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不動産担保ローンを提供している金融機関のホームページには、よく「仮審査」や「事前審査」という言葉が使われています(以後この記事では「仮審査」と呼称します)。住宅ローンを利用したことがある人なら、「本審査」前に必ず行う手続きの一つと思うかもしれません。 しかし、不動産担保ローンの仮審査は、住宅ローンで行われるものとは異なります。この記事では、不動産担保ローンの仮審査について解説します。 住宅ローンの仮審査とは 仮審査は住宅ローンにおいて不可欠な手続きの一つです。仮審査を通過しないと、融資をするかどうかを決定する本審査に進めません。仮審査が必要となる理由には、住宅ローンを申し込むタイミングが関係しています。 正式に住宅ローンを申し込めるのは、ローンを借り入れる人が不動産業者と物件の売買契約を交わした後になります。物件の所有権を持っていないと、申し込みはできないことになっているからです。しかし、もし売買契約が完了している状態で、住宅ローンを借り入れることができなければ、物件の引き渡しは行えません。そうなれば売買代金を回収できない不動産会社や、物件を購入する人にとっては大問題です。 このような問題を発生させないために仮審査があります。購入する物件を決めた段階で金融機関に仮審査を申し込み、住宅ローンを借り入れるための条件を満たしているかどうかを審査します。そして、仮審査を通過した人が不動産会社と売買契約を結び、金融機関に本審査を申し込みます。このような段階を踏むことで、売買契約が完了しているにもかかわらず本審査に通らない、という事態を予防できます。 住宅ローンの本審査に落ちる要因 住宅ローンの仮審査はあくまで簡易的な審査です。住宅ローンを借り入れる人の年収や年齢、信用情報といった必要最小限の情報を基に、金融機関が信用力を判断します。そして、仮審査を通過すると本審査に進みますが、仮審査を通過しても必ず本審査に通るわけではありません。 本審査では住宅ローンを提供する金融機関に加えて、債務保証をする信用保証会社にも審査されます。信用保証会社は、住宅ローンを借り入れる人のいわば〝保証人〟といった存在です。そのため、仮審査は短い金融機関だと1~2日で終了しますが、本審査は1週間程度かかるところが多いようです。 本審査を通過できない理由は、以下のような理由が考えられます。 仮審査で申告した情報が事実と異なっている 収入証明書などの書類に不備がある 未申告の高額の借り入れがある 団体信用生命保険に加入できない 不動産担保ローンの仮審査とは 前述のとおり、住宅ローンの仮審査は手順や内容が明確になっています。一方で、不動産担保ローンの仮審査は、各金融機関が独自に行っており、中身は明確になっていません。また、仮審査を受けなくても、直接本審査を申し込むことが可能です。 不動産担保ローンを借り入れる人は不動産を保有しているため、住宅ローンで考慮しなければならない不動産会社との売買契約のタイミングなどが、存在しないからです。それでは、不動産担保ローンの仮審査にはどんな意味があるのでしょうか。 実際に行われている金融機関の仮審査は、多くの場合〝事前相談〟といった役割を担っているようです。不動産担保ローンを検討している人の「正式に審査を申し込む前に、融資が可能かどうかをちょっと聞いてみたい」という要望に対応しているといえます。 不動産担保ローンの本審査には、さまざまな書類が必要です。不動産の登記簿謄本の登記時事項証明書、土地や建物の図面、前年度の固定資産税納付の証明書、固定資産税評価証明書などです。こうした書類を揃えるには、かなりの手間と費用がかかるので、本審査に通過しなかった場合、精神的にもダメージを受けることは想像に難くありません。 まとめ 不動産担保ローンの仮審査は各金融機関によって異なりますが、信用情報や担保物件の簡易的な評価が行なわれています。また、仮審査で融資ができる可能性が高いと判断されても、本審査が通らないことがあるのは住宅ローンと同じです。このような点を理解していれば、気軽に打診ができる事前相談としての仮審査のメリットは小さくないのではないでしょうか。 無料の仮審査を申込む ご所有の不動産を担保にいくらまで融資可能かをご回答いたします。 無料の仮審査を申し込む ご所有の不動産を担保にいくらまで融資可能かをご回答いたします。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 不動産担保ローンの審査基準と審査通過のためのポイント 不動産担保ローンを利用して資金調達するには、金融機関の審査に通過する必要があります。不動産担保ローンの利用経験がないと、審査がどのように行われ、どうしたら審査に通過できるかわからないかもしれ...
不動産担保ローンの金利は、一般的に「○%~○%」というように上限と下限の金利が表示されます。このような表示は、申込金額等の条件によって適用金利が変わることを表しています。当然、ローンを借りる人にしてみれば、金利は低ければ低いほど良い条件であることは間違いありません。では、どうすれば借入金利を低くすることができるのでしょうか。 この記事では、不動産担保ローンを低金利で借りるために抑えておきたいポイントを解説します。 不動産担保ローン金利の相場 不動産担保ローンの金利は金融機関によって異なります。ここでは取り扱い件数や金額が多い銀行とノンバンクの不動産担保ローンの金利相場を比較してみましょう。 銀行の不動産担保ローンの金利相場 銀行が提供する不動産担保ローンの金利は、比較的低く設定されていることが多いです。具体的には、資金使途が限定されていない不動産担保ローンの場合、比較的低金利な金融機関で下限金利が1.0%台に設定されています(2025年4月時点)。 一方で、上限金利は8%や9%台に設定されており、不動産担保ローンの申込人によって適用金利が大きく変動することがわかります。 ノンバンクの不動産担保ローンの金利相場 ノンバンクの不動産担保ローンの金利は、銀行と比較して高く設定されていることが多いです。具体的には、比較的低金利な金融機関で下限金利が2.0%台に設定されています(2025年4月時点)。一方で、上限金利は5~7%台に設定されており、銀行の不動産担保ローンと大きく変わらないことがわかります。 関連記事はこちら不動産担保ローンにおける銀行とノンバンクの違い 不動産担保ローンを低金利で借りるための5つのポイント 不動産担保ローンの金利は、融資を実行する前に金融機関が行う審査の結果に大きく左右されます。つまり、審査の中身を理解すれば、低金利で借りるコツがわかります。まず、金融機関はどんな点をチェックするのでしょうか。 不動産担保ローンの審査では、主に以下のような項目が対象となります。 融資先の属性 担保不動産の価値 担保掛目 資金使途 借入期間 各項目について、どのような点がポイントであるか、詳しく説明していきます。 融資先の属性は信用力をみる 不動産担保ローンを個人で借りる場合も法人で借りる場合も、審査内容はそれほど変わりません。どちらも重要なのは融資先の「信用力」であり、信用力を計る条件として「収入」が大きな要素になります。収入とは、融資先が個人であれば年収、企業であれば利益を指します。 また、融資先の「信用情報」も信用力に影響します。過去にローンを借り入れていれば、その返済状況が確認され、ローンの返済が滞ったことがあると信用力は低くなります。反対に、延滞などをせずに返済がされていれば信用力は高くなります。また、個人であれば年齢や勤続年数、他の金融機関からの借入残高があるかどうか、といったことも融資先の属性に該当します。 返済比率と返済負担率もポイント 属性では特に収入が重視され、基本的に収入が多いほど信用力は高いと判断されます。しかし、その金額だけが審査対象となるわけではなく、「返済比率」も重要です。返済比率とは、収入に占めるローンの年間返済額の割合のことで、「返済負担率」とも呼ばれます。例えば、年収が500万円の人であれば、返済比率30%という水準は年間返済額が150万円になります。 年間の収入に占めるローンの支払額が大きくなると、それに伴い返済比率は高くなります。返済比率が高くなるほど借り入れの負担は重くなるので、返済が滞るリスクが生じます。そのため、金融機関は審査において返済比率の基準を設定しており、その基準に近いローンには高めの金利が適用されたり、融資そのものが否決されたりすることがあります。 したがって、借入金利を低くするには、まず「返済比率を低くする」ということが挙げられます。ただ現実的には、収入を増やすということはなかなか難しいので、年間返済額を減らすことがポイントになるでしょう。 担保不動産の価値の高め方 一般的に、担保不動産の価値が高くなるほど、借りる金額を増やす、金利を低くするといったことが可能です。不動産は土地と建物の2つで構成されており、土地の評価には、国税庁が発表している「路線価」(正式名称は「相続税路線価」)を用いることが一般的です。一般的な不動産取引では、「公示地価」や「基準地価」に基づいて売買価格が決定される場合が多いですが、路線価は公示地価や基準地価の8割程度とされています。 建物の評価はやや複雑で、建物の「再調達価格」を算定するところから始まります。再調達価格とは、その建物を新たに建築あるいは購入時に必要となる金額のことで、さらに、建物の「延べ床面積」や「法定耐用年数」などを加味して評価します。 ただし、建物の築年月が法定耐用年数を超えていると評価額はゼロ。例えば、戸建て住宅の法定耐用年数は22年なので、築22年を超えた一戸建ての価格は0円となり、不動産価格は土地だけを評価することになります。 関連記事はこちら不動産評価の方法と不動産価値の考え方 担保不動産の価値は上昇することもある 前述したように、担保不動産の評価額が高いほど、借入金額を増やしたり、金利を低くしたりする余地が広がります。とはいうものの、「すでに保有している不動産の評価額は変わらないのでは」と思っている人がほとんどでしょう。しかし、不動産の評価は所有者の工夫によって変わる要素もあります。 建物の価値は築年数の経過とともに減少しますが、リフォームによって価値を高めることはできます。リフォームまではいかなくても、周辺の掃除や外壁のクリーニングを定期的に行い、建物を整えておくことは重要です。また、土地についても、駅に近い立地であれば、商業施設の新規出店など周辺環境が良くなる場合が出てきます。 不動産としての価値を高めるということは、それが住宅であれば、住環境を改善することにもなります。普段から心がけておくことは、それほど難しいことではないでしょう。 関連記事はこちら不動産価値の高め方とは?立地条件と不動産価値の関係 担保掛目で融資可否や適用金利が分かれる 担保掛目とは、担保不動産の評価額に対して、金融機関が設定する比率のことです(「掛目」と呼ばれることもあります)。例えば、担保不動産の評価額が土地と建物を合わせて4,000万円の場合、金融機関の担保掛目が80%という比率であれば、担保評価額は4,000万円×80%=3,200万円となります。 不動産担保ローンにおいて、この担保掛目を用いて算定される実質的な担保価値が融資限度額になるため、重要なポイントです。担保掛目は、金融機関が独自に設定しますが、住宅ローンも含めて、70~80%程度に設定しているところが多いです。 もし、融資の返済が滞り、金融機関が不動産を売却することになった場合、不動産はすぐに現金化することは困難です。保有している間に、価値が減少する恐れもあります。そうしたリスクに備えるために、あらかじめ時価評価の80%程度に設定しているわけです。 担保掛目を考慮して融資金額を決める 一般的には、担保不動産に金融機関が設定する担保掛目を適用した金額が融資限度額になります。評価が4,000万円の物件に対して、担保掛目が80%であれば、融資の限度額は3,200万円です。 この物件を担保として3,200万円を借りる場合、融資限度額いっぱいの融資となり、リスクが高いと判断され、金利は高めに設定されることが多くなります。 一方で、2,800万円を借りる場合、400万円の担保余力が生まれます。金融機関としては、担保評価額に対して担保余力があれば、金利を引き下げる余地が出てきます。融資限度額まで借りる必要がなければ、借入金額を減らすことで金利を低くできる可能性があります。 資金使途が明確で金額は妥当か 不動産担保ローンの審査において、金融機関は必ず資金使途を確認します。担保が必要のない無担保型ローンでは、基本的にお金の使いみちは自由ですが、不動産担保ローンでは、金融機関によって資金使途に制限がかかることもあります。 例えば、会社の運転資金にすることを目的とした事業用資金は、不動産担保ローンとしては融資しない銀行が少なくありません。すでに事業で赤字が出ている状態であれば、返済が滞るリスクがあるからです。一方で、多くのノンバンクでは、事業用資金の融資をしています。 「資金の使途」におけるポイント 資金使途は、正しく申告しなければならないのは当然ですが、資金繰りの状況をきちんと伝えることで、金利を低くしてもらえる可能性があります。会社の運転資金として借りる場合でも、事業が上手くいっていないということにはならないからです。 例えば、会社の売上げが伸びて、売掛金が大きくなってくると、会社は事業用の立替金を増やしておく必要があります。また、取引先の要請で、売掛金の回収期間が延びてしまうこともあるかもしれません。こうしたことは事業が軌道に乗っているからこそ起こる事態です。 審査の際に、資金使途を運転資金としたうえで、なぜ運転資金が必要になったのかを明確にすることで、融資が受けやすくなり、金利も下げられる可能性が出てきます。その際は、理由の〝証拠〟となる会社の帳簿などを、併せて提出すると、さらに効果が高まるでしょう。 また、仮に事業があまり順調に行っていない場合でも、実現可能性の高い事業計画書を提出することで、融資が受けやすくなることもあります。資金使途自体は変えることはできませんが、工夫する余地はあります。 借入期間の長さで適用金利が変わる ローンの借入期間と金利には密接な関係があります。ほとんどの人は、借入期間が長いほど高金利になるというイメージを持っているかもしれません。基本的には、そうした認識は間違ってはいません。借入期間が長期になるほど、予期しない問題が発生するといった返済が滞るリスクが高くなるからです。 ただし、借入期間が長いほど金利が高いというのは、ローンが「固定型」の場合です。固定型は、借入時に設定された金利が返済終了まで変わらない、というものです。これに対して、「変動型」のローンは、一定のタイミングで金利が見直されるというもので、借入後の金融市場の動向によって、金利は上昇することもあれば、低下することもあります。したがって、通常、変動型の金利は借入期間によって大きな違いはありません。 金融機関が融資しやすいローンとは? 上記の傾向から外れる、微妙なケースも存在しています。例えば、住宅ローンには「固定期間選択型」というタイプがあります。これは、「10年固定」といったように、借入後、あらかじめ決めた期間の金利が固定される、というローンです。固定される期間は、3年、5年、7年、10年など、金融機関によってさまざまです(なお、固定期間が終了した後は「変動型」に移行します)。 この固定期間選択型も、一般的には固定期間が長くなるほど、金利は高くなる傾向にありますが、固定期間が短い方の金利が、長い方の金利よりも低いというケースが存在します。これらの要因としては、日銀の政策金利や金融市場の動向が挙げられますが、ローンを提供している金融機関の貸出金の残高の内容も関係しています。貸出金の残高の内容とは、残高に占める固定型と変動型の割合や、ローンが返済される時期などです。 金融機関としては、固定型に偏っているとか、返済がある時期に集中しているといった事態は避けなければなりません。経営の安定性を高めるために、さまざまなローンをバランスよく提供することが重要になります。 すると、金融機関には、ローンのタイプや借入期間などの条件において、融資をしやすいローンが出てきます。したがって、借入期間を柔軟に設定できるようであれば、金融機関に金利が低くなる期間があるかどうかを聞いてみる、という手があります。ただし、必要以上に借入期間を長くすると、今度は利息の負担が増えてしまうので、その点には注意しなければなりません。 まとめ 低金利で借りるポイントを5つ振り返ります。 項目 ポイント 融資先の属性信用力が高いほど低金利での借り入れができる。返済比率を下げれば、信用力を高めることが可能。 担保不動産の価値建物のリフォームやクリーニング、周辺環境で好転した部分で価値を高められる可能性がある。 担保掛目担保評価額に対する借入金額の比率を下げることで、金利を引き下げる余地が生まれる。 資金使途財務状態を正確に申告するとともに、事業計画書などを作成する。 借入期間借入期間に融通が利くようであれば、低い金利が適用される期間があるか確認する。 上記のポイント以外にも、初めて不動産担保ローンを借りる場合は、複数の金融機関にローンを申し込んで金利を比較し、最も低金利を提示してきた金融機関から借りる、といったことも挙げられます。また、借り入れをした経験があり、すでに返済が終了していれば、同じ金融機関に申し込む方が、低い金利を適用される可能性があります。すでに完済をしたという履歴が、信用力のアップにつながるからです。 無料の仮審査を申込む ご所有の不動産を担保にいくらまで融資可能かをご回答いたします。 無料の仮審査を申し込む ご所有の不動産を担保にいくらまで融資可能かをご回答いたします。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 不動産担保ローンの金利の実態をさぐる 不動産担保ローンに限らず、金融機関が表示しているローンの金利は、「年○○%~△△%」といった感じで上限と下限を表示していることがほとんどです。そのため、ローンの金利を比較しようとしても、この...
この記事では、金融庁の『投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果』について、その中身を掘り下げたいと思います。実は、この調査には、金融機関の融資について金融庁の考え方が、これまでになく非常に具体的に示されています。おそらく、今後、中長期的な指針となっていくと考えられます。 「不動産投資ローン」に改善を促す金融庁 金融庁は、「アパート投資向けの不正融資問題」において、特に、紹介業者が顧客を金融機関に紹介するケースについて警鐘を鳴らしています。簡単にいうと、融資に必要な審査関係資料や契約内容について、紹介業者に依存する傾向がみられ、融資先の顧客の管理体制が〝緩く〟なっているのではないか、というものです。 実際に、金融機関の回答をみると、不動産投資ローンを住宅ローンの延長と捉えてしまい、顧客の給与収入も返済原資の一部とみなしているため、物件のキャッシュ・フローのみで返済の見込みがなくとも、融資が実行されるケースが散見されたようです。 また、中古の物件に対する融資期間が、建物の築年数を控除した法定耐用年数を大幅に超えるケースもあったとされています。そのため、金融機関の9割以上は融資先事業の収支計画のシミュレーションをしている、とされていますが、その「精緻さにばらつきあり」と懸念が表明されています。 銀行や信用金庫では、不動産を担保として融資をする場合、担保不動産の市場価格に加えて、顧客の収入や、融資先が企業であれば事業の収益動向も加味して融資額を決めることが多いとされています。それに対して金融庁が懸念を表明したことにより、少なくとも不動産投資ローンについては、担保不動産の評価、事業の収支計画の妥当性に基づいた与信が行われることになるでしょう。 投資先物件のキャッシュ・フローの重要性 金融庁は、事業の収支計画の審査についても、以下のような提言をしています。 ①不動産投資ローンは、住宅ローンと違って、融資額も大きくなり、事業性融資の性格が強くなる点に留意する。 ②債務の返済は、賃貸事業が長期的に生むキャッシュ・フローの水準が大きく左右するため、金融機関は物件がキャッシュ・フローを生む期間(=建物の耐用年数)をできる限り客観的に検証し、その耐用年数から想定される合理的な融資期間を設定する。 ③債務の完済までの収支シミュレーションに基づき、賃貸事業としての返済可能性を見極めることが重要。 ④ 顧客は、目先の利回りにとらわれることなく、大規模修繕の必要性や物件収支が下振れた際の返済余力や、当初想定した価格で売却できない可能性も考慮しつつ、長期的な事業の収支計画を判断する必要がある。 いずれも、金融機関の審査に対する非常に具体的な提言となっており、金融庁が公表するレポートとしては、〝異例〟の内容といえます。以上のような指針から、今後、不動産投資ローンを受けるためのハードルは、かなり高くなることが予想されます。 投資先の物件が生み出すキャッシュ・フローをおもな返済原資とするということは、不動産の選別は厳しくならざるを得ません。すでに、価格が上昇している物件は、十分なキャッシュ・フローが見込みにくいため、融資が実行されにくくなります。また、建物の耐用年数を客観的に検証して融資期間を決めることになれば、築年数の古い中古物件は融資対象から外れるケースが増えてくるでしょう。 金融機関の審査が問われる時代に これまで、金融機関は、決してキャッシュ・フローについて無視をしてきたわけではありません。ただ、金融庁のレポートも指摘しているように、一部の金融機関では、家賃収入から返済額や経費を差し引いた金額が「黒字」になればよい、と安易に考えていた形跡がうかがえます。これからは、単純なキャッシュ・フローだけでなく、「債務返済倍率」といった不動産投資の健全性を計る指標も併せて、融資の審査を行なうことが求められてくるでしょう。 さらに、金融庁は、融資が実行された後も、当該物件の空室率や賃料などの確認作業を行なうことを金融機関に要請しています。融資期間中に、事業の実績を踏まえた収支計画のシミュレーションの更新を、まったく行っていない金融機関があったためです。 以上は、基本的には不動産投資ローンに関する事柄ですが、金融庁は、今後他の融資全般についても、事業の収支計画をベースとした審査の適正化を進めていく、と見られています。ますます、金融機関の審査のノウハウが重要になっていくでしょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 不動産投資ローンの審査はココをみる(1) 賃貸アパートやマンション等の収益物件を担保とした貸出しは、金融機関の不動産関連融資の中では主力商品のひとつです。2013年から始まったアベノミクスによって、国内の金融市場は超低金利状態に突入... ▼シリーズ「不動産投資ローンに対する金融機関の融資動向」の記事一覧 ・第1回:不動産投資ローンに対する金融機関の融資動向(1) ・第2回:不動産投資ローンに対する金融機関の融資動向(2)
2019年3月に、金融庁から『投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果』が発表されました。これは、金融庁が全国の金融機関を対象として、おもに投資用不動産向け融資の実態についてアンケート調査をしたものです。その内容を2回にわたって紹介します。ここでいう投資用不動産向け融資とは、個人が投資目的で、居住あるいは宿泊用の不動産を取得するために金融機関が行なう融資のことで、一般的に不動産投資ローンと呼ばれるものです。 「不動産投資ローン」が拡大したのは2016年から まず、この調査の背景について説明をしておきましょう。2018年に明るみになったスルガ銀行 の不正融資問題を受けて、金融庁は、銀行と信用金庫、信用組合を対象として、不動産投資ローンの貸出額や残高、さらに、融資審査の中身についてアンケート調査をしました(調査時期は2018年10~11月)。 実は、スルガ銀行の不正融資問題が発覚する前から、すでに金融庁は不動産投資ローンについて注視をしていました。ここ数年、銀行および信用金庫の不動産業向け融資の残高は増加を続ける中、2016年3月期と2017年3月期に、不動産投資ローン(表の表記では「個人による貸家業向け貸出残高」)が拡大をしたからです。 【国内銀行・信用金庫の不動産業向け貸出残高の推移】 上の表は、日銀が発表している銀行と信用金庫の「貸出先別貸出金」というデータを、金融庁が集計したものです。この表をみると、2016年3月期の1年間で、不動産業向けの貸出残高が前年比で6.3%増加していることがわかります。同様に、2017年3月期も6.4%増加しました。一方で不動産業向け融資の増加率に相応して、「個人による貸家業向け貸出残高」も、2016年3月期3.8%、2017年3月期4.0%と増加しました。この時期から、金融庁は、不動産投資ローンのリスクに懸念を持っていたようです。 不動産業向け融資は拡大傾向が続く その後、2018年にスルガ銀行を始めとした、地方銀行のアパート投資向けの不正融資が明らかとなります。その影響で、2019年3月期の「個人による貸家業向け貸出残高」は横ばいとなり、新規の貸出しは急減することとなりました。 ただし、ここで注意すべき点は、不動産業向け貸出については、不正融資が問題化した後もそれまでとあまり変わらないペースで拡大をしていることです。金融庁のアンケート調査には掲載されていませんが、「個人による貸家業向け貸出残高」を除いた不動産業向け貸出残高の推移は、下の表のようになっています。 【国内銀行・信用金庫の不動産業向け貸出残高(個人による貸家業向け貸出残高を除く)の推移】 この表から分かるのは、不動産業向け貸出残高は2019年3月末時点で、前年比5.7%と依然として高い伸びを記録していることです。つまり、銀行と信用金庫の不動産業に対する融資姿勢には、それほど大きな変化はなかったことになります。 不動産業者に、「アパート投資向けの不正融資が社会問題化して以降、金融機関の融資姿勢に変化はあるか?」という質問をすると、「それほど変わっていない」という答えが返ってくることが多いのですが、このデータはそれを裏付けていると言えます。 但し、表①でみたように、不動産投資ローンについては、消極的なスタンスとなる金融機関は増えています。金融庁のアンケート調査によると、「消極的」と回答した銀行は、2016年3月期は全体の4%でしたが、2018年9月期には17%に、同じく、信用金庫は全体の11%から25%へと増加しています。 以上のことから、当面、不動産投資ローンの新規実行は伸び悩む一方、不動産業向け融資にはそれほど影響がない、ということが予想されるでしょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 不動産投資ローンに対する金融機関の融資動向(2) この記事では、金融庁の『投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果』について、その中身を掘り下げたいと思います。実は、この調査には、金融機関の融資について金融庁の考え方が、これまでになく... ▼シリーズ「不動産投資ローンに対する金融機関の融資動向」の記事一覧 ・第1回:不動産投資ローンに対する金融機関の融資動向(1) ・第2回:不動産投資ローンに対する金融機関の融資動向(2)
不動産担保ローンに限らず、金融機関が表示しているローンの金利は、「年○○%~△△%」といった感じで上限と下限を表示していることがほとんどです。そのため、ローンの金利を比較しようとしても、この表示だけで比べることは困難です。実際に借り入れるローンの金利は、融資の審査を通過した後に提示されることになるからです。 時間に余裕があれば、複数の金融機関に融資の申し込みをし、審査後に提示された金利を比較して、いちばん有利なローンを選ぶことができるでしょう。しかし、現実にはなかなかそうはいきません。申し込みごとに必要書類を揃えたりするのは、結構面倒なものです。金利を比較するために、5社も6社も申し込むという人は、かなり少ないと思われます。ほとんどの人は、もっとも早く審査を通過して、ローンが借りられることが決まった金融機関を選んでいるのではないでしょうか。 実際に契約されたローン金利がわかる「平均約定金利」 >不動産担保ローンの概要についてはこちら ただ、やはり金利が高いのか低いのかは、気になるところ。もし平均的な金利の水準がわかれば、それと比較することで、少なくとも金利が高いのか低いのかの目安くらいはつくことになります。実は、その平均的な水準は公表されています。日本貸金業協会は、各種の資料を公表しており、そこには平均的な金利水準も含まれているのです。 日本貸金業協会とは、「貸金業法」という法律に基づいて貸金業を営んでいる金融機関が加盟している業界団体です。2007年12月に、「貸金業法第26条第2項」の規定に基づき、内閣総理大臣の認可を受けて設立されました。参加しているのは、融資を行う、銀行以外の金融機関です。 平均約定金利 前述のように、この日本貸金業協会が発表する統計データの中に、「約定金利」という項目があります。約定金利とは、簡単にいうと、実際に契約されたローンの金利のことで、日本貸金業協会のホームページには、「月末平均約定金利」として、協会に加盟する金融機関が行った、月ごとのローンの金利の平均値を掲載しているのです。早速、そのデータをみてみましょう。以下は、2019年3月上旬に閲覧することができる最新のもので、2018年12月時点のデータです。 ○月末平均約定金利 消費者向け有担保貸付 6.08% 事業者向け有担保貸付 3.66% 消費者向けというのは借りる人が個人で、事業者向けというのは借り手が法人です。また、有担保貸付とは担保があるローンのことで、住宅ローンを除いたものですので、実質的に、不動産担保ローンのデータと考えて問題はありません。このデータは、2018年12月に行われたローンの平均値が個人向け6.08%、法人向け3.66%だった、ということを表しています。個人と法人で、「意外と差があるな」と思った人も少なくないかもしれません。 現在、不動産担保ローンを申し込んでいて、金融機関からローンの金利を提示された人がいれば(あるいはすでに返済を始めている人は)、ローン金利が平均よりも高いか低いのかは、この数値で判断ができることになります。 「平均約定金利」はひとつの目安 ただし、この平均約定金利はあくまで全体の平均値です。すでに、何度か借り入れをしていて、ローンの実績がある、つまり信用力が高い個人や法人が含まれているわけです。新規で不動産担保ローンを借りるときは、この平均約定金利よりも一般的には〝高め〟になるといえるでしょう。 また、貸金業者全体の平均約定金利なので、さまざまな業者が含まれている点にも注意が必要です。平均値を上回っているからといって、必ずしも〝高めの金利〟とはいえません。一見、高めの金利にみえても、同じような業態の金融機関の中では、低い方の金利になっている、といったケースもあり得ます。 業態別の平均約定金利 ちなみに、この日本貸金業協会の統計データには、融資をする金融機関の業態ごとのデータも掲載されています。その業態の名称は、「消費者金融」「事業者金融」「クレジット等」の3種類となっていますが、それぞれの名称が一般的に表す業態とはちょっとズレています。というのも、日本貸金業協会の分類は、金融庁が定めている分類に沿ったものになっているからです。金融庁の分類はかなり複雑になっているため、一般的に用いられている名称とは、そのカバーする業態が違っています。 以下、その業態別の平均約定金利を記しますので、上記の点を考慮に入れ、あくまで参考としてご覧ください。 ○消費者向け有担保貸付(業態別) 消費者金融 5.86% 事業者金融 6.76% クレジット等 5.66% ○事業者向け有担保貸付(業態別) 消費者金融 3.98% 事業者金融 4.10% クレジット等 1.59% 消費者向け、事業者向けともに、消費者金融の金利が事業者金融を下回っていることに、違和感を覚える人もいると思われます。事業者金融の金利の方が高い理由としては、ローンを利用する人や法人が、初回の借り入れであっても借入金額が多額になる場合が比較的多いこと、さらに、起業したばかりの法人が含まれていること、などが考えられます。いずれも、銀行など他業態の金融機関では貸し出しが難しいケースといえるでしょう。その分、金利が高めに設定されることになります。 なお、今回紹介したデータは、日本貸金業協会のホームページにある「月次統計資料」のコーナーで閲覧できます。興味のある方は、一度訪れてみてはどうでしょうか。 不動産担保ローンならSBIエステートファイナンス 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 不動産担保ローン金利の基礎知識と低金利で借りるコツ 不動産担保ローンの金利は、一般的に「○%~○%」というように上限と下限の金利が表示されます。このような表示は、申込金額等の条件によって適用金利が変わることを表しています。当然、ローンを借りる... 次に読むべき記事 不動産担保ローンの「仮審査」とは? 不動産担保ローンを提供している金融機関のホームページには、よく「仮審査」や「事前審査」という言葉が使われています(以後この記事では「仮審査」と呼称します)。住宅ローンを利用したことがある人な...
不動産担保ローンを利用して資金調達するには、金融機関の審査に通過する必要があります。不動産担保ローンの利用経験がないと、審査がどのように行われ、どうしたら審査に通過できるかわからないかもしれません。また、不動産担保ローンの審査に通過しなかった人も審査基準を理解することで、何故審査に落ちたのかを理解できる可能性もあります。 この記事では、不動産担保ローンの審査基準と審査通過のためのポイントを解説します。 不動産担保ローンの審査基準とは? 不動産担保ローンを申し込むと、金融機関は必ず審査を行ないます。金融機関は審査結果に基づいて、「お金を貸してもよいか?」「融資できる金額はどのくらいか?」といった判断をします。 不動産担保ローンの場合、審査の対象は融資をする相手の「信用力」と、担保となる「不動産の価値」の大きく二つに分かれます。この審査基準を理解することで、審査に通過しやすくなるでしょう。 「信用力」の審査 審査対象の1つ目は信用力です。これは、ローン商品において必ず審査をされる対象で、不動産担保ローンであってもその重要性は変わりません。信用力を計る代表的な指標としては、まず収入が挙げられます。収入とは個人であれば年収、企業であれば利益のことです。 収入 当然、収入は多ければ多いほど信用力は高くなります。一方で、収入が多いかだけで評価されるわけではなく、「返済負担率」も重要なポイントです。返済負担率とは、借入金の返済額が収入に占める割合を示す指標で、「年間返済額」÷「年収」×100で求められます。例えば年収が500万円で、ローンの返済額が150万円のとき、返済負担率は30%(150万÷500万×100)になります。返済負担率が高くなるほど評価は悪くなり、審査に通過する可能性も低くなります。 返済履歴 過去にローンを借りたことがあれば、その返済状況も審査されます。ローンを借りたこと自体が評価を落とすわけではなく、ローンの支払状況が悪いことで信用力は低くなります。ローンを延滞したことが信用情報に登録されると、金融機関側は融資金の回収リスクが高いと判断するため、審査に通過したとしても融資条件が悪くなる可能性があります。 勤続年数 信用力の審査では、個人の場合は勤続年数、法人の場合は事業年数も審査されます。勤続年数が長くなるほど、安定した収入が継続的に得られているとみなされるからです。反対に、転職したばかりの個人や設立間もない法人は、収入に安定性がないと判断はされやすくなります。 年齢 不動産担保ローンの返済期間は、長期にわたることも多いため、年齢も審査項目になります。一般的な商品では、ローンを借りるときの「申込時年齢」や何歳までに完済する必要があるかという「完済時年齢」が定められています。 金融機関によって条件は異なりますが、申込時年齢が60歳から70歳、完済時年齢が70歳から80歳までに設定されていることが一般的です。高齢になることで返済負担率の面から厳しいだけでなく、そもそも申し込むことができない可能性もあります。 他の金融機関からの借入状況 また、他の金融機関からの借り入れの有無と、その借入金額、何社からの借り入れがあるのかも判断基準になります。不動産担保ローンの借入希望額だけではなく、すでに借りている金額も合算して返済負担率を判断するため、合計の借入金額がいくらなのかも留意しておく必要があります。 「不動産の価値」の審査 審査対象の2つ目は不動産の価値です。借り入れの担保とする不動産の価値が高いほど審査に通りやすく、まとまった金額のローンが組めます。不動産の価値を求める際にはいくつかの基準があり、実際に取引される価格である「実勢価格」のほか、国土交通省が発表している「公示地価」、都道府県による「基準地価」、国税庁の「路線価」、市町村の「固定資産税評価額」、の5つの指標で評価されることから、「一物五価」とも言われます。 関連記事はこちら公示価格とは?実勢価格との違いと活用法をわかりやすく解説 土地の評価方法 土地の評価は金融機関によって重視する基準も異なりますが、比較的よく用いられるのは国税庁の路線価です。路線価の正式名称は「相続税路線価」といい、相続税を算定するときに使う地価のことです。 一般的な不動産の売買価格は公示地価や基準地価に基づいて算定されており、路線価は公示地価、基準地価よりも低く、その8割程度とされています。つまり、路線価は、公示地価、基準地価より2割程度は割安に評価されているわけです。 不動産担保ローンの審査の際に実態よりも低い路線価が採用されている理由は、金融機関のリスクヘッジのためです。不動産担保ローンでは、融資金の回収が不可能となった場合に、担保不動産を売却することで融資金を回収します。 しかし、地価の値下がりなどによって不動産の価値が下落すると、担保不動産を売却しても融資金を回収できない恐れがあります。そこで、より保守的な価格である路線価を採用し、将来的に不動産の価値が値下がりをしても、融資金を回収できる可能性が高まります。 建物の評価方法 土地に比べて建物の評価の方法は少し複雑です。まず、建物の「再調達価格」を算定するところから始まります。再調達価格とは、その建物を新たに建築、購入した場合に必要となる金額のことです。そして、建物の「延べ床面積」や「法定耐用年数」などを用いて、建物の評価額を決定します。 ただし、建物の築年月が法定耐用年数を超えていると、建物の価格は0円とみなされることが多い点には注意が必要です。例えば、住宅用の木造戸建ての場合、国税庁が定める法定耐用年数は22年です。すると、築22年を超えた戸建ての建物価格は0円とみなされます。したがって、注文住宅などの比較的建物にお金をかけている建物だとしても、築年数が古いことで建物の評価は大きく下がります。 不動産担保ローンの審査に通過するためのポイント 不動産担保ローンの審査に通過するためには、事前準備が大切です。必要書類を早く集め、担当者からの質問には正確に回答して、なるべく多くの情報を提供することを心掛けましょう。担保不動産の評価や信用力も大切ですが、担当者への対応も審査結果に影響を与えます。 不動産担保ローン審査までの流れ 一般的に、不動産担保ローンの審査に進むためには金融機関のホームページから仮審査を申し込む必要があります。仮審査に申し込むとフォームで入力した内容をもとに、金融機関の担当者が仮審査を行います。 関連記事はこちら不動産担保ローンの「仮審査」とは? 仮審査の段階では一般的に、担保の対象となる不動産をそもそも取り扱えるのか、また、担保としたときに希望金額を融資することができるのかを主軸に審査します。仮審査に通過すると、金融機関の担当者との面談や借り入れの本申し込みに進みます。 不動産担保ローンの審査における必要書類 本申し込みに進むと前述した信用力や不動産の価値の審査に入り、必要に応じて以下のような必要書類を準備することとなります。 納税証明書 収入証明書(源泉徴収票や確定申告書) 借入残高証明書(住宅ローンを借りている場合) 商業登記謄本、決算書類、事業計画書など(法人の場合) 不動産登記簿謄本 固定資産税納付書 納税証明書や収入証明書は、自治体の窓口で即日発行が可能です。住宅ローンが残っている不動産を担保にする場合は、住宅ローンを組んでいる金融機関に借入残高証明書の発行を依頼します。法人の場合は商業登記謄本や決算書類、事業計画書なども提出しなくてはなりません。 関連記事はこちら納税証明書とは?種類ごとの記載事項や取得方法などを解説 不動産登記簿謄本は法務局の窓口のほか、郵送やオンラインによる交付請求も可能です。固定資産税納付書は手元に保管しているかを確認し、見つからない場合は自治体の窓口で相談しましょう。 すべての必要書類を準備するには時間がかかるので、余裕を持って対応することが大切です。金融機関や条件によって、上記以外の必要書類もあるので、担当者に必ず確認しましょう。 不動産担保ローンの審査を受ける際の注意点 金融機関は日々多くの相談を受けており、担保不動産や信用力の調査を徹底的に行うため、虚偽の情報は逆効果です。仮に審査に通過したとしても、融資実行後に嘘が発覚した場合は一括返済を求められる恐れもあります。不利になることも正直に伝えるなど真摯に対応することで、金融機関から信頼を得ることができ、結果として審査に通過しやすくなるでしょう。 また、個人事業主や法人の場合は、事業計画書の内容も重要です。金融機関の信頼を得られるように、客観的な事業計画を具体的に作成することも審査通過のポイントです。内容がわかりやすく、根拠をもとに作られた事業計画であれば、金融機関は審査しやすくなります。 事業計画書を提出する前には、専門家などに内容を確認してもらうといいでしょう。自分ひとりで事業計画書を作成すると、金融機関の印象を少しでも良くしたいという思いから、売上などの見通しが甘くなることも考えられます。専門家の視点を取り入れることで、実現可能性が高い、説得力のある事業計画を作成できます。 不動産担保ローンの審査期間 不動産担保ローンを申し込む人の中には、急ぎで資金を借りたい人もいるかもしれません。しかし、不動産担保ローンは即日や数日での融資には向いていない商品です。キャッシングやカードローンなどの無担保ローンでは、融資金額が比較的少額であり、収入証明書などの限られた書類を基に最短30分での借り入れが可能な商品性を持っています。 一方で、不動産担保ローンでは、前述の信用力や不動産の価値を審査するための書類だけでなく、実際に担保となる不動産を調査するために現地に赴くなど、無担保ローンにくらべて一定の審査期間が必要です。 そのため、スピード融資を謳っている金融機関でも、一般的には2週間程度の期間がかかると思っていた方が良いでしょう。 関連記事はこちら即日融資可能な不動産担保ローンの注意点を解説!最短で資金調達するには? まとめ 不動産担保ローンの審査の対象は、融資をする相手の「信用力」と、担保となる「不動産の価値」であることを説明しました。しかし、審査通過のためには正確な情報を真摯に担当者に伝え、金融機関からの信頼を得ることが大切です。これらのポイントを踏まえたうえで不動産担保ローンの審査に進むといいでしょう。 無料の仮審査を申込む ご所有の不動産を担保にいくらまで融資可能かをご回答いたします。 無料の仮審査を申し込む ご所有の不動産を担保にいくらまで融資可能かをご回答いたします。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 不動産担保ローン金利の基礎知識と低金利で借りるコツ 不動産担保ローンの金利は、一般的に「○%~○%」というように上限と下限の金利が表示されます。このような表示は、申込金額等の条件によって適用金利が変わることを表しています。当然、ローンを借りる...
不動産担保ローンとは、土地や建物などの不動産を担保にして資金を借りるローンのことです。無担保ローンに比べて、まとまった金額を低金利で借りられる一方、返済が滞ると不動産が競売にかけられるリスクもあります。 「住宅ローン返済中でも借りられる?」「家族名義の不動産でも使える?」など、気になるポイントも多いため、利用前に仕組みや特徴をしっかり理解しておくことが大切です。 この記事では、不動産担保ローンの仕組みやメリット・デメリット、必要書類や審査の流れまで、初めての方にもわかりやすく解説します。 不動産担保ローンとは 不動産担保ローンは、土地や建物、マンションなどの不動産を担保にして、資金を借りられるローン商品です。金融機関によっては、築古や第二抵当の不動産のほか、家族や法人名義の不動産も担保にできます。 また、不動産担保ローンは有担保ローンの一種で、不動産のほかに、有価証券を担保とする証券担保ローンや、企業の在庫や売掛債権を担保とする動産担保融資(ABL)などがあります。 有担保ローンに対して、テレビCMなどで見かけるカードローンやキャッシングなどは無担保ローンに分類されます。無担保ローンは、一般的に不動産担保ローンよりも金利が高く、借入可能額が少額となりますが、手続きが簡単で即日融資が可能な商品もあります。 不動産担保ローンのメリット 不動産担保ローンの金利は低い?他ローンとの比較 不動産担保ローンは、カードローンやビジネスローンなどの無担保ローンに比べて、金利が低く設定される傾向があります。これは、不動産という資産を担保にすることで、金融機関にとってリスクが低くなるためです。 実際に、日本貸金業協会が公表した令和7年6月の統計によると、無担保貸付の平均約定金利が15.07%であるのに対し、有担保貸付(住宅向を除く)の平均約定金利は3.73%と、大きな差があります。 出典)日本貸金業協会「月次統計資料 令和7年6月発行」 借入限度額はどれくらい?最大1億円以上も可能 不動産担保ローンでは、担保となる不動産の評価額に応じて、借入限度額が大きく設定されることがあります。一般的なカードローンの限度額が数百万円〜1,000万円程度であるのに対し、不動産担保ローンでは1億円以上の融資が可能なケースもあります。 事業資金・相続対策などでまとまった資金を確保したい方にとって、大きなメリットとなります。 返済期間は最長35年?長期借入のメリットと注意点 不動産担保ローンは、返済期間を長く設定できる点も魅力のひとつです。金融機関によっては、住宅ローンと同様に最長35年の返済期間を選べる場合もあります。 長期借入によって月々の返済負担を軽減できる一方で、返済期間が長くなるほど利息の総額が増えるため、借入前に返済シミュレーションを行い、総返済額や月々の負担を確認しておくことが重要です。 なお、カードローンなどで一般的に採用される「リボルビング方式」とは異なり、不動産担保ローンでは元利均等返済や元金均等返済などの方式が用いられることが多く、返済計画の立てやすさも特徴です。 不動産担保ローンのデメリット 借り入れまでに時間がかかる 不動産担保ローンは、カードローンやキャッシングなどの無担保ローンと比べて、融資までに時間がかかる傾向があります。無担保ローンでは、最短数分で審査が完了し、即日融資が可能な商品もありますが、不動産担保ローンでは与信審査に加えて、不動産の調査や評価が必要です。 そのため、スピードを重視する金融機関であっても、融資実行までには数日〜数週間程度かかるのが一般的です。ただし、すでに同じ金融機関で不動産担保ローンを利用している場合は、追加融資が比較的早く受けられる可能性もあります。 登記費用や手数料などの諸費用が発生する 不動産担保ローンでは、金利が低く設定されている一方で、さまざまな初期費用が発生します。主な費用には、事務手数料、不動産調査費用、印紙代、登記費用、司法書士報酬などが含まれます。 事務手数料は融資金額の数%で設定されることが多く、借入額によっては数十万円に達することもあります。さらに、担保設定に必要な登記費用や専門家への報酬を加えると、諸費用の総額は無担保ローンよりも高くなります。 そのため、低金利で借りられるメリットがあっても、総支払額では無担保ローンより高くなるケースもあるため、事前に費用の見積もりを確認しておくことが重要です。 返済不能時の競売リスクがある 不動産担保ローンでは、融資を受ける際に担保不動産に「抵当権」が設定されます。抵当権とは、債務者が返済できなくなった場合に、金融機関が不動産を売却して融資金を回収する権利のことです。 返済が滞ったからといってすぐに競売にかけられるわけではありませんが、延滞が続き、金融機関が回収困難と判断した場合には、競売手続きに移行する恐れがあります。 競売には、売却価格が市場価格より低くなる、所有権を失う、家族に知られるなどのリスクが伴うため、返済計画を慎重に立てることが求められます。 関連記事はこちら競売とは?競売を回避すべき理由とその回避方法 不動産担保ローンの申し込みから融資までの流れ 不動産担保ローンの申し込みから融資実行までの一般的な流れは、以下の6ステップで進みます。 仮審査 面談・本申込 不動産調査 審査 契約 融資実行 ① 仮審査 まずは、金融機関のホームページや窓口から仮審査を申し込みます。仮審査では、簡易的な不動産査定と申込者の基本情報をもとに、融資の可否や概算の融資限度額が提示されます。 ② 面談・本申込 仮審査に通過すると、営業担当者との面談に進みます。面談では、申込書の記入や本人確認書類、不動産関連書類の提出が必要です。なお、面談を行ったからといって、必ず本申込をしなければならないわけではありません。 ③ 不動産調査 本申込後、金融機関が担保にする不動産について詳細な調査を行います。調査方法は金融機関や物件の種類によって異なり、現地訪問や内覧が必要な場合もあります。 ④ 審査 不動産調査と並行して、申込者の信用情報や収入状況などをもとに与信審査が行われます。審査結果に基づき、最終的な融資金額や適用金利が決定されます。 ⑤ 契約 審査に通過すると、金銭消費貸借契約や抵当権設定登記などの契約手続きに進みます。契約は金融機関の店舗で行うのが一般的ですが、希望すれば自宅や事務所での対応も可能な場合があります。 ⑥ 融資実行 契約完了後、指定された融資実行日に資金が振り込まれます。なお、事務手数料などの諸費用は融資金から差し引かれるため、別途現金を用意する必要はありません。 不動産担保ローンの必要書類一覧と準備のポイント 不動産担保ローンの申し込みには、本人確認や収入状況、不動産の権利関係などを証明するための各種書類が必要です。以下は、一般的に求められる書類の一覧です。 本人確認書類(運転免許証、パスポートなど) 実印 印鑑証明書 納税証明書、固定資産税納付書 収入証明書(源泉徴収票・確定申告書など) 不動産登記簿謄本 不動産権利証(登記識別情報) 借入残高証明書(他社借入がある場合) 商業登記簿謄本、決算書類、事業計画書など(法人の場合) 書類の提出タイミングと注意点 本申込時には、運転免許証やパスポートなどの本人確認書類の提出が必要です。契約時には、印鑑証明書や実印を用意する必要があります。 審査の過程では、申込者の信用力を判断するために、納税証明書や固定資産税納付書、収入証明書などが求められます。また、担保となる不動産の状況を確認するために、不動産登記簿謄本や借入残高証明書の提出を求められることもあります。 金融機関によって異なる書類要件 必要書類は、金融機関の審査基準や担保とする不動産の種類によって異なる場合があります。特に法人名義の不動産を担保にする場合や、共有名義の物件を利用する場合は、追加書類が必要になることもあります。 事前に金融機関の担当者に確認し、漏れなく準備することで、審査や契約がスムーズに進みます。 不動産担保ローンの審査基準 不動産担保ローンの審査では、申込者の「信用力」と担保となる「不動産」の2つの要素を総合的に判断して、融資の可否が決定されます。 信用力の審査 個人の場合は、収入や年齢、過去の返済履歴、他社からの借入状況などが確認されます。法人の場合は、利益や財務状況、事業計画などが審査対象となります。 より詳しい審査項目や通過のポイントについては、以下の記事をご覧ください。 関連記事はこちら不動産担保ローンの審査基準と審査通過のためのポイント 不動産の審査 担保として提供される不動産が、対象物件として問題ないかを確認したうえで、担保評価額が算出されます。一般的に、不動産の価値が高いほど審査に通りやすく、借入可能額も大きくなります。 関連記事はこちら不動産担保ローンの担保評価額を解説!いくら借りられるかの目安を知る方法とは? 金融機関による審査基準の違い 同じ申込内容でも、金融機関によって審査結果が異なることがあります。ある金融機関では融資が難しい場合でも、別の金融機関では可能と判断されるケースもあります。銀行とノンバンクでは審査の傾向や基準が異なるため、複数の選択肢を比較することが重要です。 関連記事はこちら不動産担保ローンにおける銀行とノンバンクの違い 不動産担保ローンの活用事例 まとまった資金を確保して資金繰りを改善 不動産担保ローンは、担保不動産の評価額に応じて高額な融資が可能であり、返済期間も長く設定できるため、資金繰りに余裕を持った調達ができます。特に、無担保ローンからの借り換えによって金利が下がれば、毎月の返済負担を軽減し、キャッシュフローの改善につながります。 ただし、返済期間が長くなるほど利息の総額は増えるため、借入前には返済シミュレーションを行い、総支払額を確認しておくことが重要です。 赤字決算でも事業資金を確保できる可能性 法人が赤字決算の場合、無担保での融資は難しいケースが多いですが、不動産担保ローンであれば、信用力だけでなく担保不動産の価値を加味して審査が行われるため、融資を受けられる可能性があります。 また、開業直後の法人や、これから創業する企業でも、事業計画や担保物件の内容によっては融資が可能なケースもあります。事業資金の確保手段として、不動産担保ローンは柔軟な選択肢となり得ます。 相続不動産を担保にして相続税や費用を準備 相続が発生すると、相続税や代償分割、遺留分の支払いなど、まとまった資金が必要になることがあります。相続財産の中に不動産が含まれている場合、その不動産を担保にすることで、相続に伴う費用を融資でまかなうことが可能です。 現金が手元にない場合でも、不動産担保ローンを活用することで、納税資金や分割資金を確保でき、円滑な相続手続きにつながります。 不動産担保ローンに関するよくある質問と回答 住宅ローン返済中でも借りられる?第二抵当権の活用 住宅ローンが残っている不動産でも、第二順位の抵当権を設定することで不動産担保ローンを利用できる可能性があります。ただし、住宅ローンの残債が多い場合は、担保余力が不足していると判断され、融資が難しくなるケースもあります。 関連記事はこちら住宅ローン返済中でも不動産担保ローンは使える?借り入れ可能な人の条件 本人以外の不動産を担保にできる?家族名義や法人名義のケース 親族や法人名義の不動産でも、一定の条件を満たせば担保として利用できる場合があります。その際、不動産の所有者が物上保証人や連帯保証人になることが求められるのが一般的です。 共有名義の不動産でも融資可能?必要な同意と保証人 共有名義の不動産を担保にする場合は、所有者全員の同意が必要です。また、共有者全員が連帯保証人となることが求められるケースが多いため、事前に関係者との調整が重要です。 信用情報に不安があっても融資可能?審査のポイント 信用情報に不安がある場合でも、融資を受けられる可能性はゼロではありません。金融機関によって審査基準が異なるため、ある機関で断られても、別の機関では融資が可能と判断されることもあります。 融資限度額はどれくらい?評価額と信用力で決まる 融資限度額は金融機関によって異なりますが、1億円以上の融資が可能なケースもあります。限度額は、申込者の信用力と担保不動産の評価額によって決定されるため、正確な金額を知るには金融機関への相談が必要です。 関連記事はこちら不動産担保ローンの相談でよくある悩みと解決策|第二抵当や信用情報に不安がある場合は? まとめ|不動産担保ローンのメリット・デメリットを理解して賢く活用 不動産担保ローンは、土地や建物などの不動産を担保にすることで、無担保ローンよりも低金利かつ高額な資金を長期間にわたって借りられるローン商品です。資金繰りの改善や事業資金の確保、相続税対策など、さまざまな目的で活用されています。 一方で、融資までに時間がかかることや、登記費用・手数料などの初期費用、返済不能時の競売リスクといった注意点も存在します。審査では、申込者の信用力と担保不動産の評価が重視され、金融機関によって基準が異なるため、複数の選択肢を比較することが重要です。 不動産担保ローンのメリット・デメリットを正しく理解し、自分の目的や状況に合った形で賢く活用しましょう。 無料相談してみる SBIエステートファイナンスが不動産担保ローンの疑問にお答えします。 無料相談をしてみる SBIエステートファイナンスが不動産担保ローンの疑問にお答えします。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 次に読むべき記事 不動産担保ローン金利の基礎知識と低金利で借りるコツ 不動産担保ローンの金利は、一般的に「○%~○%」というように上限と下限の金利が表示されます。このような表示は、申込金額等の条件によって適用金利が変わることを表しています。当然、ローンを借りる...