住まいとお金の知恵袋 一覧(公開日順)

  • セーフティネット住宅とは

    セーフティネット住宅とは?入居条件や費用をわかりやすく解説

    賃貸住宅は持ち家に比べて気軽に引っ越しもでき、自由度が高いのが魅力です。しかし、働いていない高齢者などは入居を断られることがあります。そこで、賃貸住宅に安心して入居するために、「セーフティネット住宅」を利用するのも選択肢です。 この記事では、セーフティネット住宅の概要や入居条件、費用について詳しく解説します。 セーフティネット住宅とは セーフティネット住宅とは、住宅セーフティネット制度に登録されている、住宅確保要配慮者(詳細は後ほど説明)の入居を拒まない賃貸住宅です。 高齢者や障がい者など、住宅の確保に配慮が必要な人は今後も増加が見込まれています。しかし、住宅セーフティネットの根幹である公営住宅は、財政的な負担が大きいことから増加が見込めない状況です。 そこで、2017年10月に、増加している民間の空き家を活用した住宅セーフティネット制度が始まりました。住宅セーフティネット制度は、以下3つの柱で成り立っています。 住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度 登録住宅の改修や入居者への経済的な支援 住宅確保要配慮者に対する居住支援 【参考】住宅セーフティネットの仕組み 出典)国土交通省「住宅セーフティネット制度について」 住宅確保要配慮者とは セーフティネット住宅は、住宅確保要配慮者が賃貸人に入居を申し込みできます。住宅確保要配慮者の範囲は以下のとおりです。 ①低額所得者(月収15.8万円(収入分位25%)以下) ②被災者(発災後3年以内) ③高齢者 ④障がい者 ⑤子ども(高校生相当まで)を養育している者 ⑥住宅の確保に特に配慮を要するものとして国土交通省令で定める者 上記⑥は、外国人や東日本大震災等の大規模災害の被災者(発災後3年以上経過)などが含まれます。 住宅確保要配慮者の厳しい現状 国土交通省の資料によると、賃貸人は住宅確保要配慮者の入居に対して以下のようなネガティブな意識を持っています。 〇住宅確保要配慮者の入居に対する賃貸人(大家等)の意識 出典)国土交通省「住宅セーフティネット制度の現状について」(P.3) 賃貸人の約7割は高齢者や障がい者の入居、賃貸人の約6割は外国人の入居に対して拒否感を抱いています。また、賃貸人が入居を制限する理由は以下のとおりです。 〇賃貸人(大家等)の入居制限の理由 出典)国土交通省「住宅セーフティネット制度の現状について」(P.3) 賃貸人は、他の入居者や近隣住民との協調性、家賃の支払い、居室内での死亡事故等に対して不安を強く感じているようです。これらの結果から、住宅確保要配慮者が一般的な賃貸住宅を利用するのは困難であり、住宅セーフティネット制度が必要とされていることが分かります。 セーフティネット住宅の登録基準 賃貸人は、セーフティネット住宅として都道府県、政令市、中核市に賃貸住宅を登録できます。主な登録基準は以下のとおりです。 ①耐震性を有すること ②住戸の床面積が原則25㎡以上であること ③家賃の額が近傍同種の住宅の家賃の額と均衡を失しないこと 共同居住型住宅(シェアハウス)については、住宅全体の面積や専用居室、共用部分について別途基準が定められています。 入居を受け入れる住宅確保要配慮者の範囲 セーフティネット住宅では、住宅確保要配慮者の受け入れが必要です。ただし、すべての住宅確保要配慮者を受け入れる必要はなく、範囲を限定して登録できます。例えば、「高齢者の入居は拒まない」「高齢者、低額所得者の入居は拒まない」といった具合です。マンションなどの集合住宅については、住戸単位での登録が可能です。 セーフティネット住宅の費用 国土交通省の資料によると、セーフティネット住宅の家賃の状況は以下のようになっています。 〇セーフティネット住宅の家賃の状況 出典)国土交通省「住宅セーフティネット制度の現状について」(P.7) 全国では家賃5~8万円、東京都では家賃6~10万円の住宅が全体の70%以上を占めています。なお、一般的な賃貸住宅に住むときと同様に、敷金や礼金が必要な場合もあります。 セーフティネット住宅の現状 2022年12月末現在、登録住宅のほとんどが共同住宅です。戸建て住宅は0.1%しかありません。戸建て住宅への入居を希望する場合、セーフティネット住宅の物件を見つけるのは難しいでしょう。また、登録住宅の空室率は2.3%となっており、既にほとんど埋まっている状態です。 住宅確保要配慮者の対象を見る限り、セーフティネット住宅の需要は高まると考えられます。現在は需給バランスが取れておらず、このままでは今後増加が見込まれる単身世帯の需要に対応できない恐れがあります。 空き家問題の解決に繋がるか 住宅セーフティネット制度は、住宅確保要配慮者への住居提供だけでなく、空き家問題の解決策としても期待されています。 セーフティネット住宅の提供は、公営のみでは限界があるので、民間の協力が不可欠です。そこで、空き家となっている住宅をセーフティネット住宅として提供することが推奨されています。 セーフティネット住宅は需要増加が見込まれているため、空き家の登録が増えれば、「要配慮者の住宅確保」と「空き家の解消」という2つの課題を同時に解決できる可能性があるといえます。 まとめ セーフティネット住宅であれば、高齢者や障がい者、子育て世帯など、住宅の確保に配慮が必要な人でも安心して入居できます。入居可能な物件は「セーフティネット住宅情報提供システム」で検索可能です。 一般的な賃貸住宅への入居が難しい場合は、セーフティネット住宅を検討してみてはいかがでしょうか。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 老人ホーム・介護施設とは?公的施設と民間施設の違いも解説 誰でも年をとると、身の回りのことができなくなったり、思ったようにできなくなったりしていきます。体が弱ってきたとき、あるいは要介護状態になったとき、自宅以外の住まいの選択肢として、どのような候...記事を読む

  • 登記情報提供サービスとは

    登記情報提供サービスとは?概要と利用料金を解説

    登記情報提供サービスは、インターネット上で登記情報を確認できるサービスです。法務局に行かなくても登記の内容を把握できるため、情報取得にかかる時間や手間を省けます。この記事では、登記情報提供サービスの概要と使い方、利用料金について解説します。 登記情報提供サービスとは 登記情報提供サービスとは、登記所が保有する登記情報を、インターネットを使用してパソコンの画面上で確認できる有料サービスです。提供される登記情報は以下のとおりです。 不動産登記情報(全部事項) 不動産登記情報(所有者事項) 地図情報 図面情報 商業・法人登記情報 動産譲渡登記事項概要ファイル情報及び債権譲渡登記事項概要ファイル情報 請求した時点における登記情報を、リアルタイムで表示、保存できます。さらに、照会番号の発行も行っています。照会番号とは、登記事項証明書の代わりに添付できる番号のことです。行政機関等へのオンライン申請等の際に照会番号を添付することで、登記情報提供サービスで取得した登記情報を登記事項証明書に代えて申請できます。 登記情報提供サービスを利用するには 登記情報提供サービスを利用するには、パソコンを用意して、ネットを利用できる環境を整えることが前提となります。スマートフォンやタブレットは動作が保証されておらず、非推奨となっているので注意が必要です。そのうえで、以下3つの利用方法があります。それぞれの概要について解説します。 ①一時利用 一時利用とは、申込手続(登記情報提供契約の締結)をすることなく、一時的に利用する方法です。一時利用者登録を行うと、クレジットカードの即時決済ですぐに利用できます。登記情報を請求できるのは、初回ログインを行った当日のみです。翌日以降のログインは、マイページの利用に限られます。マイページでは、利用実績や利用明細の確認ができます。 ②登録利用 登録利用とは、あらかじめ申込手続を行い、利用登録をしたうえで利用する方法です。個人と法人で、利用方法は異なります。 個人は、申込単位にひとつの利用者ID(登記情報を請求できるID)が交付されます。同一IDで同時に複数ログインはできないため、複数名で利用する場合は、利用する口数分の申し込みが必要です。申込手続は約1週間で、手続完了後は「登録完了通知書(利用者ID)」が交付されます。料金の支払いは、登記情報を請求する都度、クレジットカードで決済されます。 法人は、申込単位にひとつの「管理者ID」が交付されます。管理者IDでは、登記上の請求はできません。管理者IDでログインし、利用人数分(最大200名分)の利用者IDの登録を行います。申込手続は約1ヵ月で、手続完了後は「登録完了通知書(管理者ID)」が交付されます。料金の支払いは、月ごとに預金口座からの引き落としです。 ③公共電子確認 照会番号の提供を受けた公共機関が、オンライン申請等の確認時に使用する方法です。法人の利用登録と同じく、発行された管理者IDでログインし、利用者ID(最大200名分)の登録を行います。 登記情報提供サービスにかかる費用 登記情報提供サービスでは、「登録手数料」と「利用料金」がかかります。それぞれの内容と料金を紹介します。 登録手数料 登録利用の場合、利用区分に応じて以下の登録手数料がかかります。 個人登録利用…300円(273円) 法人登録利用…740円(673円) 国、地方公共団体等…560円(510円) ※登録費用の()内の料金は、消費税不課税対象者(利用者の住所等が日本国外にある場合に、消費税法の課税対象外となり消費税が課されない方)の登録費用です。 出典)登記情報提供サービス「サービス概要」 一時利用と公共電子確認の場合、登録手数料はかかりません。 利用料金 利用料金は、確認する登記情報や内容に応じて以下の利用料金がかかります。 出典)登記情報提供サービス「サービス概要」 公共電子確認の場合、利用料金はかかりません。 登記情報提供サービス利用上の注意点 登記情報提供サービスを利用する際の注意点は以下のとおりです。 受付時間に制限がある 登記情報提供サービスはインターネット上で手続きを行いますが、以下の受付時間内しか利用できません。 <登記情報提供サービスの利用時間> 平日:8:30~23:00 土日祝日:8:30~18:00 ※地図及び図面情報については平日の8:30~21:00 また、年末年始(12月29日~1月3日)は休業日となります。利用終了時間になると途中で送受信が切断されることがあるので、時間に余裕をもって利用しましょう。 法的な証明書にはならない 登記情報提供サービスでは、利用者が請求した時点において登記所が保有する登記情報を確認できますが、あくまで「閲覧」と同等のサービスです。登記事項証明書とは異なり、証明文や公印等は付加されないため、PDF形式で受領したデータを印刷しても法的な証明書にはなりません。 ただし、行政機関等へのオンライン申請等は、登録事項証明書を添付する代わりに照会番号を利用できることもあります。詳細は、申請先の行政機関等へご確認ください。 関連記事はこちら登記簿謄本(登記事項証明書)とは?取得方法や記載内容を解説 まとめ 登記情報提供サービスは、インターネット上で登記情報を確認できる便利なサービスです。法務局で書面請求するよりも費用が安く済むのもメリットです。 ただし、データを印刷しても法的な証明書として認められず、契約時などには利用できません。「登記情報の確認に限定する」「行政機関等への申請には照会番号を添付する」など、状況に応じてうまく使い分けましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 住所変更登記等の義務化はいつから?手続き方法や注意点も解説 不動産所有者の氏名や住所などに変更があった場合の、法務局での住所等の変更登記はこれまで任意でしたが、不動産登記法の改正により登記申請が義務化されることになりました。変更登記をしないと罰則を科...記事を読む

    2024.01.03制度
  • フラット35の審査基準

    フラット35の審査基準を徹底解説!

    フラット35は、住宅金融支援機構が提供する全期間固定金利の住宅ローンです。借入時に返済終了までの金利が確定するため、返済計画を立てやすく、金利変動リスクへの備えとなります。ただし、フラット35の審査基準は民間の住宅ローンとは異なります。 この記事では、フラット35の審査基準を、申込人に関する基準と住宅に関する基準に分けて解説します。 【フラット35】の審査基準:申込人に関する基準 フラット35の審査では、申込人の年齢や国籍、収入状況、信用情報などが確認されます。 年齢 フラット35は、申し込み時の年齢が満70歳未満の人が対象です。ただし、親子リレー返済を利用する場合は、満70歳以上でも申し込みできます。 親子リレー返済とは? 親子リレー返済とは、申込者本人とその後継者が2世代で住宅ローンを返済していく制度です。以下3つの要件をすべて満たす人を後継者とすれば、申込者本人の年齢が70歳以上でも申し込みできます。親子リレー返済の後継者の要件は以下のとおりです。 申込者本人の子・孫など(申込者本人の直系卑属)またはその配偶者で定期的収入のある人 申込時の年齢が満70歳未満の人 連帯債務者になる人 関連記事はこちら親子リレーローンとは?メリット・デメリットと注意点を解説 国籍 フラット35は、日本国籍であることも申込要件です。外国籍の場合、永住許可を受けている人か特別永住者の人であれば申し込みできます。 収入状況 収入状況については、年収に応じて総返済負担率(年収に占める年間合計返済額の割合)の基準が定められています。 年収400万円未満の場合:総返済負担率30%以下 年収400万円以上の場合:総返済負担率35%以下 年収は、原則として申込年度の前年の収入で確認されます。会社員は給与収入金額、自営業者などは所得金額(事業所得、不動産所得などの合計額)をもとに判断します。一定の要件を満たす場合は、申込者本人の親や子、配偶者との収入合算も可能です。 総返済負担率は、フラット35以外の住宅ローンや自動車ローン、カードローンなどの返済額も含めて計算します。 太陽光発電の売電収入を年収に合算できる 融資対象住宅に太陽光発電設備を設置する場合、一定の要件を満たすと、その設備から得られる売電収入を年収に加算できます。新築住宅の建設や購入、中古住宅の購入に併せてリフォーム工事を行う場合の融資が対象です。 年収に加算できる金額は、発電出力(kw数)に応じて上限額が設けられています。 信用情報 フラット35では、申込者の返済能力を判断するために信用情報が確認されます。具体的には、税金や他のローンの滞納などがないかを見られます。ローンの滞納歴などが信用情報に記録されていると、審査に通過しにくくなる恐れがあります。 資金使途 フラット35の資金使途は、申込者本人またはその親族が居住する新築住宅の建設や購入、中古住宅の購入に限定されます。第三者に賃貸するなど、投資用物件の取得資金には利用できません。 【フラット35】の審査基準:住宅に関する基準 フラット35は、住宅金融支援機構が定めた技術基準に適合する住宅が対象です。基準を満たしていることを証明するため、物件検査をして適合証明書を取得しなくてはなりません。取得する住宅が新築か中古かで技術基準は変わります。 新築の場合 新築住宅の主な基準項目は以下のとおりです。 戸建て マンション 接道 原則として一般の道に2m以上接すること 住宅の規模 70㎡以上 30㎡以上 住宅の企画 原則として2以上の居住室、炊事室、便所および浴室の設置 併用住宅の床面積 併用住宅の住宅部分の床面積は全体の2分の1以上 戸建型式など 木造の住宅は戸建てまたは連続建てのみ 住宅の構造 耐火構造、準耐火構造または耐久性基準に適合すること その他に、断熱構造や配管設備などの基準もあります。マンションについては、管理規約や長期修繕計画も基準項目です。新築住宅の物件検査は、以下の流れで行われます。 設計検査(工事前に設計図などを確認) 中間現場検査(工事途中に目視で確認) 竣工現場検査(工事完了後に検査済証が交付されていることを確認) 合格後、適合証明書の交付 中古の場合 中古住宅の基準項目は、上記の新築住宅と大きな差はありません。ただし、住宅の耐震性や劣化状況などが確認されます。例えば、住宅の耐震性は建築確認日が昭和56年6月1日以後であることが要件です。建築確認日が昭和56年5月31日以前の場合は、耐震評価基準に適合している必要があります。 中古住宅の物件検査では、書類審査と現地調査が行われ、合格すると適合証明書が交付されます。新築時に適合証明書を取得していても、原則として中古住宅の適合証明書の取得が必要です。 フラット35の審査が緩いと言われる理由 フラット35は「審査が緩い」と言われることがあります。その理由は、フラット35の審査では、民間の住宅ローンとは異なる審査基準が用いられるためです。主に以下3つの理由が考えられます。 審査金利が適用金利と同じ 民間の住宅ローンの審査でも、フラット35の審査でも、返済負担率が重視されます。返済負担率の計算に用いる金利は審査金利と呼ばれますが、民間の住宅ローン(変動金利型)の場合、融資後の金利上昇を考慮して、3%以上の金利が用いられます。 一方で、フラット35の場合は返済負担率の計算にも、適用金利と同じ金利が用いられます。2024年4月時点のフラット35金利は、低いところで2%前後であるため、民間の住宅ローンより返済負担率が低く計算されます。 職種を重視されない 民間の住宅ローンでは、申込者の職種は重要視されます。住宅金融支援機構によると、住宅ローンを提供する金融機関の46.8%が「職種、勤務先、雇用形態は、審査項目として重要度が増している」と回答しています。 一方で、フラット35が公表している審査基準には、職種についての記載はありません。他の基準を満たせば、原則どんな職種でも審査に影響しないでしょう。 出典)住宅金融支援機構「2023年度 住宅ローン貸出動向調査」 団体信用生命保険の加入が任意 民間の住宅ローンの多くは、団体信用生命保険(団信)の加入が申込要件となっています。仮に収入等の条件を満たしていたとしても、健康状態が原因で団信に加入できず、審査に落ちてしまう恐れもあります。 一方で、フラット35は団信加入が任意であり、団信に加入できないことで審査に落ちる心配がありません。ただし、団信に加入しないのであれば、もしものときにローン返済をどうするかを検討しておく必要があります。 まとめ フラット35の審査基準は、主に「申込人」と「住宅」の2つに分けられます。「審査が緩い」と言われることもありますが、基準を満たさないと融資を受けられません。審査基準はフラット35のホームページで公表されているので、事前に確認しておきましょう。 無料相談してみる SBIエステートファイナンスでは、フラット35を取り扱っています。まずはお気軽にご相談ください。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 フラット35Sとは?通常のフラット35との違いを解説 近年、全期間固定金利の住宅ローン「フラット35」の金利が上がっています。「今後金利がますます上昇するのでは?」と不安になり、全期間固定金利であるフラット35を利用したい一方で、既にフラット3...記事を読む

  • フラット35Sとは

    フラット35Sとは?通常のフラット35との違いを解説

    近年、全期間固定金利の住宅ローン「フラット35」の金利が上がっています。「今後金利がますます上昇するのでは?」と不安になり、全期間固定金利であるフラット35を利用したい一方で、既にフラット35の金利を高く感じており、どうするべきか迷っている人もいるかもしれません。 そういった方に知っていただきたいのが、「フラット35S」という制度です。一定の条件を満たし、この制度を利用することで、フラット35の金利を一定期間下げることができます。この記事では、フラット35Sの種類や金利、利用の条件について解説します。 フラット35Sとは フラット35Sとは、フラット35の申込者が長期優良住宅など、省エネルギー性や耐震性などを備えた質の高い住宅を取得する場合に、フラット35の借入金利を一定期間引き下げる制度です。新築住宅だけでなく、中古住宅も対象です。 住宅の基準は通常のフラット35より厳しく設定されますが、基準を満たせば金利が下がるため、返済負担の軽減が期待できます。フラット35Sは、住宅の技術基準の高い順から、「フラット35S(ZEH)」、「フラット35S(金利Aプラン)」、「フラット35S(金利Bプラン)」の3種類があります。 出典)住宅金融支援機構「【フラット35】S」 フラット35Sの金利の引下げ幅と期間 フラット35Sの金利の引下げ幅と引下げ期間は、プランによって異なります。 フラット35S(ZEH)は、当初5年間は年-0.5%、6年目から10年目までは年-0.25%の引下げとなります。対してフラット35S(金利Aプラン)は当初10年間、フラット35S(金利Bプラン)は当初5年間、それぞれ年-0.25%の引下げとなります。 なお、どのプランでも金利引下げ期間が終了したら、通常のフラット35の金利に戻ります。 フラット35Sの返済シミュレーション フラット35Sによって、返済負担はどのくらい軽減されるのでしょうか。 下表は、借入額3,000万円(融資率9割以下)、借入金利年1.80%、借入期間35年、元利均等返済、ボーナス返済なしの場合の返済シミュレーションをまとめたものです。 出典)住宅金融支援機構「【フラット35】S」 通常のフラット35と比較した総返済額の負担軽減効果は、フラット35S(ZEH)で約114万円、フラット35S(金利Aプラン)で約74万円、フラット35S(金利Bプラン)で約40万円となります。より住宅の技術基準が厳しいプランほど、総返済額の負担軽減効果も高くなります。 フラット35Sの対象となる住宅の技術基準 フラット35Sを利用するには、フラット35の技術基準に加えて、プランごとに定められた追加基準を満たす必要があります。ここでは、フラット35Sの対象住宅の主な技術基準を紹介します。 ①フラット35S(ZEH) フラット35S(ZEH)では、「断熱性能」と「一次エネルギー消費量」の基準が設定されています。断熱性能は地域の区分、一次エネルギー消費量はZEH住宅の種類(区分)に応じた基準値を満たすことが要件です。 その他にも、戸建てと戸建て以外(マンションなど)で、それぞれ適用条件が詳細に定められています。 出典)【フラット35】S(ZEH)に関する基準 ②フラット35S(金利Aプラン) フラット35S(金利Aプラン)は、以下1~5のうち、いずれか1つ以上の基準を満たす新築住宅が対象です。 断熱等性能等級5以上の住宅で、かつ、一次エネルギー消費量等級6の住宅 耐震等級3の住宅 免震建築物 高齢者等配慮対策等級4以上の住宅 長期優良住宅 中古住宅については、基準が異なります。詳しくは取扱金融機関にご確認ください。 出典)【フラット35】Sの対象となる住宅 ③フラット35S(金利Bプラン) フラット35S(金利Bプラン)は、以下1~5のうち、いずれか1つ以上の基準を満たす新築住宅が対象です。 断熱等性能等級4以上の住宅で、かつ、一次エネルギー消費量等級6の住宅 断熱等性能等級5以上の住宅で、かつ、一次エネルギー消費量等級4または等級5の住宅 耐震等級2以上の住宅 高齢者等配慮対策等級3以上の住宅 劣化対策等級3の住宅で、かつ、維持管理対策等級2以上の住宅 金利Aプランと同じく、中古住宅は基準が異なります。詳細は取扱金融機関にご確認ください。 出典)【フラット35】Sの対象となる住宅 フラット35Sの注意点 フラット35Sは金利引下げの特典を受けられますが、以下の点に注意が必要です。 予算金額次第で利用できない場合がある フラット35Sは予算が決まっており、全体の実行額が予算額に達する見込みとなった時点で受付が終了します。受付終了日は、終了する3週間前までにフラット35のホームページにて掲載されます。利用を検討している場合は、定期的に確認しておきましょう。 フラット35であれば必ず併用できるわけではない フラット35には、いくつか商品ラインナップがあります。そのうち、「フラット35(リノベ)※」はフラット35Sと併用できません。また、資金使途が借り換えの場合も利用できないので注意しましょう。 ※フラット35(リノベ)とは、中古住宅の購入とあわせて一定の要件を満たすリフォームを実施すると、フラット35の借入金利を一定期間引き下げる制度 借入期間中ずっと金利が下がるわけではない フラット35Sの金利引下げ期間は当初5~10年間です。金利引下げ期間が終了すると金利は元に戻り、その後は返済負担が大きくなります。金利が元に戻ったときに、返済が厳しくならないかを考えておく必要があります。 フラット35Sを利用すべき? フラット35を利用することが決まっている場合は、検討すべきでしょう。総返済額が減るため、一定期間金利を下げられるのは大きなメリットといえます。 ただし、フラット35Sを利用して金利を一定期間下げられたとしても、民間の金融機関の住宅ローンを固定金利で借りたほうが、総返済額が少なく済むことも考えられます。他の住宅ローンと総返済額などを比較したうえで、フラット35Sを利用するか判断することが大切です。 まとめ 一定の省エネルギー性や耐震性などを備えた住宅を購入する場合は、フラット35Sを利用することで金利が下がるかもしれません。固定金利で住宅ローンを組む場合は、銀行などのローンと比較したうえで、フラット35Sを検討してみてはいかがでしょうか。 無料相談してみる SBIエステートファイナンスでは、フラット35を取り扱っています。まずはお気軽にご相談ください。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 60歳以上のフラット35利用者が増加傾向!最新の実績調査を考察 フラット35とは、住宅金融支援機構が民間金融機関と提携して提供している全期間固定金利型の住宅ローンです。借入時に返済終了までの金利と返済額が確定するため、長期にわたる返済計画を立てやすいのが...記事を読む

  • 親子リレーローンとは

    親子リレーローンとは?メリット・デメリットと注意点を解説

    親子リレーローンは、親子二世代にわたって返済する仕組みの住宅ローン商品です。親子リレーローンを利用することで、単独でローンを組むより借入金額を増やせる可能性があります。一方で、親子リレーローンにはデメリットもあるので、仕組みを理解して利用することが大切です。 この記事では、親子リレーローンの概要やメリットとデメリット、注意点を解説します。 親子リレーローンの概要 親子リレーローンとは、主に親子で1つの住宅ローンを契約し、二世代にわたって返済していくローンです。一般的には最初に親が返済し、親が定年退職したタイミングなどで子に返済を引き継ぎます。 「親子」という名称ですが、フラット35の親子ローンなど、申込者本人の孫や、子もしくは孫の配偶者を後継者とできる場合もあります。また、新築や購入だけでなく、リフォームや住み替え、借り換えでも利用できます。 申込要件 親子リレーローンは、金融機関ごとに申込要件が設定されています。例えば、とある民間の金融機関では、以下のような申込要件が設定されています。 親子で同居している、または将来同居を予定している 子の申込時年齢が満70歳未満、完済時年齢が満80歳未満(親の完済時年齢は上限なし) 安定した継続収入がある 団体信用生命保険(団信)に加入できる 親子の同居が要件となるかは、金融機関によって異なります。例えば、住宅金融支援機構が提供するフラット35の親子リレー返済では、後継者の同居は問われません。 原則として、親子ともに安定収入があることが要件です。また、親子のどちらかが団信に加入する必要があります。金融機関によっては、親子ともに団信への加入が求められる場合もあります。申込要件は金融機関によって異なるため、事前に確認しておきましょう。 親子リレーローンのメリット 単独で住宅ローンを組む場合に比べて、親子リレーローンには以下のようなメリットがあります。 借入金額を増やせる 親子リレーローンでは、親子の収入合算で借入可能額を計算します。そのため、親または子が単独で住宅ローンを組むより借入金額を増やせます。単独で住宅ローンを申し込んだものの、借入希望額に届かなかった場合に有効です。 月々の返済額を減らせる 親子リレーローンは、親から子へ返済が引き継げます。そのため、単独借り入れでは高齢であることを理由に期間が短くなってしまう場合でも、親子リレーローンであれば、返済期間を長くすることが可能です。返済期間が長くなれば、その分月々の返済額を抑えられます。 住宅ローン控除をそれぞれで利用できる 親子リレーローンでは、住宅の持分割合や返済負担割合に応じて、親と子がそれぞれ住宅ローン控除を利用できます。例えば、住宅の持分が2分の1ずつの場合、親と子のどちらもローン年末残高の50%を基準に控除を受けられます。 なお、持分割合と返済負担割合が一致しない場合、控除を受けられる金額が変わるため注意が必要です。詳しくは、税理士などの専門家に相談しましょう。 関連記事はこちら【令和5年版】住宅ローン控除とは?取得した住宅の状況に分けて解説 親子リレーローンのデメリット 一方で、親子リレーローンには以下のようなデメリットもあります。 親が亡くなった際に子に債務が残る 親子リレーローンは、基本的に子だけが団信に加入するか、親子がそれぞれ借入金額の1/2ずつ団信に加入する場合がほとんどです。そのため、どちらの場合であっても親が先に亡くなると、子に債務が残ることになります。 加えて、親が団信に加入できないローンの場合、親が返済期間中の早い段階で亡くなってしまった場合に、子に過大な負債が残る恐れもあります。返済を引き継ぐ子に過度な負担をかけないためには、親も団信に加入できるローンを選ぶのが有効です。 他のローンが組めなくなることがある 親子リレーローンでは、返済を引き継ぐ子は連帯債務者となります。親の返済期間中も同じ返済義務を負うため、子は他のローンを組めなくなる場合があります。他のローンを組むことを想定している場合は注意が必要です。 贈与とみなされる場合がある 親子リレーローンでは、住宅の持分割合とローンの返済負担割合を一致させるのが一般的です。「子の返済を親が負担する」など、一方に有利な変更をすると贈与とみなされ、贈与税の課税対象となる恐れがあります。贈与とみなされることに不安がある場合は、返済方法について税理士などの専門家に確認しておくと安心です。 親子リレーローンの注意点 親子リレーローンを利用する場合は、以下の点に注意しましょう。 住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例が使えない 父母や祖父母から住宅の新築や取得、増改築に充てるために金銭の贈与を受けた場合、一定額まで贈与税が非課税になる特例があります。非課税限度額は、省エネ等住宅なら1,000万円、それ以外の住宅は500万円です。 しかし、親子リレーローンは親子で住宅ローンを組んで返済していくため、この贈与税の特例の適用対象外です。 相続人の間でトラブルが起きる場合がある 親子リレーローンを組む場合、住宅の親の持分は相続財産に含まれます。子(相続人)が複数いる場合、その持分を巡ってトラブルになる恐れがあるため、事前に財産の分け方などを話し合っておくことが大切です。 Appendix:フラット35の親子リレーローンは親だけで団信に加入できる デメリットで解説したとおり、基本的に親子リレーローンは、親が先に亡くなると、子に債務が残ることになります。 しかし、フラット35の親子リレーローンの場合、親が返済している間は親が単独で団信に加入できます*。つまり、親が債務を引き継ぐ前(80歳未満)に亡くなった場合、保険金によって住宅ローンを完済でき、子に債務を残さずに済みます。 ただし、もし親が80歳になっても存命である場合は、団信に加入していない状態で子に債務を引き継がなければなりません。ただ、そのタイミングで、新たに子が団信に加入することもできます*。 以上を踏まえると、フラット35の親子リレーローンは「子に債務を残さずに済む可能性がある」という点で、有効な手段と言えます。親子リレーローンを利用する場合は併せて検討しても良いでしょう。 ※健康状態によっては団信に加入できない恐れもあるので注意が必要です。 まとめ 親子リレーローンは、単独でローンを組むより借入可能額が増えるため、理想の住宅を取得しやすくなるのがメリットです。住宅ローン控除も、親と子がそれぞれ利用できます。一方で、親が返済期間中に亡くなると、子に過大な負債が残る恐れがあります。相続人が複数いる場合は、相続トラブルの原因にもなります。 親との同居を見据えて住宅を購入する場合は、仕組みやメリットとデメリットを理解したうえで、親子リレーローンを検討してみるといいでしょう。 お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 リ・バース60とは?メリット・デメリットを解説 老後生活への準備として住み替えやリフォームをする場合、まとまった資金が必要になります。しかし、高齢になると、一般的な住宅ローンやリフォームローンの審査に通りにくくなります。 このような時に活...記事を読む

  • 持ち家派が減少?

    持ち家派が減少?アンケート結果から住まいの実態を探る

    住まい選びは、暮らしに大きな影響を与えます。また、自宅は一度購入すると、そう簡単には売却や住み替えができなくなります。今後の住まいを検討する際に、他の人の考え方や動向が参考になるかもしれません。 この記事では、全国宅地建物取引業協会連合会の「2023年 住宅居住白書(全国の20歳以上の男女が調査対象)」から、住まいに関する実態と読み取れることを紹介します。 出典)全国宅地建物取引業協会連合会「2023年 住宅居住白書」 不動産は買い時か否か 「いま、不動産は買い時だと思いますか」に対する回答結果は下表のとおりです。 回答 2022年 2023年 買い時だと思う 6.4% 15.8% 買い時だと思わない 26.4% 37.0% わからない 67.2% 47.2% わからないと答えた人が20%減少し、買い時だと思う人、思わない人ともに、前年比で10%程度上昇しています。この結果から、「わからない」を除いた時に、買い時だと思う人の比率が増加していることがわかります。 まず、買い時だと思う理由として多く挙がったのは、以下の理由です。 今後住宅ローン金利が上昇しそうだから(今の金利が低いから):44.0% 不動産価値(価格)が安定または上昇しそうだから:24.9% 住宅ローン減税など住宅取得のための支援制度が充実しているから:24.6% 続いて、買い時だと思わない理由として多く挙がったのは、以下の理由です。 不動産価値(価格)が下落しそうだから:29.7% 自分の収入が不安定または減少しているから:25.4% 住宅ローン減税など税制優遇が見直されそうだから:12.5% これらの結果から、不動産価格の面では、上昇するよりも下落すると考える人が多数のようです。一方で、金利の面では、米国をはじめとする諸外国の政策金利が上昇していることもあり、「日本でも将来金利が上昇する」と予測し、金利が低い今のうちに住宅ローンを組んでおきたいと考えている人が多いようです。 収入の面については、「収入が安定しているから(買い時だと思う)」に対して、「収入が安定していないから(買い時だと思わない)」と回答する人が多くなっています。この結果から、収入への不安から不動産の購入に踏み切れない人が多いことが読み取れます。 持ち家派は賃貸派の約4倍 「あなたは「持ち家派」「賃貸派」どちらですか(現在の住まいは関係なし)」の回答結果は、持ち家派67.5%、賃貸派17.4%となりました。 <持ち家派の理由> 家賃を払い続けることが無駄に思えるから(56.8%) 落ち着きたいから(37.4%) 老後の住まいが心配だから(35.3%) 持ち家を選ぶ人は、自分のものではない賃貸住宅に家賃を払い続けることに抵抗があるようです。また、家に対して心理的、経済的な安心感を求める傾向があります。 <賃貸派の理由> 住宅ローンに縛られたくないから(45.3%) 税金や維持管理にコストがかかるから(34.3%) 不動産を所有しない身軽さがいいから(29.4%) 一方、賃貸を選ぶ人は、自由や身軽さを重視する傾向が見られます。また、固定資産税や火災保険料、修繕費などの維持管理コストにも敏感です。収入に対する不安から、多額のローンを組むことに抵抗がある人も多いと考えられます。 持ち家派は初の60%台となり、過去8年の調査で最低となりました。ただし、賃貸派も前年より減少しており、今回(2023年)から回答に「どちらともいえない」という選択肢が追加されています。それを考慮すると、全体的に大きな変化はないとも考えられます。 災害に対する意識が高まっている 災害に対する住まいの意識として、「あてはまる」と回答した結果は以下のとおりです。 築年数や構造(免震、耐震)について考えるようになった(35.2%) 緊急避難場所や防災マップ・ハザードマップを意識するようになった(35.2%) 地盤などの状況を意識するようになった(30.3%) 災害に対する意識は全体的に高く、3人に1人は免震やハザードマップ、地盤などを意識しています。 ハザードマップについて「知っている」と回答した人は83.8%で、認知度は高いようです。住んでいる地域のハザードマップを見たことがある人は、60代の75.1%に対し、20代は36.4%でした。関心度は年齢と比例して高く、若年層ほど無関心な傾向にあります。 全体的に災害への意識が高いのは、地球温暖化の影響で台風や洪水などの被害が増えていることや、日本は地震大国であり、過去に「東日本大震災」などの大地震も発生していることが理由だと考えられます。 また、宅建業法施行規則の改正により、不動産取引の重要事項説明においてハザードマップの確認が追加(2020年8月28日から施行)されたことも、意識の高まりにつながっている可能性があります。 関連記事はこちらハザードマップとは?使い方や活用ポイントを解説 介護を意識した住まい方が重視されている 「今後求めている住まい方」については、以下の回答が上位となりました。 介護が必要になっても年金の範囲内で安心して暮らし続けられる住まいの整備(26.5%) 中心市街地など利便性の高い都心居住の推進(21.2%) 職場の近くで住まう職住近接の推進(18.8%) 長寿命化の影響で、年代が上がるにつれて介護や金銭面を強く意識しており、老後を見据えて住まいを選ぶ傾向が見られます。一方で、年代が若いほど職住近接を求めており、住まい選びで通勤しやすさを重視しているようです。 関連記事はこちら老後の住まいはどうすべき?ポイントを徹底解説 空き家問題に対する意識は受動的である 少子高齢化の影響により、今後は空き家の急増が見込まれています。 空き家に関する現状調査では、「自身や家族の家が空き家になっている、または将来空き家になる可能性がある」と回答した人は35.0%です。そのうち、「話し合いをしていない」「放置、何も考えていない」と回答した人は6割を超えています。 空き家問題への対策については、補助金や税制優遇、行政からの働きかけが有効と考える人が多数を占めています。 多くの人が、空き家問題を認識しているものの、緊急性を感じておらず、問題を先送りしている人が多いのが現状です。また、「国や自治体が利用者に働きかけることで解決が見込める」と考えており、全体的に受け身の姿勢が見られます。 関連記事はこちら空き家を相続したらどうするべき?対処方法や税制特例について解説 まとめ 「持ち家か賃貸か」「住まいに何を求めるか」といったテーマは正解がなく、考え方は人それぞれです。ただし、一般消費者の動向は、自身の住まい選びの参考資料として活用できます。住まい選びで何を重視すべきか分からない場合は、本アンケートの調査結果を参考にしてみてはいかがでしょうか。 出典)全国宅地建物取引業協会連合会「2023年 住宅居住白書」 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 自宅購入はより安全で優れた不動産投資!? 不動産投資といえば、マンションやアパートを貸し出して家賃収入を得ることをイメージするのではないでしょうか。しかし、考え方によっては賃貸暮らしの家賃支出をなくし、ローンの返済とともに資産を増や...記事を読む

  • 林家さん記事Vol.2

    林家正蔵師匠が語る「現在」と「落語家仲間に言えなかった秘話」

    落語家の林家正蔵氏(60)(以下「正蔵師匠」)の自宅にお邪魔して、住まいやお金に関するお話をフリーアナウンサーの八木亜希子さんが伺いました。 この記事は、SBIシニアの住まいとお金ch(YouTubeチャンネル)で公開されている、「林家正蔵さんが抱く住まいの夢とは?師匠から視聴者へ仰天メッセージ!【MC:八木亜希子】」を元に作成しています。動画の詳細はこちらをご覧ください。 息子と弟子の線引き 正蔵師匠の息子は、林家たま平(以下「たま平氏」)として落語家の道を選んでいます。たま平氏が二ツ目に昇進した頃、正蔵師匠はたま平氏を実家から出したといいます。 『自分の収入にあった自分の家を持て』という語りぶりから、落語家であり、弟子となったたま平氏に対し、「父親」ではなく「師匠」として接していることが伝わってきました。 正蔵師匠は、楽屋で落語家親子が家の会話をしているのを見るのが嫌いだったといいます。『親子だからそんな話をしているのかもしれないけれども、弟子師匠だったら許されない。』と、息子と弟子の線引きについて自身の考え方を明かしました。こうした考え方から、『一人前、幕内に上がるまではもう絶対(家の会話を楽屋で)しない』と語りました。 林家正蔵師匠の落語との向き合い方 前名の林家こぶ平時代は、多くても年100高座くらいだったのに対し、現在は多いときで年800高座にもなっているそうです。高座数が増えたことにより、落語のことがこの歳になって色々分かってきたといいます。 正蔵師匠は、高座のセッティングを考えているとき、『(落語は)孤独な芸能だなあ』と思うそうです。 国立演芸場の高座と客席 出典)文化庁広報誌buncal(ぶんかる)「こころ安らぐ“寄席”という空間」 『(高座の上では)ごまかしがきかないですね。(中略)身の丈以上にはできないし、それ以下のものもお出しできない』といいます。そんな高座の上で「自身の喜怒哀楽をどう登場人物に乗せるのか」、「どんな落語をするのか」と、日々考えながら過ごしているそうです。 落語に関する初出しエピソード 『日々落語のことばかり考えているかなあ』と語る正蔵師匠ですが、今回のインタビューで「落語に関する初出しエピソード」を紹介してくれました。これまで落語家仲間にも内緒にしていたエピソードだといいます。 落語家仲間には『YouTube見ないでください』とまで語った衝撃のエピソードは、本編動画でぜひご確認ください。正蔵師匠から視聴者の皆様への「仰天メッセージ」も必見です。 本編動画はこちら なお、こちらの記事は前編と後編に分かれています。まだご一読いただいていない方は、ぜひ前編も併せてお楽しみください。 >前編はこちら 執筆者紹介 SBIシニアの住まいとお金 メディア部 SBIシニアの住まいとお金は、【人生100年時代を見据えて、「住まい」も「お金」も充実できる人生をサポートしたい】との思いから、60歳以上の持ち家の方を対象に「Youtubeで楽しむ」、「セミナーで学ぶ」、「専門家に相談する」の3つのサービスを運営しています。 <公式サイト> https://www.sbi-efinance.co.jp/senior/ <YouTubeチャンネル> https://www.youtube.com/@sbi_senior/

  • フラット35利用者調査

    60歳以上のフラット35利用者が増加傾向!最新の実績調査を考察

    フラット35とは、住宅金融支援機構が民間金融機関と提携して提供している全期間固定金利型の住宅ローンです。借入時に返済終了までの金利と返済額が確定するため、長期にわたる返済計画を立てやすいのが特長です。 この記事では、住宅金融支援機構の「2022年度 フラット35利用者調査」の結果から、利用実績や読み取れることを紹介します。 フラット35の利用者は減少している フラット35の融資区分別(建て方別)の利用実績は下表のとおりです。 融資区分(建て方) 2021年度 2022年度(前年比) 注文住宅 8,200件 7,355件(-10.3%) 土地付注文住宅 20,429件 16,026件(-21.6%) 建売住宅 15,574件 11,128件(-28.5%) マンション 5,397件 4,278件(-20.7%) 中古戸建 8,363件 6,559件(-21.6%) 中古マンション 7,914件 5,796件(-30.7%) 合計 65,877件 51,142件(-22.4%) 出典)住宅金融支援機構「2022年度 フラット35利用者調査」 表からわかるとおり、すべての融資区分で利用者は減少しています。2022年度の全体利用実績は、前年と比較して-22.4%の減少となりました。 フラット35の利用者が減少したのは、借入時の金利が低い「変動金利型の住宅ローン」の人気が高まっていることが理由のひとつだと考えられます。国土交通省の調査によれば、住宅ローンの新規貸出額における金利タイプ別割合の推移は下図のとおりです。 〇新規貸出額における金利タイプ別割合の推移 出典)国土交通省「令和4年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」 変動金利型の新規貸出額は上昇が続いており、令和3年(2021年)度の割合は全体の76.2%となっています。一方で、令和2年度と令和3年度の全期間固定金利型の変動を見ると、+0.4%となっており、フラット35の利用者が減少する要因の説明にはなりません。 次に、下図は民間金融機関の住宅ローン金利の推移です。 〇民間金融機関の住宅ローン金利の推移 出典)住宅金融支援機構「民間金融機関の住宅ローン金利推移(変動金利等)」 変動金利型は、固定金利型に比べて借入時の金利が低く設定されています。近年、固定金利型の住宅ローン金利は上昇傾向にありますが、変動金利型に大きな変動は見られません。 これらの結果から、金利負担の軽減を重視して、変動金利型の住宅ローンを選ぶ人が増えていると考えられます。一方で、フラット35は年間5万件を超える利用実績があるのも事実です。 変動金利型は、市場金利が上昇すると返済額が増える「金利変動リスク」があります。借入時の金利は高くても、将来の利上げの可能性を考慮し、金利や返済額が変わらないフラット35を選択する人が一定数いることが考えられます。 フラット35の主な利用者は中間層 フラット35利用者の世帯年収を確認すると、2022年度の世帯年収別の利用割合は下表のとおりです。 世帯年収 利用割合 400万円未満 19.9% 600万円未満 39.2% 800万円未満 21.5% 1,000万円未満 9.5% 1,200万円未満 4.3% 1,200万円以上 5.6% 出典)住宅金融支援機構「2022年度 フラット35利用者調査」 2022年度のフラット35利用者は、世帯年収400~800万円が全体の約6割を占めています。平均世帯年収は634万円で、前年比+26万円となりました。一部のメディアでは「フラット35は審査に通りやすい」と説明されることもありますが、実際は一定以上の世帯年収がある中間層の利用が多いことが分かります。 一方で、住宅金融支援機構による「住宅ローン利用者の実態調査【住宅ローン利用者調査(2023年4月調査)】 」によると、住宅ローン利用者の800万円超の割合が40.3%となっています。このことから、住宅ローン利用者の中では、「相対的に年収の低い層」に利用されているとも言えます。 また、2022年度のフラット35利用者は、世帯年収400万円未満の割合も約20%あります。フラット35は、総返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)などの申込要件が明確に示されています。年収が400万円未満であっても、申込要件を満たせば利用できる可能性もあることが読み取れます。 出典)住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査【住宅ローン利用者調査(2023年4月調査)】」 フラット35の融資金額は依然上昇傾向 フラット35の融資金額の推移は以下のとおりです。 出典)住宅金融支援機構「2022年度 フラット35利用者調査」 2022年度のフラット35の融資金額は、全ての融資区分において上昇しています。また、ここ10年は全体的に右肩上がりの傾向が見られます。 日本では、日銀の金融緩和政策により低金利が続いています。少ない金利負担で融資を受けられることが不動産価格の上昇を招いており、フラット35の融資金額の増加にもつながっていると考えられます。 年収倍率や総返済負担率も上昇している 融資金額が以前上昇している状況下で、フラット35の年収倍率と総返済負担率はどのように推移しているのでしょうか。まず、フラット35の融資区分別の年収倍率の推移は以下のとおりです。 出典)住宅金融支援機構「2022年度 フラット35利用者調査」 2022年度のフラット35の年収倍率は、5.7~7.7倍となりました。この10年は、全体として右肩上がりで推移しています。また、フラット35利用者の2022年度の総返済負担率の割合は下表のとおりです。 総返済負担率 割合(前年比) 10%未満 4.5%(±0.0%) 15%未満 10.6%(-0.3%) 20%未満 18.4%(-0.8%) 25%未満 22.4%(-0.9%) 30%未満 27.5%(-0.7%) 30%以上 16.6%(+2.7%) 出典)住宅金融支援機構「2022年度 フラット35利用者調査」 2022年度の平均は23.1%(前年比+0.4%)です。総返済負担率が25%以上の割合は44.1%で、ここ10年で最大となりました。 融資金額の上昇に伴い、年収倍率や総返済負担率も上昇していることが分かります。この状況から、全体的にフラット35における取扱金融機関の積極的な融資姿勢も見て取れます。 40歳以上の利用者が増加傾向 今回の実績調査で最も着目すべき点は、フラット35利用者の年齢層が大幅に変化しつつある点です。フラット35の年齢別利用者割合の推移は以下のとおりです。 出典)住宅金融支援機構「2022年度 フラット35利用者調査」 2022年度のフラット35利用者の平均年齢は42.8歳(前年度比+1.3歳)です。2020年以降、顕著に40歳代以上の利用者割合が上昇しています。利用者の高齢化が進んでいる要因には、持ち家から持ち家の住み替えの際に、フラット35を利用する人が増えていることが挙げられるかもしれません。 まとめ 調査結果を見ると、依然としてフラット35の利用者が減っており、住宅価格が上昇し、返済負担率も上昇している状況が続いていることが分かりました。一方で、今回の調査結果で特筆すべき点は、フラット35の利用者が高齢化している点です。フラット35が50代以上の住宅ローンの選択肢の一つとして台頭していることが分かりました。 住み替えたいのに住宅ローンを組む目途が立たない人は、フラット35を検討してみるのもいいかもしれません。 お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 シニアが住み替える際の4つのポイント シニア世代は、子どもの独立や退職などをきっかけに生活環境が大きく変化します。今住んでいる家がライフスタイルに合わなくなると、将来を見据えて住み替えを検討することもあるでしょう。 この記事では...記事を読む

  • ねぎし三平堂の外観(アイキャッチ)

    林家正蔵師匠が自宅「ねぎし三平堂」を語る

    落語家の林家正蔵氏(60)(以下「正蔵師匠 」)の自宅にお邪魔して、住まいやお金に関するお話をフリーアナウンサーの八木亜希子さんが伺いました。 この記事は、SBIシニアの住まいとお金ch(YouTubeチャンネル)で公開されている、「【第3弾】名門一家の風格漂うお宅を訪問!お父様は昭和の爆笑王【八木亜希子のスターお宅訪問】」と、「林家正蔵~祖父の代から受け継がれる我が家、僕には守っていく責任がある~【MC:八木亜希子】」を元に作成しています。動画の詳細はこちらをご覧ください。 「林家こぶ平」から「9代林家正蔵」へ 本編に入る前に、正蔵師匠の経歴についてご紹介します。 1962年12月1日に東京都台東区根岸で生まれた正蔵師匠は、1978年4月に父である林家三平師匠に弟子入りし、「林家こぶ平」として落語家デビューを果たします。1981年に二ツ目、1987年には真打に昇進し、落語家として活躍する一方で、テレビドラマやバラエティ番組などにも多数出演し、タレントとしても活躍しました。 2005年に9代「林家正蔵」を襲名した後は、落語家として、より精力的に活動しています。2014年には落語協会の副会長に就任し、現在も多数の寄席に出演しながら、落語の発展に尽力しています。 自宅はねぎし三平堂 正蔵師匠の自宅は、資料館「ねぎし三平堂」として開放されています。(※2023年11月1日時点では改装のため閉堂中)名門一家の風格漂う、とても立派な外観でした。 建物に入ってすぐの階段を上る途中で、昭和の爆笑王「初代林家三平師匠」の写真を発見しました。『どうもすいません』と今にも聞こえてきそうです。 階段を上った先には林家一門にまつわるたくさんの資料が展示されていました。右端に移っている高座では、実際に落語会が開かれるそうです。(※2023年11月1日時点では休止中) ▼実際に展示されていた資料の一部 本編動画では、実際に展示されている写真や実際の仕事机や仕事道具など、この記事で紹介しきれなかった資料をたくさん紹介しています。ぜひご覧ください。 本編動画はこちら 林家正蔵師匠にとって自宅とは? 最後に「正蔵師匠にとって自宅とは?」と質問し、スケッチブックに答えを書いてもらいました。 本編動画では、「正蔵師匠にとって自宅とは?」の答えはもちろん、自宅改装の失敗談やYouTube初出しエピソードなど、色々なお話を公開しています。 本編動画はこちら 執筆者紹介 SBIシニアの住まいとお金 メディア部 SBIシニアの住まいとお金は、【人生100年時代を見据えて、「住まい」も「お金」も充実できる人生をサポートしたい】との思いから、60歳以上の持ち家の方を対象に「Youtubeで楽しむ」、「セミナーで学ぶ」、「専門家に相談する」の3つのサービスを運営しています。 <公式サイト> https://www.sbi-efinance.co.jp/senior/ <YouTubeチャンネル> https://www.youtube.com/@sbi_senior/

  • 家族信託の費用

    家族信託にかかる費用・税金と相場、手続きする際の注意点を解説

    家族信託とは、財産の管理、運用、処分を家族に任せるための制度です。親の判断能力が低下した場合、子どもの判断で親の財産を運用、処分できるため、認知症対策として注目されています。家族信託をする場合、どのような費用や税金がかかるのでしょうか。 この記事では、家族信託にかかる費用や税金とその相場について解説します。 家族信託でかかる可能性がある税金 家族信託では、状況に応じて以下5つの税金がかかる場合があります。 贈与税 相続税 所得税(法人税) 固定資産税 登録免許税 それぞれ詳しく見ていきましょう。 贈与税 家族信託の場合、委託者と受益者が同じ人であれば贈与税は発生しません。しかし、委託者以外の人が受益者となった場合、財産を贈与したとみなされ、受益者に贈与税がかかります。 例えば、「父:委託者、子:受託者、母:受益者」とし、信託財産である収益不動産(信託前は父名義)の家賃収入を母(受益者)が受け取るような場合が考えられます。 相続税 家族信託では、信託財産から生じる利益を受け取る「受益者」が亡くなったときに相続が発生します。受益者の死亡によって信託契約を終了する場合は、信託財産を相続する人に相続税が課されます。受益者の死亡後も信託契約を継続する場合は、受益権を引き継ぐ人に相続税がかかります。 所得税(法人税) 信託財産から得られる収入(所得)については、受益者が所得税を納めなくてはなりません。また、受益者が受益権を売却した場合は、その利益に所得税がかかります。なお、受益者が法人であれば、法人税が発生します。 固定資産税 不動産を信託する場合、不動産の所有者が委託者から受託者に代わります。そのため、次年度からは受託者に固定資産税の納税義務が生じます。 ただし、信託契約において「固定資産税は受益者が負担する」と明記すれば、受託者の自己資金ではなく信託財産から納めることが可能です。 登録免許税 信託財産に不動産が含まれる場合、「信託による所有権移転登記」の登録免許税がかかります。 所有権移転登記は、不動産の名義人を委託者から受託者に変更するための手続きです。登録免許税額については後述します。 家族信託を手続きする場合の費用と相場 ここでは、家族信託を自分で手続きする場合と専門家に依頼した場合の費用相場を紹介します。 自分で手続きする場合の費用と相場 戸籍謄本、印鑑証明書、住民票などの資料取得費用 家族信託の手続きでは、戸籍謄本や印鑑証明書、住民票などの公的書類を取得しなくてはなりません。信託財産に不動産が含まれている場合は、登記事項証明書(登記簿謄本)も必要です。取得費用はいずれも1通につき数百円程度です。 信託口口座開設費用 家族信託では、信託財産を管理するための信託口口座を開設します。金融機関によって異なりますが、開設費用は5~10万円程度が一般的です。正確な金額は金融機関に確認しましょう。 公正証書費用 家族信託では、信託口口座を開設する際に、金融機関から公正証書で作成された信託契約書の提出を求められる場合がほとんどです。そのため、信託契約書を公正証書にする必要があります。公正証書にかかる費用は以下のとおりです。 目的の価額 手数料 100万円以下 5,000円 100万円超 200万円以下 7,000円 200万円超 500万円以下 1万1,000円 500万円超 1,000万円以下 1万7,000円 1,000万円超 3,000万円以下 2万3,000円 3,000万円超 5,000万円以下 2万9,000円 5,000万円超 1億円以下 4万3,000円 1億円超 3億円以下 4万3,000円+5,000万円ごとに1万3,000円 3億円超 10億円以下 9万5,000円+5,000万円ごとに1万1,000円 10億円超 24万9,000円+5,000万円ごとに8,000円 出典)日本公証人連合会「手数料」 信託監督人・受益者代理人への報酬 家族信託では、状況に応じて信託監督人や受益者代理人を設定する場合があります。 信託監督人:受益者のために受託者の監督を行う者 受益者代理人:受益者のために受益者の権利を行使する者 信託監督人や受益者代理人を専門家に依頼すると、月額数万円程度の費用がかかります。 登録免許税 上述したように、信託財産に不動産が含まれている場合は、信託登記の登録免許税がかかります。税額は「不動産の固定資産税評価額×0.4%」です。ただし、土地については0.3%の軽減税率が適用されます(2026年3月31日まで)。 例えば、土地3,000万円、建物2,000万円の場合の登録免許税額は、以下のとおりです。 土地:3,000万円×0.3%=9万円 建物:2,000万円×0.4%=8万円 専門家に依頼した場合の費用と相場 専門家に依頼する場合は、上記の「自分で手続きする場合の費用」に加えて、以下の費用負担が発生します。 コンサルティング費用 信託契約書の作成費用 公正証書の手続き代行費用 不動産登記の代行費用 実際にかかる費用は専門家によって異なります。依頼の際に費用をしっかりと確認することが大切です。 家族信託の「損益通算禁止」とは 租税特別措置法第41条の4の2によると、信託財産から生じた損失は、信託財産以外から生じた所得との損益通算ができません。例えば、信託された収益不動産で赤字が生じても、信託財産以外の収益不動産の所得とは損益通算できないため、税負担が増える恐れがあります。 大規模修繕などで赤字の発生が見込まれる収益不動産がある場合は、信託する前に税理士などの専門家に相談しましょう。 出典)国税庁「第41条の4の2(特定組合員等の不動産所得に係る損益通算等の特例)関係」 まとめ 家族信託は、認知症などによる判断能力の低下に備えるには有効な手段です。ただし、専門家に手続きを依頼する場合はまとまった費用がかかります。家族信託でかかる税金・費用の相場を把握したうえで、利用するかを判断しましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 家族信託とは?仕組みやメリット・デメリット、手続き方法を解説 親の判断能力が低下した場合、子どもの判断で親の財産を運用・処分することはできません。親の認知症対策としては「成年後見制度」が一般的ですが、近年では新たな財産管理方法として「家族信託」が注目さ...記事を読む