公開日:2025.06.11
一般的に金融機関で住宅ローンを組む場合は、団体信用生命保険(以下、団信)の加入を求められます。最近では、より手厚い保障を求めて「8大疾病保障特約」をつける人もいますが、どんな特徴があるのでしょうか。
この記事では、住宅ローン団信の8大疾病保障特約の必要性やメリット、加入時の注意点を解説します。
一般的な団信(以下、一般団信)は、住宅ローン契約者が死亡または所定の高度障害状態になったときに、住宅ローンが完済される保険です。住宅ローン契約者に万が一のことがあった場合、保険金で住宅ローンが完済されるため、家族にローンの返済を残さずに済みます。
8大疾病保障団信とは、一般団信に8大疾病を保証する特約をつけた団信を指します。8大疾病とは、3大疾病の「がん、急性心筋梗塞、脳卒中」と、5つの重度慢性疾患である「糖尿病、高血圧性疾患、肝硬変、慢性膵炎、慢性腎不全」を指します。
8大疾病保障団信は、8大疾病に罹患して所定の状態が続くと、住宅ローン残高が保険金で完済されます。ただし、金融機関によって8大疾病の定義や保障内容が異なることもあるため、事前に確認しておくことが大切です。
厚生労働省の人口動態統計によると、老衰を除くと、がん、心疾患、脳血管疾患が死因上位3つで、全体の45.6%を占めています。また、腎不全も9番目に位置しています。
一般的に、年齢が高くなるにつれて糖尿病や高血圧といった慢性疾患を患う可能性は高くなるといわれております。より手厚い保障を確保したい人や完済時年齢が比較的高い人は、8大疾病保障特約を検討するとよいかもしれません。ただし、保障を充実させるとその分保険料も高くなるので注意が必要です。
令和5年の日本人の上位10位の死因および一般的な三大疾病特約、および八大疾病特約の保障の対象かどうかは下表のとおりです。
死因 | 三大疾病 | 八大疾病 | 死亡総数に占める割合 |
---|---|---|---|
悪性新生物(がん) | 〇 | 〇 | 24.3% |
心疾患 | 〇 | 〇 | 14.7% |
老衰 | ー | ー | 12.1% |
脳血管疾患 | 〇 | 〇 | 6.6% |
肺炎 | ー | ー | 4.8% |
誤嚥性肺炎 | ー | ー | 3.8% |
不慮の事故 | ー | ー | 2.8% |
新型コロナウイルス感染症 | ー | ー | 2.4% |
腎不全 | ー | 〇 | 1.9% |
アルツハイマー病 | ー | ー | 1.6% |
出典)厚生労働省「令和5年(2023)人口動態統計(確定数)の概況」を基に筆者が作成
8大疾病保障団信には、以下のようなメリットがあります。
一般的に、住宅ローンは返済期間が長期にわたります。住宅ローンを借りた後に収入や生活環境が変化する可能性もあるため、返済できるか不安を感じる人もいるでしょう。また、8大疾病のいずれかに罹患して長期療養が必要になった場合、離職や休職をせざるを得なくなり、収入が途絶える恐れがあります。
一般団信に8大疾病保障特約をつけておけば、所定の条件を満たすと住宅ローンの残債が完済されるため、治療に専念できる環境が整い、精神的な負担も軽減されるでしょう。
民間の医療保険やがん保険は、手術や入院、通院などの医療費をカバーすることを主目的としています。一時金や入院給付金などを受け取れますが、住宅ローンの返済は保障されません。
8大疾病保障団信に加入すれば、病気による経済的なリスクに対して、より手厚い保障を受けることが可能です。
8大疾病保障団信に加入する場合は、以下の点に注意が必要です。
8大疾病のいずれかに罹患したとしても、すぐに団信の保障が開始されるわけではありません。例えば、「所定の状態が60日継続したとき」のように、疾病ごとに保障内容が定められています。
また、団信を契約後、一定期間は保障対象とならない免責期間が設けられていることもあります。契約前に、保障を受けるための条件を把握しておきましょう。
一般団信に8大疾病保障特約をつけると、その分保険料が発生します。一般的には、住宅ローンの金利に上乗せするかたちで支払うことになります。毎月の返済額や総返済額への影響を確認しておくことが大切です。また、団信で上乗せされる金額と一般的な医療保険等で備える場合とで、どれくらいの差があるかまで確認しておくといいでしょう。
8大疾病保障団信は、一般団信に限らず、年齢などの申し込み要件が定められています。そのため、団信に加入するためには、病歴や通院歴などを保険会社に告知して審査を受ける必要があります。告知漏れや虚偽の申告があると、告知義務違反となって万が一のときに保障を受けられないリスクがあるので、正確な告知を心掛けましょう。なお、病歴や年齢によっては加入できない場合があります。
住宅ローンの団信に8大疾病保障特約をつけることで、死亡や所定の高度障害状態だけでなく、がんをはじめとする幅広い病気に備えることができます。ただし、一般的な住宅ローンの金利に上乗せするかたちで保険料が発生することに注意が必要です。
長期のローンを組む場合や健康に不安がある方は、経済的なリスクを軽減する手段として8大疾病保障団信を検討してみてはいかがでしょうか。
執筆者紹介
次に読むべき記事
一般的に金融機関で住宅ローンを組む際は、団体信用生命保険(以下、団信)の加入を求められます。団信に加入すれば、万が一のときに住宅ローンの残債を肩代わりしてもらえるのが魅力です。ただ、中には「...