住まいとお金の知恵袋 一覧(公開日順)

  • 小規模企業共済とは?メリット・デメリットと加入までの流れを解説

    小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の経営者向けの退職金制度です。自営業の方が、国民年金以外の老後資金を準備する手段として活用できます。一方で、小規模企業共済は、状況によっては損をする恐れもあるため、加入前に仕組みを理解しておくことが大切です。 この記事では、小規模企業共済の概要やメリット・デメリット、加入すべきかどうかについて詳しく解説します。 小規模企業共済とは 小規模企業共済とは、個人事業主や小規模企業の経営者・役員を対象とした積み立てによる退職金制度です。中小企業基盤整備機構が運営しており、廃業や退職時の生活資金の準備、年金対策などに活用できます。 小規模企業共済の加入人数は2023年3月末時点で、約162万人、資産運用残高は約11兆1,313億円です。 出典)中小企業基盤整備機構「小規模企業共済(現況)」 加入資格 小規模企業共済の加入資格は、以下のとおりです。 建設業、製造業、運輸業、宿泊業、娯楽業、不動産業、農業を営み、常時使用する従業員数が20人以下の個人事業主または会社役員 卸売業、小売業、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営み、常時使用する従業員数が5人以下の個人事業主または会社役員 事業に従事する組合員数が20人以下の企業組合の役員、常時使用する従業員数が20人以下の協業組合の役員 常時使用する従業員数が20人以下で、農業経営を主とする農事組合法人の役員 常時使用する従業員数が5人以下の弁護士法人、税理士法人などの士業法人の社員 1と2に該当する場合は、個人事業主1人につき共同経営者2人まで加入できます。「常時使用する従業員」には、家族従業員と共同経営者(2人まで)は含まれません。2つ以上の業種を行っている事業主・共同経営者は、主たる事業の業種で加入します。 掛金 小規模企業共済の掛金は、積み立て途中の掛金の増減額も可能で、月額1,000円から70,000円の範囲内で、一口を500円単位で自由に設定できます。掛金の前納にも対応しており、前納すると一定割合の前納減額金を受け取れます。 納付方法は個人の預金口座からの振替で、「月払い」「半年払い」「年払い」の3つから選択できます。なお、業績悪化や災害などで掛金を払うのが難しい場合は、一時的に支払いを停止する「掛け止め」も可能です。 小規模企業共済はいつ支払われるのか 小規模企業共済に一定期間以上加入し、個人事業の廃業や会社の解散などの事態が生じた場合に、掛金額と納付月数に応じた共済金が支払われます。そして、共済金は共済事由や掛金の納付月数によって額が変わります。 共済事由 共済事由とは、共済金や解約手当金が支払われる理由のことをいいます。共済事由は以下の4種類です。 共済事由の詳細 共済事由内容 A共済事由 (共済金A) ・個人事業の廃止・個人事業主・共同経営者の死亡・個人事業の廃業に伴う共同経営者の退任・会社の解散 B共済事由 (共済金B)・老齢給付(65歳以上で180ヵ月以上の掛金納付)・会社役員の疾病・負傷・65歳以上による退任・会社役員の死亡 準共済事由 (準共済金) ・法人成り(その会社の役員に就任しなかった場合)・会社役員の退任(疾病・負傷・65歳以上・死亡・解散を除く) 解約事由 (解約手当金) ・任意解約・12ヵ月以上の掛金滞納 共済金の返戻率 共済事由によって受け取れる共済金額の割合(返戻率)は変わります。各共済事由の返戻率は以下のとおりです。 各共済事由の返戻率 納付年数A共済事由B共済事由準共済事由 5年103.6%102.4%100.0% 10年107.6%105.1%100.0% 15年111.7%107.8%100.0% 20年116.1%110.8%100.0% 30年120.8%117.0%100.0% 納付年数が長くなると返戻率が上がります。例えば、毎月1万円ずつ掛金を払った人が20年間納付した後、事業の廃止によって共済金を受け取る(A共済事由に該当する)場合、掛金合計金額の240万円に返戻率の116.1%を掛け合わせた約279万円となります。 ・上記の算式 1万円/月 × 12回 × 20年 × 116.1% = 約279万円 なお、共済事由が任意解約に該当し、納付月数が20年(240ヵ月)未満の場合、解約手当金の額は掛金合計額を下回るので注意しましょう。 共済契約者が死亡した場合 共済契約者が死亡した場合は、遺族が共済金を受給できます。請求順位は配偶者(事実婚も含む)が第一順位者で、次いで子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、その他の親族の順となります。また、法定相続と異なり、第一順位の人がすべての共済金を受給することとなります。 ただし、子以下は共済契約者の収入によって生計を維持されていた者が優先されます。小規模企業共済法に規定された受給権者が存在しない場合、共済金は支給されません。 出典)中小企業基盤整備機構「小規模企業共済 制度のしおりP11~12」 小規模企業共済のメリット 小規模企業共済には、主に以下2つのメリットがあります。 税金対策になる 納付時 小規模企業共済の掛金は全額を課税所得から控除できるので、所得税と住民税の税金対策になります。例えば、課税所得金額が400万円、掛金月額が10,000円であれば年36,500円、30,000円なら年109,500円が節税額の目安です。 自身の節税額が気になる方は、小規模企業共済制度の加入シミュレーションをお試しください。 受取時 共済金の受取方法は、「一括」「分割」「一括と分割の併用」の3種類があります。 一括で受け取る場合は「退職所得控除」、分割の場合は「公的年金等控除」が適用されるため、所得税・住民税の負担軽減が期待できます。 資金の借り入れができる 小規模企業共済の貸付制度とは、掛金納付期間に応じた貸付限度額の範囲内で事業資金などの借り入れができる制度です。「一般貸付制度」のほかに、「緊急時経営安定貸付け」「傷病災害時貸付け」なども用意されています。 一般貸付の場合、2023年8月時点では、貸付限度額は掛金の7~9割が目安で、利率は年1.5%です。経済環境の変化により資金繰りが悪化したり、病気やケガで入院したり、災害で被害を受けたりした場合は、一般貸付よりも低金利で借り入れが可能です。例えば、「緊急時経営安定貸付け」は、2023年8月時点では、利率は年0.9%です。 小規模企業共済のデメリット・注意点 小規模企業共済には、主に以下のようなデメリット・注意点もあります。 元本割れすることもある 12ヵ月未満の任意解約 小規模企業共済は、加入期間12ヵ月未満で任意解約すると掛け捨てとなります。また、掛金納付月数が6ヵ月未満の場合は、共済事由に該当しても受け取れません。そのため、小規模企業共済は、長期にわたって掛金を納付する前提で加入することが前提といえます。 20年未満の任意解約は元本割れする 小規模企業共済は、掛金納付月数が20年未満で任意解約をした場合は元本割れします。業績悪化などにより掛金の支払いが厳しい場合は、掛金の減額や掛け止めをして、できる限り任意解約を避けるほうがいいでしょう。 なお、加入期間20年未満で元本割れするのは任意解約のみです。個人事業の廃止などに該当する場合は、加入期間20年未満でも元本割れしません。 事業規模が大きいと加入できない 小規模企業共済の加入資格には、常時使用する従業員数などの要件があります。事業規模が大きく、多くの従業員がいる場合は要件を満たさないため加入できません。 掛金は事業上の損金・必要経費に算入できない 小規模企業共済の掛金は、共済契約者が自身の収入から納付する必要があります。事業上の損金や必要経費には算入できないので注意しましょう。 小規模企業共済の加入手続きの流れ 小規模企業共済の加入手続きの流れは以下のとおりです。 必要書類を準備する 書類を窓口へ提出する 中小企業基盤整備機構から書類を受け取る 必要書類のうち、「契約申込書」と「預金口座振替依頼書」の2つは中小企業基盤整備機構に資料請求すると入手できます。その他に、加入希望者の立場に応じて必要になる書類があります。 例えば、個人事業主の場合は確定申告書の控えが必要です。開業したばかりで確定申告書がない場合は開業届の控えを提出します。会社役員は履歴事項全部証明書、共同経営者は確定申告書の控えや共同経営契約書の写しなどが必要になります。 必要書類が準備できたら、金融機関の窓口などで申込手続きを行いましょう。初回の掛金を現金で支払う場合は、払込区分に応じた現金が必要です。申込日から40日程度で、中小企業基盤整備機構から「共済手帳」や「加入者のしおり」などの各種書類が届きます。 小規模企業共済に加入すべきかどうか 小規模企業共済に加入すべきかどうかは、加入年数や退職金積み立てにおける自身の価値観によって異なります。小規模企業共済では、加入期間が12か月未満の場合や、解約が20年未満の場合には元本割れのリスクが存在します。 個人事業主や経営者にとっての退職金積み立ての方法は、小規模企業共済以外にも個人型確定拠出年金(iDeCo)や自己積み立て型のNISA、民間の個人年金保険などがあります。 もし自身で運用の自由を重視する価値観を持っているならば、iDeCoやNISAの方が適しているかもしれません。逆に、支払いを行うだけで運用を専門家に任せたいのであれば、民間の保険会社が提供する年金保険が適している可能性があります。 単に「個人事業主だから」や「加入資格があるから」といった理由だけでなく、競合する商品の知識を深めた上で、総合的な観点から判断することが重要です。 関連記事はこちらiDeCo(イデコ)の仕組みとは?メリット・デメリットを解説 まとめ 小規模企業共済を利用すれば、退職金がない自営業者でも老後資金を準備できます。掛金は全額所得控除となり、もしものときは貸付制度も利用できるので、加入資格を満たすなら活用したい制度です。一方で、価値観によってはより優れていると感じる商品もあるかもしれません。視野を狭めず、ライフスタイルに合った老後資金づくりを考えてみてはいかがでしょうか。 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ 自営業の人の年金は少ない?年金対策も解説 自営業の人は、会社員に比べて年金が少ないといわれますが、具体的にはどのくらい異なるのでしょうか。年金額が異なる理由は、自営業の人と会社員では、適用される年金制度が異なるためです。年金が少ない...記事を読む

  • 賃貸用不動産を担保にローンは借りられるのか?

    賃貸用不動産を担保にローンは借りられるのか?

    自宅や賃貸用の不動産を購入する時、多くの人がローンを利用して購入するため、融資を受けられることは想像できるでしょう。しかし、所有する賃貸用不動産を担保にする場合、「果たしてローンを組めるのか」と疑問を持つ方もいるのではないでしょうか? そこでこの記事では、賃貸用不動産を担保にローンを借りる際のポイントや、事例について紹介します。 抵当権設定の有無がポイント 結論として、条件が整えば所有する賃貸用不動産を担保にローンを借りることは可能です。実際に借りる際にはいくつかのハードルがあり、まずは担保にする賃貸用不動産の抵当権設定の有無がポイントとなります。 賃貸用不動産に抵当権設定がない場合 所有する賃貸用不動産に抵当権が設定されていない(つまり、所有する賃貸用不動産を担保にした借り入れがない)場合、基本的には問題なくローンを借りることが出来るでしょう。現金で賃貸用不動産を購入した場合や、繰り上げ返済などによりローンを完済した場合であれば、資金調達の際に賃貸用不動産を担保に利用することは有効な手段の一つです。 しかし、所有する賃貸用不動産が金融機関の取り扱いエリア外である場合や、築年数が古い物件の場合は担保に利用することが難しい場合もあります。その場合は複数の金融機関に打診するなど、取り扱いが出来る金融機関を探す必要があります。 賃貸用不動産に抵当権設定がある場合 所有する賃貸用不動産に抵当権が設定されている場合、下記に該当すると借り入れが難しくなります。 金銭消費貸借契約で後順位の抵当権設定を認めていない 先順位のローン*の残債が大きい ※先順位の抵当権を設定する際に締結した金銭消費貸借契約による借り入れを指します。(以下、当コラムでは「先順位のローン」と呼称します。) 先順位のローンによっては、後順位の抵当権設定を認めていないケースが多いです。もし仮にこのようなケースで、契約を無視して後順位の抵当権を設定すれば、期限の利益の喪失事由にあたり、先順位のローンの一括返済を求められることとなります。 また、先順位のローンの残債が大きい場合にも賃貸用不動産を担保にした借り入れは難しいでしょう。例えば、2,000万円の価値の不動産に対して、先順位のローンの残債が1,500万円の場合、担保余力は500万円しかありません。このようなケースでは、金融機関に回収が難しいと判断され、融資を断られることがほとんどです。 なお、担保の掛け目については、下記のコラムで詳しく解説していますのでご覧ください。 関連記事はこちら不動産担保ローン金利の基礎知識と低金利で借りるコツ 不動産投資ローンの2番抵当でローンは借りられるのか? 上述のとおり、先順位のローンの内容と、先順位のローンの残債が少ないなどの条件を満たさなければならないため、賃貸用不動産を担保にした借り入れは基本的には難しいです。ただし、上記の条件を満たせば、2番抵当でローンを借りることは可能です。 なお、後順位の抵当権設定を禁止している場合には、先順位のローンの残債も含めた借り換えも一つの手となります。残債が少なければ、借り入れのハードルは低くなるでしょう。ただし、購入時に組む不動産投資ローンよりも金利が高くなることがほとんどであるため注意が必要です。金利や融資条件の判断が付かない場合は、借入予定の金融機関に相談してみるといいでしょう。 賃貸用不動産を担保にローンを借りる代表的な事例 上述のとおり、賃貸用不動産を担保にローンを借りることは可能です。ここでは、所有する賃貸用不動産を担保にローンを借りる代表的な事例をご紹介します。 賃貸用不動産のリフォーム資金を借りる 賃貸用不動産を長年所有していると、設備の入れ替えや建物の修繕のためにリフォームが必要です。このような修繕の際には100万円単位で資金が必要となることも珍しくないため、手元資金だけで融通するのは大きな負担となってしまうかもしれません。 このようなときに、所有する賃貸用不動産を担保にリフォーム資金を借りることで、毎月の返済負担を抑えながらリフォーム資金の調達をすることができます。 賃貸用不動産の相続資金を借りる 自身の親が所有していた賃貸用不動産を相続によって取得するケースがあるかもしれません。不動産を相続する場合には、相続財産の額が大きくなり、場合によっては多額な相続税の支払いが発生することもあるでしょう。相続時に預貯金が多く残っていれば、その預貯金で支払うこともできますが、相続財産が不動産に偏っている場合などは難しいでしょう。 このようなときに、相続する賃貸用不動産を担保に相続資金を借りることで、自身の手元資金がなくとも相続税の支払いなどに活用することができます。 賃貸用不動産を担保に不動産の購入資金を借りる 新規に不動産を購入する際に、購入資金の借入申し込みをしても、融資金が購入資金の満額ではなく、頭金が必要となるケースがあるかもしれません。すでに所有する賃貸用不動産を共同担保にすることで、不動産の購入資金を満額借りることも可能です。 また、購入不動産が金融機関の取扱対象外である場合でも、所有する不動産が取扱対象であれば、それを担保に購入資金を借りることも可能です。 まとめ この記事では賃貸用不動産を担保にした借り入れの可否や抵当権との関係を解説しました。賃貸用不動産を担保にした借り入れは可能ですが、先順位のローンの内容や、残債によって借り入れは難しいかもしれません。賃貸用不動産を担保にした借り入れを検討の際は、借入予定の金融機関に相談してみるといいでしょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 不動産投資ローンの審査はココをみる(1) 賃貸アパートやマンション等の収益物件を担保とした貸出しは、金融機関の不動産関連融資の中では主力商品のひとつです。2013年から始まったアベノミクスによって、国内の金融市場は超低金利状態に突入...記事を読む

  • 自営業の年金はいくら?年金対策も解説

    自営業の人の年金は少ない?年金対策も解説

    自営業の人は、会社員に比べて年金が少ないといわれますが、具体的にはどのくらい異なるのでしょうか。年金額が異なる理由は、自営業の人と会社員では、適用される年金制度が異なるためです。年金が少ないと老後資金が不足するため、自営業の人が生活費を確保するには、年金制度を理解した上で必要な対策を講じることが大切です。 この記事では、自営業の人がもらえる年金額や年金対策について詳しく解説します。 自営業の年金制度 自営業の人の年金は、基本的に国民年金のみです。日本に住んでいる20歳以上60歳未満の自営業の人は、国民年金の第1号被保険者に該当します。国民年金保険料は、収入や所得に関係なく1ヵ月あたり16,520円(令和5年度) で、国民年金に加入することで以下のような給付を受けられます。 老齢基礎年金 障害基礎年金 遺族基礎年金 第1号被保険者の独自給付(付加年金・寡婦年金・死亡一時金) 短期在留外国人の脱退一時金 出典)国民年金に加入することで受けられる給付の種類 なお、会社員は勤務先で厚生年金に加入します。厚生年金保険料は給与(標準報酬月額)や賞与(標準賞与額)の18.3%で、被保険者(従業員)と事業主との折半負担となっています。厚生年金には国民年金も含まれるため、基本的に会社員のほうが年金額は多いでしょう。 出典)日本年金機構「国民年金保険料」 年金制度の基礎知識 日本の年金制度は下図のような3階建て構造になっています。 図:年金制度の仕組み ※著者作成 まず、被保険者については以下のとおり3種類に分類されます。 第1号被保険者 日本国内に在住の20歳以上60歳未満の自営業者、農業者、学生および無職の人とその配偶者(厚生年金保険や共済組合等に加入しておらず、第3号被保険者でない人)。 第2号被保険者 厚生年金保険や共済組合等に加入している会社員や公務員の人(65歳以上の老齢基礎年金などを受ける権利を有している人は除く)。 第3号被保険者 第2号被保険者に扶養されている配偶者で、原則として年収が130万円未満の20歳以上60歳未満の人(厚生年金保険の加入要件にあてはまる人を除く)。 1階部分の国民年金は、日本在住の20歳以上60歳未満の人はすべて加入する公的年金のひとつで、「基礎年金」とも呼ばれます。 それに対して2階部分は、1階部分に上乗せされて支払われる公的年金で、第2号被保険者を対象とした厚生年金と、厚生年金に加入できない第1号被保険者のために創設された国民年金基金が該当します。なお、国民年金基金は任意加入であることから、3階部分と解釈される場合もあります。 3階部分は私的年金にあたり、任意で加入することによって1階、2階から更に上乗せして加入できる年金です。 出典)日本年金機構「国民年金の「第1号被保険者」、「第3号被保険者」とは何ですか。」 自営業の人の年金はいくらもらえる? 自営業の人が受け取る国民年金(老齢基礎年金)の年金額(満額)は、令和5年度で月額66,250円です。保険料の納付状況によっては、上記より少なくなります。 厚生労働省の資料によると、令和3年度の国民年金の平均年金額は月額56,479円となっています。それに対して、厚生年金の平均年金額は月額145,665円です。このように、国民年金と厚生年金では年金額に2.5倍以上の差があることがわかります。 出典) ・日本年金機構「令和5年4月分からの年金額等について」 ・厚生労働省「令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況P8、P20」 老齢基礎年金の算出方法 老齢基礎年金は、保険料の納付済期間と免除期間などを合算した受給資格期間が10年以上ある場合に65歳から支給されます。40年間(20~60歳)すべての保険料を納めると、老齢基礎年金を満額受け取れます。保険料を全額免除された期間は年金額が2分の1、半額免除は4分の3で算出します。 将来もらえる年金見込額を知りたい場合は、日本年金機構の「ねんきんネット」を利用するか、最寄りの年金事務所に確認しましょう。 出典)日本年金機構「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法」 関連記事はこちら「ねんきんネット」はこんなに便利!使い方を詳しくご紹介 自営業の人の老齢基礎年金以外の種類 公的年金等の収入金額やその他の所得が一定基準額以下の場合、生活支援を目的に以下の給付金が年金に上乗せして支給されます。(令和5年時点) 老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金 老齢年金生活者支援給付金は、以下の支給要件を満たす人に支給されます。 65歳以上の老齢基礎年金の受給者 同一世帯の全員が市町村民税非課税 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得の合計額が881,200円以下 給付額は月額5,140円を基準に、保険料納付済期間などに応じて算出されます。 障害年金生活者支援給付金 障害年金生活者支援給付金は、以下の支給要件を満たす人に支給されます。 障害基礎年金の受給者 前年の所得が4,721,000円以下 障害年金などの非課税収入は、前年の所得には含まれません。所得基準額は扶養親族の人数に応じて変動します。給付額は、障害等級1級が月額6,425円、2級が月額5,140円です。 遺族年金生活者支援給付金 遺族年金生活者支援給付金は、以下の支給要件を満たす人に支給されます。 遺族基礎年金の受給者 前年の所得が4,721,000円以下 所得基準額などの考え方は障害年金生活者支援給付金と同様で、給付額は月額5,140円です。ただし、2人以上の子が遺族基礎年金を受給している場合は、5,140円を子の人数で割った金額がそれぞれ支給されます。たとえば、3人の子が遺族基礎年金を受給している場合、1人当たりの金額は月額1,713円(5,140÷3人)です。 出典)厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」 自営業の人の年金対策、何をすればいい? 会社員より年金が少ない自営業の人は、将来に向けて何をすればよいのでしょうか。ここでは、自営業の人ができる年金対策を4つ紹介します。 国民年金基金 国民年金基金とは、自営業の人と会社員の年金額の差を解消するために創設された制度です。自営業の人(国民年金第1号被保険者)は任意で加入でき、掛金を納めた期間に応じて年金が上乗せされます。国民年金基金には以下のようなメリットがあります。 掛金は全額社会保険料控除の対象 受け取る年金も公的年金等控除の対象 遺族一時金は全額非課税 国民年金基金の掛金は全額所得控除の対象となるため、所得税や住民税が軽減されます。また、年金を受け取るときにも所得控除が適用されます。年金受取前や保障期間中に亡くなった場合は、遺族に一時金が支払われます。一方で、以下のようなデメリットもあります。 一度加入すると脱退できない(減額は可能) 死亡時に遺族一時金が掛金額を下回ることがある 国民年金基金は一度加入すると脱退できないため、加入は慎重に判断する必要があります。また、国民年金基金は国民年金法に基づいて設立されていますが、解散する可能性もあるので注意しましょう。解散する場合は、基金の解散時点での残余財産額を加入員および受給者等で分配します。その際、分配額は支払った掛金額の合計を下回ることがあります。 出典)国民年金基金「重要なお知らせ」 関連記事はこちら自営業者が加入可能な国民年金基金とは? 付加年金 付加年金とは、国民年金保険料に付加保険料(月額400円)をプラスして納付すると付加年金が上乗せされる制度です。住所地の市区町村役場で申し込みできます。付加年金のメリットは、保険料に対して受け取れる額の割合が高いことです。付加年金は「200円×付加保険料納付月数」で算出します。計算上は2年間で元が取れるため、お得な制度といえるでしょう。 付加年金のデメリットは、年金支給前に死亡すると付加保険料が戻ってこないことです。また、国民年金基金との併用ができない点にも注意が必要です。 出典)日本年金機構「付加年金」 iDeCo(個人型確定拠出年金) iDeCoとは、自分で掛金を拠出して運用を行う私的年金です。掛金は将来給付として受け取れるため、年金の不足分を補うことができます。iDeCoには以下のようなメリットがあります。 自分で運用先を決定できる 年金が上乗せされる 掛金が全額所得控除などの税制優遇がある iDeCoは、保険商品や投資信託などから自分で運用先を選べます。運用次第では、給付額を増やすことも可能です。掛金は全額所得控除で、運用益は非課税などの税制優遇も用意されています。 一方で、iDeCoは運用損が生じる場合があるのがデメリットです。運用がうまくいかなければ、給付が掛金を下回る場合があります。また、原則60歳まで掛金を引き出せないため、資金繰りにも注意が必要です。 関連記事はこちらiDeCo(イデコ)の仕組みとは?メリット・デメリットを解説 個人年金保険 個人年金保険は、保険会社が提供する保険商品です。積み立てた保険料を原資に、将来年金を受け取れます。個人年金保険には以下のようなメリットがあります。 保険料控除を受けられる 年金が上乗せされる 「生命保険契約者保護機構」によって一定の契約者保護がある 毎年40,000円を上限に、保険料控除を受けられます。保険料控除を受けることで、所得税や住民税の税金対策ができます。また、一定期間にわたって保険料を払うことで、年金の不足分を補うことが可能です。万が一保険会社が破綻した場合は、生命保険契約者保護機構によって一定の補償を受けられます。 なお、保険会社ごとの商品によって年金の受取期間や保険料が変わる点に注意しましょう。 出典)国税庁「No.1140 生命保険料控除」 それでも老後資金が不足する場合は? 前述のような対策を講じた上でも老後の生活費が不足する場合、持ち家であれば不動産が資金源となるかもしれません。自宅を担保に融資を受けたり、売却したりすることで、まとまった資金が手に入ります。具体的には、以下3つの方法があります。 不動産担保ローン 不動産担保ローンとは、不動産を担保にお金を借りることができるローンです。自宅を所有している場合、まとまった資金を準備する手段として活用できます。不動産担保ローンには以下のようなメリットがあります。 無担保のカードローンより低金利で利用できる 借入限度額が大きい(不動産評価によって億単位の借り入れも可能) 最長35年など長期間にわたって借りられる 資金使途は原則自由 関連記事はこちら不動産担保ローンとは?メリット・デメリットを解説 リースバック リースバックとは、不動産売買と賃貸借契約が一体となったサービスです。自宅をリースバック運営会社に売却後、その会社に家賃を払うことで、同じ家に住み続けることができます。リースバックには以下のようなメリットがあります。 自宅を売却した後も同じ家に住み続けられる 自宅の売却でまとまった資金が手に入る 月々の支出が定額化される 家の所有リスクを無くせる 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みやメリット・デメリットを解説 リバースモーゲージ リバースモーゲージは、自宅を担保に老後資金の融資を受けられます。毎月の支払いは利子のみで、債務者の死亡後に自宅を売却して元本を返済する仕組みです。リバースモーゲージには以下のようなメリットがあります。 自宅に住み続けながら資金を調達できる 毎月の支払いが利子のみで返済負担が少ない 関連記事はこちらリバースモーゲージとは?メリット・デメリットや仕組みを解説 自営業の年金に関するよくある質問 自分の基礎年金番号の確認方法を教えてください。 基礎年金番号は下記の書類で確認が可能です。 基礎年金番号通知書 青色の年金手帳 国民年金保険料の口座振替額通知書 国民年金保険料の納付書、領収書 年金証書 各種通知書等(年金額改定通知書、年金振込通知書等) ねんきん定期便 国民年金の保険料はいくらですか。 令和5年度は月額16,520円です。なお、国民年金の保険料は毎年見直しが行われています。 出典)日本年金機構 国民年金保険料 年金手帳や基礎年金番号通知書をなくした場合、どうすればいいのですか。 年金制度改正法(令和2年法律第40号)等の一部施行により、令和4年3月31日をもって年金手帳が廃止されたため、令和4年4月1日より基礎年金番号通知書の発行が行われます。 年金手帳から基礎年金番号通知書への切替えにともない、令和4年3月31日までに「年金手帳再交付申請書」をご提出した場合であっても、処理状況によって交付年月日が令和4年4月1日以降となるものについては、基礎年金番号通知書が発行されます。 出典)日本年金機構 基礎年金番号通知書の再交付を受けようとするとき 65歳になると年金は自動的に受けられるのですか。 年金は自動的に支払われるわけではなく、手続きが必要です。この年金を受ける手続きを決定請求といいます。国民年金の決定請求の手続きは市・区役所または町村役場の国民年金の窓口(第3号被保険者期間がある場合は年金事務所または街角の年金相談センター)で行います。65歳の誕生日が過ぎてから決定請求を行ってください。 出典)日本年金機構 国民年金に若いときから加入しています。65歳になると年金は自動的に受けられるのですか。 住所が変わった場合に何か手続きは必要ですか。 住所表示の変更のため、番地が変わった場合でも、日本年金機構にマイナンバーが収録されている人は住所変更届出は原則不要です。 日本年金機構にマイナンバーが未収録の人や住民票の住所と違う場所に住んでいる場合や、成年後見を受けている人等は、「年金受給権者 住所変更届」に、新しい住居表示、マイナンバーカードに記載されているマイナンバーまたは、年金証書に記載されている基礎年金番号と年金コード、生年月日などを記入して年金事務所または街角の年金相談センターに提出が必要です。なお、市区町村名のみの変更の場合、日本年金機構が対象の人の住所を一括して変更しますのでこの届は必要ありません。 出典) ・日本年金機構 住居表示が変わったとき。 ・日本年金機構 年金Q&A まとめ 自営業の人は国民年金のみであるため、老後の生活費を年金だけでカバーするのは難しいでしょう。ただし、国民年金基金やiDeCoなど、年金対策として利用できる制度が用意されています。将来の年金見込額を確認し、なるべく早く老後資金の準備を始めましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 小規模企業共済とは?メリット・デメリットと加入までの流れを解説 小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の経営者向けの退職金制度です。自営業の方が、国民年金以外の老後資金を準備する手段として活用できます。一方で、小規模企業共済は、状況によっては損をする恐...記事を読む

  • 老人ホーム・介護施設とは?公的施設と民間施設の違いも解説

    誰でも年をとると、身の回りのことができなくなったり、思ったようにできなくなったりしていきます。体が弱ってきたとき、あるいは要介護状態になったとき、自宅以外の住まいの選択肢として、どのような候補があるのでしょう。 この記事では、高齢者向けの住まいである、老人ホームや介護施設がどのような施設なのかを紹介します。 そもそも老人ホームと介護施設の違いは? 高齢者向け住宅について調べていると、「介護施設」と「老人ホーム」という言葉が多く使われています。高齢者向け住宅について、詳しくない人にとっては、高齢者向け住宅は「老人ホーム」と「介護施設」の2つに大別されるものと思ってしまうかもしれません。まずは、これらの言葉が何を指しているのかについて考えてみましょう。 厚生労働省では、「高齢者向け住まい・施設」といった表記はあっても、「老人ホーム」と「介護施設」と分類した表記はありません(有料老人ホームや介護保険施設という言葉は出てきます)。つまり、この2つの言葉には明確な定義があるわけではなく、一般の人でもわかりやすいように説明しているものと考えられます。 そのため、この記事内では、「老人ホーム」と「介護施設」という2つの言葉を以下のように整理します。 老人ホーム:広く高齢者が利用できる住宅・施設 介護施設:介護サービスを受けられる高齢者向けの住宅・施設 以上のように定義すると、代表的な高齢者向け住宅は以下のように整理されます。 介護施設を除く老人ホーム 施設主な設置主体入所基準認知症での入居 軽費老人ホーム(自立型)地方自治体、社会福祉法人、知事許可を受けた法人要支援1~〇 住宅型有料老人ホーム民間要支援1~〇 養護老人ホーム地方自治体、社会福祉法人-× サービス付き高齢者向け住宅民間-〇 シルバーハウジング民間-× 介護施設 施設主な設置主体入所基準認知症での入居 介護老人福祉施設地方自治体、社会福祉法人要介護3~〇 介護老人保健施設地方自治体、医療法人要介護1~〇 介護医療院地方自治体、医療法人要介護1~〇 介護療養型医療施設*地方自治体、医療法人要介護1~〇 軽費老人ホーム(介護型)地方自治体、社会福祉法人、 知事許可を受けた法人要介護1~〇 認知症対応型共同生活介護/th>民間要支援2~〇 介護付有料老人ホーム民間要支援1~〇 ※介護療養型医療施設は2023年度末で廃止 公的施設と民間施設では何が違う? 公的施設は、主な設置主体が、地方自治体や社会福祉法人、医療法人です。代表的なのは介護保険施設で、介護老人福祉施設や介護老人保健施設などがあります。その他にも、軽費老人ホーム、養護老人ホームなども公的施設です。 公的施設は、民間施設に比べて、費用が抑えられることから人気が高く、エリアによっては入居待ちも起きています。施設によっては、低所得者に対する優遇があるなどの特徴があります。 一方で、民間の老人ホームとしては、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などがあります。民間企業が運営しているため、公的施設よりサービスが充実しているものの、費用面では高めになります。 介護施設を除く老人ホーム(公的施設・民間施設) 介護サービスが必要ない「自立」の状態で利用できる老人ホームについて見ておきましょう。こちらも、概要や入所できる要介護度なども整理するとともに、公的施設と民間施設に分けてみます。 <公的施設>軽費老人ホーム(自立型ケアハウス) 軽費老人ホームは身寄りがないなど、自宅での生活が困難な人向けの福祉施設です。自立型ケアハウスは低額で利用できるバリアフリー仕様の高齢者向け施設で、要支援1以上の高齢者に生活相談や食事が提供されています。 <民間施設>住宅型有料老人ホーム 60歳以上の元気な人が入居でき、家事負担などを減らして暮らせます。介護サービスを受ける場合は、外部の事業者を利用します。「自立」で入所できる有料老人ホームにはほかに「健康型」もありますが、このタイプは要介護状態になると退去しなくてはなりません。 <公的施設>養護老人ホーム 養護老人ホームは、身寄りがない人や、経済的・環境的な理由で自宅での生活が困難な65歳以上を対象にした施設です。職員も配置されていて、社会復帰の促進や自立した生活を送れるよう必要な指導や訓練等を行っています。介護施設ではないため、要介護になると退去しなくてはなりません。 サービス付き高齢者向け住宅 60歳以上の高齢者向けの賃貸住宅で、部屋はバリアフリー化され、見守りサービスと生活相談サービスが付いています。部屋の大きさは原則25㎡以上と広めで、食事サービスや生活支援サービス(清掃、洗濯など)を提供している施設もあります。 シルバーハウジング 公営住宅やUR都市再生機構賃貸住宅などの公共賃貸住宅の一部の部屋をバリアフリー化したもので、「生活援助員」がいて、生活相談や緊急時対応などのサービスを提供してくれる施設です。食事の提供などはありません。60歳以上の単身者または夫婦での利用も可能です。 介護施設(公的施設・民間施設) 要介護認定を受けた人の選択肢となる介護施設についても、概要と、入所できる要介護度などを整理します。公的施設と民間施設に分けて考えてみましょう。 <公的施設>介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) 常時の介護を必要とし、居宅で介護を受けることが困難な高齢者に対し、入所サービスを提供する施設です。要介護3以上の人が対象ですが、首都圏を中心に入居待ちも多くなっています。 <公的施設>介護老人保健施設 病院を退院後、症状が安定している人で、在宅復帰を目指して看護や介護、リハビリを中心とした医療ケアと生活サービスを受けるための施設です。要介護1以上の人が対象で、入所期間は原則3か月程度などの条件があります。 <公的施設>介護医療院 2018年4月に新設された、医療と介護のニーズに対応するための介護保険施設。医療の必要な要介護者を対象として、医学管理や看取りなどの医療機能と、介護施設としての機能とを提供する施設です。療養機能にウエイトを置いたⅠ型と、機能訓練や必要な医療にウエイトを置いたⅡ型があり、要介護1以上の人が対象です。 <公的施設>介護療養型医療施設 治療が終わった後も、長期の療養が必要な人が医療や介護、機能訓練などを受けるための病院で、要介護1以上の人が対象です。なお、2024年3月31日の廃止が確定しています。 出典)介護療養病床・介護医療院の これまでの経緯 - 厚生労働省 <公的施設>軽費老人ホーム(介護型ケアハウス) 軽費老人ホームは低額で利用できる福祉施設。家庭環境、住宅事情等で在宅での生活が難しい高齢者に対し、生活相談や食事が提供されます。バリアフリー仕様のケアハウスのうち、「特定施設入居者生活介護」の指定を受け、外部サービスを活用した介護サービスを受けられるのが介護型ケアハウスです。 <民間施設>認知症対応型共同生活介護(グループホーム) 要支援2以上の認知症高齢者が利用できます。少人数(1ユニット5~9人、1施設3ユニットまで)で家族のように共同生活を送ります。介助を受けながら、できる範囲で家事を分担し認知症の進行を遅らせます。施設によって入居の要件や費用も異なります。 <民間施設>介護付有料老人ホーム 介護・看護スタッフ等が常駐していて、介護保険を利用した介護サービスを24時間受けることができます。重度の要介護状態でも利用でき、施設によっては「看取り」まで可能なところもあります。一方で、サービスが手厚くなるほど費用も高額になります。そのほか、医療法人が経営する医療対応型の介護付き有料老人ホームもあります。要支援1から利用することができます。 まとめ この記事では老人ホームと介護施設の違いや概要を見てきました。高齢者向け住宅を検討している場合は、それぞれの違いを確認したうえで、検討するようにしましょう。 出典)高齢者向け住まいについて 執筆者紹介 豊田 眞弓( Mayumi Toyoda ) マネー誌ライターを経て、94年より独立系ファイナンシャルプランナー。 個人相談、講演・研修講師、コラム寄稿などを行う。座右の銘は「笑う門には福もお金もやってくる」。趣味は講談、投資。 <主な著書> 「夫が亡くなったときに読む本」(日本実業出版社)、「親の入院・介護が必要になるときいちばん最初に読む本」(アニモ出版)、ほか著書多数。 終活とは?終活では何を準備すればいい? 昔に比べて平均寿命が延びて老後の期間が長くなったことから、「終活」を行う人が増えています。終活と聞くと、葬儀やお墓、相続など自分が亡くなった後のことをイメージするかもしれません。しかし、実際...記事を読む

  • 住宅ローンの審査基準は?通らない場合の対処法も紹介

    住宅ローンの審査基準は?通らない場合の対処法も紹介

    マイホームを購入するときは、住宅ローンを利用するのが一般的です。しかし、住宅ローンには審査があるので、必ず利用できるとは限りません。金融機関は、どのような基準で住宅ローンの審査を行うのでしょうか。 この記事では、住宅ローンの審査基準や通らない場合の対処法を紹介します。 住宅ローンの審査項目 国土交通省の調査によると、金融機関が融資を行う際に「考慮する」と回答した割合が高い項目(90%以上)は以下のとおりです。 完済時年齢(99.1%) 健康状態(98.2%) 担保評価(98.2%) 借入時年齢(97.8%) 年収(95.7%) 勤続年数(95.3%) 連帯保証(95.1%) 返済負担率(92.1%) 金融機関の営業エリア(91.0%) 出典)国土交通省「令和2年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書P19」 ほとんどの金融機関で年齢や健康状態、担保評価、属性(年収、勤続年数)を重視していることがわかります。上記の他に融資可能額、雇用形態、国籍、他の債務の状況・返済履歴の割合も高い傾向にあります。 また、住宅金融支援機構の調査によると、住宅ローンの本審査で「重視度が増している」と金融機関が回答した審査項目は以下のとおりです。 返済負担率(65.9%) 職種、勤務先、雇用形態(45.3%) 借入比率:(39.0%) 借入者の社会属性(30.7%) 返済途上での返済能力の変化(28.2%) 預貯金や資産の保有状況(27.5%) 担保となる融資物件の時価(12.5%) 出典)住宅金融支援機構「2020年度 住宅ローン貸出動向調査P41」 返済負担率とは、月収に対する毎月返済額の割合のことです。約65%の金融機関が返済負担率の重視度が増していると回答しており、前回調査(63.0%)よりも割合が増えています。 住宅ローンの本審査に必要な書類 住宅ローンを利用する場合、一般的な例として、以下の必要書類を用意します。 •  本人確認書類(運転免許証、パスポートなど) •  印鑑証明書(実印も) •  収入証明書(源泉徴収票や納税証明書を含む) •  預金通帳や証書 •  購入物件に関する各種資料 •  その他必要書類 本人確認書類として運転免許証やパスポート、契約の際は印鑑証明書と実印が必要です。収入証明書や納税証明書は、一定の収入があること(返済能力があること)や税金の未納がないことを証明するために用意します。加えて、購入する物件の状況を確認するための書類として不動産登記簿謄本等の資料や他に借入中のローンがある場合は返済予定表も必要になります。上記以外にも自身の状況に応じて書類が必要になる場合があります。住宅ローンの審査をスムーズに進めたい場合は事前に金融機関に確認しておきましょう。 住宅ローンの審査の流れ STEP1 事前申し込み 購入する物件が決まったら住宅ローンを取り扱っている金融機関に事前の申し込みをします。ここでは、本人確認資料や収入証明書、購入物件に関する各種資料などの書類が必要になります。なお、現在ではWebサイトで事前申し込みを受け付けている金融機関もあります。 STEP2 事前審査 事前審査の結果が出るまでの期間は金融機関によって異なりますが、一般的には3~4日程度の場合が多いようです。 STEP3 正式申し込み 事前審査に通った後、住宅ローンの正式申し込みを行います。正式申し込みにあたっては、上記にて紹介している各種書類をそろえる必要があります。こちらも事前審査と同様に、Webサイト上で申し込みを受け付けている金融機関もあります。 STEP4 本審査 本審査では、事前審査と比べて厳密な審査が行われます。そのため、審査期間も長くなります。一般的には、1~2週間程度かかる場合が多いようです。 STEP5 契約締結 本審査に通ったら、金融機関と金銭消費貸借契約を締結します。加えて、担保となる物件の土地・建物に抵当権を設定するため、抵当権設定契約書の締結も行います。 STEP6 融資実行と所有権の移転 金銭消費貸借契約の締結後、物件の引き渡し日になったら融資の実行と所有権の移転を行います。 住宅ローンの審査に通らない理由 ここでは、住宅ローンの審査に通らない理由を項目別に詳しく確認していきましょう。 年齢:借入時年齢と完済時年齢 住宅ローンでは、借入時年齢と完済時年齢に上限が設けられています。借入時年齢は65~70歳、完済時年齢は75~80歳が一般的です。そのため、高齢になるほど、審査に通過するのは難しくなります。 健康状態:団信に通るか 住宅ローンは、多くの金融機関で団体信用生命保険(団信)の加入が条件となっています。契約者に万一のことがあった場合に、保険会社から金融機関に支払われる保険金で残債を回収できるからです。 団体信用生命保険の加入は多くの金融機関で必須であるため、健康上の問題で団信に加入できないと、住宅ローンの利用は難しくなります。 収入:年収や返済比率、雇用形態、勤続年数 住宅ローンは契約者の収入から返済されるため、年収や雇用形態、勤続年数といった属性が重視されます。 一般的には、高年収の正社員で勤続年数が高いほど金融機関の評価は高くなります。一方で、低年収で勤続年数が短い会社員や収入が不安定な自営業者は、融資条件が悪くなる場合や、そもそも住宅ローンの審査に通らないことがあります。 また、年収に対する住宅ローンの返済比率は30~35%が目安です。年収に対して借入希望額が大きすぎると、審査落ちの可能性が高くなります。 個人信用情報:延滞の有無 カードローンなどの返済を延滞すると、その情報が個人信用情報に記録されてしまいます。個人信用情報は金融機関に共有されます。延滞履歴があると住宅ローン審査でマイナス評価となるため、審査に通らない原因となります。 不動産:担保評価や取扱エリア 住宅ローンの審査では、購入物件の担保評価や取扱エリアも重視されます。契約者が返済できなくなった場合、金融機関は担保物件を売却して残債を回収するので、担保評価が低いと審査に通過できないことがあります。 また、住宅ローンは金融機関によって取扱エリアが決まっているため、エリア外の場合は申込ができません。 その他 住宅ローンの審査に通らないその他の理由として、申告内容と金融機関が把握している情報に相違があることが考えられます。たとえば、「他にローンを借りているが、個人信用情報に登録されている借入金額と申込書の記載金額が異なる」といったケースです。 このようなケースでは虚偽の申告をしたとみなされ、審査落ちの原因となります。 住宅ローンの審査が通らないときの選択肢 住宅ローンの審査に通らないときは、原因によってアプローチを変えることが大切です。具体的には以下のような選択肢が考えられます。 年齢:リ・バース60やリレーローンの取扱がある金融機関 高齢で通常の住宅ローンを利用できない場合は、高齢者向けの住宅ローンが選択肢です。たとえば、リ・バース60は60歳以上の方向けの住宅ローンです。返済が利息のみで、元金は債務者が亡くなったときに担保不動産を売却して返済する仕組みになっています。 親子リレーローンとは、親子で1つの住宅ローンを契約し、二世代に渡って返済を行う制度のことです。借入期間は、後継者にあたる子どもの年齢を基に算出されるので、一般的には、親の年齢で算出される借入期間よりも長い期間に設定することができます。 関連記事はこちらリ・バース60とは?メリット・デメリットを解説 健康状態:ワイド団信や団信なしの住宅ローン 健康状態に問題がある場合は、ワイド団信や団信なしの住宅ローンが選択肢です。 ワイド団信とは、健康上の理由で一般団信に加入できない方向けに引受基準を緩和した団信です。基準は緩和されますが、住宅ローンの適用金利に一定の利率が上乗せされる点に注意しましょう。 金融機関によっては、団信なしの住宅ローンを取り扱っていることもあります。自身で一定の保証を確保できているなら、団信なしの住宅ローンを検討してもよいでしょう。 収入:収入が上がるまで待つ、連帯債務者を追加する(ペア、親子) 収入や勤続年数が原因の場合は、「基準を満たすまで待つ」という選択肢もあります。たとえば、転職したばかりで収入が下がっているなら、数年勤務すれば収入が上がり、審査に通過できるかもしれません。 また、ペアローンや親子ローンで連帯債務者を追加することで、審査に通過できる可能性もあります。 個人信用情報:滞りなく返済を行う 個人信用情報が原因の場合は、現在抱えている債務の返済を進めることが大切です。延滞の情報は5年程度で消えるため、滞りなく返済を行えば審査に通過できる可能性があります。 可能であれば、住宅ローンを申し込む前に自身の個人信用情報を確認しておくといいでしょう。個人信用情報はCIC、JICC、全国銀行個人信用情報センターで確認できます。 不動産:物件を替える、取り扱いのある金融機関を選ぶ 不動産が原因の場合は、担保評価の高い物件に替えることが選択肢となります。これから物件を探す場合は、担保評価も考慮して物件を選ぶことが大切です。営業エリアにも注意して、取り扱いのある金融機関を選びましょう。 その他 住宅ローンを申し込む際は、金融機関の質問に対して正直に答えることが大切です。万が一虚偽の回答をし、金融機関の持っている情報と異なると不信感につながり、審査落ちの原因となります。もし住宅ローンを借りられたとしても、後で嘘が判明すれば一括返済を求められてしまう場合もあります。 住宅ローンの審査は手動か?自動か? 最近の傾向として、住宅ローン審査は自動が増えています。ローン審査を自動化すれば、人件費の削減やリスク分析の精度向上などが期待できるからです。自動審査では、AI技術によって申込者の情報を分析し、スコアリング方式で審査します。 スコアリング方式とは、申込者のデータをもとに審査項目ごとに点数をつけ、その合計点で融資判断を行う方式です。国土交通省の調査によれば、金融機関のスコアリング方式の採用状況は以下のとおりです。 スコアリング方式を使って審査をしている(46.9%) スコアリング方式では審査を行っていない(53.1%) 出典)国土交通省「令和2年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書P18」 住宅ローンの審査に柔軟な対応を求めるなら、スコアリング方式で一律に審査を行っていない金融機関に相談するのも手といえます。 まとめ 住宅ローンには多くの審査項目があり、基準を満たさないと審査に通過できません。無事にマイホームを購入するためにも、住宅ローンの審査項目を理解しておきましょう。審査に通らない場合は、原因を見極めて適切に対処することが大切です。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 住宅ローンを比較する5つのポイント マイホームは、住宅ローンを利用して購入するのが一般的です。さまざまな金融機関が住宅ローンを扱っているので、どのように選べばよいかわからないのではないでしょうか。 自分に合った住宅ローンを選ぶ...記事を読む

  • 不動産の登記簿謄本とは?取得方法とその費用を紹介

    登記簿謄本(登記事項証明書)とは?取得方法や記載内容を解説

    登記簿謄本(登記事項証明書)は、登記記録の全部または一部の事項を証明する書類です。不動産の情報が記載されている「不動産登記簿謄本」と、法人の情報が記載されている「法人登記簿謄本」の2種類にわかれます。登記簿謄本には、どのようなことが書かれていて、どのように取得できるのか、詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。 この記事では、登記簿謄本の記載内容や取得方法、費用について紹介します。 登記簿謄本とは 登記簿謄本とは、上述のとおり、登記記録の全部または一部の事項を証明する書類で、不動産取引やローンを利用する際などに求められます。このような場面で、登記簿謄本ではなく「登記事項証明書」を求められることがありますが、基本的には同じ書類を指していると考えて差し支えないでしょう。 登記簿謄本も登記事項証明書も証明内容自体は同じで、作成元である登記情報の保存方法に違いがあります。登記情報は、以前まで紙で保管されていましたが、現在は電子データとして保管されるようになりました。 そのため、紙で保管されているものと電子データで保管されているものができ、紙で作成された登記用紙を複写したものを登記簿謄本、コンピュータで管理されたデータを印刷したものを登記事項証明書と呼んでいます。 出典)松山地方法務局 よくある質問「登記簿謄本と登記事項証明書の違いは?」 不動産登記簿謄本の記載内容 不動産登記の情報が記載されている書類が、不動産登記簿謄本です。不動産登記簿謄本の記載事項は、下図のように大きく4つの項目に分かれます。 出典)法務省「全部事項証明書(不動産登記)の見本」 表題部 権利部(甲区) 権利部(乙区) 共同担保目録 表題部 表題部では土地や建物の所在地や状態など、「どのような不動産であるのか」が記載されています。所在地や面積だけでなく具体的な建物の種類や構造・地番が記載されています。 権利部(甲区) 権利部は甲区と乙区に分かれます。甲区では、「だれが不動産の所有者か」が記載されています。所有者の住所や氏名・取得日などが記載されており、いつ誰が誰から不動産を相続したなどの入手の経緯まで把握できます。 権利部(乙区) 乙区では、所有権以外の権利に関しての記載がされています。たとえば、抵当権や地上権などの、その不動産にどのような権利が設定されているのかはこの部分を見ると分かります。不動産によっては、利用に制限があるため、購入前にどんな権利が設定されている不動産なのか、確認することが重要です。 共同担保目録 抵当権が複数の不動産に設定されている場合、この共同担保目録にその旨が記載されています。不動産を購入し住宅ローンを組む場合は、一般的には購入する不動産を担保として抵当権が設定されます。この時、基本的に建物と土地の両方に抵当権が設定されるので、それぞれの共同担保目録に記載されます。 関連記事はこちら不動産登記とは?概要や手続きの流れ、必要書類、費用を徹底解説 法人登記簿謄本の記載内容 法人の情報が記載されているのが、法人登記簿謄本です。法人登記簿謄本は、以下の画像のように法人に関する様々な情報が記載されています。 出典)法務省「登記事項証明書記載例1」 記載されている内容を大まかにまとめると、大きく4つの項目に分類できます。 法人の基本情報 商号や会社法人等番号だけでなく、いつから(会社成立の年月日)どこで(本店、支店の住所)何を(目的)行っている法人であるかが記載されています。加えて、公告をする方法、設置機関(取締役会、監査役会)の設置状況、法人の存続期間といった、法人の運営に関わる内容も記載されています。 株式に関する情報 株式について、単元株式数や発行可能株式総数、株式の譲渡制限に関する規定と、そもそも株券を発行するのかどうかが記載されています。加えて、発行済み株式の総数、種類、数も記載されています。法人登記簿謄本を見ることで、その法人がどのように株式を取り扱っているのかが分かるようになっています。 役員に関する情報 法人の役員(取締役、監査役等)の氏名と、役員となった年月日が記載されています。また、代表取締役のみ住所も記載されています。 登記簿謄本の取得方法と費用 不動産登記簿謄本と法人登記簿謄本は、以下の方法で取得できます。 登記所の窓口 郵送 オンライン 登記所の窓口 法務局や地方法務局・支所などの窓口で申請することで取得できます。以前は、取得する不動産の管轄地域の法務局でしか取得できませんでしたが、登記の電子化により、管轄外であっても最寄りの法務局で取得可能です。窓口申請の場合、手数料として600円が必要です。 郵送 法務局に出向けないという場合は、郵送での申請・受け取りも可能です。申請書類に記載し、手数料と返信封筒を同封し郵送すれば、返送されます。郵送の場合は、手数料として500円と返信封筒用の切手代が必要です。 オンライン オンラインでの申請であれば、いつでも申請できるので便利です。法務局のホームページから申請し、郵送か窓口受け取りで取得できます。オンラインで申請する場合、窓口で受け取る場合は480円、郵送で受け取る場合は500円と送料が必要です。郵送であれば、申請してから手数料の納付後1~2日で発送されるのが一般的です。 登記簿謄本を取得する際の注意点 登記簿謄本を取得する際に、注意すべき点がいくつかあります。不動産登記簿謄本と法人登記簿謄本に分けて紹介します。 不動産登記簿謄本の場合 いずれの申請方法であっても、取得する不動産の土地の所在地を示す「地番」が必要です。地番は普段目にしている住所表示とは異なることが多いので注意しましょう。正確な地番は、以下のような方法で調べられます。 不動産の権利書 固定資産税評価 法務局への問い合わせ ブルーマップ*の確認 なお、ブルーマップとは、株式会社ゼンリンが提供する地図帳のことで、住居表示だけでなく地番も確認できるサービスです。その他、用途地域・容積率・建ぺい率なども確認することができます。 法人登記簿謄本の場合 法人登記簿謄本を取得する場合は、必要な情報が「現在」だけでいいのか、「履歴」も必要なのかをあらかじめ確認しておくことが大切です。現在の登記情報のみ確認したい場合は「現在事項(全部)証明書」で足りますが、過去の登記情報も含めて確認したい場合は「履歴事項(全部)証明書」が必要になります。 なお、履歴事項(全部)証明書には現在の登記情報も記載されています。困った場合は履歴事項(全部)証明書を取得しておくのも手段のひとつです。 まとめ 登記簿謄本の記載内容や取得方法、費用について紹介しました。不動産登記簿謄本は不動産の状態や所有者・権利などが記載された重要な記録です。また、法人登記簿謄本は資金調達など、会社運営において重要な記録です。登記簿謄本が必要になった際には、オンラインなどを活用して準備するようにしましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 納税証明書とは?種類ごとの記載事項や取得方法などを解説 金融機関の融資や自治体のサービス、車検などを申し込むときに納税証明書が必要になることがあります。そもそも、納税証明書とはどのような書類なのでしょうか。日常生活で納税証明書が必要になる場面は多...記事を読む

    2021.10.27用語
  • 納税証明書とは?種類ごとの記載事項や取得方法などを解説

    納税証明書とは?種類ごとの記載事項や取得方法などを解説

    金融機関の融資や自治体のサービス、車検などを申し込むときに納税証明書が必要になることがあります。そもそも、納税証明書とはどのような書類なのでしょうか。日常生活で納税証明書が必要になる場面は多くないので、種類や取得方法がよくわからない人もいるでしょう。 この記事では、納税証明書の概要や種類ごとの記載事項、取得方法などについて詳しく解説します。 納税証明書とは 納税証明書とは、納付すべき税額や納付した税額、所得金額などを証明する書類です。住宅ローンの融資審査を受けたり、自治体のサービスを利用したりする際に、提出を求められることがあります。納税証明書は、証明する税金の種類(税目)によって記載事項や交付請求先が異なります。 課税証明書や所得証明書と納税証明書の違い 納税証明書と類似する書類として「課税証明書」や「所得証明書」があります。課税証明書とは、対象税目の課税額を証明する書類です。所得証明書は、1年間(1月1日~12月31日)の所得金額を証明する書類です。 一方で、納税証明書は、対象税目の課税額の納付状況を証明する書類です。そのため、納税証明書が求められる場面では、税金の納付漏れがないかを確認されます。納税証明書を求められた際に、課税証明書や所得証明書を提出しても要件を満たさないので注意しましょう。 納税証明書の種類と対象税目 納税証明書は、課税主体に応じて「国税」「県税(都税)」「市税」の3種類に分けられます。その名のとおり、国税は国、県税(都税)は都道府県、市税は市区町村が課税・徴収する税金です。国税に対して、県税(都税)と市税を合わせて「地方税」といいます。主な対象税目は、それぞれ以下のとおりです。 国税:所得税、法人税、相続税、贈与税、消費税など 県税(都税):住民税(県民税)、事業税、自動車税、不動産取得税など 市税:住民税(市民税)、固定資産税・都市計画税、軽自動車税など 納税証明書を取得する際は、対象税目を管轄する窓口に申請する必要があります。国税は現在の住所地を所轄する税務署、県税は県税事務所(都税は都税事務所)、市税は市区町村役場が窓口です。ただし、東京23区内では市町村税も都税として課税されているため、市区町村役場ではなく、一律で都税事務所で取得する点には注意が必要です。 最近では、国税はオンラインでの交付請求にも対応しています。地方税は、マイナンバーカードを利用したコンビニ交付サービスに対応している自治体もあります。詳しくは、居住地の自治体のホームページを確認しましょう。 出典) ・財務省「税金には、どういった種類のものがありますか」 ・東京都主税局 納税証明書の記載事項(国税) 国税の納税証明書は、税目や証明内容によって「その1」「その2」といった名称で分類がされます。国税の納税証明書の種類と主な記載事項は下表のとおりです。 国税の納税証明書の種類と主な記載事項 納税証明書の種類証明内容 その1納付すべき税額、納付した税額及び未納税額等 その2所得金額(所得税、復興特別所得税、法人税) その3未納税額がないこと その3の2所得税、復興特別所得税、消費税・地方消費税(個人用) その3の3法人税、消費税・地方消費税(法人用) その4証明期間に滞納処分を受けたことがないこと 国税は、税目や証明内容によって納税証明書の種類が変わります。そのため、国税の納税証明書が必要な場合は、証明内容に応じた納税証明書の種類を選ぶ必要があります。融資の際などに書類を求められた場合、取得書類を間違えてしまうと再取得が必要となるため、取得の前に必ず確認しておきましょう。 出典)国税庁「[手続名]納税証明書の交付請求手続」 納税証明書の取得方法(国税) 国税の納税証明書は、オンラインで請求する方法と、書面(納税証明書交付請求書)で請求する方法の2つがあります。どちらの場合でも、現在の住所地を所轄する税務署が請求先です。 交付請求の際は、手数料が必要です。請求方法、納税証明書の種類によって金額が異なるので注意しましょう。必要な金額は下表のとおりです。 証明書の種類オンラインで請求書面で請求 その1・その2税目数×年度数×枚数×370円税目数×年度数×枚数×400円 その3・その4枚数×370円枚数×400円 上記の金額を、オンラインで請求する場合は電子納付、窓口や郵送など、書面で請求する場合は収入印紙で納付します。ただし、証明書を窓口で直接受け取る場合は現金での納付も可能です。 また、交付請求の際は本人確認書類も必要となります。個人の場合は個人番号確認書類も必要となるので忘れず用意しましょう。 出典) ・国税庁「平成28年1月から、納税証明書交付請求時の本人確認書類が変わります」 ・国税庁「納税証明書を請求される方へ」 納税証明書の記載事項(都税・県税) 東京都が課税・徴収している各税目について、納付すべき税額や納付した税額、未納額などが証明されます。主な記載項目は以下のとおりです。 納税義務者の住所(所在地) 氏名(名称) 税目 年度 課税額 未納額 課税事務所等 ここでは、都税について説明していますが、道府県が発行する納税証明書も記載事項に大きな違いはありません。 都税の納税証明書は、当年度分を含めて6年度分を発行できます。証明書に納付日の記載はありません。また、「未納税額がないことの証明」や「完納証明」という名目の証明書は東京都主税局では発行していないため、納税証明書で代用する必要があります。 なお、都で発行している「滞納処分を受けたことがないことの証明」は、「未納がないことの証明」にはならないので注意しましょう。 出典)東京都主税局「よくあるお問合せ」 自動車税の納税証明書 自動車税は、都道府県が課税・徴収する税金です。車検を受ける際は、運輸支局・自動車検査登録事務所にて納税確認を電子的に行えるようになったため、平成27年4月から、車検時の自動車税納税証明書の提示が省略可能になりました。一方で、自動車税の納付間もない場合など、納付してからすぐに車検を受けるときなどには、紙の納税証明書が必要な場合があります。 自動車税の納税通知書は、金融機関やコンビニで納付して領収日付印が押されると「納税証明書」として利用できます。納税証明書には、自動車登録番号や車体番号などが記載されています。紛失等で納税証明書の再交付を希望する場合は、都道府県の自動車税事務所の窓口などで申請が可能です。 出典) ・東京都主税局「よくあるお問合せ」 ・千葉県「車検のとき、納税証明書がいらなくなったと聞きましたが。」 納税証明書の取得方法(都税・県税) 都税や県税の納税証明書も、オンラインで請求する方法と、書面(納税証明書交付請求書)で請求する方法の2つがあります。どちらの場合でも、現在の住所地を所轄する都道府県税事務所が請求先です。 交付請求の際は、手数料が必要です。国税の納税証明書とは異なり、請求方法等によらず一律で1税目につき400円です。また、国税の納税証明書とは異なり、収入印紙での支払いができない点にも注意しましょう。例えば、郵送で申請する場合は収入印紙ではなく定額小為替を用意する必要があります。 出典) ・東京都主税局「各証明の申請について」 ・東京都主税局「都税に関する証明等申請時の「本人確認」方法について」 納税証明書の記載事項(市税) 市区町村が課税・徴収する税金について、納付すべき金額や納付した税額が証明されます。たとえば、横浜市の納税証明書には以下の事項が記載されています。 納税義務の確定した納付すべき税額 納付済の税額 滞納処分を受けたことがないこと* 法定納期限等* ※申出がない場合は記載なし 他の市区町村が発行する納税証明書についても、記載内容に大きな違いはありません。 市税の納税証明書は、市区町村役場の担当窓口に申請すれば取得できます。証明内容によっては申出が必要だったり、別の書類が必要になったりする場合もあります。証明が必要な内容を窓口で伝えた上で、申請することが大切です。 出典)横浜市「納税証明書」 納税証明書の取得方法(市税) 市税の納税証明書は、市区町村役場が請求先です。ただし、東京23区内であれば都税事務所が請求先になります。 市税の証明書も手数料が必要ですが、市区町村によって異なります。そのため、市区町村のホームページなど確認しておく必要があります。あくまで目安ですが、1税目につきおおよそ200~400円です。 まとめ 納税証明書は、証明内容や税目によって証明書の種類や取得方法が異なります。必要なときに問題なく手続きができるように、納税証明書の内容や申請窓口を理解しておきましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 【令和5年版】住宅ローン控除とは?取得した住宅の状況に分けて解説 住宅ローン控除(住宅ローン減税ともいいます)とは、住宅ローンを利用して住宅の新築、取得又は増改築等をした場合に利用できる、所得税額等を控除する制度です。住宅ローン控除を利用する場合、自身の状...記事を読む

    2021.10.20用語
  • 融資のリスケとは?メリットやデメリットを解説!

    融資のリスケとは?メリットやデメリットを解説!

    会社を経営していると、景気悪化などで経営不振に陥り、資金繰りに悩むこともあるでしょう。借入金の返済に困ったときは、金融機関にリスケ(リスケジュール)を依頼する方法があります。ただし、リスケにはデメリットもあるので、特徴を理解してから計画的に進めることが大切です。 この記事では、融資のリスケのメリットとデメリット、リスケ以外の資金繰り改善方法について解説します。 リスケとは リスケとは、リスケジュール(reschedule)の略語です。ビジネス用語として「スケジュールの見直し」の意味でよく使われますが、「返済計画の見直し」という意味もあります。 一般的に、銀行などの金融機関が使う「リスケ」は、後者を意味しており、借入金の返済が困難になった際に返済条件を変更するという意味で使われます。資金繰りが厳しくなった際には、金融機関と交渉することで融資のリスケができる可能性があります。具体的なリスケの方法は以下のとおりです。 一定期間、返済額を減額する 一定期間、元本支払いを据え置きする 返済期間を延長し、返済額を減額する 融資のリスケの申込件数 金融庁の調査によると、2020年3月10日~2023年6月末の期間にリスケの申込みを行った中小企業者の数は、銀行分で約128万件(約1,086件/日)、協同組織金融機関分(信用金庫など)で約107万件(約881件/日)です。多くの中小企業者が、金融機関にリスケの相談や交渉を行っていることがわかります。 この背景にあるのは、2009年に施行された中小企業金融円滑化法です。中小企業金融円滑化法は2013年3月末で期限を迎えていますが、金融庁は金融機関に対して、引き続き円滑な資金供給や貸付条件等の変更に努めるように要請しています。そのため、現在もリスケに応じてもらいやすい状況が続いています。 実際に、同期間内の審査中や取下げを除くリスケの実行率は、銀行分が98.9%、協同組織金融機関分が99.5%です。実行率が非常に高いことから、正当な理由があればリスケに応じてもらえることがわかります。 出典) ・金融庁「中小企業等に対する金融円滑化対策について」 ・金融庁「金融機関における貸付条件の変更等の状況について」 融資のリスケをするメリット 借入金の返済に困ったときに融資のリスケをするメリットは以下の2つです。 借り換えをするよりも余計な費用がかからない 経営立て直しのための時間的猶予をもらえる 資金繰りを改善するには、借り換えという選択肢もありますが、借り換えは既存借入の全額返済手数料、新規借入の事務手数料などの費用が発生します。一方で、融資のリスケによる支払条件の変更であれば、余計な費用はかかりません。 また、融資のリスケをすると資金繰りが楽になるので、経営の立て直しに集中して取り組むことができます。経営課題の改善に取り組んで業績が回復すれば、今までどおり事業を継続できるでしょう。 融資のリスケをするデメリット 融資のリスケをするデメリットは以下の2つです。 新規の融資を受けづらくなる 返済が長期化する 通常、融資のリスケが行われている期間は、その金融機関からは追加融資を受けられません。返済原資を明確に示すことができなければ、他の金融機関から融資を受けるのも難しいでしょう。新規融資を受けられないと手元資金のみで資金繰りをしなくてはならないため、追加融資を考えている場合は、融資のリスケの前に運転資金を確保する必要があります。 融資のリスケは、返済が長期化するのもデメリットです。返済条件の見直しによって、一時的に資金繰りは楽になるかもしれません。しかし、長い目で見るとかえって返済負担が増し、経営にマイナスの影響を与える場合もあります。 融資のリスケにあたって大切なこと 融資のリスケにあたり、最も大切なのは「どのようにして経営を立て直すか考えること」です。融資のリスケはあくまでも返済条件の見直しであり、債務や利息が免除されるわけではありません。加えて、融資のリスケによって返済条件が見直されるのは、一般的に半年~1年程度の一定期間のみです。 つまり、融資のリスケに応じてもらったとしても、その後の対策を講じなければ何も解決できません。融資のリスケを行うことにより、本当に経営を立て直すことができるのかをしっかりと考えたうえで利用することが大切です。 収益力改善支援を活用しよう 中小企業庁は、収益力低下、借入増加のおそれのある中小企業を対象に収益力改善支援を実施しています。 具体的には、1~3年間の収益力改善計画と資金繰り計画の作成と、その後の定期的なモニタリングなどを行ってくれます。計画作成にあたって融資のリスケが必要と判断された場合は、1年間の収益力改善計画を作成してくれます。 融資のリスケを検討している場合や、今後経営をどう立て直すか悩んでいる場合は、収益力改善支援の利用を検討してみてはいかがでしょうか。 出典)中小企業庁「収益力改善支援」 融資のリスケ以外の資金繰り改善方法 資金繰りを改善することを目的とする場合、不動産を所有していればその不動産を活用して資金を確保できるかもしれません。具体的には、以下のような方法があります。 不動産担保ローン まずは、不動産担保ローンによって借り換えをすることです。不動産担保ローンとは、土地や建物、マンションなどの不動産を担保にお金を借りることができる商品で、既存の借入金の借り換えとしても利用することができます。借り換えによって毎月の返済額を減らすことができれば、資金繰りが楽になって経営立て直しに注力できます。 不動産担保ローンは、信用力と担保不動産の価値を総合的に判断して審査を行うため、融資のリスケをしているような状況であっても融資を受けられる可能性もあります。また、銀行では扱わない築古や2番抵当、家族所有物件などの不動産も担保として申込みできます。上記のような特徴のある不動産担保ローンであれば、借り換え先として利用できるかもしれません。 関連記事はこちら不動産担保ローンとは?メリット・デメリットを解説 リースバック 次に、リースバックを利用する方法です。リースバックとは、不動産売買と賃貸借契約が一体となったサービスのことです。自宅をリースバック運営会社に売却し、その会社と賃貸借契約を締結することで、売却後も同じ家に住み続けることができます。リースバックを利用することで、自宅に住み続けながらまとまった資金を手に入れることができます。 リースバックで売却した不動産は将来的に買い戻しができるので、経済状況が安定した後に再び所有することも可能です。一方で、リースバックは、基本的に売却価格が市場価格よりも安くなります。加えて、所有権がリースバック運営会社に移転するので、リフォームや建て替えなどが自由にできなくなってしまう点に注意が必要です。 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みやメリット・デメリットを解説 任意売却 自宅を任意売却する方法もあります。任意売却とは、債務者が自分の意志で不動産を売却する方法です。任意売却によって自宅を売却すれば、借入金を返済し経営の立て直しに注力できます。 融資のリスケを行っても借入金を返済することができなければ、担保として提供した不動産は債権者の申し立てにより、競売にかけられてしまう恐れがあります。競売では、売却価格が市場価格の7~8割程度に設定されることが一般的です。また、競売にかけられたことを周囲に知られてしまったり、余計な費用がかかってしまうなどのデメリットもあります。 一方で、任意売却の場合は、市場価格に近い価格で売却することができるので、競売などに比べてより高値で不動産を売却できる可能性があります。加えて、任意売却は通常の販売方法で売り出すので、自身の状況が周囲に知られてしまうこともなく、売却したお金から諸経費を支払うことが認められているため、事前に余計な費用を準備する必要もありません。ただし、任意売却をするためには、事前に債権者である金融機関の同意が必要になります。 関連記事はこちら住宅ローンが払えない!競売を回避する「任意売却」とは? まとめ 借入金の返済に困ったときは、金融機関に融資のリスケを申込むことで返済条件を見直してもらえる可能性があります。融資のリスケをして一時的に資金繰りが楽になれば、経営立て直しに集中して取り組むことが可能です。 不動産を所有している場合は、融資のリスケ以外の選択肢としてノンバンクの不動産担保ローンやリースバックも検討してみましょう。 無料の仮審査を申込む ご所有の不動産を担保にいくらまで融資可能かをご回答いたします。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 物上保証人と連帯保証人の違いとは? 「保証人」という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。一方で、保証人が「どのような責任を負うことになるか」理解をしている人は少ないかもしれません。また、一口に「保証人」と言っても、「物上保...記事を読む

    2021.10.13用語
  • リ・バース60の4つの活用事例

    リ・バース60の活用事例を4つ紹介

    リ・バース60とは、満60歳以上の人向けの住宅ローンです。毎月の支払いは利息のみで、元本は債務者が亡くなったときに担保物件を売却して返済するか、相続人が現金で一括返済するかを選べます。リ・バース60はそれほど広く認知されている商品ではないため、どのような場面や目的で利用できるかイメージできないかもしれません。 この記事では、リ・バース60の活用事例を4つ紹介します。 リ・バース60の活用事例1:老朽化した自宅のリフォーム資金 70歳代のAさんは自宅の老朽化によって設備が古くなり、使い勝手が悪くなってきたため、リフォームを検討しています。今のところ健康状態に問題はありませんが、将来への備えとしてバリアフリー対応の必要性も感じています。 収入は年金しかなく、預貯金を使ってしまうことに不安があったため、リフォームは無理だと諦めていました。そんな折にテレビCMでリ・バース60を知ったので、金融機関に相談したところ、受付が可能ということで早速申込みをしました。本事例の詳細は以下のとおりです。 リ・バース60の活用事例1:老朽化した自宅のリフォーム資金 申込人70歳代:年収200万円台(年金受給) 連帯債務者配偶者(80歳代):年収100万円台 資金使途リフォーム 必要資金400万円 借入金額400万円 自己資金なし 毎月の支払額0.9万円(年利2.7%) 無事に融資を受けることができ、設備の入れ替えやバリアフリー工事を行うことができました。毎月の返済額は0.9万円に抑えられたので、年金収入のみでも問題なく返済できています。 リ・バース60の活用事例2:返済に困っていた住宅ローンの借り換え 70歳代のBさんはアルバイトで収入を得ていますが、住宅ローンがまだ残っており、毎月の返済に悩みを抱えていました。このままでは老後の生活費を確保できないため、毎月の返済負担を減らしたいと思っています。 それを知ったBさんの娘が金融機関に相談したところ、リ・バース60を提案され、住宅ローンの借り換えの申込みをしました。本事例の詳細は以下のとおりです。 リ・バース60の活用事例2:返済に困っていた住宅ローンの借り換え 申込人70歳代、年収300万円台(アルバイト) 連帯債務者なし 資金使途借り換え 必要資金1,000万円 借入金額1,000万円 自己資金なし 毎月の支払額3.0万円(年利3.6%) リ・バース60で住宅ローンを借り換えたことで、毎月10万円のローン返済額を3万円に減らすことができました。毎月の支出が大幅に減って家計が楽になり、老後資金への不安が軽減されました。 リ・バース60の活用事例3:新居への住み替え資金 60歳代のCさんは子どもが独立してから、「今の家は広すぎる」と感じるようになりました。できれば今の家を売却し、妻と二人で暮らすのにちょうどよい広さのマンションに住み替えたいと考えています。 一方で、老後の生活を考えると、なるべく預貯金は残しておきたいという希望もあります。何かいい方法はないかとインターネットで探していたところ、リ・バース60を知り、生活利便性の高い首都圏のマンションへの住み替え資金の申込みをしました。 本事例の詳細は以下のとおりです。 リ・バース60の活用事例3:新居への住み替え資金 申込人60歳代、年収300万円台(自営業) 連帯債務者なし 資金使途住み替え 必要資金2,700万円 借入金額1,300万円 自己資金1,400万円 毎月の支払額3.6万円(金利 年3.3%) マンション購入代金の50%程度の頭金が必要だったので、一時的に預貯金から払いましたが、今まで住んでいた自宅を頭金より高く売却することが出来たので、預貯金を減らさずに済みました。また、毎月の支払額は3.6万円に抑えることができました。 リ・バース60の活用事例4:老朽化した自宅の建替え資金 60歳代のDさんは自宅の老朽化に伴い、建て替えを検討しています。老後の生活資金を考えると、全額自己資金で家を建て替えるのは不安です。一部は住宅ローンを組むことを希望していますが、通常の住宅ローンを借りるのは難しい状況にあります。 ハウスメーカーに相談したところ、担当者からリ・バース60を提案され、取扱金融機関に申込みをしました。本事例の詳細は以下のとおりです。 リ・バース60の活用事例4:老朽化した自宅の建替え資金 申込人60歳代、年収100万円未満(年金受給) 連帯債務者70歳代、年収200万円台 資金使途建て替え 必要資金2,800万円 借入金額1,400万円 自己資金1,400万円 毎月の支払額2.8万円(金利 年2.4%) 建て替えの工事期間は半年程度仮住まいで過ごすこととなりましたが、リ・バース60を利用したことで、無事に自宅の建て替えの費用を工面することができました。収入は年金のみですが、毎月の支払額が少ないので問題なく返済できています。 まとめ 今回紹介した4つの事例のように、リ・バース60なら高齢の人でも自宅の購入・建て替え、リフォームに必要な資金の融資を受けられるかもしれません。返済は利息のみで、毎月の支払額を抑えられるのもメリットです。年齢や収入の関係で通常の住宅ローンを利用できない場合は、リ・バース60を検討してみてはいかがでしょうか。 お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 リ・バース60は住宅ローン控除等の優遇制度を受けられる? リ・バース60は、満60歳以上の方でも借り入れができる高齢者向けの住宅ローンです。毎月の返済は利息のみであるため、月々の返済負担が小さいのがメリットです。元本は、債務者が亡くなったときに担保...記事を読む

  • 自宅売却の流れや損をしないためのポイントを解説

    自宅売却の流れや損をしないためのポイントを解説

    持ち家に住んでいても、住み替えなどを理由に自宅の売却を検討することがあるでしょう。不動産を売却したことがないと、どのように手続きを進めればよいかわからないかもしれません。また、どうせ自宅を売るなら「少しでも高く売却したい」「損をしたくない」と思うのではないでしょうか。 自宅の売却で失敗を避けるには、手続きの流れや注意点を理解してから売却活動を始めることが大切です。この記事では、自宅売却の流れや損をしないためのポイント、かかる費用・税金について詳しく解説します。 自宅を売却する2つの方法 自宅を売却する方法は、一般的に「買取」と「仲介」の2つに分けられます。 買取:不動産会社に直接買い取ってもらう方法 仲介:不動産会社に買い手を見つけてもらう方法 買取と仲介は特徴が異なるので、状況に合わせて自分に合った方法を選択する必要があります。まずは、買取と仲介それぞれのメリット・デメリットを確認しておきましょう。 買取のメリット・デメリット 買取は不動産会社が買主となるため、短期間で売却が可能です。購入希望者の内覧に対応する必要がなく、買主に対して生じる「契約不適合責任」も免責となるのが一般的です。なお、「契約不適合責任」とは、以前は「瑕疵担保責任」と呼ばれていたものです。2020年4月の民法改正に伴い、「契約不適合責任」として整理・追加がされています。 一方で、買取は仲介に比べると売却価格が低い傾向にあります。不動産会社は、付加価値をつけて再度販売することを前提に買取を行います。再販にかかる経費やリスクを考慮して買取価格を決定するため、市場価格よりも安くなります。 買取は早期に現金化できるので、住み替え先が決まっていて売却を急いでいる場合や、流通性が低く買い手が付きづらい物件などに向いています。 仲介のメリット・デメリット 仲介は、自宅を市場価格で売却できるのがメリットです。希望価格で購入してくれる買い手が見つかるまで売却活動ができるので、買い手が見つかれば相場より高い価格で売却することも可能です。 一方で、仲介は売却までに時間がかかる傾向にあります。不動産会社と媒介契約を締結し、主に個人の買い手を見つける必要があるため、買取に比べると売却までに時間がかかってしまいます。また、売買が成立した場合は仲介手数料の支払いが必要です。 自宅売却に時間をかけられる場合や、出来るだけ市場価格に近い価格で売却したい場合は、仲介が向いているでしょう。 自宅売却の流れ 自宅の売却は以下の流れで手続きを進めます。 査定を依頼して不動産会社を選ぶ 売却活動をする(仲介の場合) 売買契約を締結する 決済・引き渡しを行う 買取は不動産会社が買主となるため、2の売却活動は不要です。それぞれの項目について詳しく説明します。 査定を依頼して不動産会社を選ぶ 自宅を売却するときは、まず不動産会社に査定を依頼して、自宅がいくらで売れそうかを確認します。査定金額は不動産会社によって異なります。買取にせよ仲介にせよ、複数の会社に依頼して査定金額を比較することが大切です。 買取の場合は、買取価格が一番高い会社を選びましょう。基本的に提示された買取価格が変更されることはありません。 仲介の場合は、不動産会社と媒介契約を締結する必要があります。査定金額を確認した上で、以下の3種類から媒介契約を選びましょう。 一般媒介契約 専任媒介契約 専属専任媒介契約 一般媒介契約は、複数の不動産会社に仲介を依頼できる契約です。多くの購入希望者にアプローチできますが、物件情報のレインズ(不動産流通機構)への登録や売主に対する売却活動の報告は義務付けられていません。また、複数の不動産会社とやり取りするので手間がかかります。 専任媒介契約は、1つの不動産会社のみに仲介を依頼できる契約です。売主が自分で見つけた買い手と直接取引することも可能です。不動産会社は媒介契約締結後7営業日以内に物件をレインズに登録し、売主に対して2週間に1回以上売却活動の状況を報告する義務があります。 専属専任媒介契約も、1つの不動産会社のみに仲介を依頼できる契約です。ただし、売主は自分で見つけた買い手と直接取引はできません。レインズへの登録は媒介契約締結後5営業日以内、売主に対して1週間に1回以上の報告が義務付けられています。 専任媒介契約と専属専任媒介契約の契約期間は3ヵ月で、実務上は両者に大きな違いはありません。信頼できる会社を1社選定できる場合は、専属専任や専任媒介契約がおすすめです。1社に絞るのが難しく、複数の会社に依頼したい場合は一般媒介契約を検討しましょう。 売却活動をする(仲介の場合) 仲介の場合、買い手を見つけるための売却活動を行います。売却活動のほとんどは不動産会社に任せられます。ただし、住みながら売却活動する場合は、内覧に応じるなどの手間が発生します。 すべてを不動産会社任せにするのではなく、「いくらで売却したい」「いつまでに売却したい」といった希望をはっきり伝えることが大切です。後でトラブルにならないように、定期的に進捗状況を確認し、不明点や疑問点があればその都度解決しておきましょう。 売買契約を締結する 自宅の買い手が決まったら売買契約を締結します。売買契約時の主な必要書類は以下のとおりです。 不動産売買契約書 収入印紙(契約書に貼付する印紙代) 本人確認書類 印鑑(実印) 印鑑証明書 登記済権利書(または登記識別情報) 固定資産税納税通知書 手付金の領収書 必要書類は不動産会社が提示してくれるので、確認して準備を進めましょう。 売買契約時には、通常、売買代金の一部(10%程度)を手付金として受け取ります。契約書に手付解除の定めがあれば、期限日までに買主は支払った手付金を放棄、売主は受け取った手付金の倍額を払うことで契約解除が可能です。 契約後にトラブルが発生しないように、あらかじめ契約解除の方法などについて確認しておくことが大切です。 決済・引き渡しを行う 売買契約後は、契約書で取り決めた決済日に残金が入金されます。自宅は決済日に合わせて買主に引き渡しを行います。 住宅ローンが残っている場合は、抵当権の抹消手続きも必要です。不動産会社を通じて司法書士に依頼しておくと、スムーズに手続きを進められます。 自宅売却にかかる期間 自宅の売却を決めてから売買が成立するまで、どれくらいの期間が必要なのでしょうか。仲介で売却する場合の標準的な期間は以下のとおりです。 査定から媒介契約:2週間~1ヵ月程度 売却活動:1ヵ月~半年程度 売買契約から決済・引き渡し:1~2ヵ月程度 査定から引き渡しまで、3ヵ月~1年程度かかるのが一般的です。実際には、買主を見つけるまでの期間によって大きく変わってきます。人気のエリアや物件であれば、問い合わせも多く売却に苦労しないかもしれませんが、流通性の低いエリアや物件では1年以上売却にかかるでしょう。 一方で、買取は売却活動を行う必要がないので、抵当権が設定されていなければ数週間で売却できるケースもあります。 自宅売却で損をしないためのポイント 自宅の売却は取引金額が大きいので、手続きの進め方によって手元に残るお金が変わってきます。ここでは、自宅売却で損をしないためのポイントをお伝えします。 不動産の相場観を身に付ける 自宅売却で損をしないためには、いくらで売れそうか不動産の相場観を身に付けてから売却活動を始めることが大切です。インターネットや不動産会社のチラシなどで、住んでいる地域の同じような物件がいくらで売りに出されているかを確認しておきましょう。 不動産には相場があるので、「いくらで売りたいか」と「いくらで売れるか」は別問題です。希望売却価格と相場に「いつまでに売りたいか」という要素を組み合わせて、売出価格を慎重に判断する必要があります。 売出価格が高すぎると買い手が見つからず、安すぎると手元に残る金額が減ってしまいます。仲介を依頼する不動産会社を選ぶ段階で、あまりに高すぎる査定金額や、反対に・低すぎる査定金額を提示する会社は除外するといいでしょう。 不動産売却の仕組みを理解する 自宅を売却する前に、不動産売却の仕組みを理解することも必要です。取引ルールを理解しないまま売却活動を始めると、不動産会社からの提案や売買契約の内容が正しいか判断できません。有利な条件での売却が難しくなり、トラブルが発生するリスクも高まります。 特に確認しておきたいのが、不動産仲介におけるルールです。先程も触れたように、媒介契約は種類によって報告義務などが細かく定められています。 たとえば、一般媒介契約は複数の会社に仲介を依頼できますが、レインズへの登録や売主への報告は義務付けられていません。レインズは、不動産会社専用のネットワークシステムです。全国の物件情報が共有されているので、レインズに登録するほうが早期の売買成立につながります。また、不動産会社から定期的に報告をもらえるほうが手間はかからず、安心して売却活動を進められるでしょう。 媒介契約を選択する際には、流通性の高く人気のエリアの物件では一般媒介による売却とし、流通性が低く買い手が見つかりづらい物件では専任媒介を選択するといいかもしれません。媒介契約の選択に正解はありませんが、状況に合わせて自分にあった契約を選ぶことが大切です。 信頼できる会社を選ぶ 自宅売却で損をしないためには、不動産会社選びも重要なポイントです。さまざまな不動産会社が仲介に対応していますが、実績や強み、顧客への対応などは会社によって異なります。不動産会社を選ぶときは、以下のポイントを重視しましょう。 仲介におけるルールや報告義務を順守している 自分の相場感と査定金額が大きく離れていない 査定金額にしっかりとした根拠が示されている 疑問点や不明点を質問したときに丁寧に回答してくれる 不動産仲介の実績が豊富 インターネット上に悪い評判がない(少ない) 希望条件に近い形で売却できるように、複数の会社に査定を依頼して、信頼できる会社を見極めましょう。 自宅売却のための体制を整える 自宅を売却するときは、希望条件で売却できる体制を整えましょう。不動産は建物の外観だけでなく、部屋の状態も重要な要素です。部屋をきれいな状態に保ち、家具のレイアウトなども工夫すれば、内覧者によい印象を持ってもらえます。 また、売却を急ぐと売却価格が安くなりやすいので、余裕をもって売却活動を進めましょう。可能であれば、空室の状態で売却活動を行うほうが希望条件で売却しやすくなります。 自宅売却でかかる費用・税金 自宅の売却では、仲介手数料などの費用や税金がかかります。さらに、住宅ローンが残っている場合は、自宅の売却代金でローンを完済しなくてはなりません。 実際に手元に残るお金は売却価格とは異なるので、費用や税金も考慮して売却を進める必要があります。ここでは、自宅売却でかかる費用と税金について詳しく解説します。 仲介手数料 仲介手数料は、仲介での売買が成立したときに不動産会社に支払う手数料です。宅地建物取引業法により、不動産会社が受け取れる仲介手数料の上限額は以下のように決められています。 仲介手数料の上限額 契約金額(税別) 仲介手数料の上限額 200万円以下 契約金額×5%+消費税10% 200万円超 400万円以下 (契約金額×4%+2万円)+消費税10% 400万円超 (契約金額×3%+6万円)+消費税10% たとえば、自宅の売却価格が2,000万円の場合、仲介手数料は以下のように計算します。 (2,000万円×3%+6万円)+(2,000万円×3%+6万円)×10%=72.6万円 仲介手数料は、上限額いっぱいで請求されるのが一般的です。査定金額を確認した段階で、仲介手数料の概算金額を計算しておきましょう。 印紙税 不動産売買契約書は印紙税の課税文書であるため、税額分の収入印紙を貼付する必要があります。印紙税額は、以下のように契約金額によって異なります。 印紙税額 契約金額(税別) 印紙税額 軽減税額 100万円超500万円以下 2,000円 1,000円 500万円超1,000万円以下 1万円 5,000円 1,000万円超5,000万円以下 2万円 1万円 5,000万円超1億円以下 6万円 3万円 1億円超5億円以下 10万円 6万円 2022年3月31日までに作成される売買契約書の印紙税については、軽減税額が適用されます。売主分と買主分の2通の契約書を作成する場合は、それぞれ印紙税を負担します。 出典)国税庁「印紙税額一覧表(2021年5月現在)」 抵当権抹消に関する費用 売却する自宅に抵当権が残っている場合は、抹消手続きが必要です。抵当権抹消登記の登録免許税は、不動産1つにつき1,000円です。土地と建物にそれぞれ抵当権が設定されている場合、登録免許税額は2,000円となります。 抵当権抹消登記を司法書士に依頼する場合は別途報酬が発生するので、見積もりをとって費用を確認しましょう。 出典)法務局「登録免許税の計算」 固定資産税・都市計画税の精算 固定資産税・都市計画税は、1月1日現在で不動産を所有している人に課税される税金です。その年の途中で不動産を売却しても、1月1日現在の所有者に全額が請求されます。 売買契約日以降の固定資産税・都市計画税は買主の負担となるため、日割り計算をして売買契約時に精算するのが一般的です。売買契約を締結する前に、不動産会社に固定資産税・都市計画税の精算方法を確認しておきましょう。 譲渡所得税 譲渡所得税は、不動産の売却で利益(譲渡所得)が出た場合にかかる税金です。譲渡所得に一定の税率をかけて税額を計算します。譲渡所得を求める計算式は以下のとおりです。 譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額 譲渡価額は自宅の売却価格です。 取得費は、自宅を取得するためにかかった費用です。自宅の購入代金や仲介手数料などが含まれます。ただし、建物については減価償却費を控除した後の金額となります。取得費がわからない場合は、譲渡価額の5%相当額を取得費とみなすことが可能です。 譲渡費用は、自宅を売却するときに払う仲介手数料、建物の取り壊し費用などです。一定の要件を満たして税制特例が利用できる場合は、特別控除額として譲渡所得から一定額を控除できます。 譲渡所得が求められたら、一定の税率をかけて税額を計算します。譲渡所得税の税率は、自宅の所有期間に応じて以下のように異なります。 譲渡所得税額 区分 所得税 復興特別所得税 住民税 税率合計 長期譲渡所得 15% 0.315% 5% 20.315% 短期譲渡所得 35% 0.63% 9% 39.63% 自宅を売却した年の1月1日現在で所有期間が5年超の場合は「長期譲渡所得」、5年以下の場合は「短期譲渡所得」となります。 出典)国税庁「土地や建物を売ったとき」 自宅売却で利用できる税制特例 自宅(マイホーム)を売却して譲渡所得が生じた場合は、「3,000万円の特別控除の特例」が利用できます。所有期間に関わらず、一定の要件を満たす場合は譲渡所得から最高3,000万円が控除できるため、譲渡所得税の節税になります。 このほかに、「軽減税率の特例」「買換え(交換)の特例」といった税制特例も用意されています。 税制特例を利用するには、必要書類を添付した上で確定申告書の提出が必要です。税制特例は併用できないものあり、どれを利用するのが有利かは状況によって異なります。自分で判断できない場合は、税理士などの専門家に相談しましょう。 出典)国税庁「土地や建物を売ったとき」 住宅ローンが残っている自宅を売却する際の注意点 住宅ローンが残っている自宅を売却するには、ローンを完済し抵当権を抹消する必要があります。一般的には、自宅の売却代金が残債を上回っている場合は、売却代金を返済原資としてローンを完済できるので、問題なく売却ができます。一方で、自宅の売却代金が残債を下回っている場合は、自己資金で補填したり、住み替えローンを利用する必要があります。売却後もローンが残っている場合、金融機関が抵当権の抹消に同意してくれないためです。 住宅ローンが残っている自宅を売却する際は、事前に住宅ローンの残債と自宅の売却価格を把握し、ローンを完済できるかを確認したうえで売却活動を行うとよいでしょう。 まとめ 自宅を売りたいと思ったら、まずは自宅売却の流れや相場感、不動産の取引ルール、費用などを理解することが大切です。その後は複数の不動産会社に自宅の査定を依頼し、信頼できる会社を見極めることがポイントとなります。自宅売却を成功させるために、しっかりと準備を整えてから売却活動を始めましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 住み替えの方法と成功させるポイント 持ち家に住んでいても、転勤や家族構成の変化などのライフスタイルの変化などを理由に住み替えを検討することがあるでしょう。 住み替えは新居の購入や自宅の売却、住宅ローンの手続きなど、同時に進めな...記事を読む

    2021.09.22自宅売却