公開日:2026.01.28
住宅ローンを組んだ後に、転職や独立、あるいは勤務先の倒産などで退職の機会が訪れることは誰にでも起こり得ます。そんなとき、「退職したことを銀行に連絡すべきか」「もし連絡したら、一括返済を求められるのではないか」という不安に思うかもしれません。
結論から申し上げると、退職したことだけを理由に、住宅ローンの一括返済を求められたり、契約を解除されたりすることはありません。 ただし、金融機関への報告義務や、退職後に見落としがちなリスクについては正しく理解しておく必要があります。
この記事では、住宅ローン返済中に退職した場合の金融機関への連絡の要否、退職後のリスク、そして万が一返済が厳しくなった際の具体的な解決策を解説します。

住宅ローン返済中に退職や転職をした場合、金融機関への連絡は「必須」です。
住宅ローンの契約時、多くの方が目にする「金銭消費貸借契約証書(または契約約款など)」には、氏名・住所・勤務先などに変更があった際には速やかに届け出る旨の条項が記載されています。退職・転職はこれに該当するため、報告は契約上の義務となります。
金融機関は、債務者(借り手)の返済能力を常に把握しておく必要があります。退職して収入が途切れたり、転職して給与水準が変わったりすることは、返済の継続性に影響を与える重要な変化だからです。
「連絡すると何かペナルティがあるのでは?」と不安になるかもしれませんが、返済を遅延なく続けられるのであれば、報告を理由に金利が引き上げられたり、一括返済を迫られたりすることはまずありません。
もし報告をせずに、後から金融機関に退職や転職が発覚した場合、以下のようなリスクが生じます。
| 信頼関係の悪化 | 万が一、将来的に返済の相談(返済期間の延長など)が必要になった際、「不誠実な利用者」とみなされ、柔軟な対応を受けにくくなる可能性があります。 |
|---|---|
| 緊急時の連絡不通 | 返済遅延などの緊急時に、自宅や携帯電話で連絡がつかない場合、登録された勤務先に連絡が入ることがあります。その際に退職しており連絡が取れないと、所在不明とみなされ、銀行の不信感を招く原因になります。 |
後のトラブルを避けるためにも、退職や転職先が決まり次第、速やかに手続きを行うのが安心です。
住宅ローン契約中に退職しても、即座に一括返済を求められないのには、明確な理由があります。
住宅ローンは、購入した物件を「担保」として金融機関が資金を貸し出す仕組みです。万が一返済が滞った場合でも、金融機関はその物件に設定された抵当権により、優先的に資金を回収することができます。
そのため、借り手が退職したこと自体よりも、「担保価値がある状態で、毎月の返済が滞りなく行われているか」が重視されます。
勤務先や年収などの審査時の属性は重要ですが、一度融資が実行された後は、契約者が「返済を続けている実績」そのものが強い信用となります。
一時的に退職しても、十分な貯蓄があったり、すぐに次の職が決まっていたりして返済が継続できるのであれば、金融機関があえて契約を打ち切るメリットは少ないのです。
退職の理由によって、その後の返済計画で注意すべきポイントが異なります。
転職で年収が上がる場合は、これまで通り返済を続ければ問題ありません。一方、年収が下がる場合は、返済比率(年収に対する年間返済額の割合)が高まり、家計を圧迫するリスクがあります。
資金に余裕があるなら「返済額軽減型」の繰上返済を行い、毎月の負担を減らすのも一つの手です。
独立直後は、会社員時代に比べて収入が不安定とみなされ、金融機関からの信用力が一時的に低下します。 特に注意したいのが、独立後しばらくは他のローンへの借り換えや追加融資が極めて難しくなる点です。
独立を考えている場合は、会社員という「信用」があるうちに、現在のローンの条件見直しや借り換えを検討しておくとよいでしょう。
定年退職後は、給与収入がなくなるため、退職金で一括完済を目指す方が多いでしょう。しかし、手元資金をすべて完済に充ててしまうと、その後の老後資金や急な医療費が不足する恐れがあります。
完済するか、あえてローンを残して手元に現金を置くか、ライフプランに基づいた慎重な判断が求められます。
退職によって予定していた収入が得られず、返済が苦しくなったとしても、決して放置してはいけません。早めに対処すれば、自宅を手放さずに済む可能性も十分にあります。
まずは、現在ローンを借りている金融機関の窓口に相談しましょう。「条件変更(リスケジュール)」が認められれば、一定期間は利息のみの支払いにしたり、返済期間を延長して月々の支払額を減らしたりできる場合があります。
相談時には、「なぜ現在の返済が困難になっているのか(退職の経緯や家計の状況)」に加えて、「いつまでに再就職し、いくらであれば無理なく払い続けられるのか(今後の収支見通し)」を明確に伝えましょう。
現在のローンよりも低金利な住宅ローンへ借り換えることができれば、毎月の返済額を軽減できる可能性があります。ただし、銀行の住宅ローン審査では「勤続年数」や「安定した収入」が厳しくチェックされるため、退職・転職直後は審査に通りにくいという現実があります。
もし、転職後に年収が下がった、あるいは独立して銀行の住宅ローンが組めない状況になった場合に、資金繰りを改善したいのであれば、短期間のつなぎ資金の借り入れや、複数のローンを一本化する借り換えとして「不動産担保ローン」も選択肢の一つとして検討できます。
住宅ローンに比べると金利は高くなる傾向があり、返済期間によっては総返済額が増える場合があります。
しかし、与信だけでなく不動産の価値を加味して審査が行われるため、銀行で断られた場合でも、生活を立て直す手段として活用できる場合があります。
返済の目途が立たない場合には、これ以上の借入を増やすのではなく、家を手放してローンを整理するという選択肢もあります。
家を売却した代金でローンを完済する方法です。売却価格がローン残高を下回る場合でも、金融機関の同意を得て「任意売却」を行えば、競売よりも高い価格で売却できる可能性があり、結果として残債を抑えて、より有利な条件で再出発できることがあります。
「家を売却してローンを完済したいが、引越しはしたくない」という場合に有効な手段です。自宅をリースバック運営会社に売却し、その後は賃貸として同じ家に住み続けることができます。まとまった売却代金を手にしながら、住環境を変えずに生活を立て直せるのが大きなメリットです。
ここまで「返済中の退職」について解説してきましたが、最も注意しなければならないのが、「住宅ローンの本審査に通過した後、融資が実行される(家のお金が振り込まれる)までの退職」です。
住宅ローンの審査は、あくまで「現在の勤務先で、現在の年収が継続すること」を前提に行われています。融資実行前に退職してしまうと、審査の前提条件が崩れたとみなされ、再審査が必要になります。
特に、転職直後で試用期間中であったり、独立直後で収入実績がなかったりする場合、返済能力が不安定と判断され、結果的に「否決(融資不可)」となるケースが少なくありません。
どうしても融資実行前に環境が変わる場合は、隠さずに早めに金融機関へ相談しましょう。事後報告になると「虚偽の申告」とみなされ、契約解除となるリスクもありますが、事前に相談することで、転職先の条件(同業種でのキャリアアップなど)によっては再審査に通る可能性もあります。
住宅ローンの返済中に退職・転職しても、毎月の返済が滞りなく行われていれば、即座に一括返済を求められたり家を追い出されたりすることはありません。ただし、金融機関への報告は契約上の義務であり、将来の信頼関係にも関わるため、速やかに届け出ることが大切です。
退職によって返済が厳しくなりそうなときは、以下の3つのステップを検討してください。
| 金融機関への相談 | 返済期間の延長などの条件変更(リスケジュール)を相談する。 |
|---|---|
| 借り換えや追加ローンの検討 | 低金利な住宅ローンへの借り換えや、不動産担保ローン(一本化など)を活用して、毎月の返済額や資金繰りを改善する。 |
| 家を売却して住居費を見直す | 任意売却やリースバックなどの方法を用いて家を売却し、売却代金でローンを完済して生活を再建する。 |
退職は人生の大きな転機です。住まいの不安を1人で抱え込まず、早めに専門家や金融機関へ相談することが、無理のない返済と安定した生活を守るための第一歩となります。
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