に相談してみる お問い合わせは最短即日回答。ご相談は何度でも無料でご利用いただけます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 終活とは?終活では何を準備すればいい? 昔に比べて平均寿命が延びて老後の期間が長くなったことから、「終活」を行う人が増えています。終活と聞くと、葬儀やお墓、相続など自分が亡くなった後のことをイメージするかもしれません。しかし、実際...
近年、まとまった老後資金を確保する手段として「リースバック」や「リバースモーゲージ」が注目されています。もし、まとまった老後資金の確保を目的として利用を検討する場合には、リースバックとリバースモーゲージの違いをしっかりと理解しておくことが大切です。 この記事では、リースバックとリバースモーゲージの違いと、どちらが自分に向いているかを判断する基準について解説します。 リースバックとリバースモーゲージの概要 リースバックの概要 リースバックとは、不動産売買と賃貸借契約が一体となったサービスです。自宅をリースバック運営会社に売却し、その会社と賃貸借契約を締結して毎月家賃を払うことで、売却後も同じ家に住み続けられます。図で表すと以下のとおりです。 リースバックは不動産取引であるため、基本的に年齢制限や年収基準、家族の同居制限はありません。また、賃借権は相続されるので、契約者にもしものことがあっても配偶者は住み続けられます。 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みやメリット・デメリットを解説 リバースモーゲージの概要 リバースモーゲージとは、自宅を担保に借り入れができる高齢者向けのローン商品です。毎月の支払いは利息のみで、債務者の死亡後に相続人が自宅の売却もしくは現金一括で元本を返済します。図で表すと以下のとおりです。 一般的なローンとは異なり、毎月の支払いは利息のみなので、月々の返済額を抑えられるのがメリットです。 ただし、元金は据え置きなので、長生きするほど利息負担が増えるリスクがあります。また、自宅の売却代金よりローン残債の方が多かった場合、残った債務が相続人に引き継がれることがあります。 関連記事はこちらリバースモーゲージとは?メリット・デメリットや仕組みを解説 リースバックとリバースモーゲージの共通点と違い リースバックとリバースモーゲージの共通点 まず、リースバックとリバースモーゲージの共通点は以下のとおりです。 不動産を活用した資金調達方法 不動産を売却する商品・サービス リースバックとリバースモーゲージは、自宅を活用して資金調達できるのは同じです。タイミングは異なりますが、どちらも最終的には自宅を売却するため、相続後に不動産が残らないのも共通点です。 リースバックとリバースモーゲージの違い リースバックとリバースモーゲージは不動産を活用して資金を調達できるという点から似ていると感じるかもしれませんが、リースバックは不動産売買+賃貸借契約、リバースモーゲージは不動産担保融資であり、その特徴や仕組みは大きく異なります。 具体的には、以下のような違いがあります。 所有権移転のタイミング 資金の受け取り方(売却と融資) 月々の支払い(家賃と利息) リースバックは、自宅を売却して賃貸に切り替えた時点で所有権は運営会社に移転します。それに対して、リバースモーゲージは債務者の死亡後、自宅を売却して元本を返済する仕組みなので、債務者が生きている間は自宅の所有権は移転しません。 また、リースバックは売却資金を受け取り、その後は毎月家賃を払うのに対し、リバースモーゲージは融資金を受け取り、毎月利息を払う点も異なります。 リバースモーゲージと比較したリースバックのメリット リバースモーゲージと比較したリースバックのメリットは以下の4つです。 誰でも利用できる リースバックは不動産売却なので、基本的に与信面で断られることはありません。また、年齢制限や年収基準がないので、持ち家があれば高齢者でも利用しやすいでしょう。 一方で、リバースモーゲージは自宅を担保とした融資であるため、金融審査があります。年齢制限や年収基準が設定されていることが多く、一定の収入がないと与信面で否決される可能性があります。 ローンを完済できる リースバックは不動産売却なので、住宅ローンが残っていても売却資金で完済できます。ただし、売却資金が住宅ローンの残債を上回る必要がある点には注意が必要です。 一方で、リバースモーゲージは融資なので、ローンが残っている状態がずっと続きます。毎月の支払いは利息のみですが、市場金利が上昇すれば、毎月の返済額が増えて支払いが困難になる可能性があります。 相続対策になる リースバックは自宅を売却して現金化するため、相続時に財産分与しやすいのがメリットです。特に複数の相続人がいる場合、自宅をどのように分けるかを考える必要がないので、相続問題を回避しやすくなります。 一方で、リバースモーゲージは、債務者の死亡後に自宅を売却して元本を返済する仕組みですが、売却資金がローン残債より少ない場合、残った債務は相続人に引き継がれます(リコース型の場合)。ノンリコース型なら債務が残っても相続人に返済義務は生じませんが、リコース型に比べて適用金利が高い傾向にあります。 持ち家の所有リスクを移転できる リースバックで自宅を売却すれば、持ち家の所有リスクを移転できます。そのため、自宅の維持管理のためのメンテナンスコストが不要である点や、突発的な地震や台風といった自然災害で住居に被害が出ても、修繕費用は運営会社が負担してくれるので安心です。 一方で、リバースモーゲージは、資金調達後も持ち家であることに変わりはないので、メンテナンスコストや建物に被害が出たときの修繕費用は自身で負担しなくてはなりません。住まいに関する資金も借り入れする事ができますが、借入金が膨らんでしまう点には注意が必要です。 リバースモーゲージと比較したリースバックのデメリット 一方で、リバースモーゲージと比較したリースバックのデメリットは以下の2つです。この2つのデメリットを考慮したうえで、どちらがいいかを判断しましょう。 所有権を手放すことになる リースバックを利用する場合は自宅を売却するので、所有権を手放すことになります。所有権を手放せばその家は自分のものではなくなり、自由にリフォームを行うこともできなくなります。 一方で、リバースモーゲージは資金調達後も持ち家であることに変わりはないので、自由にリフォームを行うことができます。 自宅を相場より安い金額で売却してしまう リースバックを利用した場合、自宅の売却価格は相場の7割程度となってしまいます。そのため、売却価格にだけ着目すると、リースバックは取引時点で損失を確定することになります。 一方で、リバースモーゲージの場合、リバースモーゲージを利用することが自宅の売却価格に影響を及ぼすことはありません。ただし、最終的に自宅を売却するまでに価値が下がり、結果的に損失が出る場合もあるので注意しましょう。 リースバックとリバースモーゲージに向いている人とは 上述のメリットとデメリットを踏まえて、リースバックとリバースモーゲージのそれぞれに向いている人を紹介します。 リースバックに向いている人 リースバックに向いているのは、自由に使用できるまとまった資金を必要としている人です。具体的には、住宅ローンを完済したい、老後の生活費を確保したい、事業資金を調達したい、といった理由が考えられるでしょう。 また、リースバックは金融審査がないので、リバースモーゲージでは審査に通らなかった人でも利用できる可能性があります。さらに、住み替えを検討している人にもおすすめです。リースバックを利用することで、住み替え時の悩みを解消し、住み替えをスムーズに進められる可能性があります。詳細は以下の記事で解説しています。 関連記事はこちら住み替えにリースバックを利用するメリットを解説 リバースモーゲージに向いている人 リバースモーゲージに向いているのは、必要な金額が少額である人や、資金が必要な期間が限定されていて、一時的な利用を検討している人です。例えば、一時的にリフォーム資金などのまとまった資金を必要としている場合は、リバースモーゲージが向いています。 また、リバースモーゲージの場合、返済が滞りさえしなければ、自宅の所有権を持ち続けられます。リースバックの場合は所有権を手放すため、上述のとおりリフォームを自由に行うことができなくなるのは勿論、賃貸である以上必ず住み続けられる保証はなくなってしまいます。 関連記事はこちらリースバックの退去について解説!強制退去させられることはある? まとめ リースバックとリバースモーゲージを比較すると、利用しやすさや相続対策、所有リスクを移転できる点などはリースバックの方が優れています。しかし、自身の状況によっては必ずしもリースバックがいいとも限りません。 リースバックとリバースモーゲージのどちらを利用すべきか悩んでいる場合は、専門家や金融機関に相談するのも有効です。両者の違いを十分に理解したうえでどちらを利用すべきかを判断しましょう。 SBIシニアの住まいとお金に相談してみる お問い合わせは最短即日回答。ご相談は何度でも無料でご利用いただけます。 SBIシニアの住まいとお金に相談してみる お問い合わせは最短即日回答。ご相談は何度でも無料でご利用いただけます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 リースバックと不動産担保ローンの違いとは リースバックと不動産担保ローンは、不動産を活用して資金調達するところは同じですが、特徴や仕組みには違いがあります。両者の違いを理解しておくことで、ご自身のライフスタイルや考え方に合わせて最適...
リースバックは、自宅を売却してまとまった資金を手に入れながら、家賃を払うことで同じ家に住み続けられるサービスです。リースバックを利用することで老後の不安を解消し、より快適な生活が送れるようになるかもしれません。この記事では、老後にリースバックを利用すると得られる4つのメリットを紹介します。 メリット①:老後資金を確保できる 持ち家があって老後の生活費が足りない場合、通常は自宅の売却を検討するのではないでしょうか。しかし、自宅を売却すると転居先を決めたり、引っ越しの手間や費用が発生したりします。また、慣れ親しんだ自宅に住み続けたいのであれば、リースバックも選択肢のひとつとなるでしょう。 リースバックで自宅を売却すれば、まとまった資金を手に入れながら、家賃を払うことで同じ家に住み続けられます。また、住宅ローンの返済が苦しくて老後資金を貯められない場合も、リースバックの売却資金で住宅ローンを一括返済すれば、家計収支を改善できます。 関連記事はこちら老後資金を確保するための住宅ローン返済術(60歳以上編) メリット②:相続問題が解決される リースバックは、複数の相続人がいる場合に、相続問題を解決する手段としても利用できます。不動産は実物資産であるため、複数の相続人がいる場合は簡単に分けられません。相続資産の大部分を自宅が占める場合、財産をどのように分けるか折り合いがつかず、相続争いが起こることもあります。 しかし、リースバックで自宅を売却すれば、所有権がリースバック運営会社に移転するため、自宅をどう分けるかを考えなくて済みます。特に相続財産が自宅と預貯金のみの場合、不動産を現金化すれば相続財産は預貯金のみとなるので、均等に分配しやすくなります。 関連記事はこちら相続争いを生まないためのリースバックという選択肢 メリット③:固定費の増加要因や突発的な支出がなくなる 老後の家計収支を安定させるには、固定費を下げたり、突発的な支出を減らしたりすることが大切です。 持ち家の場合、家賃を払う必要はありませんが、固定資産税がかかります。また、マンションなら、管理費や修繕積立金の支払いも必要です。他にも、設備の故障などで急にまとまった支出が発生する可能性もあるでしょう。 そのようなときにリースバックで賃貸に切り替えて、毎月一定額の家賃を払うようにすれば、家計管理がしやすくなります。また、固定資産税や管理費・修繕積立金がなくなり、家賃のみの支払いになるほか、老朽化などで設備が故障した場合の費用がオーナー負担となるのも安心材料です。 関連記事はこちら老後に賃貸と持ち家ではどう違う?メリット・デメリットを解説 メリット④:自然災害リスクを減らせる リースバックで自宅を売却して賃貸に切り替えれば、自然災害で住居に被害が出ても、修繕費用などはリースバック運営会社が負担してくれます。しかし、持ち家の場合は、修繕や建て替えにかかる費用は自分で負担しなくてはなりません。 持ち家の場合には火災保険や地震保険に加入することで備えることもできますが、保険に加入していても、保険金で費用を全額カバーできず、持ち出しが発生する場合があります。また、災害などで住むことができない状態になったとしても、住宅ローンが残っている場合、基本的にローン返済は免除されません。 近年では、地球温暖化の影響により、台風や洪水などの自然災害リスクが高まっています。また、日本は地震大国でもあり、過去には阪神・淡路大震災や東日本大震災といった大地震も発生しているので、楽観視できないでしょう。そのため、自宅に住み続けながら自然災害リスクに備えたいなら、リースバックは有効な手段となるでしょう。 関連記事はこちら地震保険とは?火災保険との違いや補償内容を解説 老後のリースバックに関するよくあるご質問 老後にリースバックを利用するにあたり、よくあるご質問を3つ紹介します。 Q. リースバックを利用した後、ずっと住み続けられますか? リースバックの賃貸借契約には、「定期借家契約」と「普通借家契約」の2種類があります。定期借家契約の場合は再契約できる保証がなく、2~3年の契約期間満了後に退去しないといけなくなる恐れがあります。できるだけ長く住み続けたい場合は、普通借家契約が可能な運営会社を選ぶと安心です。 Q. 毎月の家賃を安くすることはできますか? リースバックの家賃は売却価格と家賃のバランスで決まり、売却価格が安くなると家賃も安くなります。そのため、運営会社と交渉して売却価格を抑えることで、周辺の賃料相場より家賃をかなり安く設定することも可能です。ただし、売却価格を抑えすぎると調達できる資金が少なくなります。リースバックの家賃を安くしたい場合は、売却価格とのバランスを検討してから交渉しましょう。 Q. 配偶者が契約を引き継ぐことができますか? 自宅をリースバックで売却した場合、残された配偶者が契約者である夫(妻)が死亡した後も住み続けられるか気になるのではないでしょうか。賃貸借契約は相続の対象になるため、夫(妻)の死亡後も配偶者が契約を引き継ぐことが可能です。念のため、運営会社に契約を引き継げるかを確認しておくと安心です。 デメリットは「家を遺せないこと」 リースバックの最大のデメリットは、家を遺せないことにあります。自宅の所有権が運営会社に移転してしまうので、子供に家を遺したい場合は、リースバックを利用すべきではありません。 家を遺すことにこだわりがなければ、老後資金や相続問題など、自身の抱えている悩みがリースバックによって解決できるのかどうかを考えてみましょう。ご自身で判断が難しければ、専門家に相談してみるのもおすすめです。 まとめ 「家を遺せない」というデメリットを許容できるのであれば、老後のリースバックはいくつかの問題を解決する選択肢となります。持ち家があり、老後資金や相続、自然災害などの不安を抱えているなら、リースバックを検討してみてはいかがでしょうか。 SBIシニアの住まいとお金に相談してみる お問い合わせは最短即日回答。ご相談は何度でも無料でご利用いただけます。 SBIシニアの住まいとお金に相談してみる お問い合わせは最短即日回答。ご相談は何度でも無料でご利用いただけます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 リースバックの5つの活用事例 リースバックは、自宅をリースバック運営会社に売却し、その会社と賃貸借契約を締結することで、売却後も同じ家に住み続けられるサービスです。自宅を活用した資金調達方法として注目されており、老後資金...
賃貸暮らしをしていると、老後に向けて自宅を購入すべきか悩むのではないでしょうか。賃貸か持ち家かによって、老後の生活においてそれぞれメリット・デメリットがあるので、ライフスタイルに応じてどちらがいいかは変わってきます。 老後に持ち家があることで、老後の生活費が不足したときに資金調達手段として活用できるかもしれません。そのため、老後に賃貸と持ち家のどちらで暮らすかは、老後資金も考慮して選択することが大切です。 この記事では、賃貸と持ち家で老後の生活がどう違うかについて解説します。 老後に賃貸で暮らすメリット・デメリット 老後に賃貸で暮らす主なメリット・デメリットは以下のとおりです。 賃貸のメリット 老後の賃貸暮らしには、以下のようなメリットがあります。 メンテナンス費用がかからない 災害リスクがない 自宅の老朽化や設備の故障などにより物件設備の交換が必要になった場合、賃貸であれば、物件の所有者であるオーナーがメンテナンス費用を負担してくれます。そのため、突発的な支出が生じる可能性は少ないでしょう。 また、地震や台風などの災害で建物に被害が出たときも、修繕にかかる費用はオーナー負担です。被災して住めない状態になった場合は、住めるようになるまで家賃を払う必要もありません。ただし、家財はオーナーに補償してもらえないため、火災保険に加入して備えておく必要があります。 このように、賃貸であれば自宅にかかる定期的なメンテナンスコストや突発的に発生する災害のリスクを回避できるメリットがあります。 賃貸のデメリット 一方で、老後の賃貸暮らしには、以下のようなデメリットもあります。 家賃の支払いが一生続く 契約・更新できない可能性がある 老後に賃貸で暮らす場合には、家賃の支払いが一生続くことになります。そのため、老後資金に余裕がある場合には問題ありませんが、老後の生活資金を確保していないと家計収支が立ち行かなくなり、最悪の場合は老後破綻になりかねません。 また、賃貸で暮らす場合は高齢になって安定収入がなくなると、信用上の問題から契約が更新できなくなる恐れもあります。高齢になるほど保証人を求められるケースが増えてくるため、家族など頼める人がいないと契約や更新を断られる可能性があります。 なお、老後の生活ではバリアフリー対応が必要になることもありますが、賃貸は内装や間取りの仕様変更ができません。一方で、賃貸であれば、自身の状況に応じた高齢者向け住宅へ転居する選択肢があるので一概にデメリットとはいえないでしょう。 老後の生活に配慮した賃貸物件の選び方 老後に賃貸で暮らす場合は、以下のような点を考慮して物件を選ぶと良いでしょう。 家計に合った物件を選ぶ 老後に賃貸で暮らす場合、自身の家計に合った物件を選ぶことが重要です。特に、家賃に関しては、住み続ける限り一生支払わなければならず大きな負担となるため、家計とのバランスを考慮する必要があります。老後は収入が年金のみとなり、働いていた頃の給与収入よりも少なくなることが一般的です。自身の家計に見合った家賃でなければ、生活費を圧迫したり老後資金の不足に繋がる可能性があります。そのため、自身の収入や貯蓄額、ライフプランを考慮した上で家計に見合った物件を選ぶようにしましょう。また、断捨離をしてワンサイズ小さな物件を選ぶなど、家賃を抑えるために工夫をすることも一つの方法です。 バリアフリーが充実している物件を選ぶ 老後に賃貸で暮らす場合は、バリアフリーが充実している物件を選ぶことをおすすめします。例えば、段差が多い家や広すぎる家は移動が大変であり、大きな負担となります。さらに、現在は元気であっても高齢になるにつれて予期せぬ怪我や病気のリスクが高まりますので、将来的に体が不自由になってしまう可能性もあります。そのような場合に、バリアフリーが充実している物件を選択しておくことで、転居をする必要が無く今までの住まいで生活を続けることが可能です。安全、快適に長く暮らすためにも、現在の健康状態や将来的なリスクを踏まえた上で、物件を選ぶと良いでしょう。 周辺の環境が充実している物件を選ぶ 老後に賃貸で暮らす場合、周辺の環境が充実しているかも確認するようにしましょう。特に、スーパーや病院、公共施設など日常的に利用する施設が近くにあるかを確認すると良いでしょう。これらの施設が自宅から遠い場合、毎日の生活に影響し、大きな負担となってしまいます。加えて、周辺に騒音や臭いなど将来的にトラブルに繋がりそうな施設が無いかもチェックしておくことで、事前にトラブルを回避することができます。老後に住む賃貸物件は、物件だけでなく、周辺環境も考慮した上で選択すると良いでしょう。 老後に持ち家で暮らすメリット・デメリット 老後に持ち家で暮らすメリット・デメリットは以下のとおりです。 持ち家のメリット 持ち家には以下のようなメリットがあります。 住居費の負担が小さい 内装や間取り変更が自由にできる 持ち家は、住宅ローンを完済していれば、住居費の負担が少なく済みます。住宅ローンの返済以外に固定資産税や修繕費用は必要ですが、賃貸のように毎月家賃を支払う必要はありません。そのため、持ち家は長生きするほど、賃貸よりも経済的なメリットがあると言えるでしょう。 また、持ち家であれば、リフォームやリノベーションが自由にできます。引っ越しをしなくても、ライフスタイルの変化に応じて自分に合った住環境を整えられるのは、持ち家ならではのメリットといえるでしょう。 持ち家のデメリット 一方で、持ち家には以下のようなデメリットもあります。 災害リスクがある メンテナンス費用がかかる 簡単に引っ越しできない 持ち家は、地震や台風などで建物に被害を受けた場合、修繕費用を自身ですべて負担しなくてはなりません。修繕費用は保険金でまかなうことも可能ですが、被害の状況によっては、住める状態になるまで時間がかかります。また、設備は定期的なメンテナンス費用が発生します。 持ち家は、賃貸に比べて簡単に引っ越しができないのもデメリットです。体調が悪くなって高齢者向け住宅に移りたいと思っても、持ち家があると簡単には決断できないでしょう。 老後に資金が足りない場合の選択肢 老後に賃貸と持ち家のどちらで暮らすかは、ライフスタイルだけでなく、老後資金も考慮して選ぶことが大切です。賃貸ならメンテナンス費用がかからず、災害リスクを回避できますが、一生家賃を払い続けなくてはなりません。そのため、持ち家よりも多くの資金を準備する必要があります。 しかし、持ち家であれば老後資金が不足したとしても、自宅を売却してまとまった資金を手に入れることが可能です。また、売却以外にもリースバックを活用して資金調達できます。 リースバックを利用すれば、売却によってまとまった資金を手に入れながら、家賃を払うことで同じ家に住み続けられるので、老後に持ち家である時に発生するデメリットを回避できます。また、持ち家は相続争いが起こることもありますが、リースバックなら自宅の所有権がリースバック運営会社に移転するため、相続対策として活用できる側面もあります。 関連記事はこちら夫婦の老後資金はいくら必要?足りない時の対処法も紹介 まとめ 老後に賃貸と持ち家のどちらで暮らすにしてもそれぞれメリット・デメリットがあり、どちらが合っているかはライフスタイルによって異なります。一方で、持ち家であれば、老後資金が足りない場合に自宅を活用して資金調達できる可能性がありほか、そもそも持ち家であるという安心感もあるでしょう。老後に賃貸と持ち家のどちらで暮らすかは、老後資金も考慮して選択しましょう。 SBIシニアの住まいとお金に相談してみる お問い合わせは最短即日回答。ご相談は何度でも無料でご利用いただけます。 SBIシニアの住まいとお金に相談してみる お問い合わせは最短即日回答。ご相談は何度でも無料でご利用いただけます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 リースバックとは?仕組みやメリット・デメリットを解説 リースバックとは「セール・リースバック」や「セール・アンド・リースバック」とも称される取引手法で、所有している資産を第三者に売却し、リース契約を締結することで、それまでと同じ資産を利用し続け...
自宅を所有していると、老後も住み続けられる安心感がある一方で、相続に不安を感じることもあるのではないでしょうか。不動産は実物資産であるため、相続人が複数いると簡単に分けられません。また、相続財産の大部分を不動産が占める場合は、財産をどう分けるか折り合いがつかず、相続争いが生まれる可能性があります。 しかし、リースバックで自宅を売却すれば、同じ家に住み続けながら相続争いを回避できます。この記事では、リースバックで相続問題を解決できる理由について説明します。 なぜ相続争いが生まれるのか 相続争いが生まれる理由はさまざまですが、その最たる例のひとつが不動産(自宅)に関連する理由です。たとえば、相続財産が不動産と預貯金のみで、不動産が占める割合が大きいと相続争いが生まれやすくなります。なぜなら、複数の相続人がいる場合、相続人全員が納得する形で財産を分けるのが難しいからです。 均等に財産を分けるという観点で考えれば、不動産は持分相続ができるので、1つの不動産を複数人で相続することも可能です。しかし、相続後にその不動産を1人の使用者が専有した場合には、相続人の間に不平等が生まれることになります。親族間で賃貸借契約を結んで適正な家賃を支払うことで平等に近い形に是正することは可能ですが、あまり現実的な方法とは思えません。 相続争いの具体例を紹介 不動産の相続の難しさがイメージできるように、具体例を1つ紹介します。相続財産が不動産(4,000万円)と預貯金(2,000万円)の合計6,000万円、相続人が配偶者と子2人のケースについて確認しましょう。法定相続分は配偶者が1/2、子はそれぞれ1/4です。相続財産は合計6,000万円なので、法定相続割合で分けると以下のようになります。 配偶者:3,000万円(6,000万円×1/2) 子(A):1,500万円(6,000万円×1/4) 子(B):1,500万円(6,000万円×1/4) また、法定相続割合で不動産と預貯金を均等に分割する場合、相続財産は以下のように分けられます。 配偶者:不動産2,000万円、預貯金1,000万円(合計3,000万円) 子(A):不動産1,000万円、預貯金500万円(合計1,500万円) 子(B):不動産1,000万円、預貯金500万円(合計1,500万円) 不動産に持分を設定することで、上記のように資産を均等に分けることができます。しかし、その不動産を配偶者のみが占有して利用する場合には、当然平等であるとは言えないでしょう。 リースバックで相続問題を解決できる理由 先程紹介したようなケースの場合、リースバックを利用することで相続問題を解決できます。リースバックとは、自宅を売却したうえで賃貸借契約を結び、家賃を払うことで売却後も同じ家に住み続けられるサービスです。 相続争いを避けるために自宅を売却すると、通常は別の住居を探さなくてはなりません。しかし、リースバックなら家賃を払うことで、売却後も同じ家に住み続けられます。また、不動産を現金化することで、相続財産は預貯金のみとなるため、相続財産を均等に分配できます。 先ほどのケースで、リースバックを利用しており、不動産を2,800万円*で売却していた場合には下記のような遺産分割となります。 ※一般的にリースバックの買取価格は評価額の7割程度とされているため、4,000万円×70%=2,800万円としています。 配偶者:預貯金2,400万円 子(A):預貯金1,200万円 子(B):預貯金1,200万円 上述のとおり、相続財産が預貯金のみであれば、相続人同士でもめることなくスムーズに遺産分割ができるでしょう。加えて、もしその家に住み続けたい相続人がいた場合でも、賃貸借契約を承継し、自らが家賃を支払ってその家に住み続けることになるので、公平と言えます。 リースバックを利用するタイミング リースバックの利用は相続争いを無くすという点からは、生前に行うことが理想ですが、相続発生後であっても可能です。しかし、相続発生後に手続きをすると、相続税や所得税などの税金面で複雑化することや、持分相続の場合に共有者全員の同意が必要などの制限が発生します。 このような点から相続発生後のリースバック利用にも争いが生まれる可能性があり、相続発生後にリースバックを利用するのであれば、生前にリースバックを利用しておいた方が良いと言えるでしょう。 もう一つの選択肢としての不動産担保ローン 相続する不動産に長期的な視点で資産価値がある場合やその不動産への愛着が強いなどの理由で所有権を手放したくない場合には、不動産担保ローンを利用するといいでしょう。不動産担保ローンとは、土地や建物、マンションなどの不動産を金融機関に担保として差し入れるかわりにお金を借りられる融資方法の一つです。 そのため、相続財産である不動産を担保に融資を受けることで、相続人同士の金銭的な不平等を解決するための資金を用意することができます。 関連記事はこちら相続で不動産担保ローンを活用する4つの事例を紹介 Appendix:リースバックで相続税対策できる? 不動産の相続税評価額は、おおよそ実際に売却できる金額の7~8割程度の金額となるため、不動産を売却して現金化するよりも相続税を抑えることができると考えられます。そのため、一般的には資産を現金として持っておくよりも不動産として持っておく方が、相続税対策になると言われています。 一方で、リースバックは元々相場の7割程度の価格で売却する仕組みであり、運営会社と話し合って月々の家賃と売却価格も抑えることができる場合もあります。そうして手元に入る現金が、不動産の相続税評価額を下回るのであれば、相続税対策になることもあるでしょう。 まとめ 相続財産の大部分を不動産が占める場合、複数の相続人がいると相続争いが生まれる恐れがあります。しかし、リースバックを利用すれば、住む家を確保しながら財産を均等に分配できない問題を解決できます。自宅の相続に不安を感じているなら、リースバックを活用した相続対策も検討してみましょう。 SBIシニアの住まいとお金に相談してみる お問い合わせは最短即日回答。ご相談は何度でも無料でご利用いただけます。 SBIシニアの住まいとお金に相談してみる お問い合わせは最短即日回答。ご相談は何度でも無料でご利用いただけます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 リースバックの5つの活用事例 リースバックは、自宅をリースバック運営会社に売却し、その会社と賃貸借契約を締結することで、売却後も同じ家に住み続けられるサービスです。自宅を活用した資金調達方法として注目されており、老後資金...