2022年4月から「マンション管理適正評価制度」がスタートしました。本制度は適切に維持管理されているマンションが市場で評価されるための新たな仕組みです。同じ時期に国の「マンション管理計画認定制度」も開始されましたが、どんな違いがあるのでしょうか。
今回は、マンション管理適正評価制度の仕組みや国の制度との違い、メリット・デメリットについて解説します。
マンション管理適正評価制度とは、マンションの管理状態や管理組合運営の状態をチェックし、評価結果をインターネット上で公開する仕組みです。2022年4月に開始されました。
国内では築年数の古いマンションが増加傾向にあり、維持管理に課題を抱えています。国土交通省の資料によると、令和2年末で築40年超のマンションは103.3万戸です。10年後には約2.2倍の231.9万戸、20年後には約3.9倍の404.6万戸に増加すると見込まれています。
マンションの老朽化抑制や維持管理の適正化を図るため、一般社団法人マンション管理業協会が不動産関連団体と協力して、全国共通の評価基準を創設しました。マンション管理適正評価制度ではマンションの状態が6段階で評価され、評価結果は毎年更新されます。
参考)
・国土交通省「築後30、40、50年超の分譲マンション戸数」
・一般社団法人マンション管理業協会
マンション管理適正評価制度では、マンションの管理状態を5つのカテゴリーに分類し、30項目について評価します。カテゴリーと各評価項目は下記のとおりです。
カテゴリー | 評価項目 |
---|---|
管理体制 (20ポイント) |
管理者の設置 総会の開催、議事録の作成 |
管理組合収支 (40ポイント) |
管理費会計の収支 修繕積立金会計の収支 滞納管理費等への対策 修繕に関する資金計画の状況 |
建築・設備 (20ポイント) |
法定点検の実施 長期修繕計画書の有無 修繕履歴の保管 |
耐震診断 (10ポイント) |
耐震診断の実施の有無 耐震診断の結果、改修計画の予定の有無 |
生活関連 (10ポイント) |
設備等異常時の緊急対応 消防訓練の実施 防災マニュアル等の整備状況 |
カテゴリーごとにポイントが決まっており、管理組合収支や管理体制、建築・設備が重視されています。マンションの評価は、各項目の点数を合計して6段階(☆0~5個)で表示されます。
マンション管理適正評価制度のメリットは以下の通りです。
建物や管理組合の管理状態への評価が公開されるため、購入希望者や所有者が売買判断をしやすくなります。情報を開示していないマンションに比べて、市場価値の向上が期待できるでしょう。評価の有効期間が1年間と短く、最新の情報を確認できるのも魅力です。
マンション管理適正評価制度では審査項目が決まっているため、管理組合の運営目標や課題が明確になります。また、外部の評価を受けることで、管理組合運営の改善・適正化につながります。結果として、管理組合を運営しやすくなるでしょう。
マンション管理適正評価制度では、登録料や手数料がかかります。登録料は5,500円(税込)で、管理情報の登録やデータ蓄積、サイト公開などに使われます。評価・申請手数料の負担も必要で、こちらは管理会社や評価者ごとの自由設定となっています。
登録や申請、評価を受ける際に事務手続きの負担が生じるのもデメリットです。
マンション管理適正評価制度の登録・申請の流れは以下の通りです。
総会の決議を経て、管理組合からマンション管理会社に登録申請を依頼します。その後、マンション管理業協会が指定する講習を修了した管理業務主任者・マンション管理士が評価を行い、結果がインターネット上に公開されます。
本制度開始と同じ時期(2022年4月)に、国の「マンション管理計画認定制度」も開始されています。両制度とも「マンション管理適正化の推進を図る」という目的は同じですが、以下のような違いがあります。
管理適正評価制度 | 管理計画認定制度 | |
---|---|---|
運営主体 | マンション管理業協会 | 地方公共団体 |
制度概要 | マンションの管理状況をチェックし、評価結果をインターネット上で公開 | ・管理計画が一定の基準を満たすマンションを地方公共団体が認定 ・管理適正化のために必要に応じて助言・指導 |
対象 | 全国のマンション | 地方公共団体が「管理適正化推進計画」を作成している地域にあるマンション |
審査項目 | 30項目 | 16項目+地域独自設定項目 |
判定 | 6段階評価 | 認定(〇×) |
有効期間 | 1年間 | 5年間 |
マンション管理適正評価制度は全国のマンションが対象です。建物や管理組合の状態が6段階で評価され、有効期間は1年間です。
一方、管理計画認定制度は認定を実施する地方公共団体の地域にあるマンションのみが対象となります。認定するかしないか(〇×)で評価され、有効期間は5年間です。
審査項目についても、カテゴリーの分類や項目数が異なります。ただし、どちらの制度も管理組合の運営や長期修繕計画など、マンションの適切な維持管理に必要な項目はカバーされています。
管理適正評価制度の創設によって、マンションの老朽化抑制や維持管理の適正化につながるかもしれません。一方で、2022年6月時点の登録マンションは11件となっており、今後どの程度普及するかは不透明な部分もあります。
そのため、マンション管理適正評価制度がマンションの資産価値に与える影響を冷静に見極めることが大切です。
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