住まいとお金の知恵袋 一覧(公開日順)

  • 定期借家契約と普通借家契約の違いとは?

    定期借家契約と普通借家契約の違いとは?

    不動産の賃貸借契約には、「定期借家契約」と「普通借家契約」があります。しかし、両者は契約の更新方法などに違いがあるので、賃貸住宅に安心して住めるように、それぞれの契約の仕組みを理解しておくことが大切です。 この記事では、定期借家契約と普通借家契約の違いについて詳しく解説します。 定期借家契約と普通借家契約の概要 定期借家契約とは 定期借家契約とは、契約期間があらかじめ決められている賃貸借契約です。契約の更新がないため、契約期間が満了すると借主は退去しなくてはなりません。ただし、貸主と借主の双方が合意すれば、期間満了後の再契約は可能です。 定期借家契約の場合、貸主側の都合で契約期間が定められるため、普通借家契約に比べると割安な家賃で設定されることが多いです。貸主側は定めた期間で貸主に退去してもらえるため、「一時的に不在となる物件を賃貸に出す」「現在空き家の実家を自分が住むまで賃貸に出す」といった場面での活用ができます。 普通借家契約とは 普通借家契約は、一般的な不動産賃貸で利用される賃貸借契約です。契約期間は通常2年で設定され、期間満了後も借主が希望すれば契約は更新されるため、長く住み続けることが可能です。借主が手厚く保護される契約形態であるため、貸主からの一方的な都合による退去はありません。 普通借家契約の場合、貸主側の都合で契約期間を定められますが、借主が希望する限り更新を拒むことができません。そのため、貸主側が短期間で退去してほしい場合には、適していません。 定期借家契約と普通借家契約の主な違い 定期借家契約と普通借家契約の主な違いは以下の2つです。 契約の更新 前述のとおり、定期借家契約は期間満了によって契約が終了します。貸主と借主の双方で合意できた場合のみ再契約が可能なので、借主が住み続けたいと思っても、貸主が再契約を認めなければ退去する必要があります。 一方で、普通借家契約は借主が希望する限り、契約を更新し、住み続けることができます。「建物に問題がある」、「借主が契約を違反する」などの正当事由がない限り、貸主は契約更新を拒絶できません。 賃料の増減額請求権 賃料の増減額請求権とは、現在支払っている、または受け取っている家賃が賃料相場と比較して不相当となった場合に、賃貸借契約の相手方に対して家賃の減額、増額を請求できる権利です。 賃貸住宅の賃料相場は、景気動向や需供バランスによって変動します。そのため、同じ物件に長く住んでいると、入居時に定めた家賃が賃料相場と合わなくなることがあります。 定期借家契約と普通借家契約ともに、原則として賃料の増減額請求権が認められます。ただし、定期借家契約は賃料の増減額請求権を排除する特約を定めることが可能です。(借地借家法第38条) 一方で、普通借家契約は賃料の増減額請求権を排除する特約は無効ですが、家賃を増額しないことについての特約のみ認められます。(借地借家法第32条) 定期借家契約と普通借家契約のその他の違い 定期借家契約と普通借家契約は、以下のような点でも違いがあります。 契約方法や説明 普通借家契約を締結するには口頭でも可能ですが、定期借家契約は公正証書などの書面で行う必要があります。また、定期借家契約は賃貸借契約書とは別に、契約の更新がないことを書面で交付して説明しなくてはなりません。 契約期間や通知義務 普通借家契約は1年以上で設定する必要があり、1年未満の賃貸借契約の場合は、期間の定めのない賃貸借とみなされます。一方で、定期借家契約は契約期間に制限がなく、1年未満の契約も有効となります。 1年以上の定期借家契約の場合、貸主は契約期間満了の1年から6ヵ月前までに借主に対して契約終了を通知する義務があります。通知をしない場合、貸主は契約終了を借主に対抗できません。借主は、通知の日から6ヵ月を経過するまでは同条件で住み続けられます。 中途解約 普通借家契約は一般的に中途解約に関する条項が記載されており、借主からの中途解約はその条項の範囲内で可能ですが、貸主からの場合は正当事由が必要です。一方で、定期借家契約では、貸主と借主のどちらも中途解約は原則認められません。 ただし、床面積200㎡未満の居住用建物でやむを得ない事情がある場合は、借主からの中途解約は可能です。なお、普通借家と定期借家ともに、中途解約に関する特約がある場合はその定めに従うこととなります。 定期借家契約と普通借家契約の違い一覧 定期借家契約と普通借家契約の違いは下表のとおりです。 定期借家契約と普通借家契約の違い 定期借家契約普通借家契約 契約方法公正証書等の書面*口頭、書面 更新の有無期間満了により終了し、更新がない(ただし、再契約は可能)正当事由がない限り更新 期間を1年未満とする賃貸借の効力1年未満の契約も有効期間の定めのない賃貸借とみなされる 賃料の増減請求特約の定めに従う特約にかかわらず、請求可能 賃借人の中途解約の可否・床面積200㎡未満の居住用建物でやむを得ない事情がある場合は、 借主からの中途解約が可能・中途解約に関する特約があればその定めに従う中途解約に関する特約があればその定めに従う ※賃貸人は「更新がなく、期間の満了により終了する」ことを契約書等とは別に、予め書面を交付して説明しなければならない 出典)国土交通省「定期借家制度」 定期借家契約と普通借家契約の利用割合 国土交通省「令和4年度住宅市場動向調査」によると、定期借家契約は普通借家契約と比較してほとんど利用されていません。 ※国土交通省「令和4年度住宅市場動向調査 P.27」より引用 また、同調査では令和4年度に民間賃貸住宅に住み替えた世帯の定期借家制度の認知度が「知っている」が12.3%、「名前だけは知っている」が25.5%に留まっており、半数以上が「定期借家契約」を知らないまま、賃貸住宅に住み替えていたことも分かっています。 定期借家契約は利用数、認知度ともに低いのが現状ですが、知らなければ後々トラブルの原因になる恐れもあります。 出典)国土交通省「令和4年度住宅市場動向調査」 まとめ 定期借家契約は貸主の合意を得られなければ再契約ができず、退去する必要があります。短期間の入居なら家賃が安く済むかもしれませんが、長く住むには不向きです。賃貸住宅を借りたり、リースバックを利用したりする場合は、定期借家契約と普通借家契約の違いを理解しておきましょう。 さっそく仮査定を申し込む SBIスマイルのリースバックをご紹介します。仮査定は無料で受け付けています。※SBIスマイルのHPに遷移します。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 終身建物賃貸借契約とは?メリット・デメリットをわかりやすく解説 終身建物賃貸借契約は、高齢者が安心して賃貸住宅に居住できる仕組みです。老後も賃貸暮らしを続けるなら、終身建物賃貸借契約に対応している賃貸住宅も選択肢のひとつです。この記事では、終身建物賃貸借...記事を読む

    2022.04.13用語
  • マイホーム購入の必要性とは?

    マイホーム購入の必要性とは?

    マイホームは「人生で最も高い買い物」といわれます。購入時には住宅ローンを利用できますが、頭金や諸費用としてある程度のお金を準備しなくてはなりません。また、ローン返済は長期にわたるため、購入すべきか悩むのではないでしょうか。 この記事では、マイホーム購入の必要性やメリット・デメリットについて詳しく解説します。 マイホーム購入の必要性とは?購入するメリット マイホーム購入には以下のようなメリットがあります。 住居費の負担が小さい マイホーム購入は、賃貸で暮らすよりも住居費の負担が小さい傾向にあります。購入すると住宅ローンの返済が始まりますが、昨今の低金利環境下であれば、月々の家賃に比べて毎月の住宅ローンの返済の支払い額が少なくなることも珍しくないほか、完済後は毎月の支出が抑えられます。また、住宅ローン減税などの税制優遇制度を利用することで、金利負担の軽減も可能です。 一方で、賃貸は一生家賃を払い続ける必要があるので、老後に住居費の負担が重くなります。 内装や間取りなどの自由度が高い マイホーム購入は自由度が高いのもメリットです。注文住宅であれば、一から自分好みの内装・間取りで建築できます。また、分譲住宅であってもライフスタイルの変化に合わせて建て替えやリフォームも可能です。 一方で、賃貸物件は、オーナーの許可なく内装や間取りを変えることはできません。また、許可を得られたとしても最低限のリフォームに限られるケースが多いでしょう。 安心感・満足感を得られる マイホームを購入すると、「自分の家を持つことができた」という安心感や満足感を得られます。「一生暮らしたい」と思える家や場所を見つけても、賃貸の場合は建物の老朽化や所有者の都合で退去しなくてはならないケースもあります。 マイホームであれば、「一生住み続けられないかもしれない」という不安を抱えることなく安心して住み続けられるでしょう。 マイホーム購入のデメリット 一方で、マイホーム購入には以下のようなデメリットもあります。 ライフスタイルの変化に対応しづらい 人生には急な転勤や子どもの独立、パートナーとの死別・離別など、ライフスタイルが変化する時期があります。 自由に引っ越しができる賃貸なら、ライフスタイルの変化に合わせて住まいを変えられます。たとえば、子育て中は広い家に住み、夫婦二人の生活になったら小さな物件に引っ越すといった具合です。 しかし、マイホームで住み替えるには物件を売却しなくてはなりません。売却には時間がかかるだけでなく、住宅ローンが残っていれば売却資金でローンを完済する必要があるため、簡単には引っ越しできないでしょう。 経年に伴い住居費の負担が増加する マイホーム購入をすると、建物や設備が経年劣化するので、築年数が古くなると修繕費の負担が増加します。たとえば、設備は15年も経てば不具合が出て修理や交換が必要になるほか、マンションであれば管理費や修繕積立金は築年数が古くなるほど増加します。 ただし、立地や物件のグレードなどによっては、賃貸物件より経済的にメリットがあるので、コストが増加することが一概にデメリットとも言い切れないでしょう。 災害リスクを抱える マイホームは地震や台風、水害といった災害リスクがあります。マイホームが被災した場合、修繕や建て替えの費用は自分で負担しなくてはなりません。保険で備えることもできますが、必ずしも保険でカバーできるとも言い切れないでしょう。 一方で、賃貸なら建物が被災しても修繕費用はオーナー負担となるので、経済的な負担は小さく済みます。また、被害が大きい場合には転居するという選択肢のハードルもそれほど高くないかもしれません。 マイホーム購入は必要なのか マイホーム購入と賃貸にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、マイホーム購入と 賃貸の選択に正解はありません。マイホーム購入の必要性は、個人の嗜好やライフスタイル(子どもの人数、転勤の有無・頻度など)に応じて変わってきます。 マイホーム購入の必要性が高い人 マイホーム購入の必要性が高い人の特徴は以下のとおりです。 損をしたくない人 自由度の高い家を持ちたい人 賃貸で住みたい家がない人 マイホーム購入には住宅ローン減税のような税制優遇制度があり、ローン完済後は住居費の負担が軽減されます。「簡単に引っ越しできない」「災害リスクがある」といったデメリットを許容してでも金銭的なメリットを受けたいなら、マイホーム購入がいいでしょう。 「自分好みの間取りで家を建てたい」「リフォームやリノベーションをしたい」など、自由度の高い家を持ちたい人もマイホームが向いています。 また、賃貸は借主がつきやすいように汎用的な間取りや仕様であることが多い傾向にあります。「希望条件の物件がない」、「戸建てに住みたいが賃貸物件がほとんどない」など、賃貸で住みたい家がない人もマイホーム購入の必要性は高いといえます。 ただし、マイホーム購入にはまとまったお金が必要です。属性(収入、勤務先、勤務年数など)によっては、住宅ローンの審査に通らない可能性もあります。「そもそも購入できるか」「いくらの家なら購入できるか」といった視点を持つことも大切です。 マイホームを購入した際の活用方法 高齢化により老後の期間が長くなっています。長生きリスクへの備えとして、老後資金を確保しておく必要があります。マイホームがあれば、いざというときには不動産を活用した資金調達が可能です。 老後の生活費が足りない場合、マイホームを売却するという選択肢だけでなく、需要の高い物件であれば賃貸に出して家賃収入を得ることも可能です。同じ家に住み続けたい場合は、不動産担保ローンやリースバックを利用する方法もあります。 まとめ マイホームは、必ず購入しなくてはならないものではありません。しかし、賃貸に住み続けると、老後の住居費負担が重くなる傾向にあります。マイホームは内装や間取りの自由度が高く、いざというときには不動産を活用した資金調達も可能です。 持ち家と賃貸のメリット・デメリットを比較したうえで、マイホーム購入の必要性を検討してみましょう。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 自宅購入はより安全で優れた不動産投資!? 不動産投資といえば、マンションやアパートを貸し出して家賃収入を得ることをイメージするのではないでしょうか。しかし、考え方によっては賃貸暮らしの家賃支出をなくし、ローンの返済とともに資産を増や...記事を読む

    2022.04.06自宅購入
  • 赤字になったら確定申告は必要か?

    赤字になったら確定申告は必要か?

    個人事業主の中には、「事業が赤字で税金を払わなくてもいいから、確定申告は必要ないだろう」、「赤字申告だと融資を受けられなくなるから、確定申告をするのをやめよう」などと考えている方がいらっしゃるかもしれませんが、それは間違いです。この記事では、赤字でも確定申告をするメリットや、赤字決算でも可能な資金調達法をご紹介します。 確定申告とは? 確定申告は、毎年1月1日から12月31日の1年間に生じたすべての所得金額と、所得税額を計算して納税する制度のことです。納税者本人が税金を計算して納税することから、「申告納税制度」と呼ばれています。 確定申告の期間は、毎年2月16日から3月15日の約1カ月間で、申告期限が土日・祝日の場合は、その翌日が期限になるのが一般的です。期間内には原則として確定申告書の提出と、所得税の納付をしなければなりません。なお、別途手続きが必要ですが、口座振替納税も選択することが可能です。 関連記事はこちらリースバックの契約までの流れと必要書類、注意点を解説 確定申告のルール 確定申告はルールを守ってスムーズに終わらせましょう。その際の主なポイントは次の3つです。 申告書の作成時に必要な書類とは? 確定申告では、申告内容に応じてさまざまな書類の添付や提示が必要になります。国税庁が公開しているチェックリストを参考にして、事前に準備しておきましょう。 出典)国税庁HP 『申告書に添付・提示する書類』 申告書の提出方法は? 作成した申告書の提出方法は、税務署に直接持参・郵送する方法と、e-Taxを使って提出する方法があります。それぞれ以下で解説します。 1.税務署に直接持参・郵送する 税務署に直接持参する場合には、確定申告の書類一式に加えてマイナンバーカードか、マイナンバーが分かる書類と運転免許証などの身分証の提示、郵送する場合は、それぞれの写しを添付する必要があります。 出典)国税庁HP 『申告書に添付・提示する書類』 2.e-Taxを使って提出する e-Taxを使って提出する場合には、マイナンバーカードを読み込むICカードリーダライタが必要です。ICカードリーダライタは家電量販店などで販売されていますので、事前に購入してセットアップしておきましょう。また、令和3年分の確定申告から、パソコン上に表示された2次元バーコード(QRコード)をスマホで読み取れば、ICカードリーダライタを使わなくてもe-Tax送信ができるようになりました。スマホで申告をする場合には、お持ちのスマホが対応機種なのかもチェックしておきましょう。 ペナルティに注意しよう! 確定申告で注意しなければならないのは、ルールを守らないとペナルティがあることです。 たとえば、確定申告書を提出しても、期限内に税金を納付しなかった場合、残高不足等で口座振替ができなかった場合は延滞税が課せられることがあります。また、確定申告をしなければならない人が正当な理由なく申告しなかった場合や、申告期限を過ぎてから申告した場合は、延滞税だけでなく加算税が課せられてしまいます。 もし、確定申告書の提出後間違いに気付いたら、申告期限内であれば訂正した申告書を提出すればペナルティ対象にはなりません。申告期限を過ぎてしまった場合でも、申告内容を修正できますが、税額を少なく申告していたときには延滞税や加算税が課せられることがあります。間違いに気付いたら早めに修正申告をしましょう。 そのほか、決算書類や帳簿、領収書などは、「確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければならない(白色申告の場合、所得金額などによって異なる)」などのルールもあり、保存をしていないと、税務調査を受けたときに支出を証明することが難しくなってしまうので、注意が必要です。 赤字申告をするメリット 確定申告は手間がかかるので、「赤字決算だし、納付する税金もないから申告をするのはやめよう」と考えてしまうかもしれません。しかし実は、赤字決算でも確定申告をすると次のようなメリットがあります。 損失を繰り越して、翌年以降の黒字と相殺できる 確定申告には「青色申告」と「白色申告」があり、青色申告の場合には赤字決算でも申告をすれば次の年から3年間にわたって損失を繰り越すこと(純損失の繰り越し)ができます。また、前年も青色申告をしていれば、損失の繰り越しのかわりに、前年分の所得税から還付を受けること(純損失の繰り戻し)もできます。 一方、白色申告には、青色申告のような損失の繰り越し・繰り戻しの制度はありませんが、漁業や水産物の養殖など、年によって大きく変動する可能性がある変動所得や、災害などによって被害を受けた被災事業用資産の損失については、損失の繰り越しが認められています。 各種証明書が入手できる 事業資金の融資やローンの審査、クレジットカード申し込みの際などには所得証明が必要になることがありますが、確定申告をしていないと所得証明書を発行してもらえません。また、所得証明書と同様に、課税証明書も確定申告をしないと発行してもらえません。税金を納めていないから、課税証明書は発行されないと思うかもしれませんが、課税額が「0円」であることの証明書が発行されます。 国民健康保険の保険料優遇が受けられる 個人事業主が加入する国民健康保険は、保険料を正しく計算するために、所得の申告が必要です。確定申告をしないと、収入がなくても保険料の軽減措置を受けられなかったり、高額療養費の自己負担限度額が高くなったりする場合があります。 赤字申告の場合、お金は借りられるのか? 銀行など金融機関は、確定申告書や決算書をもとに融資の審査をします。そのため、黒字決算、赤字決算に限らず、確定申告をしていないことで融資自体を断られたり、確定申告をするよう求められたりすることがあります。 一方で、赤字申告だと新たに融資を受けるのは簡単ではありません。赤字申告が続いていると、すでに受けている融資の返済を求められることもあります。ただし、全くお金を借りられないというわけではなく、ビジネスローンや不動産担保ローンであれば、融資を受けられるかもしれません。また、リースバックの利用も検討してみましょう。 ビジネスローン ビジネスローンは事業者向けのローンで、主にノンバンクなどが取り扱っています。担保や保証人がなくても利用できるローンもあるため、赤字申告でもお金を借りられる可能性があります。 不動産担保ローン 不動産担保ローンは、土地や建物、マンションなどの不動産を担保にしてお金を借りられるローンです。不動産を担保にするため、まとまった金額を無担保ローンに比べて低い金利で借りられる可能性があります。 関連記事はこちら不動産担保ローンとは?メリット・デメリットを解説 リースバック リースバックは、不動産を所有している方が利用できる資金調達法です。自宅をリースバック運営会社に売却し、その会社と賃貸借契約を締結することで、売却した後も同じ家に住み続けることができます。 関連記事はこちらリースバックとは?仕組みやメリット・デメリットを解説 まとめ 個人事業主は、原則として毎年確定申告をしなければなりません。また、ご紹介したように、赤字決算でも確定申告をするメリットがあるため、ルールに従って期日までに申告をしましょう。さらに、赤字申告であっても全く融資を受けられないわけではないので、それぞれの状況に合った方法を検討しましょう。 執筆者紹介 菊地 則夫(Norio Kikuchi)/税理士法人スマートシンク代表税理士 成城大学経済学部卒、日本大学大学院法学研究科税法松澤智研究室卒。 得意分野は相続税や不動産税務。「不動産所得」と「住まいと暮らしの税金」のプロフェッショナル集団、税理士法人スマートシンクの代表として日々、土地・建物の税金問題に取り組む。 <主な著書> 「住宅ローン&マイホームの税金がスラスラわかる本2021」エクスナレッジ、「相続の手続と節税が全部わかる本」あさ出版、「不動産税務の手引別巻」大成出版、「不動産実業の手引き別巻」清文社、その他雑誌「家主と地主」、「賃貸Life」新聞など著書多数 赤字決算で法人税はどうなる?資金調達は可能? 営利目的で事業を行う企業や個人事業主は、売上アップや経費削減に取り組むことで利益の確保(黒字決算)を目指します。しかし、不況の煽りを受けて資金繰りが厳しくなり、赤字決算となってしまうこともあ...記事を読む

    2022.03.30資金調達
  • 50代以上に聞いた!老後に対する不安は?

    老後に対する不安の1位は健康、2位は資金、約6割が老後資金不足で悩む

    近年「老後2,000万円問題」など、老後に対して不安を覚える情報が様々なメディアで取り沙汰されています。しかし、実際に老後資金としていくら必要と考えているのか、いくら用意できているのかは三者三様です。 そこで今回は、持ち家がある50歳以上の男女200名を対象に、老後の生活資金や持ち家の所有・管理についてどのような不安を抱いているのか、アンケート調査を実施しました。 老後の不安は「健康」「老後の生活資金」「介護」 Q1:老後の暮らしに不安がありますか?不安がある方は、どのようなことに不安を感じているか、選んでください。 老後の不安に対する調査をしたところ、91.0%が不安を感じていました。「健康面で不安がある」が51.5%で一番多く、「老後の生活資金について不安がある」が48.5%、「介護について不安がある(自身・配偶者・親など)」が41.5%と続いていました。老後の不安を解消するには、健康だけでなく、お金の面でも十分な準備をしておく必要がありそうです。 老後資金は「2,000万円以上」あると安心 Q2:老後の不安を解消するため、いくらくらいの老後資金があれば安心と考えていますか?(厚生年金などの年金を考慮しない場合) 老後の不安を解消するため「2,000万円以上必要」と回答した方は58.0%いました。価格帯別では「2,000万円以上~3,000万円未満」が21.0%と最も多く、「4,000万円以上~5,000万円未満」が12.5%、「3,000万円以上~4,000万円未満」が11.5%と続いています。 かつて、金融庁の報告書で「老後30年間で約2,000万円が不足する」と受け取れる試算が示され、大きな話題になりましたが、「わからない」を除くと約8割が2,000万円以上あれば安心と考えていることがわかりました。 老後資金を思うように準備できていない人は約6割 Q3:老後の資金について、現時点でいくらくらい準備できていますか? 老後資金を現時点で2,000万円以上準備できている方は27.0%にとどまっています。一方で、27.0%が「全く準備できていない」と回答したほか、14.5%が「500万円未満」と回答するなど、老後資金を思うように準備できていない方が6割近くになりました。 Q4:持ち家とその借入を除く、現金、預貯金、有価証券、不動産などの資産はどのくらいですか?なお、計算する際には、老後資金として準備している金額(Q3)も含めてください。 また、持ち家とその借入を除く資産額を調査したところ、2,000万円以上の資産を保有している方は27.0%にとどまりました。さらに気になるのは、32.5%の方が「わからない」と回答したことです。老後不安を解消するためには、必要な生活資金を早めに確保しておきたいところです。そのためにも、まずは自身の資産状況を把握しておきましょう。 持ち家に住み続けたいがリフォームに関して約半数が不安 Q5:今後、持ち家をどのように利用する予定ですか? 現在の持ち家を「住み続ける」と回答した方は66.5%で、そのほかには「売却する」が7.0%や「生前のうちに子どもに譲る」が5.5%など、具体的なプランをお持ちの方がいました。一方で13.5%が「考えたことがない」と回答しています。持ち家に長く住み続ける予定の方が多数を占めましたが、一方で約8割が持ち家に対して何らかの不安を抱いていました。 Q6:持ち家の今後についてどのような不安を抱いていますか? 具体的な不安として、最も多かったのは「修繕費やリフォーム代、固定資産税など維持をするための費用が心配」の48.5%でした。そのほかには「家は残したいが、誰も継いでくれない」が12.5%や「費用以外の問題で、今の家に住み続けるのが難しくなりそう」が11.0%など、切実な悩みを抱えている方もいました。 持ち家に資産価値がある人は過半数 Q7:持ち家はどのような経緯で取得しましたか? 持ち家を「住宅ローンで購入し、現在も返済中」と回答した方は19.5%でした。一方で、持ち家に抱いている不安は、6.5%が「住宅ローンを完済できるか心配」と回答しています。これらを重ね合わせてみると、住宅ローン返済中の3人に1人が「完済できるか不安」と感じており、家計が厳しい方も少なくないようでした。 約半数が持ち家の資産価値を「わからない」と回答 また、持ち家の資産価値を「住宅ローン残高のほうが多い」と回答した方は2.5%とわずかで、27.5%が住宅ローン残高を差し引いた資産価値で「1,000万円以上ある」と回答するなど、半数以上の方が持ち家に資産価値があると考えていました。 なお、持ち家を現金化できる方法を提示したところ約12人に1人が老後の不安が軽減したと回答しました。老後の不安の程度は「変わらない」が多数を占めましたが、持ち家を現金化することで不安が和らぐと考えている方は一定数いるようです。 一方で、持ち家を現金化できるかどうか以前に、持ち家の資産価値を把握していない方が約半数を占めていました。いざという時に持ち家を有効活用するため、自宅の資産価値を把握しておくことで、不安が解消される可能性もあると考えられそうです。 まとめ 老後の暮らしに多くの方が不安を抱いているものの、計画的に老後資金を用意できていない方は多いようです。一方、持ち家を使って老後資金を調達できれば、老後不安の解決につながると感じている方もいました。老後の暮らしや持ち家に対する考え方・悩みはそれぞれ違いますが、暮らし方やニーズが一致すれば、不動産を有効活用することで老後不安を解消できるかもしれません。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 住宅ローンを完済したがお金がない!そんな時の持ち家活用術とは? 50代になると、子どもの教育費もピークを迎えます。また、親も70代を超え、入院したり、介護が必要になったりすることも。あるいは、不動産投資や事業を始める資金が必要になるケースもあるかもしれま...記事を読む

  • リースバックにおける賃貸借契約の種類と退去について

    リースバックの退去について解説!強制退去させられることはある?

    リースバックは、自宅を売却した後も同じ家に住み続けられるサービスです。売却先であるリースバック運営会社と賃貸借契約を締結しますが、契約の種類によって退去の条件が変わります。リースバックの賃貸借契約では、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。 この記事では、リースバックにおける退去について詳しく解説します。 リースバックで強制退去させられる? リースバックにおける退去について考えるとき、サービスを利用する際に締結する賃貸借契約が重要です。リースバック利用時に締結する賃貸借契約は、一般的な賃貸借契約と同じで、普通賃貸借契約か定期借家契約を締結します。契約内容や状況次第では、入居者が希望したとしても、賃貸借契約を更新、もしくは再契約できるとは限りません。状況によっては、以下のような理由で強制退去させられることがあります。 賃貸借契約の違反 建物の状態の悪化 契約期間の満了 それぞれ詳しく確認していきましょう。 賃貸借契約の違反 賃貸借契約に違反した場合、貸主である運営会社から強制退去させられる恐れがあります。運営会社が裁判所へ強制退去を申し立て、請求が認められれば退去しなくてはなりません。一般的な契約違反として、長期間の家賃滞納、近隣への騒音や悪臭、ペットによるトラブル、無断転貸、などが考えられます。 建物の状態の悪化 経年劣化や地震などにより建物が老朽化、損壊することで入居者や隣家に被害が及ぶ恐れがある場合には、貸主は退去を申し出ることができます。なぜなら、建物の瑕疵や修繕義務の違反によって入居者が負傷した場合、賃貸物件の所有者である運営会社が賠償しなければならないためです。また、所有している建物の瑕疵が原因で隣家などに何らかの損害を与えた場合も、運営会社はその損害を賠償しなくてはなりません。 契約期間の満了 前述のとおり、普通借家契約と定期借家契約のどちらかを締結します。どちらも契約期間が定められていますが、普通借家契約は入居者が希望すれば契約更新が可能です。 一方で、定期借家契約は更新がなく、貸主と借主の双方が合意できなければ再契約できません。そのため、運営会社が再契約を認めなければ退去する必要があります。 関連記事はこちら定期借家契約と普通借家契約の違いとは? 退去時に費用はかかる? 退去時に費用がかかるかどうかは、リースバック運営会社によって異なります。契約書に退去時の費用について記載されていますが、サービスを利用する前に、退去時の費用の有無や内容を確認しておきましょう。 また、退去に伴い転居する際にも、新居を購入したり、借りたりする際の初期費用や引っ越し費用がかかります。あくまで間接的にかかる費用ですが、見積もっておくと安心でしょう。 「退去時に現金を払う」と説明された場合の注意点 リースバックでは、退去時に現金を払うことをうたっている運営会社もあります。その名目は「引っ越しサポート費用」など、運営会社によってさまざまです。 サービス利用時に「退去時に現金を払う」と説明されたとしても、対象期間や支払金額などの条件が契約書に明記されているかを必ず確認しておきましょう。 リースバックの退去に関するよくある質問 ここでは、リースバックの退去に関するよくある質問とその回答を紹介します。 自主的に退去することはできる? 自主的に退去したい場合は、貸主であるリースバック運営会社に申し出をすることで退去できます。どれくらい前に申し出ればよいかは契約内容によって異なるため、契約時に確認しておきましょう。 入居者が死亡したら親族はどうなる? リースバックで入居者が死亡した場合、その賃貸借契約は相続の対象です。そのため、親族が賃貸借契約を相続した場合は、そのまま住み続けることができます。 運営会社(物件の所有者)が変わったらどうなる? 運営会社が変わっても退去する必要はありません。賃貸借契約は新しい所有者に引き継がれ、賃貸人が変わるだけです。ただし、定期借家契約の場合は、これまでと同様に再契約を断られるリスクがあります。 退去後の買い戻しはできる? 運営会社は退去後に物件を売却するため、基本的に退去後の買い戻しはできません。交渉次第ではできるかもしれませんが、「買い戻しはできない」と考えておくほうがいいでしょう。リースバックで売却した自宅の買い戻しを想定している場合は、事前に買い戻し条件を確認したうえで退去前に申し出ることが大切です。 まとめ リースバックは自宅を売却してまとまった資金を手に入れた後も、家賃を払うことで同じ家に住み続けられるのがメリットです。 しかし、定期借家契約の場合は再契約が認められず、退去となるリスクがあるほか、普通借家契約でも、契約違反や建物の老朽化などの理由で退去せざるを得ないこともあります。リースバックを利用する前に、賃貸借契約の種類や退去について理解を深めておきましょう。 ご相談・仮査定はこちら リースバックのご相談・仮査定を無料で受け付けています。まずはお気軽にお問い合わせください。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 リースバックのトラブル事例と後悔しないためのポイントを解説 リースバックは一般的な不動産売買にはないメリットがある一方で、契約にあたって思わぬトラブルに巻き込まれる恐れもあるため、商品を調べていく中で「やばい」「やめたほうがいい」などの記事を見ること...記事を読む

  • マンション管理計画認定制度とは?認定基準やメリット・デメリットを解説

    マンション管理計画認定制度とは?メリット・デメリットを解説

    2022年4月から「マンション管理計画認定制度」がスタートします。マンション管理適正化の推進を目的に創設された制度で、マンションの管理や資産価値などに影響を与える可能性があります。 本制度の開始によって、具体的にどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。この記事ではマンション管理計画認定制度の概要や認定基準、手続きの流れについて詳しく解説します。 マンション管理計画認定制度とは? マンション管理計画認定制度とは、マンション管理計画が一定の基準を満たす場合に地方公共団体の認定を受けられる制度です。「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」の改正により、2022年4月から開始されます。 マンションは重要な居住形態ですが、国土交通省によると、2022年末時点で、築40年超のマンションは125.7万戸あります。10年後には260.8万戸(約2.1倍)、20年後には445.0万戸(約3.5倍)に増加する見込みです。築年数が古いマンションが増加傾向にあり、維持管理には多くの課題があります。 マンション管理計画認定制度の創設は、マンション管理の適正化を推進することが目的です。マンションの管理水準を底上げするため、必要に応じて地方公共団体が管理組合に指導や助言、勧告を実施します。 なお、認定を受けることができるのは、地方公共団体が「マンション管理適正化推進計画」を作成している地域にあるマンションです。 マンション管理計画の認定基準 マンション管理計画認定制度の創設を踏まえ、2021年9月には「マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な指針(管理適正化指針)」が策定されました。本指針では、管理計画認定制度の認定基準などが定められています。主な認定基準は以下のとおりです。 修繕その他管理の方法 修繕その他の管理にかかる資金計画 管理組合の運営状況 管理適正化指針・市区独自の管理適正化指針に照らして適正なものであること 「長期修繕計画の計画期間が一定期間あるか」「計画に基づいて修繕積立金が設定されているか」「定期的に総会を開催しているか」といった点が審査されます。また、管理適正化指針や市区独自の指針に照らして、管理計画が適正なものであるかも判断されます。 助言・指導・勧告の判断基準の目安 地方公共団体は、管理適正化指針や市区独自の指針に基づき、必要に応じて管理組合の管理者などに助言や指導、勧告を行います。助言・指導・勧告の判断基準の目安は以下のとおりです。 助言・指導・勧告の判断基準の目安 判断項目助言・指導・勧告の判断基準の目安 管理組合の運営管理者が定められていない総会が開催されていない 管理規約管理規約が存在しない 管理組合の経理管理費と修繕積立金額が区分されていない 長期修繕計画の作成および見直し修繕積立金が積み立てられていない その他組合員名簿、居住者名簿がない 上記のような状況の場合、マンション管理が不適切と判断される恐れがあります。 マンション管理計画認定制度のメリット マンション管理計画認定制度のメリットは以下のとおりです。 マンション管理水準の維持向上につながる 市場評価・地域価値の向上が期待できる 購入希望者がマンション管理状況を把握しやすくなる 金利優遇を受けられる(新築の場合) 管理者や区分所有者のマンション管理に対する意識が高まり、管理水準の維持向上につながります。地方公共団体の認定を受けたマンションであることをアピールすれば、市場評価や立地している地域価値の向上も期待できるでしょう。 現在は、購入希望者がマンションの管理状況を把握するのは簡単ではありません。しかし、今後は認定の有無を確認すれば、一定の管理水準を満たしているかを把握できるようになります。 また、中古だけでなく、新築マンションにも管理計画を認定する制度が開始される予定です(予備認定)。予備認定を受けた新築マンションを取得する場合は、住宅金融支援機構の「フラット35」の金利が一定期間引き下げられます。 出典)住宅金融支援機構 「【フラット35】令和4年4月の制度変更事項のお知らせ」より マンション管理計画認定制度のデメリット マンション管理計画認定制度のデメリットは、マンション管理組合の事務負担が増えることです。 認定を受けるには認定申請書や長期修繕計画を作成し、必要書類を準備して地方公共団体に申請しなくてはなりません。一度認定を受けたら終わりではなく、5年ごとの更新もあります。管理水準の底上げは期待できますが、管理組合の負担は大きなものになるでしょう。 ただし、マンション管理センターによる「管理計画認定手続き支援サービス(オンライン申請)」を利用すれば、事務負担の軽減が期待できます(詳細は後述)。 マンション管理計画認定の流れ マンション管理計画の認定申請方法は、「オンライン申請」と「窓口への直接申請」の2つがあります。オンライン申請の流れは以下のとおりです。 マンション管理センターへ認定申請依頼 マンション管理士の事前確認 事前確認適合通知(適合証)の発行 地方公共団体へ認定申請 認定(マンション管理センターの閲覧サイトで公表) オンライン申請でマンション管理士の事前確認を受けて適合証が発行されると、地方公共団体が審査の事務手続きを省略できる仕組みになっています。オンライン申請のほうが、申請手続きをスムーズに進められるでしょう。 窓口への直接申請は地方公共団体によって手続きの流れが異なるため、申請する地方公共団体に直接確認してください。事前確認や認定申請では手数料がかかる可能性もあるので、申請前に確認しておくことが大切です。 認定申請の必要書類 認定申請に必要な書類は以下のとおりです(神奈川県の場合)。 認定申請書 総会議事録の写し 管理規約の写し 貸借対照表 収支決算書 各戸の修繕積立金滞納額がわかる書類 長期修繕計画の写し 組合員・居住者の名簿の保証書 必要書類を準備する際は、記載内容や事業年度などの諸条件を地方公共団体に確認しておきましょう。神奈川県の場合、長期修繕計画については「計画期間30年以上」「残存期間内に大規模修繕工事2回以上含まれている」といった要件があります。 マンション長寿命化促進税制が与える影響 令和5年度税制改正の大綱にて、マンション長寿命化促進税制の創設が決定しました。この制度は、一定の条件を満たしたマンションを所有する区分所有者の固定資産税を減額できる制度です。 マンション長寿命化促進税制の適用を受けるには、マンションと管理計画の面で、条件を満たす必要があります。マンション管理計画認定制度の認定を受けることで、管理計画の面での適用条件を満たすことができます。 マンション長寿命化促進税制の創設により、マンション管理計画認定制度利用件数の増加が期待されます。 関連記事はこちらマンション長寿命化促進税制とは?概要やメリットを解説 まとめ マンション管理計画認定制度を利用して地方公共団体から認定を受けると、マンションの価値向上につながるかもしれません。ただし、認定基準はマンションを適切に維持管理するうえで最低限の基準を定めているものなので、認定を受けることが必ずしも価値の向上に寄与するとは限りません。 マンション管理組合の事務負担が増えるデメリットがあり、認定制度の効果には不透明な部分もあります。認定制度創設の影響は冷静に見極める必要があるでしょう。 出典) ・神奈川県県土整備局「マンション管理計画認定制度管理組合向け説明会」 ・国土交通省 「マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針」の策定について 執筆者紹介 大西 勝士(Katsushi Onishi) 金融ライター(AFP)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで年間200本以上の記事執筆を行っている。得意領域は不動産、投資信託、税務。 <運営ブログ> https://www.katsushi-onishi.com/ DINKsマンションとは?メリットや注意点を解説 ここ数年、”DINKsマンション”や”コンパクトマンション”の供給戸数が再び増加しており、今後さらに人気が高まる可能性があります。DINKsマンションを購入するメリットがある一方で、購入する...記事を読む

    2022.03.02制度
  • リースバックの契約までの流れと必要書類、注意点を解説

    リースバックを検討するにあたり、どのように契約が進んでいくのか不安に思う人もいるのではないでしょうか。リースバックの契約が終わってから後悔することが無いように、契約がどのような流れで進み、何に注意しなければならないかを正しく認識しておきましょう。 この記事では、リースバックの契約までの流れや注意点について詳しく解説します。 リースバックの契約までの流れ 一般的なリースバックの契約の流れは以下のとおりです。 ご相談・仮査定 仮査定結果の提示 現地調査及び査定 契約条件の提示 契約 売買成立・賃貸開始 それぞれどういった手続きなのか、順番に詳しく解説します。 1.ご相談・仮査定 まずはリースバック運営会社に問い合わせをします。一般的には、所有物件の状況や売却価格、家賃などの希望条件について確認されます。相談して問題がなければ、仮査定の申込を行いましょう。なお、仮査定の際には固定資産税額やマンションの場合には管理費や共益費などを確認されるので、問い合わせの際には正しく把握しておくといいでしょう。 2.仮査定結果(売却価格・家賃)の提示 問い合わせ時に提示した情報から仮査定が行われ、概算の売買金額と家賃が提示されます。仮査定では、あくまでその周辺地域の成約事例を基に算出されるので、戸建てなどの個別要因が強い不動産の場合は、本査定との乖離が大きくなることもあります。 3.現地調査及び査定 運営会社が実際に現地に訪問し、物件の状況確認や図面との照合、境界線の確認などが実施されます。仮査定時には分からなかった建物の不具合や図面との相違などがないかを確認したうえで、最終的な売買金額と家賃が確定します。 4.契約条件(売却価格・家賃)の提示 運営会社から本審査の結果が通知されます。売却価格や家賃などの契約条件が提示されるので、内容を確認して契約するかどうかを判断しましょう。なお、運営会社によっては売買価格や家賃の調整が一定の範囲内で可能な場合もあるので、自身の希望を伝えてみるといいでしょう。 5.契約 契約条件に同意する場合は契約手続きに進みます。契約の意思を伝えると、必要書類の確認と契約日の日程調整が行われます。ここで締結される契約は売買契約と賃貸借契約で、物件の買い戻しのための売買予約契約を締結する会社もあります。 6.売買成立・賃貸開始 売買代金の支払いが完了すると、売買が成立して物件の所有権が運営会社に移転します。それと同時に賃貸借契約も成立し、自宅の賃貸が開始されます。 リースバックを利用する際に必要な書類 リースバックを契約するまでに必要書類の提出を求められるタイミングは、本査定時と契約締結時の2つです。それぞれに必要な書類と取得方法を解説します。 リースバックの本査定時に必要な書類と入手方法 リースバックの本査定時に必要な書類は以下のとおりです。 身分証明書(運転免許証、マイナンバーカード、保険証など) 住民票 固定資産税通知書 収入証明書(源泉徴収票、年金通知書など) 身分証明書や住民票は、本人確認や住所確認のために使用します。住民票は自治体の窓口のほか、マイナンバーカードがあればコンビニで発行することも可能です。 固定資産税通知書は、不動産の評価額を確認する際に使用します。固定資産税通知書は自治体から毎年送付されるもので、査定価格の算出のために必要な書類です。なお、固定資産税を確認するために使用するため、場合によっては提出までは求められないかもしれません。 また、リースバックでは賃貸となっても支払いが滞りなくできるかを確認するため、収入状況も審査されます。収入証明書として、勤務先から受け取った源泉徴収票や年金通知書などを準備しておきましょう。 リースバックの契約時に必要な書類と入手方法 リースバックは、査定時と契約時で必要書類が異なります。また、契約は「不動産売買契約」と「賃貸借契約」の2つに分かれており、それぞれ必要な書類は異なりますが、売買契約に伴って利用される書類がほとんどです。 不動産売買契約時には、身分証明書の他に以下の書類が必要です。 印鑑証明書(実印) 権利証(登記識別情報通知、登記済証) 売買契約時に必要な書類は、一般的な不動産売却と同じです。印鑑証明書は、印鑑が登録されたもの(実印)であることを証明する書類です。虚偽の申請で買主が不利益を受けないように、不動産売買では印鑑証明書を添付する必要があります。印鑑証明書は自治体の窓口のほか、マイナンバーカードがあればコンビニで発行することも可能です。 権利証は、不動産の所有者であることを証明する書類です。リースバックで自宅を売却すると、所有権が運営会社に移転します。この所有権移転登記を行う際に、権利証が必要になります。権利証は自宅を取得したときに発行されていますが、万が一紛失している場合にも代替措置があるので、運営会社に相談してみましょう。 賃貸借契約時には、身分証明書や収入証明書を準備します。連帯保証人をたてる場合は、連帯保証人の承諾書も必要です。ただし、保証会社と契約することで連帯保証人が不要となる運営会社もあります。 リースバックの契約時に必要に応じて提出する書類 リースバックの契約時に以下の書類の提出を求められる場合もあります。 ローン残高証明書・抵当権抹消書類 自宅の図面 掘削承諾書(前面道路が私道の場合) 自宅購入時の重要事項説明書 自宅建築時の建築確認通知書 境界確定書 管理規約・総会議事録(マンションの場合) リースバックの契約書に関する注意点 一般的に、リースバックの契約に用いられるのは「売買契約書」と「賃貸借契約書」の2つです。それぞれの契約書の注意点を解説します。 売買契約書 売買契約書は、物件の売却価格や売却代金の支払方法、支払日を確認しましょう。その他、通常の不動産売却と同様に、売主が負う契約不適合責任がどのように記載されているか確認しておくことが大切です。 また、リースバックは売却した自宅の買い戻しが可能な場合、買い戻しの可否や可能期間、買い戻し金額などが売買契約書に特約として記載されています。将来買い戻しを想定しているなら、買い戻し事項の有無と内容を確認しておきましょう。なお、運営会社によっては、売買契約書上の特約ではなく、売買予約契約書を別途締結する場合もあります。 賃貸借契約書 賃貸借契約書を確認する際に最も重要なのが、賃貸借契約が「普通借家契約」か「定期借家契約」かです。どちらも契約期間が定められていますが、普通借家契約は借主であるリースバックの利用者が希望すれば契約更新が可能です。一方、定期借家契約は更新がなく、再契約するためには運営会社の合意が必要となります。 関連記事はこちら定期借家契約と普通借家契約の違いとは? 契約の種類を確認したうえで、敷金や礼金、仲介手数料などの初期費用、更新料の有無、退去の申出期限、原状回復費用の負担割合といった基本的な内容も確認しておきましょう。 リースバックの利用に関する注意点 リースバックを利用する際は、複数の運営会社を比較することが大切です。運営会社によって売却価格や家賃、賃貸借契約の期間・種類が異なります。複数の運営会社に相談したうえで、希望条件に近い会社と契約しましょう。 また、リースバックで自宅を売却する前に、相続人と相談することも重要です。売却後は自宅の所有権が運営会社に移転するため、自宅は相続財産の対象外となります。あらかじめ相続人と相談しておかないと、相続発生後に相続人がリースバックに気づき、トラブルとなるケースもあります。リースバックを利用する場合、自宅を売却することをあらかじめ契約前に相続人に伝えるようにしましょう。 まとめ リースバックは、老後資金の確保や相続トラブルの回避に有効です。しかし、どのように契約が進行し、何に注意すべきかを把握しておかないと、トラブルになる恐れもあります。特に普通借家契約と定期借家契約の違いには注意が必要です。 リースバックで自宅を売却してから後悔しないように、正しく契約の流れと注意点を理解してから実際の契約を進めましょう。 ご相談・仮査定はこちら リースバックのご相談・仮査定を無料で受け付けています。まずはお気軽にお問い合わせください。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 リースバックのトラブル事例と後悔しないためのポイントを解説 リースバックは一般的な不動産売買にはないメリットがある一方で、契約にあたって思わぬトラブルに巻き込まれる恐れもあるため、商品を調べていく中で「やばい」「やめたほうがいい」などの記事を見ること...記事を読む

  • リ・バース60と住宅ローンの違いとは

    老後に向けて自宅の住み替えやリフォームなどを行う場合、まとまった資金が必要になります。預貯金があれば手元資金から捻出すればいいですが、老後資金への備えのためにローンを利用しようとしても、高齢になるとローンを借りるのが難しくなります。そのような時に高齢者向け住宅ローンの「リ・バース60」を活用できます。一方で、リ・バース60と通常の住宅ローンは何が違うのでしょうか。 この記事では、リ・バース60と住宅ローンの違いや類似点について詳しく解説します。 リ・バース60とは リ・バース60とは、住宅ローンの一種で満60歳以上の方向けの商品です。通常の住宅ローンと同じように、住宅の購入や建築、リフォーム、住宅ローンの借り換えなどに利用できます。 リ・バース60は毎月の支払が利息のみで、月々の返済負担が少ないのが特徴です。元本の支払いは、債務者が亡くなったときに担保不動産を売却して返済するか、相続人が現金で一括返済するかを選べます。 リ・バース60と住宅ローンの違い リ・バース60と住宅ローンはともに自宅を担保にした住宅ローンである点で共通しています。しかし、金融機関の借入限度額への考え方は大きく異なります。リ・バース60は不動産の評価額をベースに借入限度額を算出する、不動産担保ローンの考え方に近いです。一方で、住宅ローンは不動産の評価額をベースに借入限度額を算出するというよりは、債務者の与信を基に借入限度額を算出します。 このような考え方は融資条件にも表れます。具体的には、リ・バース60と住宅ローンは以下のような点で異なります。 返済方法 リ・バース60は、毎月利息のみを返済する仕組みです。毎月の返済額が小さく、据え置いている元本は債務者の死後に一括返済します。そのため、返済は生きている限り無限に続きます。 一方、住宅ローンは、元本と利息を毎月返済する仕組みです。返済方法は、毎月同じ金額を返済する「元利均等返済」と毎月同じ元本を返済する「元金均等返済」の2つが一般的です。毎月元本を返済していくので、返済期間は有限です。 元利均等返済は返済額が毎月一定のため、返済計画が立てやすいのが特徴です。一方、元金均等返済は元利均等返済より総返済額が小さくなりますが、当初の返済額(元本+利息)が大きくなります。収入や支出、返済期間などを考慮して返済方法を選択することが大切です。 関連記事はこちら住宅ローンの返済額を計算する方法とは?金利と利子の違いを解説 借入限度額 上述のとおり、リ・バース60と住宅ローンの借入限度額の算出方法は異なります。リ・バース60の借入限度額は、不動産評価額の50~60%程度(上限8,000万円)です。つまり、不動産の担保評価額が3,000万円なら、1,500~1,800万円(3,000万円×50~60%)が借入限度額となります。 一方で、住宅ローンは与信によって返済可能と判断されれば、不動産の購入額のみならず、住宅ローンの手数料や登記費用などといった諸費用分まで融資を受けられます。ただし、リ・バース60よりも年齢や収入、勤続年数といった申込人の属性に左右されます。 融資対象 リ・バース60は、契約時点で満60歳以上の方が対象です。満50歳以上60歳未満の方も利用できますが、借入限度額の取扱いが変わってきます。そして、下限年齢は定められていますが、融資条件に上限年齢を定めていることは少ないです。 一方、住宅ローンには上限年齢に制限があり、「完済時年齢80歳まで」が一般的です。安定収入があることや団体信用生命保険(団信)の加入も条件となるため、転職して勤続年数が短い場合や健康状態に問題がある場合は、審査で不利に働きます。 適用金利 適用金利は、リ・バース60が年利2.00~3.00%程度です。一方、住宅ローンは年0.30%程度から提供されていますが、金利タイプ(固定金利・変動金利)や借入期間などによって変わります。具体的な適用金利は金融機関ごとに異なるため、利用前に必ず比較検討することが大切です。 その他 リ・バース60と住宅ローンは、団信の取扱いが異なります。団信は、ローン返済中に債務者が亡くなった場合、保険金によって残債が弁済される制度です。リ・バース60は亡くなった後に元本を返済する、いわゆる亡くなることを前提にした住宅ローンであるため、団信に加入できません。一方で、住宅ローンは一般的に団信への加入が必須です。 また、取扱金融機関の数にも違いがあります。リ・バース60は比較的新しい商品であるため、取扱金融機関は限られます。一方で、住宅ローンは都市銀行から地方銀行、信用金庫、ネット銀行、ノンバンクまで幅広い金融機関が取り扱っています。 リ・バース60と住宅ローンの類似点 リ・バース60と住宅ローンの類似点についても確認していきましょう。 借り入れまでの流れ リ・バース60と住宅ローンは、申込手続きや審査方法は基本的に同じ手順で行われます。ただし、リ・バース60は住宅ローンの借り入れの流れに加えて、推定相続人の同意が必要になります。これは元本の返済が債務者の死後に行われるという商品性から、相続人の協力が必要なためです。 エリア リ・バース60と住宅ローンは、どちらも対象エリアは全国です。ただし、金融機関によっては対象エリアを限定しているケースもあります。上述のとおり、リ・バース60は比較的新しい商品であるため、全国でも取り扱う金融機関が限られ、地方などは対応する金融機関がない場合もあります。 資金使途 リ・バース60と住宅ローンは、住宅の購入や建築、リフォーム、借り換えなどにのみ利用が認められています。事業資金や納税資金、教育資金など、住宅関連以外の使途には利用できません。 収入要件 リ・バース60と住宅ローンは、どちらも一定の収入が必要です。これはどちらも借入可能額が返済比率を基に審査されるためです。なお、リ・バース60は毎月の返済額が少ない傾向にあり、住宅ローンに比べると比較的少ない収入で借り入れができます。 その他 リ・バース60と住宅ローンは、どちらも抵当権による不動産の担保設定が必要です。取扱金融機関ごとに異なるものの、基本的に事務手数料や返済手数料も発生します。また、「市街化調整区域が利用できない」「再建築不可物件が利用できない」といった諸条件も類似しています。 まとめ 年齢の関係で住宅ローンを組めない場合は、リ・バース60が選択肢となります。リ・バース60は住宅ローンの一種ですが、通常の住宅ローンとは異なる点もあります。老後に向けて住宅取得やリフォームを検討するなら、リ・バース60と住宅ローンの違いを理解しておきましょう。 お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 リ・バース60のよくある質問 リ・バース60は、満60歳以上の方向けの住宅ローンです。一般的な住宅ローンは、安定収入が必要で年齢制限もあるため、高齢になると借りるのが難しくなります。一方で、リ・バース60であれば、住宅ロ...記事を読む

  • リ・バース60を利用中に債務者が亡くなると配偶者はどうなる?

    リ・バース60を利用中に債務者が亡くなると配偶者はどうなる?

    満60歳以上の人向けの住宅ローンであるリ・バース60は、一般的な住宅ローンに比べて高齢者の方が活用しやすい商品です。リ・バース60は、毎月の返済を利息のみにして抑えられる一方で、債務者が亡くなった際に、現金もしくは自宅の売却により元本返済を行う商品です。そのため、債務者が亡くなった後に遺された配偶者が住み続けられるのか不安を持つ人もいるでしょう。 この記事では、債務者が亡くなった後に配偶者が家に住み続けられるのかについて解説します。 債務者の死亡後に配偶者が住み続けられるかは契約次第 リ・バース60を利用中に債務者が亡くなった後、配偶者がその家に住み続けられるかは、どのような契約を締結しているかによって決まります。つまり、契約次第ではその家に住み続けることも可能です。 リ・バース60は夫婦で申込みが可能な商品で、その場合、「連帯債務」として夫婦両方が債務者となります。連帯債務で借り入れた場合、万が一どちらかが亡くなった場合でも、もう一方が債務を引き続き負う形となります。つまり、もう一方が亡くなるまでは契約が継続します。 ただし、連帯債務者になれるのは配偶者などの一部の親族に限られます。また、配偶者だとしても年齢などの条件によって、連帯債務で借入れられない場合もあるので、詳しくは金融機関に確認してみましょう。 リ・バース60の収入要件や収入合算 リ・バース60では、借入可能額の計算のために返済比率を用いています。返済比率とは、年間返済額が年収に占める割合のことを言い、返済比率が高いほど返済が厳しくなります。 具体的には、収入要件としてこの返済比率を次のように定めています。 年収400万円未満:30%以下 年収400万円以上:35%以下 例えば、年収200万円の場合、返済比率30%以下にするには年間返済額を60万円(毎月の返済額5万円)以下にする必要があります。ただし、この年間返済額にはリ・バース60の返済分だけでなく、その他のローンを含めた年間の借入返済総額の合計になるので注意が必要です。 ちなみに、連帯債務で借り入れる場合、連帯債務者の収入を合算して計算する「収入合算」ができます。仮に、夫の年収が200万円、妻の年収が100万円の場合、合計した300万円で返済比率を計算して融資額が調整されます。ただし、収入要件以外にも不動産の担保評価額や年齢によっても借入可能額が異なります。 債務者が亡くなった場合はどうなる? リ・バース60では、債務者が亡くなった時に自宅を売却してローンを返済するのが一般的です。そのため、債務者が亡くなった場合、遺された配偶者が同じ自宅に住み続けられなくなる場合があります。ただし、条件によっては債務者が亡くなった後でも配偶者が住み続けられる場合もあります。 債務者が亡くなった場合でも、遺された配偶者が住み続けられるケースには次の3つがあります。 連帯債務で借り入れた場合 契約を引き継ぐことができる場合 残債務を現金一括で返済する場合 連帯債務での借り入れた場合 前述したように連帯債務で借り入れている場合、主債務者が亡くなったとしても配偶者が連帯債務者として契約を継続します。債権の回収は、連帯債務者が亡くなった後にされるため、配偶者は住み続けることが可能です。 契約を引き継ぐことができる場合 配偶者が連帯債務者でない場合でも、債務者が亡くなった後に配偶者が契約を引き継ぐことで家に住み続けることが可能です。ただし、契約を引き継ぐ場合、引き継ぎには条件や審査が必要になります。そのため、必ずしも引き継げるわけではなく、審査結果によっては引継ぎできないので注意が必要です。 残債務を現金一括で返済する場合 リ・バース60の返済方法は、自宅を売却するだけでなく残債を現金で一括返済することも可能です。一括返済できれば家を売却する必要がなくなり、そのまま住み続けられます。また、債務者が存命中に繰り上げ返済することも可能です。 住み続けられない場合は売却手続きへ 上記のケースに当てはまらず、担保物件の売却で一括返済する場合には住み続けることはできません。連帯債務で契約しておらず、契約の引継ぎや現金一括返済ができない場合、担保である家を売却して一括返済が求められます。 売却方法には、自分で売却する「任意売却」と機構に売却を任せる「競売」があります。いずれの売却方法にせよ、家を売却するので住み続けることはできません。ただし、任意売却であれば、金融機関に承諾を得たうえで買主を選ぶことが可能です。また、親族に買い取ってもらうことができれば、そのまま住み続けられる可能性もあるので、検討するとよいでしょう。 なお、債務者が亡くなった場合でも、連帯債務者でない配偶者が必ずしもすぐに立ち退かなければならないわけではありません。金融機関に承諾を得ることで、一定期間住み続けることが可能なため、その期間で引っ越しなどの準備を進めることは可能です。ただし、場合によっては猶予期間を得られないこともあるので、金融機関に相談するようにしましょう。 まとめ リ・バース60では、債務者が亡くなった場合、遺された配偶者が連帯債務者であればそのまま住み続けることが可能です。また、連帯債務者でない場合も、契約を引き継ぐか現金で残債を一括返済することで住み続けられます。 ただし、それらの対応が取れない場合は、住み続けることができないので注意が必要です。この記事で紹介した債務者が亡くなった場合の返済について理解し、リ・バース60を利用するかどうか検討してみてください。 お悩みや疑問は解決できましたか? SBIシニアの住まいとお金なら、住宅ローンのプロに、調べても解決できないお悩みや疑問を相談できます。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 リ・バース60のよくある質問 リ・バース60は、満60歳以上の方向けの住宅ローンです。一般的な住宅ローンは、安定収入が必要で年齢制限もあるため、高齢になると借りるのが難しくなります。一方で、リ・バース60であれば、住宅ロ...記事を読む

  • 不動産担保ローンの担保評価額とは?算出方法や融資可能額の目安を解説

    不動産担保ローンの担保評価額とは?算出方法と融資可能額も解説

    不動産担保ローンを借りるとき、融資上限額は金融機関ごとに定められています。しかし、融資可能額はあくまで担保とする不動産の評価である「担保評価額」に基づいて決定されます。それでは、不動産の担保評価額はどのように算出されるのでしょうか。 この記事では、不動産担保ローンの担保評価額の算出方法や融資可能額の目安について解説します。 担保評価額とは? 担保評価額とは、融資が滞った際などに金融機関が処分可能と見込む金額のことです。不動産担保ローンは、不動産を担保とすることで、債務者の与信だけでは貸せない金額を融資できます。そのため、債務者がローンを返済できなくなった時には、担保不動産を売却して融資金を回収する必要があります。 このような理由から、担保評価額は不動産評価額に一定の担保掛目を乗算して算出されます。不動産評価額を算出する指標は、一物五価とも呼ばれ、複数の指標がありますが、どの指標を採用するかは金融機関によって異なります。担保掛目も金融機関や資金使途によって異なりますが、60~80%程度が一般的です。 関連記事はこちら不動産評価の方法と不動産価値の考え方 不動産担保ローンの担保評価額の算出方法 前述のとおり、担保評価額は、不動産評価額に担保掛目を乗算して算出されます。つまり、不動産評価額と担保掛目がわかれば、担保評価額は算出できます。しかし、担保掛目を開示している金融機関は多くありません。そのため、担保掛目を開示していない金融機関の融資可能額を正確に知りたい場合は、審査を申し込むしかありません。 担保評価額の算出例 たとえば、不動産評価額が5,000万円の場合で考えてみましょう。担保掛目が80%の場合の担保評価額は、4,000万円(5,000万円 × 80%)、担保掛目が60%の場合の担保評価額は3,000万円(5,000万円 × 60%)です。 このように不動産評価額が同じでも、担保掛目が異なることで担保評価額は異なります。加えて、不動産評価額も金融機関ごとによって異なるため、同じ担保不動産で申し込んだとしても、融資可能額は大きく異なるかもしれません。このような理由から、不動産担保ローンを利用する時は、複数の金融機関に相談するといいでしょう。 担保評価額の目安 前述のとおり、多くの金融機関で担保掛目は60~80%です。そのため、担保不動産の時価の60~80%が担保評価額であることが推察できます。担保評価額の目安を知りたい場合は、不動産会社に担保不動産の査定を依頼したり、公示価格や路線価、取引事例などを調べることでも確認できます。 担保評価額の上限まで融資してもらえるのか? 基本的には、不動産の担保評価額が融資可能額の上限となります。ただし、住宅ローンの残債などがある担保不動産は、担保評価額からローンの残債を差し引いた残りが融資可能額となります。 たとえば、不動産評価額が5,000万円、担保掛目が80%の場合で、住宅ローンの残債が1,000万円のケースを考えてみましょう。住宅ローンの残債がない場合は、前述のケースと同様に融資可能額は4,000万円です。しかし、担保評価額から住宅ローン残債を差し引くので、融資可能額は3,000万円(4,000万円-1,000万円)が融資可能額の上限となります。 ただし、融資可能額は不動産の担保評価額だけで決まるわけではありません。金融機関は担保不動産だけでなく、年収や職業、勤続年数、延滞履歴の有無といった申込者の属性も考慮して融資判断を行います。不動産の担保評価額が高くても、返済能力を超える金額を融資してもらうことはできません。 関連記事はこちら不動産担保ローンの審査基準と審査通過のためのポイント まとめ 不動産担保ローンはカードローンのような無担保ローンに比べて金利が低く、まとまったお金を長期間借りられます。そして、不動産担保ローンの融資可能額の上限は、担保評価額の60~80%が目安となり、概算であれば自身で調べることもできます。一方で、急ぎで資金が必要な場合や融資可能額を正確に知りたい場合は、不動産担保ローンを扱う金融機関に相談しましょう。 無料の仮審査を申込む ご所有の不動産を担保にいくらまで融資可能かをご回答いたします。 執筆者紹介 「住まいとお金の知恵袋」編集部 金融や不動産に関する基本的な知識から、ローンの審査や利用する際のポイントなどの専門的な情報までわかりやすく解説しています。宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、各種FP資格を持ったメンバーが執筆、監修を行っています。 不動産価値の高め方とは?立地条件と不動産価値の関係 不動産の価格は価値と連動するため、高く売るためには価値を高めることが大切です。 それでは、所有する不動産をできるだけ高く売るために、オーナーは何を行えば良いのでしょうか。 不動産価値を高める...記事を読む