競売とは?競売を回避すべき理由とその回避方法

更新日: / 公開日:2020.07.15

住宅ローンの返済が滞ると、「競売」という言葉が頭をよぎる人もいるかもしれません。競売とは、返済ができなくなったときに、裁判所を通じて自宅が強制的に売却される法的手続きです。競売は、債権者が債務を回収するための手続きであり、「市場価格より安く売却される」、「余計な費用がかかる」、「周囲に知られてしまう」など、生活への影響が大きく、できる限り避けたいものです。

この記事では、競売の基本的な仕組みや種類、手続きの流れをわかりやすく解説するとともに、競売を回避するための具体的な方法についても紹介します。

競売とは?基本の仕組みと種類

競売とは、ローンなどの債務を返済できなくなった場合に、債務者が所有する不動産を裁判所の手続きにより強制的に売却し、その売却代金を債権者への返済に充てる法的手続きです。この手続きは、債権者(金融機関など)が裁判所に申し立てを行い、不動産が差し押さえられることで始まります。

競売は、債権者が債務の回収を図るための法的手段であり、債務者にとっては資産を失うだけでなく、生活への影響も大きいため、事前に仕組みを理解しておくことが重要です。

競売の種類と違い

競売と一口に言っても、実は3つの種類があり、それぞれ背景や目的が異なります。ここではその違いをわかりやすくご紹介します。

① 強制競売

裁判所の判決や調停、公正証書などに基づき、債務者の財産を強制的に売却する手続きです。たとえば、未払いの賃料や損害賠償などが対象になります。

② 担保不動産競売

住宅ローンなどで設定された抵当権などの担保権を実行するための競売です。ローンの返済が滞った場合、金融機関が担保不動産を差し押さえ、競売にかけることで債権を回収します。

③ 形式競売

遺産分割や共有物の解消、破産手続きなどで不動産を現金化する必要がある場合に行われる競売です。債務の返済目的ではなく、財産の整理や分配を目的としています。

公売との違い

競売と似た制度に「公売」がありますが、目的や手続きの主体が異なります。

  • 競売:民間の債権回収を目的とし、裁判所が手続きを進める(根拠法:民事執行法)
  • 公売:税金の滞納に対する回収を目的とし、国税局や税務署が手続きを進める(根拠法:国税徴収法)

どちらも不動産が強制的に売却される点では共通していますが、制度の背景や流れは大きく異なります。

競売の流れと手続きのステップ

督促から差押え、入札、落札までの流れ

住宅ローンなどの返済が滞った場合、競売に至るまでにはいくつかの段階があります。特に保証会社がついている融資では、競売の流れは、初めて見ると複雑に感じるかもしれません。ここでは、実際にどのようなステップで進むのかを順を追って説明します。

  1. 金融機関から督促状や催告状が届く
  2. 保証会社が金融機関へ代位弁済を行う
  3. 保証会社から代位弁済分の支払いを求める求償通知が届く
  4. 求償に応じられない場合、保証会社が裁判所へ競売の申立てを行う
  5. 裁判所から「競売開始決定通知」が届き、不動産が差し押さえられる
  6. 裁判所の執行官が、不動産の現況を調査するために訪問する
  7. 裁判所が不動産の評価書や物件明細書を作成し、競売の情報が公告される
  8. 指定された期日に、裁判所で不動産の入札が行われる
  9. 最高額で入札した落札者が決まり、裁判所から売却決定の通知が届く
  10. 不動産が落札者に売却され、退去を求められる

このように、競売は法的な手続きに基づいて進行し、最終的には不動産が強制的に売却されることになります。

裁判所の関与と現況調査の内容

競売手続きでは、裁判所が中心となって進行します。特に「現況調査」は重要なステップで、以下のような内容が含まれます。

  • 執行官による物件の訪問・写真撮影
  • 占有者(居住者)の確認
  • 建物の状態や周辺環境の調査
  • 必要に応じて近隣住民への聞き取り

この調査結果は、裁判所のホームページなどで公開されるため、競売にかけられていることが周囲に知られる場合もあります。

競売のデメリットとリスク

競売には、金銭面だけでなく精神面でも大きな負担がかかることがあります。ここでは、競売の主なデメリットを整理してみましょう。

市場価格より安く売却される

競売物件は、買主にとってリスクが高いため、落札価格が市場価格を下回るのが一般的です。主な理由は以下のとおりです。

  • 建物に欠陥があっても、買主が修繕費を負担する必要がある
  • 前の所有者が退去しない場合、交渉や法的手続きが必要になる
  • 「競売物件」への心理的抵抗感がある
  • 通常の不動産取引よりも手続きが複雑

競売では、「売却基準価額」が市場価格の7〜8割程度に設定される傾向があり、「買受可能価額(最低落札価格)」はその8割前後となるのが一般的です。結果として、実際の売却価格は市場価格の半分〜6割程度になることもあります。

余計な費用がかかる

競売には、通常の不動産売却では発生しない費用がかかります。代表的なものが「予納金」と「遅延損害金」です。

  • 予納金:裁判所に競売を申し立てる際に必要な費用。東京23区では、請求債権額に応じて80万〜200万円程度が必要です(最終的には売却代金から差し引かれ、債務者が負担する形になります)。
  • 遅延損害金:ローン延滞が続くことで発生する追加利息。競売完了までに1年以上かかることもあり、負担額が膨らむことがあります。

※令和2年3月31日以前に受理された申立てについては60万円
出典)裁判所|不動産競売事件(担保不動産競売,強制競売,形式的競売)の申立てについて

これらの費用が重なることで、競売後も残債が残るケースが少なくありません。

周囲に知られるリスクと心理的負担

競売は裁判所の手続きで進められるため、物件情報が公示されます。以下のような情報がインターネット上に掲載されることがあります。

  • 所在地・外観・室内写真
  • 執行官による現地調査の結果
  • 占有者の状況や周辺環境

名前が公開されることはありませんが、近隣住民や知人に知られてしまう可能性もあり、精神的な負担も大きくなります。

競売後に残る債務とその対応

「競売で家を売れば借金もなくなる」と思っていませんか?実は、売却後も借金が残るケースは少なくありません。

残債が残る理由

  • 競売価格が市場価格よりも低いため、売却代金がローン残高に届かない
  • 遅延損害金や手続き費用が加算され、債務額が膨らむ

残債の返済義務はどうなる?

競売後も、残ったローンの返済義務はなくなりません。引き続き、残債務を返済する必要があります。債権者は、状況に応じて以下のいずれかに変更されることがあります。

  • 元の金融機関(ローンを借りた先)
  • 保証会社(代位弁済を行った場合)
  • サービサー(債権回収を専門とする業者)

サービサーは、債権を譲り受けた後、債務者に対して返済の交渉を行います。多くの場合、分割払いでの返済が提案されますが、条件は債権者との交渉次第です。

競売を回避するための3つの方法

競売の申立てが行われた後でも、開札期日の前日までは取り下げが可能です。ただし、債権者との交渉は簡単ではなく、現実的な対策が必要です。ここでは、競売を回避するための代表的な3つの方法をご紹介します。

不動産担保ローンを活用する

他の金融機関から新たに融資を受けて残債を返済できれば、競売の手続きは取り下げられます。ただし、延滞歴や収入状況によっては審査が厳しくなることもあります。

一方で、不動産に評価余力がある場合は、柔軟な審査を行う金融機関から融資を受けられる可能性もあります。返済期間を延ばすことで、毎月の返済負担を軽減できるケースもあります。

任意売却で市場価格に近い金額で売却する

任意売却とは、債権者の同意を得たうえで、通常の不動産取引と同じ方法で物件を売却する方法です。競売と違い、市場価格に近い金額で売却できる可能性があり、残債の圧縮にもつながります。

まずは、任意売却に対応している不動産会社や弁護士に相談することが重要です。

リースバックで住み続ける選択肢も

「家を手放したくない」「住み慣れた場所に住み続けたい」という人には、リースバックという方法もあります。リースバックは、自宅を売却して現金を得た後も、賃料を支払うことで同じ家に住み続けられるサービスです。

債権者の同意が得られれば、競売を回避しながら生活環境を維持することが可能です。

競売に関するよくある質問(FAQ)

競売に関して不安や疑問を抱えている人は少なくありません。ここでは、よく寄せられる質問とその答えをわかりやすくご紹介します。

競売はいつから始まるのですか?

競売は、ローンの延滞が続き、債権者が裁判所に申立てを行った時点から正式に始まります。具体的には、督促状や催告状が届いた後、保証会社による代位弁済が行われ、裁判所から「競売開始決定通知」が届くことで、差押えが確定します。この通知が届いた段階で、競売の手続きが本格的に進行することになります。

任意売却は誰でも利用できますか?

任意売却は、債権者の同意が得られれば、ほとんどの人が利用可能です。ただし、売却価格が債権者の希望に近いことや、残債の返済方法について合意できることが前提となります。専門的な交渉が必要になるため、任意売却に詳しい不動産会社や弁護士への相談が重要です。

競売になったら、すぐに退去しなければなりませんか?

競売が成立し、落札者が決まった後でも、すぐに退去を求められるわけではありません。落札者との間で退去時期の調整が行われることもありますが、最終的には法的手続きにより退去が求められるため、早めの準備が必要です。

まとめ

競売は、ローン返済が難しくなったときに起こりうる法的手続きですが、売却価格が安くなったり、余計な費用がかかったり、周囲に知られてしまうなど、多くのリスクがあります。さらに、競売後も残債が残る可能性があるため、生活への影響は大きくなりがちです。

こうした事態を避けるためには、早めの対応が何よりも大切です。不動産担保ローンや任意売却、リースバックなど、状況に応じた回避策を検討し、専門家に相談することで、より良い選択ができる可能性があります。

競売は避けられる可能性があります。まずは、信頼できる相談先に話してみることが、解決への第一歩です。


執筆者紹介

「住まいとお金の知恵袋」編集部
金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

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