2022.04.20

雇用保険マルチジョブホルダー制度とは?適用要件や失業給付、手続きの流れをわかりやすく解説

2022年1月1日から65歳以上の労働者を対象に「雇用保険マルチジョブホルダー制度」が新設されました。雇用保険に加入できる条件が緩和されたため、非正規社員として短時間の勤務をする場合でも、失業に備えることが出来るようになりました。

今回は、雇用保険マルチジョブホルダー制度の概要や適用要件、失業給付についてわかりやすく解説します。

雇用保険マルチジョブホルダー制度とは

雇用保険マルチジョブホルダー制度とは、複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、2つの事業所において一定の要件を満たす場合に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)になれる制度です。

従来の制度では、65歳以上の労働者が雇用保険に加入するには「労働時間週20時間以上、かつ31日以上の雇用期間」などの条件を満たす必要がありました。

現在は少子高齢化が進み、「老後資金の確保」「労働力不足の解消」が課題となっています。雇用保険の加入条件緩和によって高齢者の労働機会が増加すれば、勤労収入を老後の生活費を充てられます。また、若年層だけでは足りない労働力を補う効果も期待できます。

参考)厚生労働省「マルチジョブホルダー制度とは」

雇用保険マルチジョブホルダー制度の適用要件

雇用保険マルチジョブホルダー制度を利用するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

  • 複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
  • 2つの事業所の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること
    (1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)
  • 2つの事業所それぞれの雇用見込みが31日以上であること

3つ以上の事業所で勤務している場合は、労働時間や賃金などを考慮して、マルチ高年齢被保険者として申出をする本人が2つの事業所を選択します。

加入後の取扱いは通常の雇用保険と同じで、原則として任意脱退はできません。上記の適用要件を満たさなくなった場合を除き、加入する事業所を任意に切り替えることもできないので注意しましょう。

雇用保険マルチジョブホルダー制度の資格取得手続きの流れ

通常の雇用保険は、事業主が資格取得・喪失の手続きを行います。一方、雇用保険マルチジョブホルダー制度では、適用を希望する本人が手続きをする必要があります。手続きの流れは以下の通りです。

  1. ハローワークまたは厚生労働省HPから「雇用保険マルチジョブホルダー雇入・資格取得届(マルチ雇入届)」などを入手する
  2. 2つの事業所にマルチ雇入届の記入、確認資料(雇用契約書など)の交付を依頼する
  3. 本人の住居所を管轄するハローワークへ必要書類を提出する
  4. ハローワークから本人および2つの事業所に通知される

ハローワークで申請内容を確認のうえ、問題がなければ申出日に被保険者の資格を取得します。必要書類の入手方法や手続きのやり方がわからない場合は、ハローワークに問い合わせて確認しましょう。

ハローワークに提出する書類一覧

手続きの際は、ハローワークへ以下の書類を提出します。

  • 事業主から交付されたマルチ雇入届と確認資料(2社分)
  • 個人番号登録・変更届
  • 被保険者資格取得時アンケート
  • 本人確認資料・個人番号の確認できる資料

また、事業所に依頼する主な確認資料は以下の通りです。

  • 賃金台帳
  • 出勤簿(記載年月日の直近1ヵ月分)
  • 労働者名簿
  • 雇用契約書
  • 労働条件通知書
  • 雇入通知書

雇用主との関係(親族の会社に勤めているなど)によっては、別途確認資料が必要になる場合があります。

雇用保険マルチジョブホルダー制度のメリット

雇用保険マルチジョブホルダー制度は事業主と労働者の双方にメリットがあります。

事業主のメリット

事業主は、雇用保険資格の取得・喪失手続きが簡便化されるのがメリットです。雇用保険マルチジョブホルダー制度では労働者自身が手続きを行うため、事業主は必要事項の記載や証明などを行うだけで済みます。

労働者のメリット

マルチ高年齢被保険者であった労働者が失業した場合、一定の要件を満たすと高年齢求職者給付金を一時金で受給できます。給付額(基本手当日額×支給日数)は以下の通りです。

<基本手当日額>
離職以前6ヵ月の賃金合計÷180×(50~80%)

<支給日数>
被保険者期間1年未満:基本手当日額の30日分
被保険者期間1年以上:基本手当日額の50日分

「離職日以前1年間に被保険者期間が通算6ヵ月以上あること」が受給要件です。2つの事業所のうち、1つのみを離職した場合でも受給できます。

ただし、3つ以上の事業所で勤務している場合、3つ目の事業所と併せてマルチ高年齢被保険者の要件を満たす場合は、被保険者期間が継続されるので受給できません。

また、2つの事業所のうち1つのみを離職した場合、基本手当日額の計算に離職していない事業所の賃金は含まれないので注意しましょう。

雇用保険マルチジョブホルダー制度の注意点

雇用保険マルチジョブホルダー制度では、資格取得の日から雇用保険料の納付義務が発生します。申出日より前にさかのぼって被保険者となることはできません。

事業主には、手続きの際に必要な証明を行う義務があります。申出を理由に労働者に対して不利益な取り扱い(解雇、雇止め、労働条件の不利益変更など)を行うことは認められません。もし事業主の協力を得られない場合はハローワークに相談しましょう。

まとめ

65歳以上で2つ以上の事業所で働いている場合、一定の条件を満たせば雇用保険に加入できます。また、短時間勤務で働いている場合であっても、雇用保険マルチジョブホルダー制度を利用できるように別の企業で働くことで、雇用保険に加入できます。より安心して働き続けるために、本制度の積極的活用をおすすめします。

執筆者紹介

大西 勝士(Katsushi Onishi)
金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。
<運営ブログ>
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