住まいとお金の知恵袋 一覧(公開日順)

  • 不動産投資ローンに対する金融機関の融資動向(1)

    不動産投資ローンに対する金融機関の融資動向(1)

    2019年3月に、金融庁から『投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果』が発表されました。これは、金融庁が全国の金融機関を対象として、おもに投資用不動産向け融資の実態についてアンケート調査をしたものです。その内容を2回にわたって紹介します。ここでいう投資用不動産向け融資とは、個人が投資目的で、居住あるいは宿泊用の不動産を取得するために金融機関が行なう融資のことで、一般的に不動産投資ローンと呼ばれるものです。 「不動産投資ローン」が拡大したのは2016年から まず、この調査の背景について説明をしておきましょう。2018年に明るみになったスルガ銀行 の不正融資問題を受けて、金融庁は、銀行と信用金庫、信用組合を対象として、不動産投資ローンの貸出額や残高、さらに、融資審査の中身についてアンケート調査をしました(調査時期は2018年10~11月)。 実は、スルガ銀行の不正融資問題が発覚する前から、すでに金融庁は不動産投資ローンについて注視をしていました。ここ数年、銀行および信用金庫の不動産業向け融資の残高は増加を続ける中、2016年3月期と2017年3月期に、不動産投資ローン(表の表記では「個人による貸家業向け貸出残高」)が拡大をしたからです。 【国内銀行・信用金庫の不動産業向け貸出残高の推移】 上の表は、日銀が発表している銀行と信用金庫の「貸出先別貸出金」というデータを、金融庁が集計したものです。この表をみると、2016年3月期の1年間で、不動産業向けの貸出残高が前年比で6.3%増加していることがわかります。同様に、2017年3月期も6.4%増加しました。一方で不動産業向け融資の増加率に相応して、「個人による貸家業向け貸出残高」も、2016年3月期3.8%、2017年3月期4.0%と増加しました。この時期から、金融庁は、不動産投資ローンのリスクに懸念を持っていたようです。 不動産業向け融資は拡大傾向が続く その後、2018年にスルガ銀行を始めとした、地方銀行のアパート投資向けの不正融資が明らかとなります。その影響で、2019年3月期の「個人による貸家業向け貸出残高」は横ばいとなり、新規の貸出しは急減することとなりました。 ただし、ここで注意すべき点は、不動産業向け貸出については、不正融資が問題化した後もそれまでとあまり変わらないペースで拡大をしていることです。金融庁のアンケート調査には掲載されていませんが、「個人による貸家業向け貸出残高」を除いた不動産業向け貸出残高の推移は、下の表のようになっています。 【国内銀行・信用金庫の不動産業向け貸出残高(個人による貸家業向け貸出残高を除く)の推移】 この表から分かるのは、不動産業向け貸出残高は2019年3月末時点で、前年比5.7%と依然として高い伸びを記録していることです。つまり、銀行と信用金庫の不動産業に対する融資姿勢には、それほど大きな変化はなかったことになります。 不動産業者に、「アパート投資向けの不正融資が社会問題化して以降、金融機関の融資姿勢に変化はあるか?」という質問をすると、「それほど変わっていない」という答えが返ってくることが多いのですが、このデータはそれを裏付けていると言えます。 但し、表①でみたように、不動産投資ローンについては、消極的なスタンスとなる金融機関は増えています。金融庁のアンケート調査によると、「消極的」と回答した銀行は、2016年3月期は全体の4%でしたが、2018年9月期には17%に、同じく、信用金庫は全体の11%から25%へと増加しています。 以上のことから、当面、不動産投資ローンの新規実行は伸び悩む一方、不動産業向け融資にはそれほど影響がない、ということが予想されるでしょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 不動産投資ローンに対する金融機関の融資動向(2) この記事では、金融庁の『投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果』について、その中身を掘り下げたいと思います。実は、この調査には、金融機関の融資について金融庁の考え方が、これまでになく...記事を読む ▼シリーズ「不動産投資ローンに対する金融機関の融資動向」の記事一覧 ・第1回:不動産投資ローンに対する金融機関の融資動向(1) ・第2回:不動産投資ローンに対する金融機関の融資動向(2)

  • 「競売」の実態と今後の動向

    「競売」の実態と今後の動向

    以前に比べ、競売される不動産に対する注目度は上がっています。不動産業者だけではなく、一般の個人が競売に参加することも珍しくなくなりました。この背景には、市場価格よりも割安な価格で不動産物件を入手できる可能性がある、といった見方が広がっていることが挙げられます。 そのため、住宅ローンの返済が行き詰った場合、担保となる不動産を競売ではなく、市場価格に近い価格で売れる任意売却で売る方が良い、といった見方も浸透していったと思われます。果たして、そうした見方は本当に正しいのでしょうか。改めて、最近の競売の動向をチェックしてみましょう。 競売の落札価格は安くはない!? 競売にかけられる不動産の基準となる価格「売却基準価額」は、市場価格の7~8割程度に設定されます。物件の中身や地域によってもバラつきがありますが、最近は7割程度に設定されるケースが増えているようです。さらに、最低落札価格は、売却基準価額から2割割安に設定されます。こうした事実から、競売物件は安く買える、という見方が出てきました。 実際、バブル崩壊以降の地価の下落が続いた時期は、市場価格に比べてかなり割安な価格で落札されたケースも発生していました。しかし、国内景気が回復し、不動産市場が持ち直すにつれて、落札価格の水準も上昇していったのです。 興味深いデータがあります。全国競売評価ネットワークという機関が、競売情報を公表している「不動産競売物件情報サイト」のデータを分析したものです。この全国競売評価ネットワークの分析によると、平成28年度に全国の裁判所で行われた不動産競売における平均落札価格は、市場価格の95・4%だったそうです。東京地裁が管轄する東京エリアの不動産競売に至っては、市場価格を超える111・6%でした。 なお、発表されている最新データは平成28年度分で、この年だけが落札が好調だったわけではありません。過去のデータをさかのぼってみると、全国ベースでは平成23年度以降、平均落札価格は市場価格の90%を超えていました。東京エリアをみると、平成22年度以降は100%を超えているのです。こうしたデータを見る限り、「不動産を競売で売却すると市場価格よりかなり安くなる」というのは、少なくとも、ここ数年の現状には当てはまらない、といえるでしょう。 任意売却をする場合、通常の不動産取引とはそれほど変わらないため、売買をする不動産業者には仲介手数料を支払うことになります。加えて、任意売却を行なう専門業者への手数料も発生します。そうした点を考慮すると、競売と任意売却のどちらが有利であるということは、一概にはいえないと考えられます。 競売件数は減少傾向だが、今後は増加の可能性も 担保不動産の競売件数は減少傾向にあります。それは、『司法統計』をみると一目瞭然です。司法統計とは、裁判所が取り扱った事件に関する統計で、最高裁判所の事務総局が取りまとめて公表しています。その中に、「不動産等を目的とする担保権の実行としての競売等」という項目があり、これが担保不動産の競売件数に該当します。 裁判所のホームページでは、平成12年度からのデータが閲覧できますが、平成12年度には全国で8万2879件ありました。それが、ほぼ右肩下がりで減少傾向となり、最新の平成28年度では1万8568件になっています。競売件数は、この間、4分の1以下にまで減ったことになります。 減少傾向にある要因はいろいろと指摘されています。中でも、強い影響を与えているとされているのが、「中小企業金融円滑化法」(通称「モラトリアム法」)の施行です。リーマン・ショック後の2009年12月に、中小企業を救済し、連鎖倒産を防ぐためにつくられた法律です。内容は、中小企業に融資している金融機関に対して、金利の減免や返済の猶予、返済期間の延長などを促して、中小企業の資金繰りに関する負担を軽くする、というものです。 そして、このモラトリアム法によって、金融機関の中小企業への融資の態度が大きく変化したといわれています。不動産を担保として融資をしている場合、貸出先の中小企業の返済が滞ってきたといったケースでも、すぐに担保不動産を競売にかけることはせず、金利の減免や返済の猶予、返済期間の延長などに、柔軟に応じるようになったとされます。 モラトリアム法自体は、2013年3月末で終了しましたが、実は、その後も金融庁は、金融機関に対して〝任意〟で中小企業への融資スタンスについて報告を求めてきた、という経緯があります。そのため、モラトリアム法の実質的な効力は継続してきました。 しかし、金融庁は、その金融機関からの任意の報告についても、平成30年度(2019年3月末)を最後としたのです。その結果、これまで金融機関が正常な債権として扱ってきた融資の案件であっても、不良債権の扱いにされるケースが発生しているとされています。もしかすると、これまで減少傾向をたどってきた担保不動産の競売は、2019年以降、増加に転じるかもしれません。これが、今後の競売の落札価格にどんな影響を与えるのかは不透明ですが、注視していきたいと思います。 無料相談してみる SBIエステートファイナンスが不動産担保ローンの疑問にお答えします。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 住宅ローン返済中でも、不動産担保ローンで借り入れできる人とは? 不動産担保ローンは、住宅ローンの残高があったとしても該当する不動産を担保にして借り入れできる可能性があります。しかし、必ずしも借り入れできる訳ではありません。この記事では、住宅ローンの残高が...記事を読む

    2019.06.04自宅売却
  • ノンバンクで不動産担保ローンを利用する理由とはーー不動産事業者インタビューvol.1(2)

    ノンバンクで不動産担保ローンを利用する理由とはーー不動産事業者インタビューvol.1(2)

    前回は、不動産物件の仕入れにあたって、実際にどんな工夫をしているのかについて、株式会社ノアプランニングの菅野敬介さんにお話をお聞きしました。今回は、引き続き、資金調達についてお伺いしていきます。 関連記事はこちら物件の仕入れは資金確保とネットワークが重要?! ーー不動産事業者インタビューvol.1(1) ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 資金調達に利用している金融機関 菅野さんは、経営するノアプランニングの特徴として、物件の買い手になる点を強調されていました。そして、物件の売り主のニーズに対応するために、さまざまな方法で資金調達をしているというお話でした。今回は、資金調達について、いろいろとお聞きしたいと思います。 ――現在、資金調達先としては、どんな金融機関を利用されているのですか。 地方銀行と信用金庫、ノンバンク、そして、クラウドファンディングといったところです。 ――それぞれの金融機関の融資スタンスには、どんな違いがあるのでしょうか。 地銀は、担保とする不動産の評価に加えて、会社の事業に対しても与信をするため、融資額が伸びるという特長があります。事業が黒字になっていれば、それを評価してくれます。例えば、担保不動産の評価が市場実勢の「8掛け」であれば、そこに事業に対する与信額が上乗せされるわけです。 ――事業に対する評価は、かなりきめ細かく行われるという感じですか。 それほど綿密にやっているという印象はなく、基本的には、継続して黒字であれば評価をしてくれるという感じです。この点は、信用金庫もほぼ同じといえます。地銀と信用金庫は、それぞれカバーしているエリアがはっきりしているので、物件の所在地によって使い分けています。 資金調達先としてノンバンク ――ノンバンクはどうですか? いまお話しをした点に関連する部分でいうと、ノンバンクは担保不動産の対する評価のみで融資額が決まるケースがほとんどです。市場実勢の「8掛け」と決まっていれば、それ以上、融資額が増えることはほとんどありません。その一方で、銀行では融資が付きにくいような物件でも、会社の与信を調査をして、評価をしてくれます。 ――ノンバンクにもいろいろありますが、たしかに融資先の事業に与信をするところは少ないかもしれません。 個人的には、もう少し融資額を増やして欲しいと思うときもありますが(笑)、いつも物件を〝第三者〟的にチェックしてくれるので、そこは非常に参考になっています。私自身、不動産評価のプロというわけではありませんし、借地権付きの建物などの評価は知識と経験が必要になってきます。そこの部分を、データに基づいてしっかりと調べてくれるので、実務としての経験が蓄積されているという実感があります。ノンバンクの評価と、そこから決められる融資額の範囲で事業を行なっていれば、大きなリスクは回避できるのではないでしょうか。 ――審査のスピードには違いはありますか。 そこは大きく違うところです。ノンバンクでは、最短で1週間程度で決済をもらうことができます。不動産の売り主が短期間での売却を希望している場合は、実質的な選択肢はノンバンクしかないといえますね。 ――クラウドファンディングでは、どんな借り入れをしたのですか。 かなり短期間の〝つなぎ資金〟の借り入れです。クラウドファンディングの金利は15%程度ですので、1年間借りてしまうと金利の負担が大きくなり、案件はほとんど赤字になってしまいます。そこで、半年間だけ借り入れをしたことがあります。クラウドファンディングを利用したのは、資金調達を多様化したいという意図もありました。 ――資金調達において、金融機関にこうして欲しいという要望はありますか? ノンバンクの評価は重要な指標 さきほど、ノンバンクの融資額はかなり厳格に決められているというお話しをしましたが、例えば、担保とする不動産の売却先が決まっていて、しかも、その売却先の信用リスクが低い場合、それを加味して担保不動産の「掛け目」を上げる、といったスキームがあればと思います。 ただ、現状のように、どんな不動産でも値上がりするといったことはなくなり、物件をしっかりと評価して事業を行なうことが大切になっている状況では、ノンバンクの評価は重要な指標となってくれています。それが前提であることは言うまでもありません。 仮審査( 不動産事業者専用 ) ご所有の不動産を担保にいくらまで融資可能かをご回答いたします。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。

  • 物件の仕入れは資金確保とネットワークが重要?! ーー不動産事業者インタビューvol.1(1)

    物件の仕入れは資金確保とネットワークが重要?! ーー不動産事業者インタビューvol.1(1)

    ひとくちに不動産業といっても、さまざまな事業分野があります。その中でも、不動産の物件の仕入れというのは、もっとも基本的かつ重要な業務といえるでしょう。どうすれば優良な物件を入手することができるのか? そのための情報収集の方法は? といったことは、不動産業に従事している人であれば非常に関心が高いと思われます。 そこで、実際に物件の仕入れにあたっている方々に、普段どんな工夫をしているのかについて聞いていきます。今回は株式会社ノアプランニングの菅野敬介さんです。 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 物件の仕入れ方 ――普段、物件の仕入れはどのように行っているのでしょうか? 取引先からの紹介が基本になります。メインは仲介業者になりますが、これまで取引した不動産のオーナーだった方々からの紹介もあります。 ――紹介をしてもらいやすくするためには、どんなことをしていますか? いちばんアピールしているのは、当社自身が物件の購入をすることができる点です。不動産を売却する側には、優先したいニーズがあります。なるべく短期間で確実に売却をしたい、または、なるべく高い価格で売りたいといったことです。そうしたニーズに対応するために、当社も資金調達をさまざまな方法で行っています。 高く売却するための工夫 ――なるべく高い価格で売却したいというのは、多くのオーナーさんに共通しているニーズだと思われます。そこではどんな工夫をしているのでしょう。 不動産の価値を評価するにあたってはいろいろな方法がありますが、最近は、その不動産が将来生み出すと想定される収益の合計を、現在の価格に計算しなおすという「収益還元法」が用いられるようになってきました。当社でも収益還元法などで試算をして、収益性を最も重視しています。そこでさらに差別化するために、オーナーさんと直接お会いする際には、具体的に建築するものを提示しながら、「この立地にはこういう建物を建てることで、収益を最大限にすることができます」といったお話をします。 ――具体的な建物を提示して、オーナーにイメージを共有してもらうわけですね。 そうです。私自身、一級建築士の資格を持っていますので、不動産の建築基準などを考慮しつつ、建築可能かつ収益性の高い建物を提案することがその場でできます。この土地なら、分譲がいいのか、アパートの収益物件が適しているのか、それとも商業ビルなのか。最大限に有効活用ができる建物を想定して、収益還元法から土地の価格を算出します。 ――単純な価格についてだけではなく、コンサルタントとしてのアドバイスもオーナー側にするということですね。 オーナーさんの中には、「どうしてこの土地の価格がこの値段になるのか?」といった質問をする方も多いのですが、その質問に正確に答えることも信用にもつながると思います。よく、「こんな建物が建ちますよ」と言っていたにもかかわらず、実際には建築基準に抵触をして、「建てることができなかった」といったケースが見受けられますが、そういうことはありません。 いかに付加価値を付けるか ――他にはどんなことをされていますか? また、紹介して頂いた仲介業者に対して、通常の仲介手数料以外に、〝コンサルタントフィー〟のような形で、成功報酬をお渡しすることもあります。不動産取引は、複雑な経路をたどるものも少なくなく、仲介に2社、3社が入ることも珍しくありません。そうなると、当社に紹介をしてくれた仲介業者の方にも負担が増えてきますので、そうした面でも配慮したいと考えています。 ――それは仲介業者のインセンティブにもなりますね。 あとは細かいことですが、取引が成立して土地の測量をすることになったとき、境界杭を打ったりしますが、そうしたことも積極的にお手伝いします(笑)。大手の不動産会社ではまずやらないと思いますが、境界杭を打つ作業は、慣れていないと大変なんですよね。結構な費用もかかりますし。当社は、そういう部分の協力は惜しみません。 ――そういう努力があって、業者同士あるいはオーナーとのネットワークが広がっていくわけですね。 都内の一等地、二等地で、土地を購入して開発をしていると、「どんな会社が手がけているのか」といったことを他の不動産会社もチェックしているものです。そうした事例を増やしていくことも、ネットワークを広げることに役立ちます。そして、「あそこに紹介した方がいいかもしれない」と思ってもらえるような付加価値をいかにつけるか、という部分を見つけ出すことが大事になるのではないでしょうか。 仮審査( 不動産事業者専用 ) ご所有の不動産を担保にいくらまで融資可能かをご回答いたします。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 ノンバンクで不動産担保ローンを利用する理由とはーー不動産事業者インタビューvol.1(2) 前回は、不動産物件の仕入れにあたって、実際にどんな工夫をしているのかについて、株式会社ノアプランニングの菅野敬介さんにお話をお聞きしました。今回は、引き続き、資金調達についてお伺いしていきま...記事を読む

  • 競売を回避する「任意売却」とは?

    住宅ローンが払えない!競売を回避する「任意売却」とは?

    住宅ローンを滞納してしまうと、債権者である金融機関から一括返済を求められてしまいます。一括返済に応じられないと、最悪の場合は抵当権を実行され、競売によって相場より安い売却価格で自宅を手放すことになります。 一方で、任意売却であれば、競売よりも高値で売却できる可能性があります。この記事では、住宅ローンの債務を清算するための競売以外の売却方法である、「任意売却」について解説します。 任意売却と競売の概要 任意売却とは 任意売却とは、住宅ローンの返済が困難になったときに、債権者と債務者の間で同意し、担保不動産を売却することです。不動産が競売にかけられる前に、債務者が自分の意志で不動産を売却することから任意売却と呼ばれています。また、「任売」という略称を用いられることがあります。 競売とは 競売とは、住宅ローンや不動産担保ローンの返済が困難になった場合に、債権者の申し立てにより、裁判所を通じて担保として提供した不動産が強制的に売却される手続きです。 関連記事はこちら競売とは?競売を回避すべき理由とその回避方法 任意売却のメリット 競売と比較して、任意売却には以下のようなメリットがあります。 経済的な事情を知られずに売却できる 競売の場合、裁判所によって競売が行われることや差押えが行われたことが公示され、物件の所在地や外観などもホームページで公表されてしまいます。加えて、裁判の執行官による現地調査や落札を検討している不動産会社の物件確認などが行われるため、競売にかけられたことが周囲に知られてしまうこともあるでしょう。 一方で任意売却であれば、通常の不動産売却と同様に物件の売却を行うため、経済的な事情によって自宅を売却することを周囲に知られることはありません。 市場価格に近い値段で売却できる 競売の場合、落札価格の基準となる売却基準価額が市場価格の7~8割、さらに最低落札価格である買受可能価額は売却基準価額の8割程度で設定されるため、基本的に競売の落札価格は市場価格を下回ってしまいます。 一方で任意売却であれば、通常の不動産売却と同様に物件の売却を行うため、売り出し価格を自由に設定でき、市場価格以上の金額で売却できる可能性があります。 任意売却の注意点 任意売却を検討する場合、以下の2点に注意しましょう。 金融機関の同意がないと進められない 任意売却を行うには、債権者である金融機関の同意が前提となるため、任意売却を行う不動産会社に金融機関との交渉を依頼することになります。そこで同意が得られれば、任意売却の手続きに入ることができます なお、任意売却は競売の入札が始まっている状態でも可能ですが、そもそも不動産の売却には時間がかかります。任意売却を選択するのであれば、早い段階から不動産業者に依頼することが大切です。 必ずしも一括返済できるとは限らない 担保不動産を売却する場合、通常は売却時に債務を一括返済して抵当権を抹消する必要があります。しかし、任意売却はあくまでも「市場価格に近い価格で売却できる可能性がある」というだけで、必ずしも任意売却後にローンが完済できるわけではありません。 担保不動産を売却しても住宅ローンを完済できない時には、金融機関に抵当権抹消の承諾を得た上で売却することになります。任意売却後に残債の返済については、金融機関と話し合って返済方法や返済額の取り決めを行います。残債の返済は、債務者が分割払いなどで行います。その点は、競売による売却と変わりません。 任意売却の大まかな流れ 任意売却の大まかな流れは以下のとおりです。 不動産業者を探す 媒介契約を締結する 売却価格やスケジュールを決める 金融機関から同意を得る 販売活動開始 売買契約を締結 決済・物件の引き渡し 任意売却を行うことを決めたら、まずは任意売却の実績やかかる費用を提示してくれるかなどを確認し、信頼できる不動産業者を探しましょう。依頼する不動産業者が決まったら、媒介契約を締結します。 その後は不動産業者によって物件の査定が行われ、売却価格やスケジュールが決められます。不動産業者が債権者である金融機関との交渉し、同意を得ることができれば販売活動が開始されます。こまめに不動産業者と連絡を取り、内見の対応など、販売活動には積極的に協力しましょう。売却希望者が見つかったら、売買契約を締結します。 決済日当日に売却代金を受け取ったら、抵当権を抹消し、物件の引き渡しを行います。住宅ローンを完済できれば手続きは完了ですが、残債がある場合は引き続き返済を続けていくことになります。 まとめ 任意売却を行うことで、競売よりも有利な条件で自宅を売却できるかもしれません。任意売却を行うのであれば、可能な限り早く行動に移すことが大切です。住宅ローンの支払いを継続するのが難しいと感じたら、滞納して支払督促を受ける前に、任意売却を検討してみましょう。 自宅の売却相談はこちらから SBIシニアの住まいとお金なら、金融と不動産の両方の知識で丁寧にアドバイスいたします 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 住宅ローン返済中でも、不動産担保ローンで借り入れできる人とは? 不動産担保ローンは、住宅ローンの残高があったとしても該当する不動産を担保にして借り入れできる可能性があります。しかし、必ずしも借り入れできる訳ではありません。この記事では、住宅ローンの残高が...記事を読む

    2019.05.21自宅売却
  • 担保不動産競売までの流れをわかりやすく解説

    担保不動産競売までの流れをわかりやすく解説

    ローンの支払いを滞納すると、金融機関から「法的手続きを開始する」旨の催告書が届きます。催告書が届く段階になると、競売手続きが始まっている可能性が高いです。 この記事では、金融機関から催告書が届いてから、裁判所による競売にかけられるまでの流れを解説します。 「期限の利益喪失」後は、裁判所の競売手続きに移行 ローンの延滞によって、債務者の「期限の利益」が喪失された後は、何もしなければ、担保不動産は競売にかけられます。したがって、不動産を売却されたくなければ、競売申立ての通知が来る前に、何らかの対応をとる必要があります。 また、金融機関によっては、「代位弁済」の通知が来ることがあります。代位弁済とは、滞納をしている債務者に代わって、保証会社がローンの残高を金融機関に対して一括返済することです。代位弁済が行われた後は、債権者は金融機関から保証会社に代わります。 そのため、代位弁済の通知は保証会社から送られます。すでに期限の利益は喪失しているため、保証会社が債務者になっても、一括返済が必要であることは同じです。 なお、金融機関がすべて保証会社を利用しているとは限りません。銀行は保証会社を利用していることが多いですが、ノンバンクなどは、保証会社を利用していないことも少なくないです。当然、保証会社を利用していなければ、代位弁済の通知が送られてくることはなく、債権者は変わりません。 関連記事はこちら期限の利益とは?意味や喪失事由、注意点について解説 裁判所からの最初の通知は「差押え」 期限の利益が喪失されると、裁判所から「差押え」の通知が届きます。金融機関や保証会社などの債権者が、裁判所に担保不動産の競売の申立てをすると、裁判所が不動産を差押えしたことを債務者に知らせます。 差押えは、債権者がローンの返済を受ける権利を守るために、不動産の所有者が売却できないようにする措置といえます。裁判所が差押えをすると、不動産の登記簿謄本に登記されます。差押えの記録がある不動産は売買できず、債権者の同意なしに競売を回避できなくなります。ただし、ローンの一括返済をすれば差押えを解除することは可能です。 裁判所の差押えの後は、同じく裁判所から「担保不動産競売開始決定通知」が送られます。この通知は、債権者が申立てていた不動産の競売を、裁判所が正式に受理したことを知らせる書類です。この通知が届いた後は、競売に向けての具体的な手続きが開始されます。 裁判所の執行官による不動産の現況調査 担保不動産競売開始決定通知の後、1~2か月程度で裁判所の執行官による現況調査が行われます。現況調査とは、実際の不動産の状態を確認することで、登記簿に記載されている情報が正しいかや、周辺環境、誰が住んでいるかなどを確認する作業です。外観や室内の写真撮影や住人への聞き取りなども行われます。 この現況調査は、法的な執行力があるため、拒否することはできません。もし、室内の調査を拒めば、執行官が鍵を壊して建物の中に入ることが認められています。裁判所は、こうした現況調査の結果や、不動産鑑定士による価格の査定を参考にして、競売にかける不動産の基準価格を決めます。 競売のスケジュールの決定と不動産からの退去 現況調査から3~6か月程度経過すると、いよいよ裁判所から「競売の期間入札」が決定したという通知がきます。この通知には、担保不動産の競売に関する日程が記載されています。 競売の流れは、まず対象となる不動産の物件情報が開示される「閲覧開始日」が設定されます。そこから数週間以内に入札が開始されます。入札の終了までは最長1か月以内となっており、入札終了後、1~2週間程度で入札の結果が公表されます。そして、裁判所は、対象不動産に最も高い価格を付けた人(最高価買受人)に不動産を売却します。 入札の結果が出た後は、2か月程度で最高価買受人による代金の納付が行われます。代金の納付が行われた段階で、不動産は落札者の所有となるので、登記簿上の所有権は移転され、その不動産に居住している人がいれば退去しなければなりません。以上が、担保不動産が売却されるまでの流れとなります。 まとめ 競売にかけられて、所有権が移転するまでの間、差押えや現況調査があっても、その不動産に住み続けることは可能です。しかし、期限の利益を喪失した後は、ローンの残高を一括返済する以外に、不動産の売却を回避する方法はありません。したがって、不動産を所有し続けたいのであれば、現実的には、「期限の利益」を喪失する前までの間に、何らかの対応をとる必要があります。一方で、それは非常に短い期間となります。売却されるまで猶予がある、と考えることは禁物なのです。 自宅の売却相談はこちらから SBIシニアの住まいとお金なら、金融と不動産の両方の知識で丁寧にアドバイスいたします 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 住宅ローンが払えない!競売を回避する「任意売却」とは? 住宅ローンを滞納してしまうと、債権者である金融機関から一括返済を求められてしまいます。一括返済に応じられないと、最悪の場合は抵当権を実行され、競売によって相場より安い売却価格で自宅を手放すこ...記事を読む

    2019.05.14自宅売却
  • 「金銭消費貸借契約証書」の重要性とは?

    「金銭消費貸借契約証書」の重要性とは?

    金融機関から借入れた不動産担保ローンの返済が困難になってしまうと、担保として提供している不動産は金融機関によって売却されることになります。これは、不動産担保ローンを借入れるときの〝常識〟ですが、売却されることになった場合、実際にどんな手続きが発生するのかは、それほど知られてはいません。万が一、返済が困難になったときはもちろん、きちんと返済が終了したときにも関わる手続きが含まれていますので、4回にわたってお話しをしていきます。 不動産を担保にする権利「抵当権」 まず、不動産が担保にされたときの権利関係について、確認をしたいと思います。不動産担保ローンを融資するとき、金融機関は貸出先の不動産を担保にしますが、具体的には、「抵当権」を設定することになります。このとき、融資をする金融機関は「債権者」となり「抵当権者」になります。一方、融資を受ける方は、「債務者」となり「抵当権設定者」と呼ばれます。 抵当権は、債務者である金融機関が、担保とする不動産の登記簿謄本に登記することで完了します。登記されると、債務者がローンの返済が不可能になり(=「債務不履行」と呼ばれます)、裁判所が実施する「競売」(けいばい)などで不動産が売却された場合、優先して債務の返済を受けることができます。不動産を競売にかけることは「抵当権の実行」と呼ばれます。 なお、ローンを完済すれば抵当権を外すことができます。したがって、ローン返済期間の途中であっても、残りの借入金額と利息をすべて繰り上げ返済してしまえば、抵当権を外せることになります。何らかの理由で、返済の途中で不動産を売却することになった場合は、まず完済をしてから売却します。抵当権が設定されている不動産には、基本的には買い手はつかないからです。抵当権が残ったままだと、不動産の前の所有者が債務不履行に陥ったときには、抵当権が実行されてしまいます。 また、ローンの返済が終わったとき、抵当権は自動的に抹消される、ということはありません。登記簿に記載されている抵当権は、抹消の手続きを行わない限り残ります。ローンを完済すれば、たとえ抵当権が記載されていても、金融機関の担保からは外れるのですが、抵当権が残っていると、その不動産を売却するときにスムーズにいかないケースが出てきます。したがって、完済したときには自分で手続きを行なう必要があります(費用を支払って、司法書士に代行してもらうことも少なくありません)。 「催告書」は法的手続きの通知書 では、ローンの返済が滞納した後の流れを追っていきましょう(以下は一般的に想定されるパターンで、すべての金融機関が該当するわけではありません)。 返済日に銀行口座からの引き落としができなかった場合、金融機関は、返済日の翌日に問い合わせの電話をしてくるはずです。問い合わせの内容は、支払いができなかった理由と、いつ頃に支払いができるのかという2つに集約されます。そして、金融機関としては、この段階で、融資先が債務不履行になっている可能性を視野に入れるようになります。 電話での問い合わせ以外に、支払いを催促する「督促状」(とくそくじょう)が郵送されてきます。この督促状は、返済を求める請求書にもなっており、「このまま滞納が続くとローンの残高と支払いの遅延損害金を一括返済してもらうことになる」といったことも記載されています。 請求書が届いた後も滞納が続き、返済の予定などを示さなかった場合は、「催告書」(さいこくしょ)が郵送されてきます。督促状との違いは、催告書は請求書ではなく、通知書であることです。何を通知するのかというと、「このまま滞納が続くと法的措置をとることになる」といった内容です。この法的措置とは抵当権の実行、つまり担保不動産の売却になります。 催告書は「内容証明郵便」で郵送されることがほとんどです。内容証明郵便とは、郵便局が「確実に郵送しました」という配達の記録を証明してくれるものです。催告書は、裁判所で不動産を競売にかけるときに必要な書類であることから、内容証明郵便を使うわけです。したがって、催告書が郵送されてきたら、すでに金融機関は法的な手続きを開始した可能性が高いと予想されます。 さらに、催告書が届いた場合、ローンの支払いの遅延などの情報を管理する「個人信用情報機関」は、目安として3か月以上の返済の遅延がある人を〝ブラックリスト〟に入れると考えられるため、その前に通知をすることになります。ただし、督促状や催告書が郵送された段階で、個人の信用情報には記録が残されていると考えたほうがいいでしょう。 「金銭消費貸借契約証書」の内容を確認しておくことが大事 たまに、ローンの契約を〝軽く〟考えてしまう人がいます。何の根拠もなく、「1回くらいの延滞であれば許されるだろう」といった思い込みなどです。しかし、多くの金融機関で、ローンの契約時に交わす「金銭消費貸借契約証書」に、「返済期日を1日過ぎただけでも『期限の利益喪失』事項に該当する」と記載しています。 「期限の利益」とは聞き慣れない言葉ですが、「ローンを分割払いで返済できる」ということで契約書に記載されます。この「期限の利益」を喪失してしまうと、ローンを借りた債務者は分割払いで返済できるという権利を失うため、残高と利息分を一括して支払わなければなりません。つまり、この通知が来た段階で、債務者は滞納分の支払いだけでは済まず、一括返済しか選択肢がないことになります。そもそも、毎月の返済が困難となり滞納をするわけですから、一括返済はほぼ不可能といえるでしょう。 もし、「返済期日を1日過ぎただけでも『期限の利益喪失』事項に該当する」と記載されていれば、契約書上の返済期日を過ぎてしまうと、金融機関から、いつ法的措置を取られたとしてもおかしくはないのです。「契約書なんてどれも同じだろう」とは考えず、金銭消費貸借契約証書の内容はきちんと理解しておくことが大切なのです。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 担保不動産競売までの流れをわかりやすく解説 ローンの支払いを滞納すると、金融機関から「法的手続きを開始する」旨の催告書が届きます。催告書が届く段階になると、競売手続きが始まっている可能性が高いです。 この記事では、金融機関から催告書が...記事を読む

    2019.05.07自宅売却
  • 権利関係からみた不動産の分類について

    権利関係からみた不動産の分類について

    不動産担保の基礎知識(3)では、土地の種類には「用途的地域」という分類があることを解説しました。土地の価値を評価するには、その土地が何に使われているかという「現況」(現在の状況)に加え、周辺地域の土地の利用状況から「何の用途に使うのが合理的なのか」を考慮することが重要になります。用途的地域とは、そうした地域の用途を分類しています。 用途的地域は、法律や条例に基づいた基準ではありません。国土交通省が公表している「不動産鑑定評価基準」が定めている「種別」です。ただし、国土交通省は、国家資格として「不動産鑑定士」を所管していますので、不動産評価の基準としては法令に準ずるもの、といっていいでしょう。 そして、その不動産鑑定評価基準には、「不動産の類型」という項目があります。土地と建物からなる不動産の「権利関係」に着目して分類をしたもので、こちらは法令に基づいた基準となっています。この記事では、この不動産の類型についてお話しします。 土地の権利の「類型」は5種類ある 不動産の類型は、土地と建物に関する「権利」によって分類し、不動産の評価に役立てようというものです。類型には、土地の権利のみに着目する場合と、土地と建物の両方の権利関係をみる場合との2つのパターンがあります。まず、土地のみに着目したものについて説明しましょう。 土地だけをみるものは、不動産鑑定評価基準では「宅地」の類型といいます。ここでいう宅地とは、冒頭で述べた用途的地域に基づいたものです。したがって、一般の住居が多い「住宅地」、小売店や飲食店、雑居ビル、スーパーなどが多い「商業地」、町工場や工場が多い「工業地」などが対象となります。こうした宅地の類型には以下の5種類があります。 ①更地(さらち) 土地の上に建物がなく、土地の所有者が自由に使える状態のことです。一般的に更地というと、建物がなくて地面がむき出しの状態が思い浮かびますが、宅地の類型では、〝建物がない〟というだけではなく、③の「借地権」が付いていない土地、という意味を含んでいます。 ②建付地(たてつけち) 土地の上には建物があり、土地と建物の所有者が同じで、土地だけを評価する際の分類です。実際に評価の対象となることは、それほど多くありません。 ③借地権(しゃくちけん) 土地の所有者に賃料を支払って、土地を借りている人の権利。借りている人は「借地権者」、貸している土地の所有者は「借地権設定者」と呼ばれます。 ④底地(そこち) 賃料を受け取って土地を貸している所有者の権利。借地権を持っている人がいるため、底地の権利があっても、土地を自由には使えません。 ⑤区分地上権(くぶんちじょうけん) 他人の所有する土地の地下、あるいは、土地の上にある空間に、何らかのモノを設置する場合、設置をする側が有する権利。具体的には、地下の場合はトンネルや地下道、土地の上の空間の場合は送電線などが考えられます。借地権と同じく、区分地上権を持つ人は、土地の所有者に賃料を支払います。これを評価することも、最近はかなり減っています。 以上が宅地の類型になります。あまり聞き慣れないものがあったと思いますが、宅地には商業地や工業地が含まれているため、さまざまな様態があります。 土地と建物の権利関係には4種類ある 次は、「建物及びその敷地の類型」で、土地と建物の権利関係から分類したものです。以下、4種類があります。 ①自用(じよう)の建物及びその敷地 土地と建物の所有者が一致しているケースです(「自用」とは自家用という意味です)。具体的には、一戸建て住宅、自社ビルなどが該当します。不動産評価においては最も一般的といえるものです。 ②貸家及びその敷地 土地の所有者が賃貸アパートやマンション、貸しビルなどを建てており、その建物を他人が借りているケースです。これもお馴染みのものといえるでしょう。 ③借地権付建物 宅地の類型で触れた借地権を有する人が所有する建物が建っている状態です。具体的には、親が所有する土地に子供が家を建てているような場合です。建物が自家用か、さらに別の人へ貸しているかで、違いがあります。 ④区分所有建物及びその敷地 複数の人が建物と土地の一部分を所有している状態です。いちばんわかりやすいのは分譲マンションのオーナーです。また、ビルを共同で開発して一部を所有しているケースも該当します。 不動産評価の指針となる「種別」と「類型」 「不動産担保の基礎知識」の(3)と(4)で、不動産を評価する際の分類方法である種別と類型について解説をしてきました。この2つを用いると、例えば、評価対象となる不動産が、商店街に近接する地域にあれば種別は「商業地」、一戸建ての自宅であれば類型は「自用の建物及びその敷地」というように分類されます。 現実の不動産は、こうした種別や類型に、スムーズに当てはまらないものも少なくありません。しかし、そもそも基準がなければ、他の物件との比較や評価自体が困難になります。自分の不動産の価値を知るためにも、不動産の分類について知っておいて損はありません。 無料の仮審査を申込む ご所有の不動産を担保にいくらまで融資可能かをご回答いたします。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 不動産評価の方法と不動産価値の考え方 不動産はさまざまなポイントで評価されるのが特徴です。 また、戸建てとマンションでも資産価値の考え方は異なる場合があります。 この記事では、不動産評価のプラス面およびマイナス面で重要なポイント...記事を読む

    2019.04.23用語
  • 用途から見た土地の種類

    「用途」からみた土地の種類

    不動産は、「土地」と土地の上に建っている「建物」から構成されています。そして、土地にはさまざまな分類方法によって定義される「種類」があります。不動産を売却したり、ローンの担保とする場合、土地の価値(=価格)を算定することになりますが、その際に重要となるのは「用途的地域」という分類による種類です。この記事では、この用途的地域について説明をしていきます。 登記簿に記載されている「地目」とは? 土地の種類と聞いて、どんなものが頭に浮かびますか?「住宅地」や「農業地」、あるいは建物などが何もない地面だけの「更地」(さらち)といったものでしょうか。このように、一般的には、土地は利用されている状況によっていろいろな種類に分かれます。 ただし、土地には様々な法律や規制が存在し、それぞれの法律や規制によって利用状況の定義が異なるため、法律や規制の数と同じだけの種類があるといえます。その結果、名称は同じでも内容は微妙に違う、といったことがあり、分かりづらくなっているのです。 最も基本的な種類は、登記簿に記載されている「地目」(ちもく)でしょう。利用状況によって分類したもので、宅地・田・畑・牧場・原野・塩田・鉱泉地・池沼・山林・墓地・境内地・運河用地・水道用地・用悪水路・ため池・堤・井溝(せいこう)・保安林・公衆用道路・公園・鉄道用地・学校用地・雑種地、と合計23種類もあります。 地目は登記事項ですので、不動産登記法によって定義されている土地の種類といえます。なお、登記簿の地目は「畑」であったとしても、現在は住宅になっているなど、地目と現在の利用状況が異なっている場合は少なくありません。その場合、固定資産税などの不動産にかかる税金は、地目ではなく現在の利用状況を基にして課税されます。 土地の現況を表しているのが「用途的地域」 そこで、「現在の利用状況はどうなっているのか」といった観点から分類しているのが用途的地域になります。用途的地域は、大きく分けて「宅地地域」「農地地域」「林地地域」の3種類があります。保有している土地の周辺地域が、建物が建てられている「宅地」がほとんどであれば宅地地域となります。同じく、田んぼや畑が多ければ農地地域となります。 次に、宅地地域は、「住宅地域」「商業地域」「工業地域」「その他」の4つに分類されます。この分類は、建っている建物の種類によります。住宅が多ければ住宅地域、個人商店やスーパー、雑居ビルなどが多ければ商業地域、町工場や工場が多ければ工業地域、といった具合です。ここからさらに、住宅地域にあるのが「住宅地」、商業地域にあるのが「商業地」、工業地域にあるのが「工業地」となり、これが土地の種類となります。 ここで注意点があります。用途的地域は、都市計画法で定められている「用途地域」とは違うことです。都市計画法上の用途地域は、「第1種低層住居専用地域」や「近隣商業地域」、「準工業地域」といった区分をしており、それぞれ、土地の広さや建物の高さ、容積率などに明確な基準があります。用途的地域と用途地域は名称が酷似しているため、混同されることが多く、注意が必要です。 用途地域と比較すると、用途的地域には明確な数値による基準はありませんが、おもに以下の4つの条件が判断材料となります。 自然的条件…地理的な位置、地質や地盤などの自然環境 社会的条件…人口の状態、都市インフラや公共施設の整備状況など 経済的条件…物価や賃金の状態、雇用や消費・投資といった経済および金融活動の状況 行政的条件…土地利用や建築物に関する規制、不動産取引に関する規制など この4つの条件を総合的に考慮して、住宅地なのか商業地なのか、あるいは工業地なのかを判断することになります。 「用途的地域」の有用性について では、明確な基準がない用途的地域の分類には、どんな意味があるのでしょうか。例えば、住宅地の中に、ポツンと小さな畑がある状況をイメージしてみましょう。確かに、現在の土地の利用状況は農地かもしれません。しかし、売却するとなったときには、土地の価値は農地として算定するよりも、住宅地として算定するほうが実態に近いといえます(住宅地として算定する方が土地の価値は高くなります)。また、商業地の中に一軒家が建っているケースもよくありますが、この一軒家の土地は、住宅地としてではなく、商業地として価値を算定するのが相応しいといえます。 このように、土地の価値を算定するときは、単に登記簿上の地目や、町名などの行政区分上の地域をみるのではなく、現在の土地の利用状況を含めた周辺地域の状況全体を考慮することが不可欠といえます。売却や不動産担保ローンの融資にあたっては、まず用途的地域を把握し、その地域内にある土地の公示価格や取引の実際のケースを基にして、土地の評価をすることが大事です。そうした総合的な判断をする際に、用途的地域による分類は有効になるのです。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 権利関係からみた不動産の分類について 不動産担保の基礎知識(3)では、土地の種類には「用途的地域」という分類があることを解説しました。土地の価値を評価するには、その土地が何に使われているかという「現況」(現在の状況)に加え、周辺...記事を読む

    2019.04.16用語
  • 不動産の「抵当権」とは

    抵当権とは?根抵当権との違いや設定・抹消登記について解説

    住宅ローンなどの不動産を担保にするローンを組むためには、担保不動産に抵当権を設定しなければなりません。不動産を担保にローンを組む前に、抵当権がどういった権利かを正しく理解しておきましょう。 この記事では、抵当権と、混同しやすい根抵当権も含めて解説します。 不動産の抵当権とは 抵当権とは、金融機関(=債権者)が融資をする際、ローンを借り入れる人(=債務者)が所有する不動産に設定をする権利のことです。抵当権を設定することで、債務者がローンの返済ができなくなったときに、債権者が不動産を競売にかけて、売却代金から優先的に返済を受けられます。。なお、法律上では、お金を借り入れる債務者が「抵当権設定者」と呼ばれ、お金を貸す債権者が「抵当権者」と呼ばれます。 抵当権が設定されても、所有者はその不動産を使用することができます。住居として使っていれば住み続けることができ、賃貸物件として使っていれば、家賃収入などを得ることができます。 抵当権が実行されるとどうなる? 住宅ローンなど、不動産を担保としているローンの返済を滞納してしまうと、抵当権が実行され、競売によって担保不動産を強制的に売却されてしまいます。売却資金で住宅ローンの残債を弁済することになりますが、競売による売却価格(落札価格)は、基本的に市場価格を下回るため、最悪の場合は債務が残る恐れもあります。 競売を避ける方法として、金融機関と相談のうえで担保不動産を売却する「任意売却」があります。任意売却であれば基本的に通常の不動産取引と同じような売買が可能なので、市場価格に近い価格で売却できる可能性があります。 関連記事はこちら住宅ローンが払えない!競売を回避する「任意売却」とは? 抵当権の設定・抹消登記 抵当権の設定と抹消は、どちらも法務局で行います。それぞれ順に解説します。 抵当権の設定登記 抵当権の設定手続きは法務局が行っており、不動産の登記簿に抵当権を登記することで設定が完了します。登記すべき内容には、主に以下のようなものがあります。 債権額 債権の内容 債権者・債務者 利息 損害金 また、登記をするには「登録免許税」がかかり、その税額は融資額に0.4%の税率を掛けた額になります。融資額が1,000万円であれば登録免許税は4万円になる計算です。なお、このほかの費用としては、「抵当権設定契約書」に貼る収入印紙代や、手続きを代行する司法書士に支払う報酬などがあります。 抵当権の抹消登記 ローンの返済が終了すれば、金融機関が有する抵当権の権利は無くなります。しかし、抵当権を抹消する手続きをとらないと、登記簿には抵当権が記載されたままになります。抵当権が残ったままだと、その不動産を売却するときなど、支障が生じる恐れがあるので、速やかに抹消の手続きを取った方がよいでしょう。 抵当権の抹消は、法律上の抵当権設定者である債務者が行います。抹消の手続きについても、法務局で登記簿に「抹消したこと」を登記することが必要です。この手続きにも登録免許税がかかり、税額は不動産1件につき1,000円です。 したがって、土地と建物の抵当権を抹消するには合計で2,000円になります。なお、手続きは、司法書士に代行を依頼することが一般的ですが、抹消手続きは抵当権の設定手続きに比べると簡単なので、自分で行うこともできるでしょう。 関連記事はこちら住宅ローン完済後の手続きについて解説 根抵当権との違い 根抵当権(「ねていとうけん」と読みます)は抵当権の一種です。債務者がローンの返済ができなくなったときに、担保不動産を競売にかけて、その売却代金から優先的に返済を受けられるところは、抵当権と同じです。一方で、抵当権は〝特定〟の債権にのみ有効であるのに対して、根抵当権は〝不特定〟の債権にも有効になる点が異なります。 抵当権は1つのローン契約にのみ有効なので、そのローンが完済されれば権利は消滅します。一方、根抵当権に基づいた契約は、あらかじめ融資をする金額の上限を決めておいて、その範囲内で〝何回でも〟融資ができるようになります。したがって、根抵当権が設定されれば、1つのローンが終了しても根抵当権は消滅せず、権利は残ったままになります。 不動産担保ローンのように、複数回借りる可能性のあるローンについては、根抵当権を設定しておくことで、融資の度に登記の手続きをして抵当権を設定する、ということが避けられます。これは手間と費用(登録免許税や収入印紙代、司法書士への報酬など)の省略につながります。 「根抵当権」では「極度額」が設定される 実際の手続きなどは、抵当権とほぼ同じと考えてよいのですが、登記簿に登記する内容に違いがあります。根抵当権の場合、主に登記するのは以下の三点で、この中でも極度額が重要です。 極度額 債権の範囲 債務者・債権者等 根抵当権の極度額とは、根抵当権を設定するときに定められる担保の限度額です。あらかじめ融資額の限度を決めておいて、その範囲内なら、何回でも融資ができます。例えば、極度額が3,000万円であれば、最初に1,000万円を借り、その返済が終了する前に、追加で1,000万円を借りる、といったことが可能です。その追加で融資を受ける際、わざわざ手間と費用をかけて法務局で手続きをする必要はありません。 なお、根抵当権は、債務者と債権者の合意があれば抹消をすることができます。事業の運転資金を借り入れる場合、追加融資を受けることは珍しくありません。そうしたケースでは、融資を受ける側にとって、根抵当権は使い勝手がよいといえるでしょう。 抵当権に関するよくある質問 抵当権付きの不動産は相続できる? そもそも、団体信用生命保険(以下、団信)に加入していれば、債務者が死亡したときに支払われる保険金で残債が完済となるため、相続時点で抵当権が抹消されます。一方で、団信に加入していなかった場合は、抵当権付きの不動産を相続することになります。 抵当権付きの不動産を相続する場合、ローンの返済義務を相続人が引き継ぎます。また、相続の際には、通常の不動産と同じように相続税が課税されます。このとき、抵当権が設定されているからといって、不動産自体の相続税評価額が下がる、といったことはありませんが、相続税額を計算する際に、相続をする財産の全体から残債分を差し引くことになります。 抵当権付きの不動産は売却できる? 抵当権付きの不動産であっても、売却することは可能です。その場合、売主である債務者が、売却によって得た代金でローンを完済し、抵当権の抹消手続きを行うことになります。 抵当権はどうやって確認する? 抵当権は、登記簿謄本で確認できます。不動産登記の情報が記載されている不動産登記簿謄本のうち、権利部(乙区)というところに抵当権の内容が記載されています。詳細は以下の記事で解説しています。 関連記事はこちら登記簿謄本(登記事項証明書)とは?取得方法や記載内容を解説 まとめ 抵当権を実行されると、担保としている不動産を手放さなければならなくなります。不動産を担保にローンを組む場合は、無理のない返済が可能かを確認したうえで契約を進めるようにしましょう。また、抵当権の設定登記や抹消登記は、必要書類の準備など手間がかかります。債権者である金融機関や専門家に相談しながら、正確に手続きを進めるようにしましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 「用途」からみた土地の種類 不動産は、「土地」と土地の上に建っている「建物」から構成されています。そして、土地にはさまざまな分類方法によって定義される「種類」があります。不動産を売却したり、ローンの担保とする場合、土地...記事を読む

    2019.04.09用語