「制度」の記事一覧

  • 認定経営革新等支援機関とは?利用するメリットや支援機関を選ぶポイント

    認定経営革新等支援機関とは?利用するメリット・デメリットを解説

    昨今の経済情勢は変化が激しく、中小企業や小規模事業者の経営課題は多様化・複雑化しています。今後も売上や事業規模を拡大し、安定した経営を続けていくには、商品・サービスの品質向上はもちろん、企業財務や経理、税務に関する取り組みも不可欠です。 しかし、多くの中小企業・小規模事業者は、会計や税務の専門知識を有する人材が不足しているため、単独では経営課題に十分な対応ができない状況にあります。そのような状況であったとしても「認定経営革新等支援機関」を利用すれば、経営に関するサポートを受けることが出来ます。 この記事では、認定経営革新等支援機関の概要や利用するメリット・デメリット、支援機関を選ぶポイントについて説明します。 認定経営革新等支援機関とは 認定経営革新等支援機関とは、中小企業や小規模事業者の経営課題の解決を支援する機関です。 2012年8月に施行された「中小企業経営力強化支援法」に基づき、専門知識や一定の実務経験を持つ支援機関(税理士、弁護士、金融機関など)を国が審査し、「経営革新等支援機関」として認定しています。 「売上を拡大したい」「生産性の向上を図りたい」といった経営課題を抱えている中小企業・小規模事業者は、認定経営革新等支援機関に相談することで、財務分析や事業計画の作成・実行などのサポートを受けることができます。 また、事業計画の内容によっては、国から費用の補助や税制優遇を受けられる可能性もあります。 出典)中小企業庁「認定経営革新等支援機関」 認定経営革新等支援機関を利用するメリット 認定経営革新等支援機関を利用するメリットは以下のとおりです。 費用の補助や税制優遇がある 本制度は幅広い施策に対応しており、認定支援機関を利用することで費用の補助や税制優遇を受けられる可能性があります。 たとえば、「経営改善計画策定支援事業」では、経営改善が必要な中小企業・小規模事業者が認定支援機関のサポートを受けて経営改善に取り組む場合、経営改善計画の策定とモニタリング費用の一部を国に負担してもらうことができます。 また、生産性向上特別措置法に基づく「先端設備等導入計画」を策定し、設備投資を行うと、固定資産税が一定期間軽減されます。 認定支援機関からサポートを受けることで、国が提供しているさまざまな施策を活用しながら経営課題を解消することができます。 出典) ・中小企業庁「認定支援機関による経営改善計画策定支援事業に関する手引き 」 ・中小企業庁「経営サポート「生産性向上特別措置法による支援」 専門家から経営支援を受けられる 認定支援機関は、専門知識や一定の実務経験があることを国が審査しています。経営に関する専門知識やノウハウを持つ専門家に相談し、財務分析や経営課題の抽出を依頼することで、経営状況の把握が可能となります。 また、事業計画の作成・実行についての助言や支援も受けられるので、売上拡大や人手不足解消といった、中小企業・小規模事業者ならではの課題を解消できる可能性があります。 認定経営革新等支援機関の種類 主な認定支援機関の種類は以下のとおりです。 税理士・税理士法人(公認会計士) 弁護士・弁護士法人 商工会・商工会議所 銀行 経営コンサルタント 中小企業診断士・社会保険労務士・行政書士 2021年2月25日現在、30,000超の機関が認定を受けています。中でも税理士・税理士法人が大きな割合を占めており、中小企業・小規模事業者の経営支援において重要な役割を担っています。 出典)中小企業庁「経営革新等支援機関認定一覧について」 認定経営革新等支援機関のサポートを受けるまでの流れ 認定支援機関のサポートを受けるまでの流れは以下のとおりです。 相談する認定支援機関を選定する 認定支援機関に相談する 経営状況の把握、事業計画の作成・実行のサポートを受ける 事業計画の実現 モニタリング・フォローアップ(巡回監査、改善案の提案) まずは経営上の課題について、相談する認定支援機関を選定します。中小企業庁のホームページに設置されている「認定支援機関検索システム」を利用すれば、都道府県や支援機関の種類、相談内容、業種などの条件を指定して検索できます。 相談する認定支援機関が決まったら、財務分析や経営課題の抽出、事業計画の作成などのサポートを受けましょう。事業計画を実行して実現した後も、巡回監査や改善策の提案といったフォローを依頼できます。 出典)中小企業庁「認定支援機関検索システム」 認定経営革新等支援機関を選ぶポイント 認定支援機関に相談する際は、事業内容や解消したい経営課題に合った専門家を選ぶことが大切です。 たとえば、会計や税務に関する相談であれば、税理士や税理士法人がよいでしょう。しかし、人手不足の解消が目的であれば、税理士ではなく、商工会や経営コンサルタント、中小企業診断士のほうがよいかもしれません。 また、認定支援機関選びでは、支援実績が豊富であることも判断基準となります。認定支援機関検索システムの検索結果には支援実績も表示されるので、実績が豊富な機関を選ぶといいでしょう。 なお、認定支援機関を利用することで追加で費用がかかる場合があるので、注意が必要です。 まとめ 中小企業や小規模事業者が経営上の課題を抱えている場合、認定経営革新等支援機関に相談すれば課題を解決できるかもしれません。今後も安定した経営を続けていくために、認定支援機関の利用を検討してみてはいかがでしょうか。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 事業資金の種類とそれぞれの特徴を紹介 事業資金は商売をする上で必要になる資金ですが、何に使うかによって呼び方が異なります。融資を受ける際には基本的に「どんなことに、いくら資金が必要なのか」を明確にさせなければ融資を受けられません...記事を読む

    2021.03.17制度
  • 相続時精算課税制度とは?メリット・デメリットを紹介

    相続時精算課税制度とは?メリット・デメリットを紹介

    相続時精算課税制度は、両親や祖父母から財産の贈与を受けるときに選択できる制度です。この制度を利用することで、贈与時の負担軽減につながる可能性があります。 ただし、相続時精算課税制度にはデメリットもあるため、制度の内容を理解した上で利用を検討することが大切です。この記事では、相続時精算課税制度の概要やメリット・デメリットを紹介します。 相続時精算課税制度の概要 相続時精算課税制度とは 相続時精算課税制度とは、原則として60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上の子または孫に財産を贈与した場合に選択できる贈与税の制度です。同一の贈与者からの贈与であれば、2,500万円まで贈与税は課税されず、限度額に達するまで何回でも控除でき、限度額を超えた部分については、一律20%の贈与税率が適用されます。 また、相続時には、相続時精算課税制度の贈与財産と他の相続財産と合計して相続税を計算します。贈与税を支払っている場合は、相続税から支払済の贈与税を差し引くことができます。 相続時精算課税制度利用の流れ 相続時精算課税制度を利用する子または孫は、最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に「相続時精算課税選択届出書」の提出が必要です。戸籍謄本などの一定の書類とともに、贈与税の申告書に添付して納税地の所轄税務署長に提出します。 出典)国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」 相続時精算課税制度のメリット 相続時精算課税制度のメリットと想定されるケースは以下のとおりです。 税金の支払いを先延ばしにできる 相続時精算課税制度で財産を贈与すれば、2,500万円までは贈与税がかかりません。また、制度を利用して相続が発生するまで贈与財産に対する税金の支払いを先延ばしにできます。あくまでも支払いの先延ばしであり、税金が免除されるわけではありません。 「生前贈与をしておきたいが、納税を先延ばしにしたい」という希望がある場合であれば、2,500万円までなら贈与税がかからないため、生前贈与を行いやすいでしょう。子どもがまとまったお金が必要なタイミングで生前贈与を行い、税金の支払いを先延ばしにすれば、財産を有効活用できるかもしれません。 収益性のある資産の生前贈与は相続税対策になる 相続時精算課税制度で収益を生み出す資産を生前贈与すると、相続税対策につながる可能性があります。たとえば、親が収益不動産を贈与せずに所有し続けると、収益不動産と生前得た家賃収入が相続税の課税対象となります。 しかし、相続時精算課税制度で収益不動産を子に生前贈与すれば、贈与後に生じる家賃収入は子に継承できるため、相続税の課税対象に含まれず、収益不動産のみが相続税の課税対象となります。そのため、相続時の収益不動産の時価が贈与時を下回らなければ、税金対策になります。* ただし、経年劣化によって贈与後に収益不動産の価値が下がると、価値減少分だけ相続税の負担が増えてしまうので、相続時精算課税制度の選択は慎重に判断する必要があるでしょう。 ※家賃収入に対する税金については勘案していません。 将来価値が上がる資産の贈与は相続税対策になる 相続時精算課税制度の贈与財産は、贈与時の時価が相続税評価額となります。そのため、将来価値が上がる資産を贈与すれば、「相続時の時価-贈与時の時価」について相続税の負担が軽減されます。「ほぼ確実に価値が上がる」と見込める資産がある場合は、相続税対策になります。 そのため、一時的に評価が下がっている自社株など「今後は確実に値上がりする」と判断できる資産がある場合にはメリットがあります。ただし、不動産などは基本的に経年劣化で資産価値が下がります。そもそも必ず値上がりするといえる資産は存在しないため、暦年課税と相続時精算課税のどちらが有利かを判断するのは難しいでしょう。 相続時精算課税制度のデメリット 一方で、相続時精算課税制度には以下のデメリットもあります。 年110万円以下の贈与でも贈与税の申告が必要 暦年課税には基礎控除額が設定されており、贈与額が年110万円以下であれば贈与税はかかりません。また、贈与税の申告も不要です。しかし、相続時精算課税制度を選択すると、年110万円以下の贈与であっても、贈与を受けた翌年に贈与税の申告をしなくてはなりません。少額で複数回の贈与を受ける場合は、贈与税申告の手間がかかります。 一度選択すると暦年課税に戻すことはできない 相続時精算課税制度を選択すると、選択した年分以降は永久的に適用され、暦年課税に戻すことができなくなります。暦年課税では、年間110万円までの基礎控除額があるため、計画的に利用することで大きなメリットとなるケースもあるため、相続時精算課税制度の選択は慎重に判断する必要があるでしょう。 小規模宅地等の特例が利用できなくなる 小規模宅地等の特例とは、一定の要件を満たす土地を相続した場合に、相続税評価額が最大80%減額される制度です。相続時精算課税制度を選択すると、小規模宅地等の特例を利用できなくなります。状況によっては、小規模宅地等の特例の適用を受けることで相続税対策になります。 出典)国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」 令和5年度税制改正の内容 令和5年度税制改正によって、相続時精算課税制度も一部改正されます。改正内容は以下のとおりです。 ①年110万円の基礎控除の創設 相続時精算課税制度を選択した受贈者が、両親もしくは祖父母から2024年1月1日以降に贈与によって取得した財産に係るその年分の贈与税については、贈与税の課税価格から基礎控除額110万円が控除されるようになります。 ②相続時精算課税に係る土地又は建物の価額の特例の創設 災害によって相続時精算課税制度を選択した受贈者が贈与によって取得した土地や建物が一定の被害を受けた場合、その災害による被災価額を控除する特例が創設されます。適用を受けるには、災害によって被害を受けた日が2024年1月1日以降であり、かつ贈与の日から贈与者の死亡に係る相続税の申告書の提出期限までの間である必要があります。 なお、贈与の日が2024年1月1日以前である場合でも、災害によって被害を受けた日が2024年1月1日以降であれば、本特例の適用対象となります。 出典)国税庁「令和5年度『相続税及び贈与税の税制改正のあらまし』」 相続時精算課税制度は選ぶべきでない? 税制改正前は、相続時精算課税制度に年110万円の基礎控除がなかったため、基本的には暦年課税で少しずつ贈与をする方が税制メリットが大きい状況でした。しかし、今回の税制改正によって相続時精算課税制度でも同様に年110万円の基礎控除が適用されるようになったため、相続時精算課税制度を選択しやすい状況になったといえます。 ここでは、税制改正後に暦年課税と相続時精算課税制度のどちらを選ぶべきかについての考え方を紹介します。 贈与税の観点 相続時精算課税制度でも暦年課税でも、年110万円の基礎控除の範囲内であれば、贈与税がかかることはありません。しかし、年110万円の基礎控除の範囲を超えると、相続時精算課税制度はさらに合計2,500万円まで贈与税がかからないのに対し、暦年課税は超えた金額すべてに対して贈与税がかかります。 そのため、贈与税だけを考えると、基本的に相続時精算課税制度の方が納付金額が少なくなります。 相続税の観点 贈与時の年110万円の基礎控除分の金額について、相続時精算課税制度の場合は、相続財産に加算されることはありません。それに対して暦年課税の場合は、相続発生時から7年前までの贈与については、年110万円の基礎控除分の金額についても相続税の対象となります。 一方、贈与時の年110万円の基礎控除分を超えた金額については、相続時精算課税制度の場合、全て相続財産として加算されます。それに対して暦年課税の場合は、相続発生から8年より前の贈与は相続財産として扱われません。 そのため相続税については、贈与を行った期間がある程度長くなると、暦年課税の方が納付金額が少なくなります。 より詳細な試算が大切 相続時精算課税制度と暦年課税制度のどちらが税制メリットが大きいかを判断するためには、贈与税と相続税を併せて試算する必要があります。基本的には、贈与を行う期間が短く金額が小さければ相続時精算課税制度、贈与を行う期間が長く金額が大きければ暦年課税が、税制メリットが大きくなる傾向にあります。 ただし、相続開始日がいつになるかは予想することができず、必ずしも毎年一定の贈与を継続するとも限らないでしょう。ご自身の状況に合わせて、可能な限り詳細に試算してみることが大切です。より適切な判断を行うには、税理士などの専門家へ相談するといいでしょう。 まとめ 相続時精算課税制度を利用することで、納付する贈与税や相続税を抑えることができる可能性があります。ただし、一度選択すると暦年課税には戻せないので、相続時精算課税制度の選択は慎重に判断しなければなりません。相続時精算課税制度について理解を深め、相続時精算課税制度を利用すべきかどうか検討してみましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 終活とは?終活では何を準備すればいい? 昔に比べて平均寿命が延びて老後の期間が長くなったことから、「終活」を行う人が増えています。終活と聞くと、葬儀やお墓、相続など自分が亡くなった後のことをイメージするかもしれません。しかし、実際...記事を読む

    2021.01.27制度税金
  • 住宅ローン減税特例が延長!さらに床面積が40平米以上に緩和

    住宅ローン減税特例が延長!さらに床面積が40平米以上に緩和

    2020年12月21日に閣議決定された2021年度(令和3年度)税制改正の大綱において、住宅ローン減税及び住宅取得等資金に係る贈与税非課税措置の延長等が盛り込まれました。今回の措置は、新型コロナウイルス感染症の影響により落ち込んだ経済の回復を図るために策定されたものです。 今後の国会で関連税制法が成立することが前提にはなりますが、マイホーム取得にかかる税負担を軽減できる可能性があります。マイホーム取得を検討しているのであれば、税制改正の内容を理解しておくことが大切です。 この記事では、住宅ローン減税の仕組みや緩和される適用要件について詳しく解説します。 そもそも住宅ローン減税とは 住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)とは、個人がマイホームの新築や取得、増改築等を行う場合、一定の要件を満たすと住宅ローン年末残高の1%が所得税から控除される制度です。所得税から控除しきれない場合は、住民税から控除することも可能です。 マイホームの取得で住宅ローン減税が適用されれば、住宅ローン金利の負担軽減が期待できます。なお、住宅ローン減税の適用を受けるには確定申告が必要ですが、会社員(給与所得者)の場合は、2年目以降は年末調整で控除の適用を受けられます。 出典)国税庁「No.1213 住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」 住宅ローン減税の控除期間13年の適用要件について 2019年10月に実施された消費税率の引き上げ(8%→10%)に伴い、住宅ローン減税の控除期間が従来の10年から13年に延長されました。控除期間の延長は、建物購入価格の消費税増税分の負担を軽減することが目的で、特別特定取得にあたる場合に適用されます。 特別特定取得とは、消費税率10%が適用される新築や中古住宅の取得を指し、その住宅に「2019年10月1日~2020年12月31日」の間に居住を開始した場合に適用されます。ただし、新型コロナウイルス感染症の影響で入居が期限に遅れた場合は、一定の要件を満たした上で、2021年12月末までに入居すれば特別措置の対象となります。 控除額は、10年目までは「住宅ローン年末残高×1%(控除限度額50万円)」です。11~13年目は、「住宅ローン年末残高×1%」または「建物価格(消費税を除く)×2%÷3」のいずれか低い金額が控除額となります。 出典)国土交通省「消費税率引上げに伴う住宅取得に係る対応について」」 2021年度税制改正の概要 2021年度税制改正の概要は以下のとおりです。 住宅ローン減税 住宅ローン減税については、現行の特別特定取得における控除期間13年の措置について、契約期限と入居期限をともに1年延長することが盛り込まれました。 具体的には、契約期限(注文住宅は2020年10月~2021年9月、分譲住宅等は2020年12月~2021年11月)と入居期限(2021年1月~2022年12月)を満たす者に、現行の控除期間13年が適用されます。 また、上記の措置については、新たに床面積要件がこれまでの「50㎡以上」から「40㎡以上」に緩和されます。ただし、「40㎡以上50㎡未満」の住宅については、「合計所得金額1,000万円以下」の所得制限が設けられている点に注意が必要です。 住宅ローン減税 改正概要 改正前 改正後 50㎡以上 (特別特定取得) 13年控除 *1 期限延長:13年控除 *1 50㎡以上 10年控除 *1 変更なし:10年控除 *1 40㎡以上50㎡未満 (特別特定取得) 対象外 拡充:13年控除 *2 40㎡以上50㎡未満 対象外 変更なし:対象外 ※1:「合計所得金額3,000万円以下」の所得制限あり ※2:「合計所得金額1,000万円以下」の所得制限あり 住宅取得等資金に係る贈与税非課税措置 住宅取得等資金に係る贈与税非課税措置とは、父母や祖父母などの直系尊属から住宅の新築や取得、増改築等の資金として贈与を受けた場合に、一定額まで贈与税が非課税になる制度です。 住宅取得等資金については、2021年4月~12月の住宅取得等に係る契約について、2020年度と同額の非課税限度額(最大1,500万円)を適用することが盛り込まれました。 また、2021年1月以後の贈与については、床面積要件がこれまでの「50㎡以上」から「40㎡以上」に緩和されます。ただし、「40㎡以上50㎡未満」の住宅については、住宅ローン減税の場合と同様に「合計所得金額1,000万円以下」の所得制限が設けられています。 出典) ・国土交通省「住宅ローン減税等が延長されます!」 ・国土交通省「令和3年度住宅税制改正概要(住宅ローン減税・贈与税非課税措置)」 適用要件の緩和で今までと何が変わる? 2021年度税制改正において、住宅ローン減税や住宅取得等資金に係る贈与税非課税措置の適用要件が緩和されることで、40㎡台のマンションが値上がりする可能性があります。 40㎡台のマンションは、今まで住宅ローン減税の適用外であることがハードルとなっていました。しかし、適用要件が緩和されたことで、今後は購入を検討する人が増えると予想されます。 40㎡台の物件は、単身者やDINKs世帯(子供がいない共働き世帯)からすれば問題ない広さです。比較的価格が抑えられていることから購入しやすく、住宅ローン減税が適用されれば、購入のハードルはさらに下がるでしょう。 まとめ 住宅ローン減税の控除期間13年の措置が延長されるなど、2021年税制改正では個人の住宅取得を支援する内容が盛り込まれています。適用要件が緩和され、今までは対象外だった40㎡台の物件にも住宅ローン減税が適用されるのは重要なポイントです。 住宅ローン減税が適用されれば、長期的にはまとまった金額の節税が期待できます。マイホームの取得を検討しているなら、今回の税制措置をうまく活用しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 自営業の自宅購入で住宅ローンの審査に落ちた!次なる手段は? 住まいにこだわりを持って暮らす方はとても多いですよね。特に最近、働き方の多様化で増えているフリーランスなど自営業の中で、自宅や離れにアトリエなど仕事場を持ちたいと思っている方もよく見かけます...記事を読む

    2021.01.20制度税金
  • 配偶者居住権とは?概要やメリット・デメリット、成立要件について解説

    配偶者居住権とは?成立要件や設定するメリット・デメリットを解説

    約40年ぶりに民法(相続法)が改正され、2020年4月から「配偶者居住権」が施行されました。現在夫婦で持ち家に暮らしているのであれば、相続が発生する時のために配偶者居住権について理解しておくことが大切です。 この記事では、配偶者居住権の概要やメリット・デメリット、成立要件について詳しく解説します。 配偶者居住権とは 配偶者居住権とは、残された配偶者が被相続人の所有する建物に居住していた場合に、被相続人が亡くなった後も、賃料の負担なく、その建物に住み続けられる権利です。 遺言で配偶者に配偶者居住権を遺贈することで、配偶者居住権を設定することができます。このとき、被相続人と配偶者が婚姻してから20年以上の夫婦である場合、配偶者居住権を設定しても、原則として遺産分割協議配偶者の取り分が減らされません。 また、被相続人が遺言をしないまま亡くなったとしても、他の相続人との遺産分割協議によって、配偶者居住権を取得できます。仮に、遺産分割協議が調わないとしても、家庭裁判所に審判の申立てることで、取得できる可能性もあります。 配偶者居住権施行の背景 近年の高齢化の進行により平均寿命が延びたことから、夫婦の一方が亡くなった後も、残された配偶者が長期間にわたり生活を継続することも多くなりました。その際には、配偶者が住み慣れた住居で生活を続けるとともに、老後資金も確保したいと希望することも多いと考えられます。そこで、遺言や遺産分割の選択肢を広げるために制度が導入されました。 配偶者居住権のメリット 配偶者居住権は、以下のようなメリットがあります。 被相続人が亡くなった後も自宅に住み続けられる 配偶者居住権の制度を利用すれば、被相続人が亡くなった後も引き続き自宅に無償で居住できます。本制度が施行されるまでは、相続財産の分割などの要因により、残された配偶者が夫婦で暮らしていた自宅を相続できず、自宅に住み続けられないことがありました。 しかし、配偶者居住権を利用することで、建物の所有権を取得するよりも低い価額で居住権を確保でき、自宅に住み続けられる可能性が高まりました。 不動産以外の財産が受け取りやすくなる 配偶者居住権は、不動産以外の財産が受け取りやすくなります。たとえば、被相続人が夫、相続人が妻と子一人の場合、法定相続分は妻と子の相続割合は1対1です。仮に相続財産が自宅と預貯金のみで、それぞれの価値が同じとき、均等に分けようとすると妻は自宅を相続すると、預貯金は取得できなくなってしまいます。 しかし、婚姻20年以上の夫婦であり、遺言による遺贈を行っていれば、原則として遺産分割で配偶者の取り分が減らされることはありません。 配偶者居住権のデメリット 配偶者居住権には、以下のようなデメリットもあります。 自宅の売却ができない 配偶者が所有権を保有している場合、本人の意思に基づいて自由に自宅を売却できます。一方で、配偶者居住権は、あくまで自宅に居住する権利です。そのため、配偶者居住権を保有しているだけでは、第三者に自宅を売却できません。 また、自宅の所有権を保有する配偶者以外の相続人が、売却しようと思っても売却できません。なぜなら、その自宅には配偶者居住権が設定されており、第三者が購入しても住めないためです。 上述のような問題の対処法として、配偶者居住権を合意解除や放棄する事はできます。しかし、配偶者が認知症になるなど、意思表示ができなくなると、大きな問題になる恐れがあります。 所有者の税負担が大きい 配偶者にとっては、所有権ではなく居住権だけを取得できるのでメリットです。一方で、所有権者にとっては、居住権がないのにも関わらず、固定資産税を支払わなければなりません。改正相続法では、配偶者居住権を取得した配偶者は、建物の必要費を負担する義務がありますが、これはあくまで建物部分に限られます。土地の固定資産税の負担は、所有権者が行わなければならないので、不公平感も生まれやすいでしょう。 これらのデメリットは、従来の所有権では生まれなかったので、配偶者居住権を設定する際には、あらかじめよく話し合っておくことが大切です。 配偶者居住権の成立要件 配偶者居住権が成立するには、以下3つの要件を満たす必要があります。 相続開始時に被相続人の所有する建物に居住していたこと 相続開始時に被相続人が配偶者以外の者と建物を共有していないこと 以下のいずれかに該当(ア)遺産の分割により配偶者居住権を取得するものとされたこと(イ)配偶者居住権が遺贈の目的とされたこと 配偶者居住権は、遺産分割協議で取得できますが、遺産分割協議を行うことになった場合、配偶者短期居住権で保護されます。配偶者短期居住権とは、相続が発生した時点で、被相続人と同居していた配偶者が、遺産分割の確定まで、最短でも相続開始から6か月間、引き続き住み続けられる権利です。 まとめ 前述のとおり、配偶者居住権は配偶者にとって、大きなメリットがありますが、配偶者以外の相続人にとってはデメリットもあります。そのため、配偶者居住権の設定の際には、配偶者と子の折り合い必要です。また、配偶者居住権がどの程度の評価を持つかなど、素人には算定が難しいです。 配偶者居住権は、開始間もない制度です。配偶者居住権の成立要件や評価方法は複雑で、まだ不透明な部分が多いのが現状です。配偶者居住権を検討する場合は、相続に強い税理士などの専門家に相談しておくと安心でしょう。 出典) ・法務局「配偶者居住権とは何ですか?」 ・一般社団法人 全国銀行協会「「配偶者居住権」は配偶者にどんなメリットがあるのですか?」 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 相続した不動産に不動産取得税がかかるケースとは? 自宅の購入など、不動産を取得したときには不動産取得税がかかります。では、相続で不動産を取得した場合には、不動産取得税はかかるのでしょうか。 相続により不動産を取得した場合、原則不動産取得税は...記事を読む

  • 家賃が払えない?!そんなときの住居確保給付金が受給資格を緩和!

    家賃が払えない?!そんなときの住居確保給付金が受給資格を緩和!

    離職や廃業によって、家賃の支払いに困ったとき、自治体に申請すると住居確保給付金を受給できる可能性があります。住居確保給付金は失業者向けの制度でしたが、2020年4月20日から受給資格が緩和されました。これまでは受給資格を満たさなかった人でも、やむを得ない休業等が理由で、家賃が払えない場合は、住居確保給付金を受給できるかもしれません。 この記事では、住居確保給付金の概要や支給対象拡大のポイント、手続きの流れについて解説します。 住居確保給付金とは 住居確保給付金とは、離職や廃業などにより住居を失った、または住居を失う恐れがある人に対して、一定期間支給される給付金のことです。仕事を失って家賃が払えない状態になっても、住居確保給付金を受給できれば、家賃の補填ができます。 従来は失業者支援が目的の制度でしたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、受給資格が緩和されました。住居確保給付金の主な支給要件(受給資格緩和後)は以下のとおりです。 離職・廃業をした日から2年以内、またはやむを得ない休業等により、収入が減少していること 収入が基準額を超えていないこと 資産が一定額以下(100万円を超えない額)であること 上記の状態になる前に世帯の生計を主として維持していたこと ハローワークに求職の申し込みをすること※ ※追記 2020年4月30日の支給要件緩和に伴い、これまで必要だったハローワークへの求職申し込みの条件が撤廃されました。 「やむを得ない休業等により収入が減少していること」という要件があるため、新型コロナウイルス感染拡大が理由の失業・収入減少で家賃が払えない場合も、住居確保給付金を受給できる可能性があります。受給するには、各自治体が定めている収入・資産の基準額を下回ることが条件になります。たとえば、東京都23区の収入基準額(月額)、資産基準額、支給家賃額(上限額)は下表のとおりです。 単身世帯 2人世帯 3人世帯 収入基準額(月額) 138,000円 194,000円 241,000円 資産基準額 504,000円 780,000円 1,000,000円 支給家賃額(上限額) 53,700円 64,000円 69,800円 収入・資産基準額や支給家賃額の上限は自治体によって異なるため、住居確保給付金の受給を希望する場合は申請予定の自治体に確認しましょう。支給期間は原則3か月間ですが、一定の要件を満たす場合は最長9か月間まで延長される可能性があります。 住居確保給付金の対象におけるポイント 厚生労働省が住居確保給付金の受給対象を拡大した点について、以下のようなポイントがあります。 年齢制限が撤廃された 離職と同程度の状況にある人も受給対象になった 求職活動の要件も緩和された これまでは「65歳未満」という年齢制限がありましたが、今回の緩和で年齢制限が撤廃されました。また、離職・廃業から2年内の人のみが対象でしたが、やむを得ない休業などで、離職と同程度の状況にある人(自営業者・フリーランスなど)も対象に追加されています。 さらに、「ハローワークで月2回以上の職業相談」「自治体で月4回以上の面接支援」といった求職活動の要件も緩和されました。申請時にハローワークへの仮登録を行う必要はありますが、フリーランスや自営業者は現在の就業形態を維持しつつ、アルバイトなどで当面の生活費をまかなうことも可能です。 住居確保給付金の手続きの流れ 住居確保給付金の受給を希望する場合は、必要書類を用意したうえで、各自治体の担当窓口に相談しましょう。申請に必要な書類の一例(世田谷区)は以下のとおりです。 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、住民票・戸籍謄本など) 離職関係書類(離職票など、2年以内に離職したことが確認できる書類) 収入関係書類(申請者および同居親族の給与明細、年金の通知など) 金融資産関係書類(申請者および同居親族の預金通帳) 求職受付票(ハローワークで発行されるもの)※ ※追記 2020年4月30日の支給要件緩和に伴い、これまで必要だったハローワークへの求職申し込みが不要となったことで、求職受付表が不要となりました。 自営業者やフリーランスなどやむを得ない休業等で収入が減少した人は、「離職と同程度の状況にあること」の証明として、以下のような書類が必要になります。 労働条件が確認できる労働契約書類 勤務日数や勤務時間の縮減が確認できるシフト表 店舗の営業日や営業時間の減少が確認できる書類 注文主からの発注取り消し・減少が確認できる書類 社会福祉協議会の特例貸付が行われたことがわかる書類 状況によって必要書類は異なるため、手続きをする前に、まずは自治体の担当窓口に確認してみましょう。 まとめ 厚生労働省が受給資格を緩和したことで、これまでは支給対象外だった人も住居確保給付金を受給できるようになりました。新型コロナウイルス感染拡大の影響で収入が減少し、自宅の家賃が払えなくて困っている場合は、自治体の窓口に相談してみましょう。 出典) ・厚生労働省「くらしや仕事の情報」【PDF】 ・世田谷区社会福祉協議会「住居確保給付金」【PDF】 ・厚生労働省「住居確保給付金 今回の改正に関する QA vol 4」【PDF】 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 コロナウイルスの影響で生活資金不足に!公的支援で足りないときは 新型コロナウイルスの影響で、家計に大きなダメージを受けた人も少なくないでしょう。国からの給付金や貸付制度などもあるものの、それでも足りない時はどうすればいいでしょうか。家計が立ち直るまでの資...記事を読む