公開日:2026.06.10
「住宅ローンの返済負担軽減のために借り換えを検討しているが、手数料や諸費用がいくらかかるか気になる」という人もいるでしょう。借り換えによって金利は下がっても、手数料などを考慮すると費用対効果に見合わないこともあります。
実質的な金銭コストを把握・試算し、加えて時間的コスト(手間)を考慮した負担軽減効果を加味したうえで借り換えを判断することが大切です。
この記事では、住宅ローンの借換費用の内訳と相場、実質的な借換効果の試算方法を解説します。自身の状況に合わせた最適解を導き出すための判断材料としてご活用ください。

住宅ローンの借換費用は、借換時の残高や金融機関によって変動します。まずは自身の借入残高を基に概算費用を算出し、予算感を把握することが重要です。
借換先の金融機関では主に以下の費用がかかります。
住宅ローン契約時に借換先の金融機関へ事務手数料を支払います。支払方法には以下の2種類があります。
<事務手数料の種類>
| 特徴 | 費用の目安 | |
|---|---|---|
| 定率型 | 借入金額に対して一定割合を支払う方式 | 借入金額×2.2%(税込)が一般的 借入金額に比例して高額になる |
| 定額型 | 借入金額にかかわらず一定額を支払う方式 | 3.3万円(税込)~ |
定率型は、借入金額が大きいほど手数料が増えることになりますが、余剰資金があり自己資金を充当して借入額を抑えることができれば、手数料を低減させることも可能です。また、定率型の方が定額型よりも金利が低い金融機関もあります。
さらに、金融機関によっては事務手数料に加えて保証会社宛ての「保証料」が必要です。保証料の支払方法には以下の2種類があります。
<保証料の種類>
| 特徴 | 費用の目安 | |
|---|---|---|
| 一括前払い方式 (外枠方式) | 借入時に現金で一括して支払う方式 | 借入金額と借入期間に比例して変動する |
| 金利上乗せ方式 (内枠方式) | 毎月の返済金利に一定割合を上乗せして支払う方式 | 適用金利に年0.2%程度の上乗せが一般的 |
事務手数料のみの場合もあれば、事務手数料と保証料の両方が必要な場合もあります。
初期費用を抑えたい場合は「定額型」や「金利上乗せ方式」が有効ですが、借入総額が増加する恐れがあります。事務手数料と保証料の合計額を算出し、自身の資金計画に沿った選択をしてください。
新たな借入先金融機関が不動産に抵当権を設定するための費用です。法務局へ納める「登録免許税」と、登記手続きを代行する司法書士への「司法書士報酬」で構成されます。
| 費用の目安 | |
|---|---|
| 登録免許税 | 原則借入金額×0.4%(軽減措置適用の場合は0.1%) |
| 司法書士報酬 | 5万円〜15万円程度(依頼先・地域により変動) |
仮にローン残高2,000万円を借り換える場合、登録免許税は8万円(2,000万円×0.4%)です。
司法書士報酬は依頼先の事務所等によって異なりますが、手続きの確実性を担保するため、借換先の金融機関が司法書士を指定することが一般的です。
借入金額に応じて印紙税がかかります。金銭消費貸借契約書に税額分の収入印紙を貼付するかたちで納めます。印紙税額は以下の通りです。
| 契約金額 | 印紙税額 |
|---|---|
| 1,000万円超 5,000万円以下 | 2万円 |
| 5,000万円超 1億円以下 | 6万円 |
出典)国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」
なお、Web上で電子契約をする場合は、紙の契約書がないため印紙税は不要ですが、電子契約手数料がかかることがあります。電子契約手数料は金融機関ごとに異なり、5,000円~1万円程度が目安です。
借換時には、原則として団信に再加入する必要があります。団信保険料は、適用金利に含まれていることも少なくありません。ただし、「がん団信」「8大疾病団信」など、特約を付加する場合は、適用金利に年0.1%〜0.3%程度が上乗せされるのが一般的です。
一方、現在住宅ローンを契約している金融機関に支払う費用は以下の通りです。
契約中の住宅ローンを全額返済(完済)する際の手数料です。金融機関や手続き方法(窓口、電話、Web)によって異なり、無料〜5万円程度が相場です。Web手続きを利用することで手数料を抑えられることがあります。
契約中の住宅ローンに設定されている抵当権を抹消するために、以下の費用がかかります。
| 費用の目安 | |
|---|---|
| 登録免許税 | 不動産1件につき1,000円(土地1筆・建物1棟なら合計2,000円) |
| 司法書士報酬 | 数万円程度~(依頼先によって異なる) |
借換先の金融機関が指定する司法書士が、新たな抵当権設定と併せて抹消登記も担当するケースもあります。
諸費用を考慮したうえで、借り換えに経済的合理性(実質的な負担軽減)が生じる一般的な目安は以下の通りです。
※上記はあくまで目安であり、個別の条件や詳細なシミュレーションによって異なります。上記目安に当てはまらない項目がある場合においても、他の個別の条件や借換費用によっては経済合理性があることもあります。
借換費用を含めた実質的な借換効果は、以下の計算式で求められます。
ここでは、下記の前提条件をもとに、「借換費用を含めない試算」と「借換費用を含める試算」の2パターンの借換効果を比較します。
【前提条件】
<当初借入条件>
<借換条件>
<主な借換費用>
借り換えに伴う諸費用が以下のとおり約80万円発生し、あわせて団体信用生命保険の特約により年0.2%の金利上乗せがあるケースを想定します。
<借換費用を含めない試算結果>
| 借換なし (金利1.7%) | 借換あり (金利1.0%) | 差額 | |
|---|---|---|---|
| 残り25年の 総返済額 | 約2,845万円 | 約2,620万円 | ▲約225万円 |
| 毎月の返済額 | 9万4,822円 | 8万7,321円 | ▲7,501円 |
出典)知るぽると「借入返済額シミュレーション」にて筆者試算
※本試算は、上記出典をもとに算出した参考値です。実際の金額は、金融機関の審査基準や個々の状況などによって異なります。
借換費用を含めないで試算すると、総返済額は約225万円、毎月の返済額は約7,500円の減少となりました。
<借換費用を含めた試算結果>
| 借換なし (金利1.7%) | 借換あり (金利1.2%) | 差額 | |
|---|---|---|---|
| 残り25年の 実質負担額 | 約2,845万円 | 約2,764万円 (総返済額約2,684万円 +借換費用約80万円) | ▲約81万円 |
| 毎月の返済額 | 9万4,822円 | 8万9,435円 | ▲5,387円 |
出典)知るぽると「借入返済額シミュレーション」にて筆者試算
※本試算は、上記出典をもとに算出した参考値です。実際の金額は、金融機関の審査基準や個々の状況などによって異なります。
一方、借換費用を含めて試算すると、実質的な負担軽減額は約81万円、毎月の返済額は約5,400円の減少となりました。
このように、借換費用を含めるか次第で試算結果は大きく変わります。表面的な金利だけで判断せず、借換費用も含めた実質的な借換効果を確認することが大切です。
また、今回の試算では借換後の金利変動を考慮していませんが、変動金利へ借り換えた場合は金利変動による返済額変動の可能性があります。金利変動の影響や固定金利への借り換えのシミュレーションについては、以下の記事で説明をしていますので、ご参考にしてください。
住宅ローンの借換費用を試算する際に、見落としがちなポイントは以下の3つです。
契約中の住宅ローンで保証料を「一括前払い方式(外枠方式)」で支払いしている場合、借換時に一括繰上げ返済を行うことで保証料の一部が返還される可能性があります。
ただし、返戻の計算手続きにおいて、所定の保証会社事務手数料や振込手数料が差し引かれるのが一般的です。
戻り保証料(返還保証料)があれば、借換費用の補てんになるため、借り換えのハードルを下げるプラス要因となります。契約中の住宅ローンで保証料を一括払いしている場合は、あらかじめ戻り保証料(返還保証料)の有無と金額を確認しましょう。
以下2つの要件を満たせば、借換後も引き続き住宅ローン控除を受けられます。
出典)国税庁「No.1233 住宅ローン等の借換えをしたとき」
上記の証明として、新しい住宅ローンで当初の住宅ローンを一括返済したことがわかる書類を残しておきましょう。
また、住宅ローン控除には「返済期間が10年以上あること」などの要件があります。借り換えのタイミングで返済期間が10年未満になり控除を受けられなくなると、実質負担軽減効果が低下してしまうので注意が必要です。
借り換えには、事務手数料や保証料など金銭的コストだけでなく、各種証明書の取得手続き、審査申込手続き、面談などの「時間的コスト(手間)」を要します。また、手続きの進め方によっても手間の内容が異なります。
サポートの必要性や自身が手続きに割ける時間を考慮して選択することが、スムーズな借り換えの鍵となります。
住宅ローンの借り換えは、表面的な適用金利の水準だけを見て判断してはなりません。事務手数料や保証料、抵当権設定費用といった諸費用を踏まえ、実質的にどれだけの負担軽減効果があるかを試算することが求められます。
また、金銭的なコストだけでなく、契約手続きの手間といった時間的コストも考慮し、自身にとって最適な借換計画を検討しましょう。
執筆者紹介
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