公開日:2025.05.14
1つの不動産を複数人で所有しているときに、各所有者が持つ所有権の割合を「持分」といいます。不動産担保ローンは、自分の持分だけを担保に融資を受けることはできるのでしょうか。この記事では、不動産担保ローンが持分のみで借りられるのか、また、特殊な不動産に対する融資が可能かどうかについて解説します。
不動産担保ローンは、土地や不動産、マンションなどの不動産を担保に借り入れができるローンです。金融機関によっては、本人が所有する不動産だけでなく、家族や法人名義の不動産を担保にすることも可能です。しかし、共有名義の不動産について、自分の持分だけを担保にした融資を取り扱う金融機関は限られます。
「自分の持分だけを担保にした融資」とは、例えば、戸建て住宅を夫婦で二分の一ずつ所有している場合に、夫婦のどちらか一方のみの持分を担保とした借り入れを指します。
金融機関が融資の際に担保提供を求めるのは、融資金が未回収となるリスクに備えるためです。不動産担保ローンの場合、金融機関は担保不動産に抵当権を設定します。これにより、万が一債務者がローンを返済できなくなった場合に、金融機関が担保不動産を競売にかけて、売却代金から優先的に弁済を受けられます。
しかし、担保不動産が共有名義であり、一方の持分のみを担保に融資を行う場合、その持分単独では不動産全体を処分できないため、融資金の回収リスクが高まります。そのため、多くの金融機関では持分のみを担保とした不動産の取り扱いに対応していません。なお、共有名義人全員が担保提供をする場合は、一人で所有する不動産を担保にする場合と同等に評価されることが一般的です。
持分のほかに、一般的には「売却するのが難しい」といわれる特殊な不動産を担保にローンを組めるか気になる人もいるでしょう。
ここでは、「既存不適格建築物」「借地権付建物」「再建築不可」「市街化調整区域」の4種類の不動産について、不動産担保ローンの融資可否を紹介します。なお、あくまでも一般的な傾向であり、金融機関によって審査基準が異なる点には注意が必要です。
既存不適格建築物とは、新築時には当時の法律に適合していたものの、その後の法改正などの影響で現在の基準に適合していない不動産をいいます。例えば、建築当時は問題なかったが、法改正により建ぺい率や容積率がオーバーしているケースが考えられます。
不適格という言葉が入っていますが、あくまでも現行法の基準を満たしていないという意味であり、違法な不動産ではありません。ただし、建て替える場合は現行法に適合させる必要があるため、現在と同じ不動産を建てることはできません。また、現行法に適合している不動産に比べると、金融機関の担保評価は低い傾向にあります。
既存不適格建築物は建築時には適法であった不動産であり、違反建築物ではないため、不動産担保ローンの融資対象となりますが、金融機関によっては取り扱い対象外の可能性もあります。
借地権とは、不動産を建てるために一定期間にわたって土地を借りる権利のことです。一般的な不動産は、土地と建物をセットで取得します。一方で、借地権付建物とは、建物は自分の所有物ですが、土地の所有権は他人(地主)にある状態です。住宅ローンの場合、通常は土地と建物を一緒に担保とするため、借地権付建物では借り入れが難しくなります。
審査が柔軟な金融機関であったとしても、地主(借地権者)の同意の有無、借地権の残存期間などによって融資可能か判断されます。借地権付建物であっても融資を受けられる可能性はあるため、まずは不動産担保ローンを提供する金融機関に相談してみるとよいでしょう。
再建築不可とは、現在建てられている不動産を解体して更地にすると、新たな不動産を建てられない土地のことです。再建築不可の不動産は、主に都市計画法における都市計画区域や準都市計画区域にあります。これらの区域では、建築基準法で「幅が4m以上の道路に敷地が2m以上接していなければならない」という接道義務があり、基準を満たさないと新たに建物を建てることができません。
再建築不可の不動産は流通性が著しく劣るため、資産価値が低くなってしまいます。一般的には、再建築不可の不動産を担保に不動産担保ローンを借り入れることは難しいでしょう。
市街化調整区域は、都市計画法において「市街化を抑制すべき区域」と定義されており、原則として新たな開発行為や住宅の建築は制限されています。既存の建物を建て替える場合や用途を変更する場合には、自治体の許可が必要となることがあります。
このような制限があるため、市街化調整区域の不動産は担保評価が低くなりやすく、不動産担保ローンの審査が厳しくなる傾向があります。
不動産担保ローンは、共有名義の不動産について、自分の持分だけを担保に融資を受けることは可能ですが、対応している金融機関は限られています。ただし、共有者全員が担保提供する場合は、通常の不動産担保ローンが利用可能です。自分の持分を担保に不動産担保ローンで借り入れをしたい場合は、金融機関に申し込む前に共有者同士で十分に話し合いましょう。
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