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  • 融資のリスケとは?メリットやデメリットを解説!

    融資のリスケとは?メリットやデメリットを解説!

    会社を経営していると、景気悪化などで経営不振に陥り、資金繰りに悩むこともあるでしょう。借入金の返済に困ったときは、金融機関にリスケ(リスケジュール)を依頼する方法があります。ただし、リスケにはデメリットもあるので、特徴を理解してから計画的に進めることが大切です。 この記事では、融資のリスケのメリットとデメリット、リスケ以外の資金繰り改善方法について解説します。 リスケとは リスケとは、リスケジュール(reschedule)の略語です。ビジネス用語として「スケジュールの見直し」の意味でよく使われますが、「返済計画の見直し」という意味もあります。 一般的に、銀行などの金融機関が使う「リスケ」は、後者を意味しており、借入金の返済が困難になった際に返済条件を変更するという意味で使われます。資金繰りが厳しくなった際には、金融機関と交渉することで融資のリスケができる可能性があります。具体的なリスケの方法は以下のとおりです。 一定期間、返済額を減額する 一定期間、元本支払いを据え置きする 返済期間を延長し、返済額を減額する 融資のリスケの申込件数 金融庁の調査によると、2020年3月10日~2023年6月末の期間にリスケの申込みを行った中小企業者の数は、銀行分で約128万件(約1,086件/日)、協同組織金融機関分(信用金庫など)で約107万件(約881件/日)です。多くの中小企業者が、金融機関にリスケの相談や交渉を行っていることがわかります。 この背景にあるのは、2009年に施行された中小企業金融円滑化法です。中小企業金融円滑化法は2013年3月末で期限を迎えていますが、金融庁は金融機関に対して、引き続き円滑な資金供給や貸付条件等の変更に努めるように要請しています。そのため、現在もリスケに応じてもらいやすい状況が続いています。 実際に、同期間内の審査中や取下げを除くリスケの実行率は、銀行分が98.9%、協同組織金融機関分が99.5%です。実行率が非常に高いことから、正当な理由があればリスケに応じてもらえることがわかります。 出典) ・金融庁「中小企業等に対する金融円滑化対策について」 ・金融庁「金融機関における貸付条件の変更等の状況について」 融資のリスケをするメリット 借入金の返済に困ったときに融資のリスケをするメリットは以下の2つです。 借り換えをするよりも余計な費用がかからない 経営立て直しのための時間的猶予をもらえる 資金繰りを改善するには、借り換えという選択肢もありますが、借り換えは既存借入の全額返済手数料、新規借入の事務手数料などの費用が発生します。一方で、融資のリスケによる支払条件の変更であれば、余計な費用はかかりません。 また、融資のリスケをすると資金繰りが楽になるので、経営の立て直しに集中して取り組むことができます。経営課題の改善に取り組んで業績が回復すれば、今までどおり事業を継続できるでしょう。 融資のリスケをするデメリット 融資のリスケをするデメリットは以下の2つです。 新規の融資を受けづらくなる 返済が長期化する 通常、融資のリスケが行われている期間は、その金融機関からは追加融資を受けられません。返済原資を明確に示すことができなければ、他の金融機関から融資を受けるのも難しいでしょう。新規融資を受けられないと手元資金のみで資金繰りをしなくてはならないため、追加融資を考えている場合は、融資のリスケの前に運転資金を確保する必要があります。 融資のリスケは、返済が長期化するのもデメリットです。返済条件の見直しによって、一時的に資金繰りは楽になるかもしれません。しかし、長い目で見るとかえって返済負担が増し、経営にマイナスの影響を与える場合もあります。 融資のリスケにあたって大切なこと 融資のリスケにあたり、最も大切なのは「どのようにして経営を立て直すか考えること」です。融資のリスケはあくまでも返済条件の見直しであり、債務や利息が免除されるわけではありません。加えて、融資のリスケによって返済条件が見直されるのは、一般的に半年~1年程度の一定期間のみです。 つまり、融資のリスケに応じてもらったとしても、その後の対策を講じなければ何も解決できません。融資のリスケを行うことにより、本当に経営を立て直すことができるのかをしっかりと考えたうえで利用することが大切です。 収益力改善支援を活用しよう 中小企業庁は、収益力低下、借入増加のおそれのある中小企業を対象に収益力改善支援を実施しています。 具体的には、1~3年間の収益力改善計画と資金繰り計画の作成と、その後の定期的なモニタリングなどを行ってくれます。計画作成にあたって融資のリスケが必要と判断された場合は、1年間の収益力改善計画を作成してくれます。 融資のリスケを検討している場合や、今後経営をどう立て直すか悩んでいる場合は、収益力改善支援の利用を検討してみてはいかがでしょうか。 出典)中小企業庁「収益力改善支援」 融資のリスケ以外の資金繰り改善方法 資金繰りを改善することを目的とする場合、不動産を所有していればその不動産を活用して資金を確保できるかもしれません。具体的には、以下のような方法があります。 不動産担保ローン まずは、不動産担保ローンによって借り換えをすることです。不動産担保ローンとは、土地や建物、マンションなどの不動産を担保にお金を借りることができる商品で、既存の借入金の借り換えとしても利用することができます。借り換えによって毎月の返済額を減らすことができれば、資金繰りが楽になって経営立て直しに注力できます。 不動産担保ローンは、信用力と担保不動産の価値を総合的に判断して審査を行うため、融資のリスケをしているような状況であっても融資を受けられる可能性もあります。また、銀行では扱わない築古や2番抵当、家族所有物件などの不動産も担保として申込みできます。上記のような特徴のある不動産担保ローンであれば、借り換え先として利用できるかもしれません。 関連記事はこちら不動産担保ローンとは?メリット・デメリットを解説 リースバック 次に、リースバックを利用する方法です。リースバックとは、不動産売買と賃貸借契約が一体となったサービスのことです。自宅をリースバック運営会社に売却し、その会社と賃貸借契約を締結することで、売却後も同じ家に住み続けることができます。リースバックを利用することで、自宅に住み続けながらまとまった資金を手に入れることができます。 リースバックで売却した不動産は将来的に買い戻しができるので、経済状況が安定した後に再び所有することも可能です。一方で、リースバックは、基本的に売却価格が市場価格よりも安くなります。加えて、所有権がリースバック運営会社に移転するので、リフォームや建て替えなどが自由にできなくなってしまう点に注意が必要です。 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みやメリット・デメリットを解説 任意売却 自宅を任意売却する方法もあります。任意売却とは、債務者が自分の意志で不動産を売却する方法です。任意売却によって自宅を売却すれば、借入金を返済し経営の立て直しに注力できます。 融資のリスケを行っても借入金を返済することができなければ、担保として提供した不動産は債権者の申し立てにより、競売にかけられてしまう恐れがあります。競売では、売却価格が市場価格の7~8割程度に設定されることが一般的です。また、競売にかけられたことを周囲に知られてしまったり、余計な費用がかかってしまうなどのデメリットもあります。 一方で、任意売却の場合は、市場価格に近い価格で売却することができるので、競売などに比べてより高値で不動産を売却できる可能性があります。加えて、任意売却は通常の販売方法で売り出すので、自身の状況が周囲に知られてしまうこともなく、売却したお金から諸経費を支払うことが認められているため、事前に余計な費用を準備する必要もありません。ただし、任意売却をするためには、事前に債権者である金融機関の同意が必要になります。 関連記事はこちら住宅ローンが払えない!競売を回避する「任意売却」とは? まとめ 借入金の返済に困ったときは、金融機関に融資のリスケを申込むことで返済条件を見直してもらえる可能性があります。融資のリスケをして一時的に資金繰りが楽になれば、経営立て直しに集中して取り組むことが可能です。 不動産を所有している場合は、融資のリスケ以外の選択肢としてノンバンクの不動産担保ローンやリースバックも検討してみましょう。 無料の仮審査を申込む ご所有の不動産を担保にいくらまで融資可能かをご回答いたします。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 物上保証人と連帯保証人の違いとは? 「保証人」という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。一方で、保証人が「どのような責任を負うことになるか」理解をしている人は少ないかもしれません。また、一口に「保証人」と言っても、「物上保...記事を読む

    2021.10.13用語
  • DINKsマンションとは?メリットや注意点を解説

    DINKsマンションとは?メリットや注意点を解説

    ここ数年、”DINKsマンション”や”コンパクトマンション”の供給戸数が再び増加しており、今後さらに人気が高まる可能性があります。DINKsマンションを購入するメリットがある一方で、購入する際に注意すべき点もあります。そこでこの記事では、DINKsマンションを購入するメリットや注意点を解説します。 DINKsマンションについて DINKsマンションとは? DINKsとは、「Double Income No Kids」の頭文字を並べた言葉で、結婚後も子供を持たずに夫婦とも職業活動に従事するライフスタイルを指します。 つまり、DINKsマンションとは、夫婦二人で暮らすために適した間取りになっており、単身者向けよりも広く、ファミリー向けよりも狭い30~50㎡程度の大きさのマンションを指します。 出典)知恵蔵2015『DINKs 』 - コトバンク - 執筆:山田昌弘、2007年 DINKsマンションは増加傾向にある 2019年3月に株式会社不動産経済研究所から出されたプレスリリースによれば、首都圏のコンパクトマンションのシェアは、2009年の10.5%から2014年の供給が3.7%に右肩下がりに減少した後、2018年は8.7%に右肩上がりに増加しています。

    2021.06.23用語
  • 老後破産とは?その原因と事前の対策を解説

    老後破産とは?その原因と事前の準備・対策を解説

    「老後破産」は、日本人の高齢化などにより、取り上げられるようになったテーマの一つです。様々なメディアなどで目にする機会も増え、老後の生活を不安に感じる人もいるでしょう。 この記事では、老後破産の原因やその実態、老後破産に陥らないための準備や対策を解説します。 老後破産とは まず、「老後破産」という言葉に明確な定義はありません。そのため、この記事では「定年後の生活の中で、家計を維持できなくなること」と定義します。 自分はそれなりに貯蓄もあるし、関係のない話と思う人もいるかもしれません。しかし、仮に貯蓄が豊富にあったとしても、定年後20年、30年と暮らしていくことで、老後破産に陥るかもしれません。定年後は現役時代よりも収入が少なくなる、という人は多いでしょう。そうすると、現役時代と同じ生活水準を続けるには、貯蓄を切り崩しながら生活することになります。つまり、老後破産に陥る人は貧しい人ではなく、身の丈に合わない生活水準で、亡くなるまでに所有資産が尽きてしまう人とも言えます。 老後破産の実態 公的機関が行った調査から、老後破産の実態を探ります。 老後破産の割合は増加傾向 まずは、破産者における高齢者の割合を見てみましょう。「2020年破産事件及び個人再生事件記録調査」によると、60歳以上の破産債務者の割合が増加しています。2002年調査では約17%でしたが、2020年調査では約25%となっています。一方で、あくまで「高齢者の割合」なので、件数が増加しているとも限りません。また、人口動態として、高齢者の割合が増加していることも、この結果の要因となるでしょう。 出典)内閣府「令和4年版高齢社会白書(全体版)」 老後の所得や貯蓄額 最後に、世帯主が65歳以上の世帯の所得や貯蓄を見てみましょう。先ほどの「令和4年版高齢社会白書(全体版)」によると、高齢者世帯の平均所得は312.6万円、貯蓄の中央値は1,555万円です。この結果から、所得にある程度余裕があると思うかもしれません。 しかし、最も多い所得階層は、150~200万円の12.3%、次いで100~150万円の12.0%です。さらに50万未満の2.0%、50~100万円の10.7%を足せば、高齢者世帯の37%の所得が150万円以下であることがわかります。 この結果から、貯蓄を切り崩しながら生活している人が多数いると考えられます。つまり、これらの所得が少ない人の貯蓄額によっては、老後破産予備軍は、先ほどの7%という結果よりも多くなるのかもしれません。 出典)

  • 終活とは?いつから始める?老後資金が足りないと気づいたら?

    終活とは?終活では何を準備すればいい?

    昔に比べて平均寿命が延びて老後の期間が長くなったことから、「終活」を行う人が増えています。終活と聞くと、葬儀やお墓、相続など自分が亡くなった後のことをイメージするかもしれません。しかし、実際は家族や友人関係、医療・介護、財産など、生前のうちに確認し、準備しておくべきことはたくさんあります。 老後の不安を解消し、残りの人生を自分らしく生きるには、終活について理解しておくことが大切です。この記事では終活ですることや始めるタイミング、老後資金の準備について解説します。 終活とは 終活は週刊誌によって作られた言葉で、「人生の最期を迎えるための活動」といった意味に加え、「残りの人生をより前向きに自分らしく生きるための活動」という意味もあります。 終活が注目されるようになった背景には、高齢化によって老後破産や孤独死、認知症、相続トラブルなどの増加が社会問題化していることがあります。厚生労働省の簡易生命表(2019年)によれば、男性の平均寿命は81.41年、女性は87.45年です。また、90歳まで生存する人の割合は男性27.2%、女性51.1%となっています。 このような背景から「老後生活の不安を解消したい」「家族に負担をかけたくない」と考える人が増え、終活に取り組む人が増えていると考えられます。 出典)厚生労働省「2019年(令和元年)生命簡易表の概況」 終活はいつから準備する? 終活を始めるタイミングは人それぞれで正解はありません。「仕事を辞めて年金生活になった」「一定の年齢に達した」など、人生の転機を迎えたときや死を意識したタイミングで、少しずつ進めていくといいでしょう。 ただし、認知症を患うなど、意思表示ができなくなると始めるのは難しくなります。そのため、まだ元気なうちに、「少し早いかな」と思うぐらいのタイミングで始めるのがおすすめです。 終活では何を準備する? 終活では、現在の状況と将来するべきことを整理するために、エンディングノートを作成するといいでしょう。エンディングノートに法的な効力はなく、書き方のルールもないので、好きな方法で作成して構いません。エンディングノートでは、主に以下の内容について整理します。 自身や家族、友人のこと 自身の基本情報(氏名、生年月日、住所、本籍地など)や趣味などを書いておけば、誰が書いたものかが一目でわかります。スマホやインターネットなど、自身が契約しているサービスについても伝えておくと家族は助かるでしょう。また、家族や友人の連絡先、自身との関係なども書いておくと、必要に応じて連絡をとることができます。 医療や介護のこと 判断力が低下したり、意思表示ができなくなったりしたときのために、かかりつけ医や持病、飲んでいる薬、アレルギーなどについて書いておくといいでしょう。また、介護や延命治療に関する希望を伝えておくと、もしものときに家族が判断しやすくなります。 財産に関すること 老後生活が長くなるほど、財産を適切に管理することの重要性は高まります。収入や支出の項目・金額を整理して、老後の家計収支を把握しましょう。また、預貯金や不動産、金融資産など保有中の資産を一覧にしておくことも大切です。 葬儀やお墓のこと 最近では、葬儀やお墓に対する考え方が多様化しており、その様式もさまざまです。たとえば、葬儀は一般葬の他に、参列者が親族のみの家族葬や一日葬などもあります。また、お墓も代々受け継いでいく家族墓だけでなく、永大供養墓や散骨といった形もあります。そのため、葬儀やお墓についての希望、連絡先のリストなどを書いておくといいでしょう。 相続のこと 相続トラブルを避けるには、相続人や相続財産について整理する必要があります。また、預貯金や不動産といった資産だけでなく、借金などの負債も相続財産に含まれる点に注意が必要です。相続について希望がある場合は、遺言書の作成も検討しましょう。 終活をするメリット 終活をするメリットとしては下記のようなことが挙げられます。 万が一の備えになる 医療や介護に関する希望を家族に伝えておいたり、エンディングノートに記載をしておくことは万が一の際の備えになります。例えば、認知症になって判断力が低下したり、意識不明や重篤な状態に陥ってしまった場合に、延命治療や介護の希望などを伝えておくと、家族が判断をしやすくなります。 また、エンディングノートに自身のアレルギーや持病、常備薬を記載しておくことももしものときの備えになります。 相続をスムーズに進められる 財産の整理や相続の準備をしておくことで、残された家族が相続をスムーズに進められます。例えば、エンディングノートに保有している金融資産や不動産などをまとめて記載しておくと、残された家族が財産を把握しやすくなります。 また、相続について希望がある場合は、遺言書を作成しておくことも有効です。財産の整理や遺言書の作成をしておくことで相続をスムーズに進められるだけでなく、トラブルを回避することにもつながります。 葬儀やお墓の手配をスムーズに進められる 葬儀やお墓の希望について家族に伝えておくことで、手配をスムーズに進めることができます。自身の死後、葬儀やお墓のことなど残された家族には決めるべきことが多くあります。そこで、葬儀やお墓について希望を伝えておくことで、家族が段取りをしやすくなり、負担を軽減することができます。 また、事前に自身でお墓を用意しておいたり葬儀費用を準備しておくことも、残された家族の負担を軽減することができます。 自身の経済状況を把握できる エンディングノートに自身の財産等をまとめることで経済状況を把握できます。そして、自身の経済状況を把握することは、健全な家計収支の維持にもつながります。 自身の経済状況を把握し、今後の人生をどのように過ごすのか改めて見直すことは充実した老後生活を送るためにも大切です。 備忘録になる エンディングノートに保有している銀行口座や保険、株式をまとめておくと備忘録になります。また、各種暗証番号等を記載しておけるエンディングノートなどもあります。 このようにエンディングノートを備忘録として活用するのも一つの有効な方法であると言えます。 人生の振り返りができる 終活は自身の人生を振り返る良い機会でもあります。エンディングノートには様々な種類があり、中には自分史や思い出について記載できるものもあります。このようなことを改めて整理することで、今までの自身の人生を振り返ることができます。 今後の人生をより良く生きるためにこれまでの自身の人生を振り返ることもおすすめです。 生きがいや目標を発見できる 終活では、残された家族の負担を軽減することにフォーカスされることが多いです。しかし、自身の人生を振り返り、今後の人生をより良く自分らしく生きることができるようにするというのも終活を行う目的の一つです。 終活に際しては、これからのセカンドライフで何をしたいか、だれと会いたいかなどを整理してみるとよいでしょう。そうすることで、新たな生きがいや目標を発見することができるかもしれません。 出典)日本FP協会 「終活、何をしておくか」 終活をしなかった場合に生じる問題 終活をしなかった場合、下記のような問題が生じる可能性があります。 医療や介護に関する希望を把握できない 年を重ねるにつれて医療や介護が必要になる可能性が高くなります。万が一意識不明や重篤な状態に陥り意思表示が難しくなった場合に、延命治療や介護の希望がわからないと家族が判断をしにくくなります。 相続トラブルが発生する 終活によって自身の財産の整理や相続に関する希望を遺しておかなかった場合、相続トラブルが生じる可能性が高くなります。相続トラブルは遺産内容が不透明であることや遺産分割の割合に偏りがあることに起因するケースが多いです。 葬儀やお墓の準備に手間がかかる 自身の死後、葬儀やお墓のことなど残された家族には決めるべきことが多くあります。例えば、葬儀の日程や形式、寺院の選定、訃報を知らせるべき方の選定などです。これらのことを一から決めるのは非常に手間がかかります。 残された家族が財産を把握できない 自身の財産をまとめて記録しておかないと、残された家族が財産を把握しにくくなります。近年ではパソコンやスマートフォンなどに保存しているデジタルデータなど目に見えない財産も増えています。これらの財産は、家族に伝えておいたり、エンディングノートに記載をしておかないと把握できない可能性が高いです。 十分な老後資金が準備できているかを確認する 終活の中でも、優先的に取り組んでおきたいのが老後資金の問題です。残された家族のことを思えば、自身が亡くなった後のことについて考えるのは大切なことです。しかし、終活では、自身の老後生活に問題がないかを確認するのが、最優先で取り組むべき課題です。 現在の家計収支や資産状況を整理・把握して、十分な老後資金が準備できているかを確認しましょう。もし老後資金が不足するようなら、早急に対策をたてる必要があります。 終活に「リースバック」という選択肢も 老後資金が足りない場合、持ち家があるなら「リースバック」という選択肢があります。リースバックとは、自宅を売却してまとまった資金を手に入れながら、家賃を払うことで同じ家に住み続けられるサービスです。 リースバックはローン商品ではなく、売却と賃貸が一体となった不動産取引であるため、利用にあたって年齢や収入の制限はありません。また、持ち家を売却すると、通常は別の住居を確保する必要がありますが、リースバックならそのまま住み続けることが可能です。 加えて、リースバックを利用して不動産を現金化すれば財産を分配しやすくなるため、相続トラブルを回避するための手段としても活用できます。 終活に関するよくある質問 終活をしている人はどのような理由で始めますか? インターネット調査会社マクロミルの調査によると、終活を始めている人のうち約89%の方が「家族に迷惑をかけたくないから」と回答しました。また、約48%の方が「病気やけがなどで寝たきりになったりした場合に備えて」、約35%の方が「自分の人生の終わり方は自分で決めたいから」と回答しています。 出典)PRTIMES「デジタル終活知っている?希望するお墓のカタチは?20~70代にきく終活に関する意識調査(マクロミル調べ)」 生前整理として残しておくべきものはどういうものですか? 生前整理として残しておくべきものには、生活必需品などの現在使用しているものに加え、相続にかかわる財産、形見として残したいものなどがあります。特に、相続にかかわる財産は自身の死後に保管場所がわかるようエンディングノートに記載しておくなど工夫が必要です。 終活として断捨離しておくと良いものはありますか? 不用なものやしばらく使用していないものは処分をしてしまうことをおすすめします。特に、家具などの処分に労力を要するものは、事前に処分しておくと残された家族の負担を減らすことができます。また、目に見えるものだけでなく、パソコンに保管されたデータなどのデジタルデータも整理しておくと良いでしょう。 終活をする上での注意点は何ですか? 終活をする人を狙った詐欺や悪徳商法が増加しています。お金が絡むものは、自身で決めるのではなく、家族と相談するなど慎重に判断することをおすすめします。 出典)消費者庁 「第1部 第1章 第4節(4)高齢者が巻き込まれる詐欺的なトラブル」 《Appendix》エンディングノートの記載例 以下はエンディングノートに記載する内容の一例です。 自分自身や家族、友人のこと 自分自身の基本情報(氏名、生年月日、住所、本籍地など)や家族、友人についての記載例です。下記の内容以外にも自身で書きたいことがあれば記載しておくと誰が書いたのか分かりやすくなります。また、家族や友人については、自身の死後に連絡を希望するかまで記載をしておくと家族が判断をしやすくなるでしょう。 自分のこと 名前山田 太郎 生年月日1950年1月1日 住所〒〇〇〇ー〇〇〇〇東京都新宿区西新宿〇ー〇〇 本籍地〒〇〇〇ー〇〇〇〇東京都渋谷区道玄坂〇ー〇〇ー〇〇 血液型A型 趣味釣り読書 家族・友人のこと 氏名関係住所連絡先訃報について 山田 花子妻東京都新宿区〇〇・・・〇〇〇ー〇〇〇〇ー〇〇〇知らせる 山田 次郎子東京都世田谷区〇〇・・・〇〇〇ー〇〇〇〇ー〇〇〇知らせる 山田 二郎弟埼玉県〇〇市・・・〇〇〇ー〇〇〇〇ー〇〇〇知らせない 佐藤 三郎友人福島県〇〇市・・・〇〇〇ー〇〇〇〇ー〇〇〇知らせない 医療や介護のこと 医療や介護についての記載例です。持病については、常備薬やかかりつけの病院まで記載をしています。また、万が一の際に備えて延命治療や介護の希望についても記載をしておくと良いでしょう。 医療や介護のこと 持病高血圧 常備薬〇〇、〇〇〇〇 かかりつけの病院〇〇病院 〇〇科 担当医:〇〇 アレルギー卵、えび、かに、いか 延命治療希望しない 介護の希望自宅で家族に介護をしてもらいたい 財産のこと 財産についての記載例です。下記では、預貯金と株式について記載していますが、それ以外でも、資産を保有している場合は一覧にしてまとめておくと良いでしょう。 預貯金のこと 金融機関名〇〇銀行支店名〇〇支店 口座番号〇〇〇〇〇〇〇口座名義山田 太郎 口座種別普通備考 株式のこと 預入証券会社〇〇証券口座番号〇〇〇〇〇〇〇 名義人山田 太郎備考〇〇の株式を100株保有 葬儀やお墓のこと 葬儀やお墓についての記載例です。葬儀については、下記のような事項について記載をしておくと葬儀の準備がスムーズに進みやすいです。また、下記以外にも葬儀に参列してほしい人を表にしてまとめておいたり、納棺時の服装や棺に入れてほしいものなどを記載することもあります。 葬儀のこと 葬儀を希望する/しない希望する 葬儀会社・斎場株式会社〇〇住所:東京都新宿区〇ー〇〇 費用について準備している 葬儀の種類家族葬 宗教の希望仏教 遺影についてあり(机の引き出しの一番上) 戒名についてこだわりはありません お墓のこと お墓の有無先祖代々のお墓 埋葬方法の希望永代供養墓 お墓がある場合墓地・霊園の名称:〇〇霊園住所:東京都練馬区〇〇ー〇〇連絡先:〇〇〇ー〇〇〇〇ー〇〇〇 相続のこと 下記は遺言書についての記載例です。遺言書がある場合は、保管している場所まで記載をしておくと良いでしょう。また、遺言書の有無以外にも、遺産分割や遺品の処分について希望がある場合は、記載をしておくことをおすすめします。 相続のこと 遺言書の有無有 遺言書の種類自筆証書遺言(机の一番下の引き出し) 遺言書の関係者弁護士:〇〇連絡先:〇〇〇ー〇〇〇〇ー〇〇〇 まとめ 終活は、家族の負担を減らせるのはもちろん、残りの人生を自分らしく生きることにも役立ちます。終活ですることはたくさんありますが、最優先して取り組むべきことは財産整理です。家計収支や資産状況を整理した結果、持ち家があって老後資金が不足しそうな場合はリースバックの活用を検討しましょう。 リースバックならSBIスマイル もっと詳しく知りたい方はこちら SBIスマイルのリースバックをご紹介します。仮査定も無料で受け付けています。※SBIスマイルのHPに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 リースバックとは?仕組みやメリット・デメリットを解説 リースバックとは、所有している資産を第三者に売却し、リース契約を締結することで、それまでと同じ資産を利用し続けることを可能にする取引手法を指します。住宅においては、自宅を売却して現金を得て、...記事を読む { "@context": "https://schema.org", "@type": "FAQPage", "mainEntity": [{ "@type": "Question", "name": "終活をしている人はどのような理由で始めますか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", "text": "インターネット調査会社マクロミルの調査によると、終活を始めている人のうち約89%の方が「家族に迷惑をかけたくないから」と回答しました。その次に約48%の方が「病気やけがなどで寝たきりになったりした場合に備えて」、約35%の方が「自分の人生の終わり方は自分で決めたいから」と回答しています。" } }, { "@type": "Question", "name": "生前整理として残しておくべきものはどういうものですか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", "text":"生前整理として残しておくべきものには、生活必需品などの現在使用しているものに加え、相続にかかわる財産、形見として残したいものなどがあります。特に、相続にかかわる財産は自身の死後に保管場所がわかるようエンディングノートに記載しておくなど工夫が必要です。" } }, { "@type": "Question", "name": "終活として断捨離しておくと良いものはありますか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", "text":"不用なものやしばらく使用していないものは処分をしてしまうことをおすすめします。特に、家具などの処分に労力を要するものは、事前に処分しておくと残された家族の負担を減らすことができます。また、目に見えるものだけでなく、パソコンに保管されたデータなどのデジタルデータも整理しておくと良いでしょう。" } }, { "@type": "Question", "name": "終活をする上での注意点はありますか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", "text":"終活をする人を狙った詐欺や悪徳商法が増加しています。お金が絡むものは、自身で決めるのではなく、家族と相談するなど慎重に判断することをおすすめします。 " }} ] }

  • 競売とは?競売を回避すべき理由とその回避方法

    競売とは?競売を回避すべき理由とその回避方法

    不動産を担保とするローンの返済が困難になると、最悪の場合、競売によって担保不動産が強制的に売却されてしまいます。競売にはデメリットがあるので、ローンの返済が困難になったとしても、絶対に回避すべきです。また、不動産を担保にローンを借りるのであれば、もしものときの備えとして、競売について理解しておくことが大切です。 この記事では、競売を回避すべき理由や回避する方法について解説します。 競売とは 競売とは、債務者の所有する不動産などを売却し、その代金を債務の弁済にあてる手続きです。この手続きは、債権者の申し立てにより、裁判所が不動産などを差し押さえることで行われます。 競売は3種類に分類される 一口に「競売」といっても、競売に至るまでの経緯によって、3種類に分類されます。なお、手続きそのものの流れについては、3種類とも同様です。 強制競売 強制競売は、判決や裁判所での和解又は調停で決まった内容を実現したり、公証人が作成した公正証書の内容を実現したりするための手続きです。 担保不動産競売 担保不動産競売は、不動産に設定された担保権(主に抵当権)を実行するための手続きです。 形式競売 形式競売は、債務の清算としてではなく、遺産分割や共有物分割、破産手続上の換価など、不動産を売却してお金に換える必要があるときに、競売手続をその手段として利用するものです。 公売と競売の違い 競売は債権の回収を図る手続きであるのに対して、公売は滞納税金の回収を図る手続きです。根拠法も競売が民事執行法であるのに対し、公売は国税徴収法となります。また、競売は主に裁判所が手続きを進行しますが、公売は国税局や税務署が手続きを進行します。 競売の流れ 一般的に住宅ローンなどの保証会社がついている融資の場合、競売の大まかな流れは以下のとおりです。 金融機関から一括返済を求められる(督促状・催告状が届く) 保証会社が金融機関に一括返済を行う(代位弁済) 債権者が裁判所に競売申立てを行う 裁判所から競売開始決定通知が届く(差押え) 不動産の現況調査が行われる 競売の入札が実施される 落札者に不動産が売却される(退去) 上述のような流れで競売手続きが開始され、最終的には担保不動産が売却されます。競売の流れは、以下の記事で詳しく解説しています。 関連記事はこちら担保不動産競売までの流れをわかりやすく解説 競売を回避すべき3つの理由 競売は主に以下の3つの理由から、回避すべきと言えます。 落札価格(売却価格)が市場価格よりも安くなる 競売物件は買主にとってリスクが高いため、落札価格(売却価格)は市場価格を下回るのが一般的です。市場価格より落札価格が安くなる理由は以下のとおりです。 落札した建物に欠陥が見つかれば、買主が修繕費を負担しなくてはならない 前の所有者が落札後も退去しなければ、退去してもらうための交渉や手続きも必要になる 「競売物件」に対する抵抗感がある 通常の不動産取引に比べて、競売は手続きが煩雑である 競売での落札価格に大きく関わるのが、「売却基準価額」と「買受可能価額」です。上述のとおり、競売は落札者の負担が大きいことから、競売にかけられる不動産の売却基準価額は、市場価格の約7~8割程度に設定されます。 そして、最低落札価格を表す買受可能価額は、売却基準価額の8割です。落札価格の基準となる価額がこのように決定されているため、一般的に落札価格は市場価格を下回ってしまいます。 余計な費用がかかる 競売では、通常の不動産取引ではかからない、余計な費用がかかります。競売が実行されるまでには、各種書面の送付や現況調査など、さまざまな費用が発生しますが、これらの費用は予納金によって賄われます。予納金とは、裁判所に競売の手続きを申立てるときに債権者が納めるお金です。たとえば、競売物件が東京23区の場合、予納金の額は以下のとおりです。 請求債権額 予納金の額 2,000万円未満 80万円※ 2,000万円以上 5,000万円未満 100万円 5,000万円以上 1億円未満 150万円 1億円以上 200万円 ※令和2年3月31日以前に受理された申立てについては60万円 出典)裁判所|不動産競売事件(担保不動産競売,強制競売,形式的競売)の申立てについて 予納金は競売手続きを開始するときは債権者が債務者に代わって立替をしますが、最終的には売却代金から差し引かれて債権者に返還されるため、実質的には債務者が負担することになります。 また、ローンの延滞が始まってから競売で売却されるまでは、延滞分の遅延損害金も発生します。延滞から競売による売却まで一年以上かかる場合もあるため、残債によってはかなりの額になります。こうした費用が重なり債務者の負担金額が増加するため、競売で不動産を売却しても、残債を完済できない恐れもあります。 競売にかけられたことを知られてしまう 不動産を競売にかけられると、周囲に知られてしまう恐れがあります。なぜなら、裁判所による競売・差押えは公示され、所在地や外観、室内写真など、物件の詳細がホームページ上に掲載されるからです。名前が公開されることはありませんが、近所の人や会社などが見れば、競売にかけられていることはすぐにわかります。 また、競売の手続きが進むと、裁判所の執行官による現地調査が行われ、占有者や物件状態の確認、外観や室内の写真撮影、周辺住民への聞き取りなども行われます。また、ホームページなどに掲載された情報をもとに、落札目的の不動産業者が物件確認に訪れることも多いです。 競売で残債を完済できないとどうなる? 上述のとおり、競売は落札価格(売却価格)が市場価格よりも安くなるうえに、余分な費用も掛かってしまうため、競売後も残債を完済できない恐れがあります。 競売で完済できなかった残債については、引き続き、債権者に返済をすることになります。このときの債権者は、ローンを融資した金融機関や途中で「代位弁済」をした保証会社となりますが、債権管理回収を専門に行う「サービサー」という業者になることもあります。サービサーは、競売後、それまでの債権者から債権を譲渡され、債務者からの債権回収を行ないます。 このように、債権者は変わる可能性はありますが、債務者の残債に対する返済義務はそのままです。実際の返済方法については、債権者との交渉になりますが、分割払いとなるケースが多いようです。 競売を回避する方法 債権者から申立てによって、競売手続きが開始されたとしても、開札期日の前日までは取り下げの手続きができます。しかし、申立てを取り下げるように交渉するのは簡単ではありません。債権者に競売の申立てられた場合には、以下のような対策を行いましょう。 ①不動産担保ローン 他の金融機関から新たに融資を受け、残債を返済することができれば、債権者は競売の手続きを取り下げてくれます。しかし、延滞歴や資産状況を考えると現実的には難しいです。 一方で、不動産担保ローンを提供している金融機関の中には審査が柔軟な会社もあり、不動産に評価余力があれば融資を受けられるかもしれません。不動産担保ローンを利用して返済期間を延長できれば、毎月の返済額を低減できる可能性があります。 関連記事はこちら不動産担保ローンとは?メリット・デメリットを解説 ②任意売却 次に、任意売却とは、債権者と債務者の間で合意したうえで不動産を売却する方法です。債権者の合意を得ること以外は一般的な売却と同じなので、市場価格に近い値段で売却できる可能性があります。まずは、任意売却の相談に乗ってくれる不動産会社や弁護士を探しましょう。 関連記事はこちら住宅ローンが払えない!競売を回避する「任意売却」とは? ③リースバック 最後に、同じ家に住み続けたい場合はリースバックも選択肢のひとつです。リースバックは自宅をリースバック運営会社に売却し、その運営会社と賃貸借契約を締結することで、売却後も同じ家に住み続けられます。債権者から売却価格の同意が得られれば利用できるかもしれません。 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みやメリット・デメリットを解説 まとめ 競売の申立てが行われると、取り下げてもらうのは簡単ではありません。競売で自宅を売却されてしまうと、市場価格よりも安くなるだけでなく、余計な費用がかかるなどのデメリットがあります。ローン返済の見通しが立たないときには、必ず借り入れした金融機関に相談しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 「金銭消費貸借契約証書」の重要性とは? 金融機関から借入れた不動産担保ローンの返済が困難になってしまうと、担保として提供している不動産は金融機関によって売却されることになります。これは、不動産担保ローンを借入れるときの〝常識〟です...記事を読む

  • 物上保証人と連帯保証人の違いとは?

    物上保証人と連帯保証人の違いとは?

    「保証人」という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。一方で、保証人が「どのような責任を負うことになるか」理解をしている人は少ないかもしれません。また、一口に「保証人」と言っても、「物上保証人」「連帯保証人」では、責任範囲が異なることをご存知でしょうか。 この記事では、そもそも「保証人とは何か」や「物上保証人と連帯保証人の違い」について解説します。 そもそも保証人とは そもそも保証人とは、債務者が債務不履行となったときに、その履行の責任を負う人です。融資とその返済を例に挙げると、債務者が返済できなくなった時に、債務者に代わって返済義務を負う人のことを言います。 ところで、何故保証人を立てる必要があるのでしょうか?例えば、金融機関から担保融資を受ける際、債務者本人が担保を提供して、その評価の範囲内でお金を借りることが一般的です。しかし、返済ができなくなった時に、担保の価値が減少していたら、金融機関は融資金を回収できなくなります。これは金融機関にとっての大きなリスクです。 このようなリスクを避けるために、保証人を立てることで、追加で担保を提供することや、債務を保証人が引き受けることができます。そのため、担保融資では、担保提供と共に保証人が必要になります。一方で、充分な担保が提供されている場合や、保証協会の保証付き融資などは、保証人が免除されることもあります。 出典)内閣府「保証人とは(法的整理)」 物上保証人とは 物上保証人とは、自分の財産を他人の債務の担保に提供する人のことです。あくまで「担保の提供」であり、債務を負担する訳ではないので、自身が提供した担保以上に返済の義務はありません。 担保融資を受ける際、債務者に担保として提供する物がない場合は、家族や親戚などが物上保証人になる方法もあります。その際は、物上保証人となることに同意し、本人の所有物である担保を提供することが必要です。物上保証人になると、債務者が返済できなくなった際には抵当権が実行され、自分が提供した担保の範囲内で物的有限責任を負うという特徴があります。 たとえば、債務者のAさんが3,000万円の借り入れを金融機関から行い、物上保証人のBさんが2,000万円の担保を提供したとします。債務者のAさんが返済できなくなり、債務不履行となった場合、金融機関は抵当権を実行して、物上保証人のBさんの担保から債権回収を行います。この場合、1,000万円の債務が残りますが、物上保証人のBさんは、残った債務まで返済する義務はありません。 連帯保証人とは 連帯保証人は、「催告の抗弁」「検索の抗弁」「分別の利益」という、通常「保証人」が持つ権利が認められない保証人のことです。順に説明します。 「催告の抗弁」とは、保証人が債権者から債務の履行を請求されたときに、まずは債務者に請求するよう求めることを指します。「検索の抗弁」とは、保証人が債権者に対し、債務者が弁済可能な資産などを所有しているときに、保証債務の履行を拒否できることを指します。「分別の利益」とは、保証人が複数存在する場合、その頭数で割った金額についてのみ支払義務が生じることです。 これらのことから、連帯保証人の責任範囲は債務者と同等となります。つまり、「連帯保証人」は、本来債務者が負担すべき債務についても、履行せざるを得なくなる恐れがあり、通常の「保証人」よりも重い責任が課されます。 物上保証人と連帯保証人の違い 債務者が債務不履行となった場合で考えてみましょう。物上保証人は自身が差し入れた担保の評価範囲内にのみ返済義務が生じます。一方で、連帯保証人は、債務者の債務が完済されるまで返済責任義務が生じます。つまり、担保提供の有無にかかわらず、金融機関に返済を命じられたら、すべての債務の返済義務が生じます。そのため、物上保証人と比べると責任範囲が広く、リスクも大きくなることがわかります。 このような違いがあるので、保証人となる依頼を受けている場合は、保証内容の範囲やリスクを充分理解しておく必要があります。安易に連帯保証人となることを引き受けないことが大切です。 不動産担保ローンでは保証人が必要? 不動産担保ローンでは、債務者の所有不動産である場合、保証人が原則不要という会社も多いです。なぜなら、担保として提供する不動産の評価が高ければ、債務者自身が責任を負うことができるからです。仮に債務不履行となったとしても、担保として提供している不動産の売却により、融資金を回収できるので、保証人は必要ないのです。 ただし、債務者以外の第三者から担保提供を受ける場合は、保証人が不要とは限りません。この場合、担保の提供者が物上保証人もしくは連帯保証人のどちらかになることが一般的です。 物上保証人になるか、連帯保証人になるかは、金融機関がリスクをどのように考えるかによって分かれます。物上保証人の場合、返済の責任は担保の評価内となります。そのため、債務不履行になったとき、担保の評価が債務残高を下回っていれば、残債分を回収できなくなります。 一方で、連帯保証人の場合、担保の評価が債務残高を下回っていたとしても、その残債までも支払う義務が発生します。このように、債務者自身の与信が低いと判断される場合などに、連帯保証人となることを求められるかもしれません。 まとめ 担保融資では、債務者以外の第三者から担保提供してもらう場合、担保の提供者に物上保証人または連帯保証人になってもらうことが一般的です。物上保証人の責任範囲が担保の評価内なのに対して、連帯保証人は債務が完済するまでが責任範囲となるので、連帯保証人のほうが物上保証人に比べると責任が重くなります。保証人の違いを正しく理解し、契約後に後悔しないよう気をつけましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 不動産担保ローンとは?メリット・デメリットを解説 不動産担保ローンとは、不動産を担保として、お金を借り入れる商品のことです。不動産を担保にすることで、まとまった金額を比較的低金利で借り入れることが可能です。一方で、万が一返済不能になった場合...記事を読む

    2020.01.07用語
  • 権利関係からみた不動産の分類について

    権利関係からみた不動産の分類について

    不動産担保の基礎知識(3)では、土地の種類には「用途的地域」という分類があることを解説しました。土地の価値を評価するには、その土地が何に使われているかという「現況」(現在の状況)に加え、周辺地域の土地の利用状況から「何の用途に使うのが合理的なのか」を考慮することが重要になります。用途的地域とは、そうした地域の用途を分類しています。 用途的地域は、法律や条例に基づいた基準ではありません。国土交通省が公表している「不動産鑑定評価基準」が定めている「種別」です。ただし、国土交通省は、国家資格として「不動産鑑定士」を所管していますので、不動産評価の基準としては法令に準ずるもの、といっていいでしょう。 そして、その不動産鑑定評価基準には、「不動産の類型」という項目があります。土地と建物からなる不動産の「権利関係」に着目して分類をしたもので、こちらは法令に基づいた基準となっています。この記事では、この不動産の類型についてお話しします。 土地の権利の「類型」は5種類ある 不動産の類型は、土地と建物に関する「権利」によって分類し、不動産の評価に役立てようというものです。類型には、土地の権利のみに着目する場合と、土地と建物の両方の権利関係をみる場合との2つのパターンがあります。まず、土地のみに着目したものについて説明しましょう。 土地だけをみるものは、不動産鑑定評価基準では「宅地」の類型といいます。ここでいう宅地とは、冒頭で述べた用途的地域に基づいたものです。したがって、一般の住居が多い「住宅地」、小売店や飲食店、雑居ビル、スーパーなどが多い「商業地」、町工場や工場が多い「工業地」などが対象となります。こうした宅地の類型には以下の5種類があります。 ①更地(さらち) 土地の上に建物がなく、土地の所有者が自由に使える状態のことです。一般的に更地というと、建物がなくて地面がむき出しの状態が思い浮かびますが、宅地の類型では、〝建物がない〟というだけではなく、③の「借地権」が付いていない土地、という意味を含んでいます。 ②建付地(たてつけち) 土地の上には建物があり、土地と建物の所有者が同じで、土地だけを評価する際の分類です。実際に評価の対象となることは、それほど多くありません。 ③借地権(しゃくちけん) 土地の所有者に賃料を支払って、土地を借りている人の権利。借りている人は「借地権者」、貸している土地の所有者は「借地権設定者」と呼ばれます。 ④底地(そこち) 賃料を受け取って土地を貸している所有者の権利。借地権を持っている人がいるため、底地の権利があっても、土地を自由には使えません。 ⑤区分地上権(くぶんちじょうけん) 他人の所有する土地の地下、あるいは、土地の上にある空間に、何らかのモノを設置する場合、設置をする側が有する権利。具体的には、地下の場合はトンネルや地下道、土地の上の空間の場合は送電線などが考えられます。借地権と同じく、区分地上権を持つ人は、土地の所有者に賃料を支払います。これを評価することも、最近はかなり減っています。 以上が宅地の類型になります。あまり聞き慣れないものがあったと思いますが、宅地には商業地や工業地が含まれているため、さまざまな様態があります。 土地と建物の権利関係には4種類ある 次は、「建物及びその敷地の類型」で、土地と建物の権利関係から分類したものです。以下、4種類があります。 ①自用(じよう)の建物及びその敷地 土地と建物の所有者が一致しているケースです(「自用」とは自家用という意味です)。具体的には、一戸建て住宅、自社ビルなどが該当します。不動産評価においては最も一般的といえるものです。 ②貸家及びその敷地 土地の所有者が賃貸アパートやマンション、貸しビルなどを建てており、その建物を他人が借りているケースです。これもお馴染みのものといえるでしょう。 ③借地権付建物 宅地の類型で触れた借地権を有する人が所有する建物が建っている状態です。具体的には、親が所有する土地に子供が家を建てているような場合です。建物が自家用か、さらに別の人へ貸しているかで、違いがあります。 ④区分所有建物及びその敷地 複数の人が建物と土地の一部分を所有している状態です。いちばんわかりやすいのは分譲マンションのオーナーです。また、ビルを共同で開発して一部を所有しているケースも該当します。 不動産評価の指針となる「種別」と「類型」 「不動産担保の基礎知識」の(3)と(4)で、不動産を評価する際の分類方法である種別と類型について解説をしてきました。この2つを用いると、例えば、評価対象となる不動産が、商店街に近接する地域にあれば種別は「商業地」、一戸建ての自宅であれば類型は「自用の建物及びその敷地」というように分類されます。 現実の不動産は、こうした種別や類型に、スムーズに当てはまらないものも少なくありません。しかし、そもそも基準がなければ、他の物件との比較や評価自体が困難になります。自分の不動産の価値を知るためにも、不動産の分類について知っておいて損はありません。 無料の仮審査を申込む ご所有の不動産を担保にいくらまで融資可能かをご回答いたします。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 不動産評価の方法と不動産価値の考え方 不動産はさまざまなポイントで評価されるのが特徴です。 また、戸建てとマンションでも資産価値の考え方は異なる場合があります。 この記事では、不動産評価のプラス面およびマイナス面で重要なポイント...記事を読む

    2019.04.23用語
  • 用途から見た土地の種類

    「用途」からみた土地の種類

    不動産は、「土地」と土地の上に建っている「建物」から構成されています。そして、土地にはさまざまな分類方法によって定義される「種類」があります。不動産を売却したり、ローンの担保とする場合、土地の価値(=価格)を算定することになりますが、その際に重要となるのは「用途的地域」という分類による種類です。この記事では、この用途的地域について説明をしていきます。 登記簿に記載されている「地目」とは? 土地の種類と聞いて、どんなものが頭に浮かびますか?「住宅地」や「農業地」、あるいは建物などが何もない地面だけの「更地」(さらち)といったものでしょうか。このように、一般的には、土地は利用されている状況によっていろいろな種類に分かれます。 ただし、土地には様々な法律や規制が存在し、それぞれの法律や規制によって利用状況の定義が異なるため、法律や規制の数と同じだけの種類があるといえます。その結果、名称は同じでも内容は微妙に違う、といったことがあり、分かりづらくなっているのです。 最も基本的な種類は、登記簿に記載されている「地目」(ちもく)でしょう。利用状況によって分類したもので、宅地・田・畑・牧場・原野・塩田・鉱泉地・池沼・山林・墓地・境内地・運河用地・水道用地・用悪水路・ため池・堤・井溝(せいこう)・保安林・公衆用道路・公園・鉄道用地・学校用地・雑種地、と合計23種類もあります。 地目は登記事項ですので、不動産登記法によって定義されている土地の種類といえます。なお、登記簿の地目は「畑」であったとしても、現在は住宅になっているなど、地目と現在の利用状況が異なっている場合は少なくありません。その場合、固定資産税などの不動産にかかる税金は、地目ではなく現在の利用状況を基にして課税されます。 土地の現況を表しているのが「用途的地域」 そこで、「現在の利用状況はどうなっているのか」といった観点から分類しているのが用途的地域になります。用途的地域は、大きく分けて「宅地地域」「農地地域」「林地地域」の3種類があります。保有している土地の周辺地域が、建物が建てられている「宅地」がほとんどであれば宅地地域となります。同じく、田んぼや畑が多ければ農地地域となります。 次に、宅地地域は、「住宅地域」「商業地域」「工業地域」「その他」の4つに分類されます。この分類は、建っている建物の種類によります。住宅が多ければ住宅地域、個人商店やスーパー、雑居ビルなどが多ければ商業地域、町工場や工場が多ければ工業地域、といった具合です。ここからさらに、住宅地域にあるのが「住宅地」、商業地域にあるのが「商業地」、工業地域にあるのが「工業地」となり、これが土地の種類となります。 ここで注意点があります。用途的地域は、都市計画法で定められている「用途地域」とは違うことです。都市計画法上の用途地域は、「第1種低層住居専用地域」や「近隣商業地域」、「準工業地域」といった区分をしており、それぞれ、土地の広さや建物の高さ、容積率などに明確な基準があります。用途的地域と用途地域は名称が酷似しているため、混同されることが多く、注意が必要です。 用途地域と比較すると、用途的地域には明確な数値による基準はありませんが、おもに以下の4つの条件が判断材料となります。 自然的条件…地理的な位置、地質や地盤などの自然環境 社会的条件…人口の状態、都市インフラや公共施設の整備状況など 経済的条件…物価や賃金の状態、雇用や消費・投資といった経済および金融活動の状況 行政的条件…土地利用や建築物に関する規制、不動産取引に関する規制など この4つの条件を総合的に考慮して、住宅地なのか商業地なのか、あるいは工業地なのかを判断することになります。 「用途的地域」の有用性について では、明確な基準がない用途的地域の分類には、どんな意味があるのでしょうか。例えば、住宅地の中に、ポツンと小さな畑がある状況をイメージしてみましょう。確かに、現在の土地の利用状況は農地かもしれません。しかし、売却するとなったときには、土地の価値は農地として算定するよりも、住宅地として算定するほうが実態に近いといえます(住宅地として算定する方が土地の価値は高くなります)。また、商業地の中に一軒家が建っているケースもよくありますが、この一軒家の土地は、住宅地としてではなく、商業地として価値を算定するのが相応しいといえます。 このように、土地の価値を算定するときは、単に登記簿上の地目や、町名などの行政区分上の地域をみるのではなく、現在の土地の利用状況を含めた周辺地域の状況全体を考慮することが不可欠といえます。売却や不動産担保ローンの融資にあたっては、まず用途的地域を把握し、その地域内にある土地の公示価格や取引の実際のケースを基にして、土地の評価をすることが大事です。そうした総合的な判断をする際に、用途的地域による分類は有効になるのです。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 権利関係からみた不動産の分類について 不動産担保の基礎知識(3)では、土地の種類には「用途的地域」という分類があることを解説しました。土地の価値を評価するには、その土地が何に使われているかという「現況」(現在の状況)に加え、周辺...記事を読む

    2019.04.16用語
  • 不動産の「抵当権」とは

    抵当権とは?根抵当権との違いや設定・抹消登記について解説

    住宅ローンなどの不動産を担保にするローンを組むためには、担保不動産に抵当権を設定しなければなりません。不動産を担保にローンを組む前に、抵当権がどういった権利かを正しく理解しておきましょう。 この記事では、抵当権と、混同しやすい根抵当権も含めて解説します。 不動産の抵当権とは 抵当権とは、金融機関(=債権者)が融資をする際、ローンを借り入れる人(=債務者)が所有する不動産に設定をする権利のことです。抵当権を設定することで、債務者がローンの返済ができなくなったときに、債権者が不動産を競売にかけて、売却代金から優先的に返済を受けられます。。なお、法律上では、お金を借り入れる債務者が「抵当権設定者」と呼ばれ、お金を貸す債権者が「抵当権者」と呼ばれます。 抵当権が設定されても、所有者はその不動産を使用することができます。住居として使っていれば住み続けることができ、賃貸物件として使っていれば、家賃収入などを得ることができます。 抵当権が実行されるとどうなる? 住宅ローンなど、不動産を担保としているローンの返済を滞納してしまうと、抵当権が実行され、競売によって担保不動産を強制的に売却されてしまいます。売却資金で住宅ローンの残債を弁済することになりますが、競売による売却価格(落札価格)は、基本的に市場価格を下回るため、最悪の場合は債務が残る恐れもあります。 競売を避ける方法として、金融機関と相談のうえで担保不動産を売却する「任意売却」があります。任意売却であれば基本的に通常の不動産取引と同じような売買が可能なので、市場価格に近い価格で売却できる可能性があります。 関連記事はこちら住宅ローンが払えない!競売を回避する「任意売却」とは? 抵当権の設定・抹消登記 抵当権の設定と抹消は、どちらも法務局で行います。それぞれ順に解説します。 抵当権の設定登記 抵当権の設定手続きは法務局が行っており、不動産の登記簿に抵当権を登記することで設定が完了します。登記すべき内容には、主に以下のようなものがあります。 債権額 債権の内容 債権者・債務者 利息 損害金 また、登記をするには「登録免許税」がかかり、その税額は融資額に0.4%の税率を掛けた額になります。融資額が1,000万円であれば登録免許税は4万円になる計算です。なお、このほかの費用としては、「抵当権設定契約書」に貼る収入印紙代や、手続きを代行する司法書士に支払う報酬などがあります。 抵当権の抹消登記 ローンの返済が終了すれば、金融機関が有する抵当権の権利は無くなります。しかし、抵当権を抹消する手続きをとらないと、登記簿には抵当権が記載されたままになります。抵当権が残ったままだと、その不動産を売却するときなど、支障が生じる恐れがあるので、速やかに抹消の手続きを取った方がよいでしょう。 抵当権の抹消は、法律上の抵当権設定者である債務者が行います。抹消の手続きについても、法務局で登記簿に「抹消したこと」を登記することが必要です。この手続きにも登録免許税がかかり、税額は不動産1件につき1,000円です。 したがって、土地と建物の抵当権を抹消するには合計で2,000円になります。なお、手続きは、司法書士に代行を依頼することが一般的ですが、抹消手続きは抵当権の設定手続きに比べると簡単なので、自分で行うこともできるでしょう。 関連記事はこちら住宅ローン完済後の手続きについて解説 根抵当権との違い 根抵当権(「ねていとうけん」と読みます)は抵当権の一種です。債務者がローンの返済ができなくなったときに、担保不動産を競売にかけて、その売却代金から優先的に返済を受けられるところは、抵当権と同じです。一方で、抵当権は〝特定〟の債権にのみ有効であるのに対して、根抵当権は〝不特定〟の債権にも有効になる点が異なります。 抵当権は1つのローン契約にのみ有効なので、そのローンが完済されれば権利は消滅します。一方、根抵当権に基づいた契約は、あらかじめ融資をする金額の上限を決めておいて、その範囲内で〝何回でも〟融資ができるようになります。したがって、根抵当権が設定されれば、1つのローンが終了しても根抵当権は消滅せず、権利は残ったままになります。 不動産担保ローンのように、複数回借りる可能性のあるローンについては、根抵当権を設定しておくことで、融資の度に登記の手続きをして抵当権を設定する、ということが避けられます。これは手間と費用(登録免許税や収入印紙代、司法書士への報酬など)の省略につながります。 「根抵当権」では「極度額」が設定される 実際の手続きなどは、抵当権とほぼ同じと考えてよいのですが、登記簿に登記する内容に違いがあります。根抵当権の場合、主に登記するのは以下の三点で、この中でも極度額が重要です。 極度額 債権の範囲 債務者・債権者等 根抵当権の極度額とは、根抵当権を設定するときに定められる担保の限度額です。あらかじめ融資額の限度を決めておいて、その範囲内なら、何回でも融資ができます。例えば、極度額が3,000万円であれば、最初に1,000万円を借り、その返済が終了する前に、追加で1,000万円を借りる、といったことが可能です。その追加で融資を受ける際、わざわざ手間と費用をかけて法務局で手続きをする必要はありません。 なお、根抵当権は、債務者と債権者の合意があれば抹消をすることができます。事業の運転資金を借り入れる場合、追加融資を受けることは珍しくありません。そうしたケースでは、融資を受ける側にとって、根抵当権は使い勝手がよいといえるでしょう。 抵当権に関するよくある質問 抵当権付きの不動産は相続できる? そもそも、団体信用生命保険(以下、団信)に加入していれば、債務者が死亡したときに支払われる保険金で残債が完済となるため、相続時点で抵当権が抹消されます。一方で、団信に加入していなかった場合は、抵当権付きの不動産を相続することになります。 抵当権付きの不動産を相続する場合、ローンの返済義務を相続人が引き継ぎます。また、相続の際には、通常の不動産と同じように相続税が課税されます。このとき、抵当権が設定されているからといって、不動産自体の相続税評価額が下がる、といったことはありませんが、相続税額を計算する際に、相続をする財産の全体から残債分を差し引くことになります。 抵当権付きの不動産は売却できる? 抵当権付きの不動産であっても、売却することは可能です。その場合、売主である債務者が、売却によって得た代金でローンを完済し、抵当権の抹消手続きを行うことになります。 抵当権はどうやって確認する? 抵当権は、登記簿謄本で確認できます。不動産登記の情報が記載されている不動産登記簿謄本のうち、権利部(乙区)というところに抵当権の内容が記載されています。詳細は以下の記事で解説しています。 関連記事はこちら登記簿謄本(登記事項証明書)とは?取得方法や記載内容を解説 まとめ 抵当権を実行されると、担保としている不動産を手放さなければならなくなります。不動産を担保にローンを組む場合は、無理のない返済が可能かを確認したうえで契約を進めるようにしましょう。また、抵当権の設定登記や抹消登記は、必要書類の準備など手間がかかります。債権者である金融機関や専門家に相談しながら、正確に手続きを進めるようにしましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 「用途」からみた土地の種類 不動産は、「土地」と土地の上に建っている「建物」から構成されています。そして、土地にはさまざまな分類方法によって定義される「種類」があります。不動産を売却したり、ローンの担保とする場合、土地...記事を読む

    2019.04.09用語
  • 融資における担保の種類とは?

    保証人・連帯保証人・連帯債務者の違いとは?融資における担保の種類を解説

    ローンは、分類の方法によってさまざまな種類に分かれます。その分類方法のひとつに、融資をする際に担保を必要とするかどうか、というものがあります。文字どおり、担保が不要なものは「無担保ローン」で、担保が必要なものが「有担保ローン」になります。有担保ローンの代表的なものは不動産担保ローンですが、担保となるものは不動産だけではありません。この記事では、担保にはどのようなものがあるのかについて、解説をしていきます。 「人的担保」と「物的担保」 融資における担保を大きく分けると「人的担保」と「物的担保」があります。人的担保とは、融資を受けた人(=債務者)が何らかの理由で返済ができなくなったときに、債務者以外の人が債務者に代わって返済をするという契約を結ぶことです。シンプルにいうと、保証人などを付けておくこと、となります。具体的な人的担保は、「保証人」「連帯保証人」「連帯債務」の3つに分かれ、法律上には明確な違いが存在します。 保証人 保証人は、債務者が返済できなくなった場合に代わって返済をする義務を負いますが、融資をした金融機関(=債権者)が返済を請求してきたときに、「まずは債務者に請求をするように」という主張をする権利があります。この権利は法律上、「催告の抗弁」といいます。また、債務者が返済できる資力があるにもかかわらず返済を拒否したときは、「債務者の財産を強制執行せよ」と債権者に主張できます。この権利は「検索の抗弁」と呼ばれます。さらに、保証人が複数いる場合、保証人はその人数で割った金額のみを返済する義務を負うことになります。 連帯保証人 次に連帯保証人は、保証人の権利である「催告の抗弁」や「検索の抗弁」という権利はありません。そして、連帯保証人すべてが全額を返済する義務があります(ただし連帯保証人の返済額の合計が債務額を超えることはありません)。つまり、債務者と同じ義務を負う保証であり、保証人よりも重い責任が課せられることになります。 連帯債務 3番目の連帯債務は、複数の債務者で同一の債務を引き受けることです。簡単にいうと、債務者自体が複数いる、ということです。そのため、人的担保としては最も重いといえるでしょう。具体的には、夫婦で借りられる住宅ローンを夫婦で借りた場合、その夫婦は連帯債務者になります。債権者は、連帯債務者に対しては、別々に債務の返済を請求することができます。 「物的担保」としての不動産は「抵当権」となる 物的担保は、〝人〟ではなく〝物〟を担保とすることで、法律上は、他の債権者の存在を考えることなく、担保として提供された物あるいは財産権から優先的に債権を回収できる権利のことです。ただし、これは法律上の広い意味ですので、以下、金融機関の融資における物的担保に絞って述べていきます。 抵当権 まず、不動産は物的担保の代表例ですが、融資をする際には「抵当権」が設定されて物的担保となります。抵当権とは、債務者から担保として提供された不動産を、債務者に利用させながら、債務が履行されない場合にその不動産を売却して、代金から債権を回収する権利のことです(不動産担保については「不動産担保の基礎知識」の(2)以降で詳しく解説する予定です)。 不動産以外の「物的担保」 有価証券 不動産以外の担保としてよく使われるものに、有価証券があります。有価証券とは、財産権を表す証券のことで、具体的には、国債や社債などの債券、株式、手形、小切手などです。有価証券担保で留意すべき点は、有価証券の種類によって担保としての評価が変わってくることです。例えば、国債は、国が発行している債券なので信用力や流動性が高いといえます。そのため、社債や株式、手形よりも担保としての価値が高く、評価額も高くなります。また、同じ株式であっても、日常的に取引されていて流動性が高い上場株式の方が、取引されることが少ない未上場株式よりも、担保の価値が高くなります。なお、融資において有価証券を担保とする場合、有価証券は債権者が預かるのが一般的です。 売掛債権 会社であれば、「売掛債権」を担保にするケースもあります。売掛債権とは、商品やサービスを販売した会社が顧客から代金の支払いを受ける権利のことです。企業同士の取引は、商品やサービスの販売をした後に、納品をし、請求書を発行して、代金を受け取るという流れが一般的です。つまり、代金を受け取るまでには1~2か月かかることが多く、代金を受け取るまでの期間、商品やサービスを販売した側は売掛債権を保有することになります。この売掛債権を担保として融資を受けるわけです。実際に売掛債権を担保とするときには、代金の支払いを受けることになっている「売掛先」に、担保にすることを通知する場合と通知しない場合に分かれますが、通知をしないケースが多いようです。 その他の担保 このほか、普通預金や定期預金を担保とする「預金担保」や、ゴルフ会員権を担保にする「ゴルフ会員権担保」、会社の商品を担保とする「商品担保」などがあります(商品担保は「動産担保」とも呼ばれます)。ただ、いずれも物的担保としては、一般的な存在ではなく、担保として取り扱っている金融機関は限られているのが現状です。しかし、有価証券や売掛債権を含めて、借り入れをする人の条件やニーズに合致すれば、有意義なローンを組める可能性があります。該当する場合、検討する価値は十分にあるといえるでしょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 抵当権とは?根抵当権との違いや設定・抹消登記について解説 住宅ローンなどの不動産を担保にするローンを組むためには、担保不動産に抵当権を設定しなければなりません。不動産を担保にローンを組む前に、抵当権がどういった権利かを正しく理解しておきましょう。 ...記事を読む

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